michikoのひとりごと
Amebaでブログを始めよう!
2005-05-02 08:46:19

おそるおそる

テーマ:日記
この春から職場が変わって、引っ越して、ADSLも一時使えなくなり、なんとなく、アメブロからもご無沙汰していました。やっと、この連休で一段落かな。まだまだ、お部屋が片付かない毎日です。職場は変わっても、また、1歳の担当なので、落ち着くまで時間がかかります。泣き叫ぶ子どもたちが慣れてきて、それからやっと、家の片付けも使用かという気力もわいてきます。久しぶりに覗いたアメブロも何だか模様替えで、これでよいのか、これまた恐る恐るで投稿です。皆さん、また、よろしくお願いしますね。
2005-03-26 11:14:23

たいへん

テーマ:ブログ
いま、shuilong さんのブログに行って、アメブロが30~4・1日まで、使えなくなること初めて知りました。これだからだめですね。(恥恥;;)このごろ、アクセスが減っているし、せっかく小説も更新したのに、見に来てくれないかなぁ。ちょっと心配です。おーい、みんな見に来てね。
2005-03-25 20:54:06

Chap.2 都会の孤独(2)

テーマ:創作
第一章のはじめは→(^^♪

 由貴の『アパート』は、企画で言えば、2Kに分類されるものらしい。団地サイズの4畳半と4畳、畳は敷いていない。
 もともとカーペットが敷かれていたが、今はコルク材のフローリング、昨夏のボーナスをつぎ込んで工事をした。バス、トイレはついているし、少し古めだが女一人には十分すぎる住まいだった。
 ベランダに面した4畳とキッチンの中には、歩美の思い出がいっぱいで、それでいて主がいないのが、不吉なかげりを生み出していた。

「チェック、チェック」
誰もいない玄関で、指差し信号をしながら戸締まりを確認する。何とも味気ない作業だが、これを3回ほど繰り返さないと家に落ち着けないのが、由貴の性格だった。
 10月の半ばというのに、いやに寒々としていた。実際寒いのかもしれない。由貴は、家中の電気をつけてあるいた、歩美の部屋を除いて。ほとんどが蛍光灯のその明かりは、部屋を明るくはしてくれたが、暖かくなることは少しもなかった。

「こんな時、お酒が飲めたらいいのに。」
キッチンの冷蔵庫には、歩美のためにビールもワインも冷やしてある。ドアを開けたままで、しばらく迷った後、由貴はカナダドライの缶を一つ取り出し、戸棚からワイングラスを取って自分の部屋に運んでいく。
 どうしても、目は歩美の部屋に行く。指先で、そっとドアノブに触れるが、弾かれたように手を引く。由貴の部屋のドアは、歩美の部屋の向い側、右手奥にある4畳半。ドアをピシリと閉めると、そこは、ベッドと、CDラジカセ、ライティングデスク、本棚兼衣装ケースの並ぶ小さな空間。整然としているだけに、蛍光灯の光の中で寒々としていた。

「ふー」
ベッドに腰をかけて、かたわらに置いたグラスにカナダドライを注ぎながら、由貴は肩をすくめるようなしぐさをした。寒い、寒い、さむい、サムイ……寒い。心が寒いだけなのか、本当に室温が低いのか区別がつかなかった。グラスの中の液体は、本物のワインのように見えたが、体は少しも暖まらず、もちろん酔いも襲って来なかった。

 ふと思いついて、CDをかけることにした。さっき聞いたJJの曲。と言っても、JJのアルバムは一枚しか持っていないし、そのアルバムの中に、コズミック・ブルースは入っていない。
 FAREWELL SONG/JANIS JOPLIN、「白鳥の歌」というタイトルのこのアルバムは、彼女の死後12年目に作られた記念アルバムだそうだ。
 そうだ、ジャニスは、27で死んだんだ。私より二つも若くて……。最初の曲、TELL MAMAを聴きながら、そんなことを考えていた。少し、長く生き過ぎたのかもしれない。

 RRR……。ジャニスがミズリーで、「Why am I……」と叫んでいる時、突然のように電話が鳴った。あわててCDの音量をしぼり、電話に走ったが、もう切れていた。大して広い家でもないのに。
急に寒さに我慢できなくなった。

「オフ、オフ」二度CDのスイッチを確認し、ドアノブをまたチェックしてから、由貴は家中の電気を消してまわった。自分の部屋と、バスルームを除いて。
 古いアパートでも、深夜電気温水器はつけてあるので、シャワーのお湯に不自由することはなかった。最後に部屋のチェックをし、ベッドを整え直してから、サイレースを一錠飲み、バスルームに入る。温度調節をし、蛇口をひねると、温かいお湯が勢いよく由貴の肌で弾けた。
「あったかーい」思わず口をついて出る。
シャワーを浴びた部分から、薄桃色の暖かさが広がっていく。次第に眠気も催してきた。

「いい気持ち」お湯の温かさに、シバレテいた心の寒けもぬぐい去られていくようだった。「明日は、きっと帰ってくる。明日は、ごちそうでも作って、待っててくれる。きっと、そうよ。」そう口に出して言うことで、気持ちも
少しだけ明るくなった。
 体を拭いたバスタオルをすぐに洗濯機に放り込み、シャワーの蛇口を2度ほど確認、最後にバスルームとベッドルームのドアノブをチェックしてから、やっとベッドに潜り込む。シャワーで温まった肌に、新しいシーツが心地よかった。こうして、由貴の休日が過ぎていった。歩美の思い出がいっぱい詰まった部屋で、歩美のいないままで……。
(3)につづく
2005-03-19 19:49:55

Chap.1 都会の孤独(1)

テーマ:創作
第一章のはじめは→(^^♪

「ねえマスター、ちょっと見てくれる」
「歩美の書き置き」

 ジャニスが、最後の『UU--URH……』を歌い終えるのを聞いてから、由貴がゆっくりと、ためらう様な口調で話しかけた。

「これ……。」
由貴が手渡したのは、8つに折りたたんだレポート用紙一枚。そこに、歩美の字で、ちんまりと『書き置き』が書かれていた。

「書き置きなんて、いやに大げさだな」
ちょっと眉をしかめる様にして、マスターは紙を広げ、ざっと目を通していった。

 Dear 由貴
  取りあえず、5日間、留守にします。旅行です。福岡まで足を伸ばし
  ます。その間の予定は未定。わたしは九州説だから、少なくとも奈良、
  京都に寄るつもりはありません。邪馬壹国、邪馬臺国の空気をたっぷり
  呼吸して来るつもり。本当は、思い付いたらすぐに出かけるというよう
  な旅行なんだよ。でも、由貴が心配症だから、「書き置き」をして行く。
  5日経ったら帰ります。だから、心配しないで下さい。5日後の15日、
  午後4時に新宿のカウチで待っています。15日、午後4時。忘れるなよ。
  じゃあネ、See You Then,    AYUMI

「で?」
「まだ帰って来ないっていうわけ。」
「うー、……歩美ちゃん、脳天気なところもあるけど、自分からした約束を破るような子じゃないと思うよ。」
「わたしもそう思うわ。けど……。」
「けど、心配か?ふっ、由貴ちゃんらしいけどね。やっぱりゆるくないな。」
「ゆるくない。……。」

 結局話してみても結論は同じ。歩美のすっぽかしがない以上、何か事情があって、帰って来れないのに決まっている。けど……、その「事情」というやつが、どうにも気になってたまらない由貴ではあった。

 来る時には漠然とした不安だったものが、帰りには具体的な形を備えて由貴の胸を締めつけていた。考えても、悩んでもどうなるというわけではない。今はただ、待っていることしかできない。理屈では分かるのだが、理不尽な焦りに、身も焦がれるようで、いつもよりさらに足早やになっていた。顔も少しひきつっていたのかもしれない。ただでさえ目立つ170センチの長身が、行き交わす通行人のほとんどを振り返らせていた。
  (2)につづく
2005-03-11 19:01:22

0歳児

テーマ:日記
0歳児も、今ごろになると(1歳を超えた子が多くなるので)、言葉が出始めで、いろいろ面白いことを言います。朝、K君のお父さんからきのうの夕食が『うなぎ』だったと聞きだした保育士たちは、
保育士:K君、きのう、うなぎ食べたんだって?
Kくん:はい!
保育士:あ~ぁ、子供はまだ食べちゃいけないんだよ。
Kくん:はい!
保育士:どうしよう、困ったね。食べちゃったの?
Kくん:はい!
実は、K君、『はい!』というお返事を覚えたのが嬉しくて、何でも『はい!』って返事するのです。保育士一同大笑いで、でも、こんなことをしながら、息抜きをして、その分子供は可愛がっていますからね。父兄の皆さま!
2005-03-09 17:08:25

Chap.1 夕暮れ(5)

テーマ:創作
章の始まりはこちら
 カウチは、新宿東口を出て、少し南に行った所の路地の奥にあった。ビルの地下にある小さな、しかし小奇麗なバーというか、パブというか、そういう店だった。6人がけのカウンターにボックス席が二つ、時間が早いせいか、まだ客は一人もいないようだった。

「いつもの」カウンターに座りながら、由貴は注文する。
「りょう...かいっ」
マスターは、ウーロン茶の瓶を冷蔵庫から取り出し、オンザロックにして差し出す。由貴は体質的にアルコールが飲めない。それでも、カウチに出入りするようになったのは、雰囲気が気に入ったから。それに、マスターが、同じ帯広の出身だった事もある。

 実は、帯広時代に、由貴がよく通っていた喫茶店の名前が、やはり、カウチといった。だから、初めてこの店を見つけた時、何故か懐かしい気がして、つい中に入ってしまった。丁度ホームシックにかかっていた頃だった。

「何にするかい」
いきなり入ってきて、カウンターの酒瓶を眺めまわし、またいきなり出て行きそうになる女の子に、別にとがめるとか引き止めるとかいうのでもない、単調な口調でマスターが声を掛けた。その語尾の「...かい」が由貴の耳をとらえた。
「あの....北海道出身...ですか?」
「帯広」
「私も帯広でした。」

 北海道出身者にしか判らない感覚だが、同じ北海道出というだけで、かなり気を許してしまうというか、理性を越えた所で不思議な連帯意識のようなものがあった。しかも、同じ帯広、同じカウチ。由貴の最初に感じた「懐しさ」はこの時、確信に近い物に変わっていった。
 カウチのマスターも、帯広の喫茶店カウチの常連だった事を知ったのは、もっと先の話だった。そして、その頃には、酒も飲まない癖に、由貴もこの店の常連になっていた。それから、もう10年にもなる。

「歩美ちゃんと待ち合わせ?」
「まあね」
マスターの声で、思い出したように時計を見る。
もう約束の4時を30分も過ぎていた。
「歩美来ていた?」
自分でも間の抜けた質問だと思う。本当は、ここに着いてすぐ聞くはずの質問なのだから...。でも、店にはいって、誰もいないのを確認して、マスターとのやり取りがあって、その後、その質問をするきっかけがつかめずに、だらだらと取りとめのない過去の回想にふけっていた。

「来ていないよ。何か訳ありだな」
由貴は答えようとしない。マスターの声は聞こえるのだが、何故か遠くで話しているような気がした。そして、またせかせかした様子で、腕時計を覗き込む、そんな由貴の様子を、横目で見ながら、マスターは空になったグラスを引き上げ、冷蔵庫から赤色の液体の入った瓶を取り出すと、別のグラスに氷を入れ、その液体を注いでから、由貴の前に置く。

「ノンアルコールだよ。新製品。」
えっ、と顔をあげる由貴に、マスターの声が追っかけるように加えられた。
「おごりにしとくよ。今日のところは。気に入ったら注文してくれ。いつものパート2で分かるから。」
「うん」
「いろいろと、ゆるくないよな。」

 『ゆるくない』は、北海道弁で、結構大変というような意味。特別どうということはないのだけれど、そう言ってもらえると少し気持ちが暖かくなる。それっきり、しばらく会話が途絶えた。他に客がいない事もあり、BGMのサイモンとガーファンクルがいやにはっきりとした発音で、『スカボロフェアー』を歌っていた。

「ありがとう、頂くわ」
口に含んだ、その液体は、少し薬臭かったが、甘さも程々で、懐かしい味がした。
「今、何時かしら」今度は腕時計も見ずに、マスターに聞く。
「4時42分」チラッと時計に目を移して、マスターは答える。
分かりきったことだった。何か事情があって、歩美は遅れているのだ。でも。
「わざとすっぽかすような子じゃないさ。」
由貴の気持を見透かすような言葉だった。
「うん」
BGMは、いつの間にか、JJの『コズミック・ブルース』に変わっていた。

                ー第二章「都会の孤独」につづくー
2005-03-05 00:16:33

ひとりごと繋がり

テーマ:日記
『michiko のひとりごと』で検索をかけて見つけたサイトです。
MICHIKOのひとりごと Michiko校長のひとりごとひとりごと、いろいろあるものですね。
2005-03-04 19:35:05

Chap.1 夕暮れ(4)

テーマ:創作
章の始まりはこちら
 「歩美のやつ」もう何べん目になるだろう。話し相手がいるわけでなく、リビングの椅子に座って、壁の時計とにらめっこをしているのは時間の無駄だとは良く分かっている。それでも、「15日、午後4時。忘れるなよ。」という書き置きの文字に、まるで金縛りになったように2時からこっち、時計を見るしか能がなくなっている自分に気がついて、情けなくなる。それでもこれが現実だった。

 沢山由貴、29歳。大台が目の前にぶら下がっている大人の女が、大して物の分かっていない二十才そこそこの小娘に引っ張り回されて、と考えるとばかみたいだが、歩美がそばにいる時には、年の差なんか感じたことがない。
一つには、妙に自信家で、背伸びしたがる性格の歩美が、かえって年上の由貴をリードしてしまっているせいもある。

 「歩美のやつ……」もう一度つぶやいてから、由貴は重い腰を上げた。時計の針は、午後3時ちょうどを指していた。今から新宿に出て、ぶらぶら歩いていけば、カウチには、4時少し前には着くはずだった。それにしても、気が重い。雨のせいもある。新宿に出れば、人ごみで、またもみくちゃになるのが嫌とも言える。けれど、本当のところ、何か理由のない不安でいっぱいなのだった。5日ぶりに歩美に逢える、嬉しいはずなのに、何故かすっきりと「うれしい」という気分になれない。きっと、夢見が悪かったのね、そう自分に言い聞かせて、出かける支度をする。支度といっても、ブランチを取ってからすぐ出かけようと思っていたので、準備はあらかた済んでいる。グレー系のハーフコートをはおり、エナメルの靴を履き、バッグを肩に掛ければそれで終わり。閉めたドアに鍵をかけるカチャリという音がイヤに響いて大きく聞こえた。

 「今何時だろう」一応腕時計に目をやってみるが、3時3分というところか、時間だけが勝手に進むわけがなかった。
 歩美とは、ここ半年ほどの付き合いだ。もちろん、それ以前から、見かけたことはあるし、名前も知ってはいた。半年というのは、一緒に暮らし出してからのことだ。何となく気にいって、というより、歩美の楽天的で、時には脳天気にも見える性格が気にいって、由貴の方から言い出したのだ。一人住まいのアパート暮らし、コーポラスなどという名前が似合わない、古ぼけた集合住宅の一室に住むことを、由貴はこだわってそう言っていた。その一人暮らしも、由貴のこだわりだったはずだ。

 でも、「私のアパートに来ない?」そう誘った時には、歩美が一緒に暮らすだろうと半ば期待していた。歩美というのは、カリスマがあるというのか、何とも不思議な女の子だった。特別なことを話すわけでない。翻訳の仕事で食いつないでいる29歳の女と、邪馬台国に夢中な大学生、共通の話題があるわけではない。それでも、また逢いたいと思わせる何かが、いつでも歩美にはあったし、これで終わりにしたくないと後を引くような思いがいつもあった。今まで、男と恋を語ったことがないわけではない。一緒に暮らした相手もいた。しかし、この歩美に対する感情は、どこか今までのものとは違っていた。そう、初めての恋愛感情だったといってもよいだろう。年齢とか、性別とか、そういうことを考えること自体が俗的で、侵してはならない聖なるものへの冒涜のように思えた。
「私と一緒に暮らさない」
うん、とうなずく歩美の顔には、やはり年相応の幼さがあった。しかし、その目の光りは本物だった。吸い込まれるような、と言葉にすればそうとしか言いようがないのだが、深い、人の心を引きつけて止まないような、未知の領域から洩れ出でてくるような光がそこにあった。そして、それが由貴にとっての、恋の始まりだった。

 由貴は背が高い。170センチ以上ある。足も長い。そのせいか、雑踏の中で歩くと、いつも人とペースが合わなかった。
「速く歩いてよ。おしゃべりなんて後にして。」
もちろん声に出して言うわけではない。それでも、気配を感じるのか、大抵は道をよけてくれる。だが、今日はそうではなかった。二組のアベックが、由貴の前をだらだら話ながら歩いていく。二組の間が少し開いて、追い抜けそうな時もあるが、由貴が足を速めるとまた詰まってしまう。傘もじゃまなのかもしれない。そんな調子で2、3度躓いたようになって、さすがに由貴もあきらめた。時計を見る。午後3時52分。いつもより、時間がかかっていることに気づく。4時まであと8分。やっと人ごみを抜けて、カウチのある小径に入っていった。
(5)へ続く
2005-03-02 16:36:12

シルクロードおもしろ雑学  ヒサクニヒコ  (三笠書房知的生きかた文庫)

テーマ:読書
 コンビニ本というジャンルがある。(^_^;)少なくとも、わたしはそう思っています。本を買うというような気ではなく、ちょっとコピーを、ちょっとお菓子を、というお手軽感覚で入って、自分ひとりでお買い物は別として、連れがあって時間待ちとなると、急に気になるのがこの文庫本、新書本のコーナー。普通の本屋にはあまり見かけない本たちが並んでいます。ま、本屋でも探せばあるのでしょうが、他の本が多すぎて目立たない;でも、コンビニでは精彩を放っている、そういう本の一つです。安いし、内容もそこそこあるし、ちょっと立ち読み、とかしていたら、ついつい買って帰ってしまったのです。今でもお買い得だったと思っています。一つ一つがコラム風で短い、読みやすい、それでいて手は抜いていない。この人の漫画には好き嫌いがあるだろうけれど、内容は一読の価値がありますよ。シルクロードや中国史好きならば、何だ知っていることばかり、と思うかもしれませんが、なかなか、こういうものを誰にでも興味深く表現することは難しいです。そういう意味での『参考書』としてもなかなか意味がありそうなのです。という訳で、マイブログ初のコンビニ本、お奨めの一冊、でした。
2005-02-28 10:15:54

Chap.1 夕暮れ (3)

テーマ:創作
Chap.1の始まりはこちらです
「KO”S$、$S……YEeMnida」
「あれが……い…家?」
小屋というか、わら屋根というか、……川沿いの林を抜けて、急に開けた場所にその集落は広がっていた。そう、それが「竪穴式住居」であることは、歩美もうすうす予測していた。そう思ってみれば、その集落の家々は、それなりに清潔に作られていた。
 藁があるということは、稲作がもう始まっているんだ。家々の中央には広場があり、そこにはひときわ高く、木造の高床式の建物が建てられていた。弥生時代初期……かな。妙に冷静に、歩美の中で語る声がある。一方で、どうして、いったいどうなっちゃったのよ……とうろたえている自分も感じていた。

「$S……YEeMnida」女が繰り返す。
腕を前に突き出し、大きな円を描くようにしながら……。
そう、私が気になっていたのは、そのゼスチャー。今さらのように気がついて、歩美はショックを受けていた。何と言ったらいいのか、ここが古代であることは、納得とは言えないまでも、了解していた。事実だから仕方がない。それに、言葉が通じないことも分かっていた。それでも、音韻に懐かしいサウンドがある、ということは、単語や文法に類似性があるからだと独り決めしていた。単位の関係で、専門には関係のない「音韻学」という教科を取ったのが、少しは役に立つかもしれない、などと考えて結構楽観的でもあったのだ。

 自分でも、楽観的な性格だとは考えている。ありのままを受け入れて、何とかなるさ、で片付けていく、良くも悪くもめげない性格だと思っている。でも、今ショックを受けていた。説明が難しいのだけど、歩美は、ついさっきまで、ここが日本で、古代であろうとなんであろうと、日本語である以上、必ずコミュニケートできる時が来る、それもじきにできると信じていたところがある。だから確信を持って、女と意味の分からない会話を続けてきた。音と音、声と声をぶつけ合い、なるべく、音の近い単語を探して繰り返し、ゼスチャーで意味を補足して、女とコミュニケートしてきた。それもだんだん分かるようになってきたという自信が出てきた時だった。

 歩美のショックは、自分が勝手な独り合点をしたと分かったこと、自分の『理解した』と思った単語が、実は別の意味だったらしいと分かったことから来ている。歩美は、YEeは『家』のことだと理解していた。今の女のゼスチャーで、YEeとは集落全体を指す単語だと分かった。だとすると、AgaYEeは、『わが家』じゃないのね。
 そう考えてくると、今まで分かっていたつもりでいたすべてが、何だか霧の中に空中分解していく気がする。歩美は、生まれて初めて、絶望的な孤独感を感じていた。自分が、まったく違う世界に来てしまったのだということを改めて感じた。日は既にとっぷりとくれていたが、集落の中央の広場で焚かれている、かがり火に照らされて、手前の家々が黒く闇の中に浮かんでいた。

「(KY’!」
歩美の不安を敏感に察したらしく、女はしっかりと肩を抱きかかえるようにして歩き出した。歩美もぼうとしながらではあったが、女に身を寄せ、前を見て歩き出した。

 歩く。歩く、歩く。家々のシルエットが次第に視界いっぱいに広がり、人の話し声、物を打ち鳴らす音、鳥の声、獣の雄叫び、ガサガサという生活音、火のはぜる音などが戻ってきた。食べ物の匂い、煙の匂いもする。そこには確かな現実があった。と同時に、いつ何時にでも、別の現実に戻れるという『夢』的な不安定さも確かにそこにあった。

 「決めた、私は今、ここにいる。夢なんかじゃない。」
なにかを振り払うように、歩美は自分に語りかけた。
 歩く、歩く。そう、いつも私はそうしてきた。歩いているうちに、いつでも答が見つかった。一度失いかけていた自信がよみがえってきた。

「Yume?……’zf[l#uqf……」
歩美の『夢』という言葉を今度は女が聞きかじったらしい。そして、その言葉は、この女と仲間たちにとって決定的な言葉であるらしかった。女が、歩美の目をのぞき込むようにしてうなづく。と、誘われるように、歩美は思わずうなずき返していた。

「’zf[l#、’zf[l#!Yume、Yume!」
女の叫びに応えるように、縦穴の粗末な住居から、驚くほど大勢の人々が現れてきた。男もいれば女も、若者もいれば、老人もいた。みんな同じような麻の服を着け、同じように何か憑かれるような目の輝きをしていた。ふと気がつくと、歩美は広場のかがり火の前に人々に囲まれるようにして立っていた。集落中の人が出てきたように思えるのに、奇妙な沈黙があたりを支配していた。ただ、パチパチとはぜるかがり火の音さえ、静寂を強調しているようだった。

 何か言わなければ……何か……何かを、みんなが期待しているのだから……。気が遠くなりそうな緊張の中で、音が歩美の喉の奥で弾けるように、あふれ出してきた。考える間もなく、歩美は叫んでいた。
「海よ。海へ行くのよ。海よ。」

 「UMI、AUMI、……AGAMI、<UMI!」歓声と共に、谺のように歩美の言葉を繰り返す人々のざわめきが、大きな反響となって歩美の耳を打った。
またやってしまった。何か決定的なことをいつも、考えなしにやってしまう。
でも、そんな反省をするよりも、人々の興奮と、歓声の中に溶け込み、自分も叫び続けていることの方が心地よかった。

 「そう、海よ、海……海!」歩美は叫び続け、人々は応え続けた。
いつしか、歩美の手に飲み物の器が渡され、歩美は何の疑問もなくそれをすすっていた。食べ物もあとからあとから回されてきた。決して豪華な食卓ではないものの、それは十分に豊かな『宴』だった。
 飲み、食べ、騒ぎ、そして時々思い出したように歩美は「海!」を叫んだ。そして、それが必ず人々の反応を生むことが、とてつもなく愉快で、大きなことのように思われていた。

 こうして、古代での第一夜がふけていった。
(4)へ続く

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