michikoのひとりごと -2ページ目

『世界地図から歴史を読む方法』武光誠(河出新書)

 クロアチア、ベラルーシ、エストニア、スロベニア、ウズベキスタンなど等、わたしたちはすっかり馴染みになっているのだけれど、それこそ、10年前だったら、『え、どこ?』と聞きなおされるか、あるいは、まだ国として成立していなかったかなぁ、という国々が、まだまだたくさんありますね。ウクライナ、ラトビア、カザフスタン・・・もう止めましょう。で、何が言いたいかというと、このソ連邦の解体というのは歴史ですよね、それが、地図を見ることで実に鮮やかに描き出せるということです。この本は2001年に出版されていて、その年までの地図で見る歴史です。それでも、確かにこういう歴史の見方は面白いと思いますよ。高校の歴史や、大学受験生向けの歴史参考書でも、この頃、横断的に歴史を見ていこうという傾向があるみたいです。地図から世界史を考えるというのは、イスラム史、西洋史、中国史と地域わけで、縦割りに歴史を考えていたわたしたちに、新しい発想を与えてくれる考え方だと思います。いま熱く語られる民族紛争、クルドやチェチェンの問題にしても、そういう歴史があったのかと改めて知らされます。そういう意味での民族問題入門書としても良い一冊ですよ。

『ペガサスに乗る』(To Ride Pegasus)アン・マキャフリー 早川文庫SF

 実は、わたしとアン・マキャフリー(わたしの中での略称、アンマキャ^_^;失礼!)との出会いが、この『ペガサスに乗る』だったのです。その時は、重い本ばかり読んで滅入っている所だったので、店頭で見つけて、「お、軽そう!」とポンと買ったのがこの本。シリーズものなら、最初の2冊は買うのが癖なので、『ペガサスで翔ぶ』(Pegasus in Flight, 1990)も一緒に購入。でも、この表紙はしっかり隠しながら読んだな。(おおやちきさん、ごめんなさ~い)アンマキャが、竜の戦士(程度の認識でした)シリーズなどヒロイックファンタジーの作家という知識はあったのですよ。だから、これは「ペガサスの話か??」なんてね。内容は近未来ミュータントもの、先入観とも、表紙ともまるで違うイメージの作品でした。わたしの頭には、これで、《掘り出し物》、という烙印が押されてしまいました。
 シリーズとしては、下にも書きますが、九星系連盟シリ-ズの一部になります。でも、この2巻だけ独立してミュータント・シリーズとかペガサスシリーズでも良いかな、という感じです。バクスターとか読む人には軽めのお話ですが、ここにもミュータントという言葉に対する定義が違ったりと、なかなか見るべきアイディアがあるのです。もっともこの面白さがシリーズ化されて続かないのが、アンマキャの問題点です。ミュータントシリーズでは、取り上げた最初の2冊がお奨めで、その続きのシリーズ化された九星系連盟ものでは、やはり、初巻の『銀の髪のローワン』が一番でしょう。だんだんとマンネリになります。流行作家の宿命ですわね。とは言っても、SF的に味付けされたラブロマンスというつもりで読めば、やはり標準をはるかに超えた優秀作品で、赤毛のアンシリーズの『アンの娘リラ』が面白い!というのと同様の面白さは持続していま~す。
 ついでにシリーズ紹介です。『銀の髪のローワン』(The Rowan/1990)、『青い瞳のダミア』(Damia/1992)、『ダミアの子供たち』(Damia's Children/1993)、『ライアン家の誇り』(Lyon's Pride/1994)と続きます。なぜアンシリーズなのかが少し分かるでしょう?読み出したら気になって読んでしまいますけどね(^o^)/。

『「捨てる!」技術』  辰巳 渚著(宝島社新書)

わたしは、片付けベタの散らかし人間で、ハッと気がつくと、本棚も机の上も書類の山。『超整理法』とか読めと言われて、読んですぐは、少しは片付けるということを覚えたみたいだけれど、根本は物を捨てられない、のがダメね。この本によれば「モノの呪縛から逃れられない」ことが原因みたいだわ。リサイクル法が制定されるこの時代に、逆行するような題名の本だけれど、限られた時間、空間、そして、限られた資源を大切に使うためにも、実はこの「捨てる!」技術というヤツが大切なのよね、と実感させられた一冊。とは言っても、柔らかい文章で、読みやすい本でした。わたしの場合、読むには読んでも、実践に繋がらないというのがいけないのよね。

Chap.1 夕暮れ (2)

Chap.1の始まりはこちらです
 こんなはずじゃなかった。本当だったら、今朝は博多駅前のホテルで快適に目覚めて、今ごろは、志賀島を見学していたはずなのに……。

 歩美は東京小金井にある某大学の3年で、考古学を専攻していた。昔から考古学には憧れていて、特に「邪馬臺国」には興味を持っていた。それでも、見ると聞くとは大違いで、ううん、そうではなくて、多分私が大学を間違えただけなのだろうけど……、大学の授業では、ギリシャとかエジプトとかの遺跡の写真ばかり見せられて、「これは第4.期の第8王朝、あれは第2王朝」と議論しているばかり、地層の勉強とか、年代決定のための半減期測定方だとか、講義ばかりが多く、実践的な発掘調査は少ない。
 1年の年末研修が、小金井の古墳での試掘だったのは良いとして、2年になって最初の研修旅行がギリシャっていうのは何故?それも前後にオプションツアーを組み込んだ豪華版で、参加は自由意思だと言う。せっかく日本にいるのに、この3年間一度も日本のルーツとも言える邪馬臺国の遺跡を発掘する機会がなかった。

 その意味で、今回の旅行は、歩美の思い入れたっぷりの旅行だった。この足で、邪馬臺国の土地を踏んでみたい、この手で邪馬壹国の土をすくってみたい、そんな思いでいっぱいの旅行だった。
朝10時56分東京発の「のぞみ」に乗って、午後4時に博多駅に着いた。
昨夜は博多駅前のホテルに泊まった、はずだった。それが……。

「eb4!0qdke5、Yee!」
女の声が、歩美を現実に引き戻した。その女の声の、最後の音節が歩美の耳を捕らえた。
「い……え……?」
「YEe!c49<YEe!」
それはむしろ「イェ」に近い音だった。しかし、歩美はそれを「家」という単語だと確信した。
「行こう、私行くよ、あなたの家へ!」
「AgaYEe!;Zzb@4<、AgaYEe!」
女に導かれるように、川沿いの道を歩美は歩き始めていた。丁度山の端に日が沈む時だったが、その日の入りはため息の出るほどに壮絶なものだった。
季節は夏、蝉の声がどこからか五月蠅いほどに聞こえていた。

「AgaYEefCBkHashbaqZqsb▲」
「は……し……?」
「”ni%to!Hash!Hashba!」
そして、橋があった。橋には違いがない。お粗末なものだけど。丸木を二つに裂いて、4~5本渡しただけのもの……。それでも足下を確かめて進みながら、歩美は川面を吹き抜ける風を心地よいものに感じていた。
「涼しいわ、とっても、気持ちいい」
「SUzshIE?」
「そう、涼しい」
しっかりとつながれた女の左手が少し汗ばんでいた。しかし、それは決して不快ではなかった。心と心をつなぐ温かい血の流れが感じられた。二人はそうして、しばらくの間、歩き続けた。踏み分け道の中を、もくもくと……。

 蝉の声はいつの間にか、日暮らしのものに変わっていった。歩美の生まれて初めて迎える、古代の夕暮れだった。
(3)に続く

Chap.1 夕暮れ (1)

「ー”!=+***!”$」
歩美の耳には、それは雑音としか聞こえなかった。
「なに?」
「ー”!=+***!”$,%`!」
しきりに同じ音が繰り返されるが、その音が言葉としての機能を持つほどに、つながってこないのが、いらだたしい。女は、何かを示そうと、かなりなオーバーアクションで、腕を突き出している。
その手の先の爪に土の様なものがこびりついて、妙に汚らしく見える。
女?一体誰だろう。
まったくの見知らぬ顔。それにその格好。
長い髪は一応後ろで束ねてあるものの、乱れて、塵をかぶった様に薄汚れている。
麻布で手作りしたのか、ワンピースを着ているのだが、どうひいき目に見てもボロにしか見えない。
何よりも女は裸足だった。

「”#)&***!」
一声叫ぶと、女は歩美の手をひったくる様に攫み、歩美を引きずる様に走り始めた。
女とは思えない様な力だった。
歩美は無駄な抵抗をするつもりもなかった。
引きづられて、共に走りながら、饐えた様な女の体臭を、むしろ暖かいものとして受け止めていた。
女の手に、体温に、敵意は感じられなかった。

「***!」
川のほとりの草むらに、崩れ込む様にして座り込みながら、また女は「声」を発した。その音声が、先ほどと同じものに歩美には聞き取れた。
「なに?……なにが言いたいの。もう一度言って。ゆっ…く…り。」
通じるとは思わなかったけれど、歩美は思わず口に出していた。

 なんで、何で言葉が通じないの。互いに音と音、声と声をぶつけ合う妙な時間が過ぎた。それから、首を垂れ、あきらめた様に女はつぶやいた。
「skatinum」
それが「しかたない」と歩美には聞こえた。「しかたない」歩美もつぶやいてみた。女の目に光が戻った。歩美に向き直り、その両手を攫んで振り回す様にしながら、女は叫び続けた。
「co<,skatinum,skatinum」
これが二人のコミュニケーションの始まりだった。そして、歩美の固く閉じた心の目にも、いやおうなく周囲の現実が、像を結びつつあった。

 これは何。
 ここはどこなの。
 この女は……。
 次から次へと疑問符が歩美の心に浮かんでは消えていった。何を言っても、この目の前の現実、音を立てて流れる川と、そのほとりの葦の茂み、遠く見える稜線に至るまで、人家の一つすら見えない荒涼とした風景、それらの前にはまったくの無力に思えた。……脱力感が歩美を捕らえた。
 尻餅をつく様に座り込みながら、涙が後から後から流れ出ていくのを感じていた。悲しいわけではない。寂しいわけでもない。まして、怖がっているのでもない。それでも、心に写るこの現実の光景をイヤイヤをしながら拒絶しようとしている歩美がそこにいた。

 ほっと、暖かい息吹を肩に感じた。そして、女の力強い手で抱きすくめられている自分を歩美は感じた。そこには、奇妙な安堵感と懐かしさがあった。
「q@ed@)42@<,q@ed@)42@」女のその言葉は、「大丈夫、大丈夫」と心の中に響いていった。
(2)に続く

創作の『小説』を始めます

つたないものですが、書きためたものがあるので、少しずつ、書き足して、ブログに載せていくつもりです。タイトルは、『あいより始まる』です。

『重耳』 宮城谷昌光著(講談社文庫)

 「口をあけると、その者は、晋人であることがわかる。
 歯が黄色いからである。」


 宮城谷昌光描く『重耳』という長編小説の冒頭です。冒頭の一文が考え抜かれているような小説は面白い、のか、面白い小説は読後感としてその冒頭が名文であったという印象を植え付けるのか、どっちかなぁ(笑)それはそれとして、この宮城谷作品群は面白いです。そして、各作品それぞれの冒頭の一文に心に残るものが多いのです。
 ところで、『重耳』の著者あとがきによれば、そもそも、宮城谷さんが中国の歴史に興味を持ったきっかけが、この重耳という人物だったそうです。でも、宮城谷さんの中国関連の処女長編は、『重耳』ではありません。重耳は春秋時代、晋の王、となると、晋という国の成り立ちを知らなければならない、それは、「周王朝の開基にかかわりがある。それなら周のことから調べてみよう...」こういうこだわりの積み重ねで、商(殷)、夏とさかのぼって行くことになる、というわけなの。なるほどね、その集大成を、これまたこだわりの描写力、文章力で描き出してくれるから、面白いわけなのです。わたしは、読みたい本があっても、じっと文庫の出るまで待つ、という主義(^^ゞだから、宮城谷さんの本でも、文庫しか揃えていません。それでも、この重耳以前の歴史の中で、伊尹(天空の舟)の夏王朝~商王朝の成立、箕子(王家の風日)や太公望で、その商の滅亡と、普段あまり考えることのない、中国古代にも楽しく触れました。こういう本も大好きです。

『自由軌道』 ロイス・M・ビジョルド著

 原題は "Falling Free" 創元SF文庫から出ています。この作品は、ビジョルドの中心的なシリーズ、『マイルズもの』には属していません。でも、同じ次元、同じ歴史(未来史)、そして多分同じ世界観の中で語られている作品なんですよ。細かい道具立て、例えば、ワームホールという言い方、この作品のテーマになっている人工子宮を使った遺伝子操作、ワームジャンプをする時のネクリン駆動装置に渦巻鏡などなど、『世界が同じ』を証明できる素材がかなりあるのです。
 でもでも、この作品はシリーズでもなければ、スペースオペラでもありません。まずなによりも、自由落下空間における溶接技術と人工子宮を使った遺伝子工学という現在の技術水準の延長線上にある極めて現実的なテクノロジーを巡るハードSFなのですよ。でもね、遺伝子工学の成果である、0G(無重力、自由落下)に適応した新人類クァディーたちが所属する会社の中で備品目録に載せられているだけの存在だったり、技術革新によって旧式になってしまったプラグをつけたジャンプパイロットが出てきたりと、社会問題としての視点も充分持ち合わせています。(これがないと浅い夢物語になりますよね)ハビタットと呼ばれる、衛星軌道上の大規模シャトルとそのハブやリムの宇宙空間での並べ替え作業は、いかにも「宇宙もの」という満足感ですです(^o^)/
 それに戦士マイルズシリーズで見せてくれた、軽妙なストーリーテリングだって健在!、面白くないわけがないわ。ネビュラ賞は当然かな、という気がします。とりあえずのお気に入りです。それにしても、自由落下状態では、足は不必要、手が4本あるほうが便利、という発想の、クァディーという存在には、SF心をくすぐる何かがありますね。

『蒼天航路』 王欽太 講談社漫画文庫

わたしがこの『三国志』に出会ったのは、文庫本で出始める少し前のことだと思うから、そんなに前のことではないです。でも、4年近く前になるかな。お友達の家で『これ面白いから』と薦められて読み始め、駅の売店で売り出していた文庫を買っては読み漁ったものでした。わたしはもともと、『演戯』では悪役扱いの曹操が好きだったのですが、そういう颯爽とした曹操を描いてくれる『三国志』には、この時点までお目にかかれなくて(三好徹さん、北方謙蔵さん等を読むのはもっと後の話です)、とても残念に思っていたのです。そこにこの漫画です。漫画とは言え、『正史三国志』などをきちんと参照しての堂々とした描き方で、もちろん、曹操様(笑)は、とても格好よく描かれています。またまた、惚れ直してしまいました。文庫版でそろえたので、10巻までは、次々という感じで発行されたのですが、その後しばらく出てこないし、わたしも忙しいしで、わたしの在庫も実は10巻で止まっています。その間に、三好さんや北方さんの『三国志』を読んで、結構満足だったのですが、あ、『蒼天航路』続きが出ているかな、出てたら買いたいな。』やはり、この漫画で出てくる曹操さんは最高です。

『鎖』 上下(新潮文庫) 乃南アサ

基本的には、音道貴子が主人公の警察ものミステリーです。この作品は、わたし的には、長編『凍れる牙』短編集『花散る頃の殺人』と読んできて、その締めに読むことをお勧めの一巻です。もちろん、単独でも魅力たっぷりのお話なのですが、前2作で、貴子の人となり、滝沢というベテラン刑事との浅からぬ因縁などを頭にインプットしておいてから読むと、いっそう主人公の貴子に感情移入できて良いと思うのです。メル友の一人に、この読み方で勧めたら、しっかり読んで感想まで書いてきてくれました。ちょっと引用させてもらいますね。「相変わらず全然読む時間が作れなかったんですが、先週末、貴子が監禁されたところからは、どうにもその先が気になって、結局2日間家にこもってそれまで通勤途中でちょっとずつ読み進めていたペースを大幅に上回るペースで一気に読み切っちゃいました。正直なところ序盤の星野との捜査のところはなんともイヤな感じでなかなか読み進まなかったんですが、滝沢が登場したところで、オヤ? という感じで少し気持ちがつかまれました。でも、どうして? と思いながら読み進めていたワケですがまさかこんな風に絡んでくるとは思いませんでした。刻々と流れる時間、一度はあきらめ、流される貴子の心理滝沢のいらだち、そしてラストの再会……、もう途中で読み止めることができず、久々に読書に集中した1日でした。う~ん、まさに名続編。個人的には『凍える牙』よりも引き込まれました。」わたしから付け加えることもないみたいですね。この『鎖』を読み終わったあと、熱海の町を歩いてみました。心なしか、うら寂しい、夜になったら怖いだろうな、きっと、という町でした。表通りを歩いただけなのにね。読書の与える影響は、かくも大きいものなのです。ということで、読後感ともいえない記事ですが、わたしの好きなミステリーの一冊です。