監督:クリント・イーストウッド
主演: ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー
実話の力強さ。
イーストウッド史上最大のヒット作となった本作。
映画館での鑑賞を見逃し、自宅にて鑑賞。
丁寧に作られた映画だという印象だった。
ここで描かれているのは、英雄を称える賞賛の物語ではなく、
戦争のもたらす無残な現実だった。
ざらついた中東の地で祖国の為に戦う兵士の、
1人の人間としてのドラマだ。
しかし、映画を見ていて不思議な思いになった。
敵国とされるイラクの兵士たちもまた、
家族があり、イラク国民も多くの血が流れ、
多くの犠牲が生まれている。
そこに、思想や宗教の違いはあれど、
人間が殺しあわなければならない戦争とは、
如何に愚かなものかと改めて思う。
政治家がいかに正義を説こうとも、
戦地に向かうのは軍人なのだ。
政治家は血を流さないが、軍人は死ぬのだ。
ブラッドリー・クーパーが素晴らしかった。
クリスの写真を見ると、本人の生き写しのような役作りをしていて、
英雄を演じきっていた。とても自然に演じていた。
そして、イーストウッドの作り出す、ざらつきながらも美しい画面構成と、
戦闘シーンの容赦無い迫力によって、終始映画に釘付けになった。
きっと大画面だったら、息苦しくもなっただろう。
幸せな家族を襲う悲劇。
クリスの死で終わるこの物語は、
ラストの無音のスタッフロールによって静かに語られる。
完成度の高い映画だが、ライバルのスナイパーとの戦いが、
エンタメ色が強く、好みではなかった。
唯一その点が減点となった。