子宮内膜受容能 その2:子宮内基質疾患 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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子宮内膜受容能の第2弾は、子宮内基質疾患(子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症)についてです。

 

Fertil Steril 2019; 111: 629(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.008

要約:子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症は、不妊症の方にも出産歴のある方にも見られる良性疾患です。「罪のない傍観者」的な存在である一方で、子宮内膜受容能を損ねる可能性があります。この3者の共通点は、物理的に邪魔になるために着床障害を引き起こす可能性と子宮内膜受容能のマーカーであるHOXA10を低下させることです。また、子宮腺筋症は子宮収縮を増加させることが報告されています。子宮筋腫には位置関係から0〜8のタイプに分類され、子宮内腔に突出するタイプ0,1,2は間違いなく着床障害をきたすことが知られています。子宮内膜に接触しているタイプ3筋層内筋腫は、子宮鏡検査では子宮内腔への突出がみられない筋腫のことですが、筋腫から産生される様々な物質による化学的な要因により着床障害を引き起こす可能性が示唆されています。これらの妨害因子は筋腫からの距離が遠くなると減少しますので、子宮内膜から離れた位置にある筋腫の影響は現れず、内膜に近い筋腫の場合に影響が出現すると考えられています。

 

解説:子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症などの子宮内基質疾患があっても大丈夫な方もおられますが、少なくとも妊娠治療を行っている方で、なかなか結果が出ない方は「子宮内膜受容能」を損ねている可能性を考慮し、治療を行うのが望ましいでしょう。

 

子宮筋腫のタイプ分けについては下記の記事を参照してください。

2018.6.4「☆タイプ3筋層内筋腫の取り扱いについて