監督:クリント・イーストウッド
主演:ニコラス・ホルト、トニ・コレット、クリス・メッシーナ、キーファー・サザーランド、J・K・シモンズ
「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」のクリント・イーストウッドが、94歳を迎えた2024年に発表した監督作。ある殺人事件に関する裁判で陪審員をすることになった主人公が、思いがけないかたちで事件とのかかわりが明らかになり、煩悶する姿を描いた法廷ミステリー。
ジャスティン・ケンプは雨の夜に車を運転中、何かをひいてしまうが、車から出て確認しても周囲には何もなかった。その後、ジャスティンは、恋人を殺害した容疑で殺人罪に問われた男の裁判で陪審員を務めることになる。しかし、やがて思いがけないかたちで彼自身が事件の当事者となり、被告を有罪にするか釈放するか、深刻なジレンマに思い悩むことになる。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルトが主人公ジャスティンを演じるほか、「ヘレディタリー 継承」のトニ・コレット、「セッション」のJ・K・シモンズ、「24 TWENTY FOUR」のキーファー・サザーランドらが共演。陪審員のひとりとして、リアリティ番組「テラスハウス」などに出演した日本人俳優の福山智可子も出演している。(映画.com)
2024年製作/114分/アメリカ
原題または英題:Juror #2
まさかの俺の事件
恋人同士のケンカから発展した殺人事件の裁判の話かと思ったら、
陪審員の一人が当事者のど真ん中という話。
正義とは何なのか
真実とは何なのか
イーストウッド大先生からの問いは、
簡単には割り切れないものだった。
グッと来た点
①漂うざわざわ感
裁判が始まってからはざわざわが止まらない。
俺は本当にやっちまったのか?
ジャスティンは苦悩し続ける。
しかし、徐々に明らかになる証拠や証言は、
さらにジャスティンを追い込んでいく。
丁寧に描かれたざわざわ感は、
観ているこちらも追い込まれていく感じでグッと来た。
②シンプルなのに複雑
話はシンプル。
なのに、それぞれの思惑は複雑。
ジャスティンは、
自分がやった気がするが、
子供も生まれるから本当のことが言い出せない。
何でも言っていいって人に相談したら、
「だとしたら、お前は破滅だ」と言われ、
もっと言い出せなくなる。
ジャスティンの妻は、
出産に向けて支えてくれる夫を信じたい。
でも、ちょっと疑ってる。
検事のフェイスは、自身の昇進もかかってるから、
容疑者が真犯人ではないと半ば勘付きながらも、
裁判に勝たなきゃいけない。
陪審員の一人は、
ジャスティンの言動を怪しく思ってて、
こいつやってるな?と疑ってる
容疑者は気性は荒いが、
断固やってないと主張する。
様々な思惑が交錯するが、
それらがスッと入ってくる構成は見事だった。
③ラストの意味深
被告が有罪となり、
ジャスティンの疑惑は闇の中。
子供が生まれ、子育てに搬送する中、
検事のフェイスが突然自宅にやって来る。
明らかに何かを確信した様子でジャスティンを見つめる。
で、エンド。
えーーーー!!!
どうなっちゃうのよ!!
でも、腹八分で終わらせて、
重い余韻を残したことについては、
どちらかというとポジティブに受け止めている。
イーストウッドらしいと言えばイーストウッドらしいラストだった。
惜しい点
①浮き沈まない
ジャスティン自身はやったのか、
やらなかったのかを、
ずっと抱えながら進む。
ジャスティンの良心から、
最初は被告の有罪にとまどいを感じていた。
しかし、次第に子供の出産が重なり、
自由を奪われる怖さに縛られ始める。
どうなる?
どうなる?
の果てに、
被告を見捨てるのだが、
なんだか終始不穏な雰囲気のまま終わってしまった。
割と平坦な展開が続くので、
贅沢を言えば、
もうちょっと浮き沈みが欲しかった。
感想
現在94歳を超えるイーストウッド。
もはや引退が囁かれる中、
こうした作品を生み出し続けるパワーはただただ凄い。
本作もクリエイターとしての熱量を感じたのだが、
個人的にはイーストウッドはもっとやれるはず!
と、思ってしまった。
そんな思いが先行してしまい、
面白い作品ではあったが、
「傑作」と絶賛されているほどの作品ではなかった。
本作の劇場公開はないので、
劇場公開でのリスクは取れないけど、
なんとか配信でうまい事しのぎたいという配給会社の宣伝臭を感じてしまった。
個人的なイーストウッドの傑作の1つである「グラン・トリノ」には遠く及ばないと思った。
※グラン・トリノはブログ始めてなかったので記事はない。
94歳だと可能性はかなり薄いけど、
イーストウッドにはラストフィルムとして、
男臭ーい荒野の人情物語を作ってほしいなぁ。
マイ・イーストウッド・メモリー
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