六月博多座大歌舞伎 | akaneの鑑賞記録

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いや~、行ってしまいました!
初めての博多座!!
なかなか九州までの遠征は二の足踏んでましたが、幸四郎さん襲名披露&仁左衛門様の八汐と俊寛ときたら、行かないわけにはいきません。


7時発の飛行機でひとっ飛び。
9時前には福岡空港着、しかも地下鉄で5駅で繁華街に出られるとか便利すぎる。
東京駅から新幹線、品川駅から飛行機、ぐらいの距離感ですよね。羨ましい。
どこかで朝ごはんでも…と中州あたりをプラプラしていたら、まさに中州のイイ感じのところにbills発見!

 

 

スクランブルエッグにしようかな~と思いましたが、ここは定番のパンケーキ食べて(笑)満腹満腹。

 

 

はちみつがコーティングされたバターが美味しいんですよ~!!!
月曜の朝10時にもかかわらず、たくさんのお客様。
その中で1人、5分でパンケーキを食らう女。
ん~「サラベス」の方がインパクトあったかな~?
「幸せのパンケーキ」もなかなか互角だぞ。
いやはや、今やふわふわパンケーキは激戦区ですな。

そんなこたぁどうでも良い。

博多座到着~

 

 

 

堂々とした外観。

は~やっと来ましたよ。感慨深いな~
ってか、とうとう九州まで追っかけしちゃったよ(笑)

 

松王丸@幸四郎さんがお出迎え。

 

 

劇場内は、老舗の伝統的ホテルのような、落ち着いた品の良い佇まい。
お土産物屋さんも沢山あって、目移りしちゃう。

 

 

さて昼の部は「伊達の十役」
朝11時からこれやるの大変だ~。
平成26年、明治座、五月花形歌舞伎での初演を見ました。
その時に比べると、格段に落ち着きがあるというか早変わりのクオリティも上がっていましたね。
もはや神業的。

口上・発端・序幕・二幕目
最初はどうしても「人物紹介」「ストーリー紹介」になってしまうので、ちょっと慌ただしいかな。
何役も早変わりすることろに焦点が行ってしまうというか…
早起きからの移動もたたって、時々意識が…
累と高尾太夫、本当にお美しいのだけれど、やっぱり完全な女形という訳にはいかないですね。
時々歩き方とか身のこなしが雑だったりする。


三幕目 

御殿に入ると、ぐっと落ち着きました。
政岡だと声音も低めだし、動きも貫禄があるので、いよいよ本領発揮といったところ。
先代萩で飯焚きから全部演じると、やっぱりちょっと長いというか…玉三郎さんだとず~っと見てられるけど…
その分、伊達十の演出だと見せ場を凝縮していて一気に話も進んでいくので見やすくていいです。
幸四郎さんの政岡、なんか好きなんですよね~。
落ち着いた中に強さもしっかりありつつ、慈悲深い。
栄御前を見送った後、放心状態からの慟哭、泣けます。

床下の荒獅子男之助は、ちょっと厳しいかな。
う~ん、なんかバランス悪いんですよね。顔が小さすぎるのかしら。
早変わりがあるから、あんまり肉襦袢とか着こめないし。
でもここからの仁木弾正はいい!

あの鼠色の裃、いいですよね~。カッコイイ。

まさに妖術使いとして空中に浮かび上がる宙乗りは迫力あります。
 

 

大詰 
前幕のじっくり見せる女のドラマから、今度は動きのある男のドラマへ!
こういうところよくできたストーリーだなといつも思います。
細川勝元は、まさにニンのお役ですから安心して観られますし、
仁木弾正も大きくてふてぶてしくていいです!!
最後の最後、激しい立ち回りも全く疲れを見せず。

この作品を作り上げた猿翁さんは本当に凄いし、こうして澤瀉屋の作品を高麗屋の襲名興行で取り上げる幸四郎さんも素晴らしいと思います。
そういった家の垣根を越えて、素晴らしい作品はきちんと自分の体を使って後世に残していく。
自分の名を残すのではなく、自分がやったことが歌舞伎の中に残っていくように、という幸四郎さんの心意気が、仁左衛門様や梅玉様、そして白鴎さんにもちゃんと伝わっている舞台でした。
これだけの大御所が花を添えてくれたおかげで、芝居もグッと引き締まってグレードアップしましたし、なにより「次の世代に繋げて行ってくださいよ」と応援する気持ちが伝わってきて。
最後の切口上のところ、梅玉さんほんっとに可愛いんだ!!
幸四郎さんのこと、ホントに好きなんだな~、可愛がってくれてるんだな~って思います。
渡辺民部役の梅玉さんも、結構四幕目は出ずっぱりで大変なのに

 

「あ~ちゃん(幸四郎さん)えらい!!よく頑張った!!」

 

って感じのニコニコ顔で親指ポーズだもん。


昼の部終わって、メールチェックや電話をしていたら、時間が無くなってしまって、お目当てのお店は終演後に。
取り急ぎ近場の「一蘭」で豚骨ラーメンを。


 

 

 

さて夜の部です

 

●平家女護島~俊寛」
なんとなく「地味」な印象で、見たことなかったんですよね。
映像でも、最初の方のぐだぐだ話しているところ(失礼!)ぐらいまでで脱落。

鬼界ケ島 ドーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



エメラルドグリーンの海が素敵!
いやいや。
今は観光地として飛行機も飛んでいますけど。

 


流刑というのは基本、無期懲役。赦免の船が来てくれるまで帰れない。
刑務所と違って、衣食住全部自分で賄わなければならない。
鬼界ケ島は硫黄の島、農作物が育たないので、海産物を食べるしかない。

なるほど~。
イヤホンガイド、勉強になりますな。


俊寛は、平家打倒の陰謀を企てた罪科により、同志の藤原成経、平康頼とともに、鬼界島に流されてしまいます。
ようやく赦免の使者が来ましたが、赦免状に俊寛の名前はありません。

驚き、絶望の淵に沈む俊寛。
やがて赦免されたふたりを乗せて舟は島を離れます。俊寛は、舟に乗せよとすがりつくのですが、無情にも打ち捨てられ、渚にうずくまるのでした。

『平家物語』の俊寛はあまり感心のできない人柄として描かれているようです。
「心たけくおごれる人」であって、信仰心に欠ける人物である点が強調されています。彼ひとりが島に残されたのも当然だという感じで、「因果応報」を旨とする『平家物語』らしい筆で書かれているわけですが、歌舞伎はもうひとひねりあります。

年若い成経が海女の千鳥を妻に迎えるといって連れてきて、4人でささやかな宴をしているところに赦免の船が現われます。
赦免状には成経と康頼の名前しかなく悲嘆するところまでは同じですが、もう一人の使者が現われて、俊寛も船に乗れることになります。
喜んで3人と千鳥が船に乗り込もうとすると、「名前のないものは乗せられない」と、千鳥は下ろされてしまいます。
残された千鳥は

「私一人ぐらい軽いもんなんだから乗せてくれたっていいじゃん!!」

「鬼界ケ島という名の島だが鬼はいない、鬼がいるのは都だ」

「もう!頭を岩に打ち付けて死んでやる!」

と嘆き悲しみます。
妻の東屋(あずまや)が、清盛に言い寄られたけれど意に逆らい首を落とされたと聞いた俊寛は「もはや妻のいない都に戻ろうとは思わない、自分は島に残るので代わりに千鳥を船に乗せてほしい」と使者に頼みます。
しかし話のわからない瀬尾は断固否定。俊寛は刀で切りつけ瀬尾を殺し、上使を斬った罪で再度鬼界ケ島の流人となる代わりに、千鳥を都へ連れていくよう願うのです。
 

千鳥を乗せ、俊寛を一人残して船は出ていきます。

名残を惜しみながらひとり見送る俊寛。

思い切っても凡夫心(ぼんぷしん)

諦めたつもりでも、煩悩は消し難い。悟りを開いた出家でなく、ただの人の悲しい心で生い茂る蔦につかまり、松の木にすがり高台によじ登って、遠ざかる船に向かっていつまでも悲痛な声をかけるのでした。

船を追いかけて花道(浜辺)に出るとき、すっぽんが開いていて、そこに飛び込むことによっていかにも「胸まで海に浸かって」という演出があって、凄いな!と思いました。

俊寛は足腰が弱っているというか、こけつまろびつといった感じで結構転ぶシーンがありますし、岩をよじ登ったり、崖っぷちでつかんだ松の木が折れたりなど、仁左衛門様の身のこなしが若々しくてびっくりです。
船が見えているうちはまだ、手を振る表情にもほほ笑みがあって「よしよし、みんな幸せに暮らせよ」といった雰囲気なのですが、船が見えなくなるといよいよ現実に引き戻され、挫折感、孤独感がひしひしと押し寄せてきて、見る者の心も締め付けられます。
最後、船も見えなくなり、声も聴こえなくなり、ただ一人呆然と取り残されたときの表情。
怒り・哀しみ・孤独…もうなんとも言えない様々な感情が混じり合った、しかし何もない無の表情。

圧巻でした。




●魚屋宗五郎

平成24年8月、当時染五郎さんが奈落に落下し、大怪我をなさいました。
その年の12月、勘三郎さんが亡くなられました。
前々から染五郎さんのファンではあったのですが

 

「いつか」なんて思ってちゃダメなんだ。
「今でしょ?!」

 

と思いたって、初めて歌舞伎を見たのが平成25年2月の日生劇場、染五郎さん復帰の舞台でした。
まだ新歌舞伎座が開場する前。

酒屋丁稚与吉で金太郎君が出ていましたね~。
おなぎが高麗蔵さん、三吉が亀鶴さん、太兵衛が錦吾さんなのも同じ
女房おはまは福助さんだったんですね。

その後、菊五郎さんの宗五郎も何度か見て、いかにも江戸っ子な音羽屋さん独特の雰囲気、時蔵さんとの掛け合いもとても大好きなんですが、なんとなく初めて見た幸四郎さんの宗五郎はとても印象に残っていました。
今回は魁春さんのおはま、すっごく良かったです!!
魁春さんって、位の高い武家の奥方とかすっごいハマるんですけど、意外とコミカルな庶民のおかみさんも巧いんですよね~
なんか可愛いんです。ちょこまかしてて。
お酒を呑みだしてどんどん酔っぱらっていく段取りは、動きが全部こまかく決まっているそうで、出演者の息が合わないと非常に難しいらしいです。

人気の演目らしい、とても良くまとまった芝居ですよね。
昔の人は、お殿様が魚屋に手をついて謝るとことで、さぞ溜飲が下がる思いをしたことでしょう。



●春興鏡獅子

さあ最後の演目!!

最後にこれを持ってくるとは体力的にも精神的にも大変でしょうけれど、これも幸四郎さんの決意が詰まっているように思います。
高麗屋のお家芸だけではなく、自分の目指すものには果敢に挑戦し、誰に何を言われようともそれをもぎ取ってくる貪欲さ。

普段は飄々としているのにね。

気力体力ともに最も充実している40代、脂の乗り切った、という表現がピッタリくる舞踊でした。
なんかもう、パワーがみなぎってる感じ。
前回見たのは平成25年10月の国立劇場。

胡蝶を團子ちゃんと金太郎君の二人が務めたのも可愛かったな。
獅子の力強さはもちろんのこと、弥生のたおやかさがぐんと進化&深化しているように思えました。
これからも節目節目に踊ってくれることと思います。楽しみ。


さ~て、全ての観劇が終わったのでお目当てのお店へ!

その名もずばり「博多めんたい重」
http://www.mentaiju.com/
 

 

これ、食べたかったんですよー
手間暇かけてじっくり漬け込んだ昆布巻き明太子を、海苔を敷いたほかほかごはんの上に乗せ、旨味成分たっぷりの「特製かけだれ」をかけて食べる「めんたい重」。
陶器の器に、ご飯と海苔、大葉、そして明太子丸々1本!
それほど辛くもなく、もっちりとしておいしいーーーーー!

甘辛いたれ、私は「基本」を選んだのですが、明太子もじっくり味わいたいし、海苔も焼きのりではなく味付け海苔なので、たれをかけなくても十分美味しかったです。
そしてセットでついているスープがまた旨い!
普通のお吸い物ではなく、鶏ガラスープの豊潤なうまみ。
下にはお豆腐と焼き明太が入っていて、浮かんでいるあられも香ばしく歯ごたえが楽しい。
話題のプリンも食べたかったけど、さすがに断念。
人気の飯吸セットは2380円です。
めんたい重はお弁当もあるので、これ持ち込んで博多座で食べたら最高ですね!

この日は朝から食べ過ぎたので、ホテルまで20分ほど、腹ごなしに歩いて帰りました。
地方都市は夜更けると寂しくなってしまうのですが、さすが博多の街は夜もにぎわっていていいね!

ホテルは「ホテルアクティブ博多」に泊まったのですが、ここもとっても良かったです!
綺麗でスタイリッシュで、必要なものがコンパクトに揃っています。
WIFIのパスワードが部屋ごとに違うのも安心だし、枕元には携帯充電ケーブルがあるし、各階にコーヒーマシンがあって、部屋のカップを持って行けば24時間ひきたてコーヒーも飲めます。
1階のレストランもドリンクコーナーは24時間やっていて、夜中に無料でちゃんと氷入りの「アイスカフェラテ」とか飲めるの最高じゃね?

あんなに良いお天気だったのに、翌朝は雨!!
6時台でフロントはまだ閉まっているし…
どうしようか…思い切ってレストランで朝食準備をしているお姉さんに声をかけてみたら「どうぞ、傘を使ってください。持って帰ってもらって構わないですよ」とフロントから出してきてくれました。嬉しい(涙)
駅までは5分程度ですが、結構降っていたので助かりました。
博多座のスタッフも、お店の人も、皆さん明るくて親切な人ばかりで、楽しい博多遠征でした。

8時半に羽田について、職場に直行!
会社帰りにはルーティーン通りジムにも行って…元気だな、私。

(2018.6.25)