本論文は、子宮内腔を変形させない6cm以下の筋層内筋腫による妊娠成績に関するメタアナリシスです。
Fertil Steril 2023; 119: 996(トルコ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.018
要約:2022年7月までに発表された、子宮内腔を変形させない6cm以下の筋層内筋腫による妊娠成績に関する5論文のメタアナリシスを行いました(筋腫あり520名、筋腫なし1,392名)。子宮筋腫の大きさを≤6cm、≤4cm、≤2cmに分けて比較しました。筋腫なしと比較したオッズ比は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
出産率オッズ比(信頼区間) 流産率オッズ比(信頼区間) 臨床妊娠率オッズ比(信頼区間)
≤6cm 0.48(0.36〜0.65) 1.57(0.98〜2.50) 0.64(0.49〜0.84)
≤4cm 0.57(0.36〜0.90) 1.65(0.43〜6.32) 0.64(0.43〜0.94)
≤2cm 0.74(0.40〜1.36) 0.82(0.25〜2.71) 0.66(0.37〜1.19)
サブグループ解析により、子宮筋腫の大きさが2~6cmのFIGOタイプ3子宮筋腫は、出産率(オッズ比0.49、95%信頼区間0.34〜0.70)と臨床妊娠率(オッズ比0.50、95%信頼区間0.36〜0.69)が有意に低下していました。なお、流産率には有意差を認めませんでした。また、今回の検討では筋腫の数による評価はできませんでした。
解説:FIGO分類タイプ0〜2の子宮筋腫は子宮内腔を変形させることで着床障害をきたすとされています。一方、FIGO分類タイプ3の子宮筋腫は、直径2cm以上の場合に妊娠率と出産率が低下することが報告されています。これは、子宮筋腫から産生されるTGFβにより子宮内膜受容能の指標であるHOXA10が低下するためであると考えられています。子宮筋腫と子宮内膜の距離が離れるFIGO分類タイプ4以上の筋腫では、これらの物質の影響がなくなります。本論文は、子宮内腔を変形させない6cm以下の筋層内筋腫による妊娠成績に関するメタアナリシスを実施したところ、子宮筋腫の大きさが2~6cmの筋層内筋腫、特にFIGOタイプ3子宮筋腫で出産率と臨床妊娠率が有意に低下することを示しています。結論を導くためには、洗練されたランダム化試験が必要です。
下記の記事を参照してください。
2023.4.9「☆粘膜下筋腫術後に着床関連のサイトカイン濃度が改善する」
2022.10.18「Q&A3453 FIGO分類タイプ3の筋腫があります」
2021.11.13「タイプ3子宮筋腫の病態生理」
2021.11.10「☆筋層内子宮筋腫はオペすべきか否か:賛成派 vs. 反対派」
2021.7.23「Q&A2999 筋腫があります」
2021.2.21「タイプ2子宮筋腫の子宮鏡下鈍的筋腫核出術」
2019.4.13「子宮内膜受容能 その2:子宮内基質疾患」
2018.6.4「☆タイプ3筋層内筋腫の取り扱いについて」Fertil Steril 2018; 109: 817をご紹介
2017.9.17「☆無症状の子宮筋腫に関するガイドライン:ASRM」
2016.4.20「FUSによる子宮筋腫治療の効果」
2014.12.11「子宮筋腫の新たな治療戦略」
2014.4.21「子宮筋腫の影響は?」
2013.9.30「☆子宮筋腫と妊娠」