Q&A3255 癒着胎盤後の二人目の妊娠は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 胚盤胞を移植して妊娠。低置胎盤のため予定帝王切開で37週で出産しました。胎盤が一部癒着していて、大量出血。子宮動脈塞栓術を行い、輸血して事なきを得ましたが、永久塞栓物質じゃないと出血が止まらなかったそうです。癒着は、一番軽い表面のみの癒着だったそうです。大学病院での出産だったので助かったのだと思っています。


まだ胚盤胞が複数残っているので、戻したい気持ちがありますが、執刀医からは、①次回も癒着する可能性があり、子宮摘出になる可能性もあること、②加えて年齢的にもお勧めはしない、と言われました。また、もし出産するなら妊娠は1年間はあけて、次回も大学病院でと言われました。出産してみないと胎盤が癒着しているかどうかは分からないそうですが、医師の言うとおり、二人目の妊娠は諦めたほうがよいのでしょうか。癒着していた場合、子宮摘出だけではなく後遺障害や死亡のリスクも高くなりますか。

 

A 文面から判断すると、下記の(1)楔入胎盤だったと考えます。しかし、楔入胎盤だけでは永久塞栓物質による子宮動脈塞栓術でないと出血が止まらない程の大量出血にはならないと思いますので、今回の大量出血は低置胎盤によるものと推察します。低置胎盤や前置胎盤の場合には、癒着胎盤がない場合でも大量出血し、止血に苦慮します。したがって、あくまでも私の意見としてですが、次回の妊娠が低置胎盤や前置胎盤にならなければ、それほど大きな心配は不要だと思います。しかし、次回の妊娠が低置胎盤や前置胎盤の場合には、子宮摘出を覚悟しなければならないと思います。その場合に、今回出産した大学病院であれば、早め早めに対応してもらえると思いますので、他の病院で出産するよりはリスクは少なくなります。もちろん、100%ということはありませんので、子宮摘出、後遺障害、死亡のリスクも頭の片隅に置いておく必要があります。

 

癒着胎盤の定義(重症度は1<2<3)
1 楔入胎盤:胎盤が子宮筋層表面に癒着したもの
2 陥入胎盤:筋層深くに侵入したもの
3 穿通胎盤:筋層を貫通して漿膜層に到達したもの

 

下記の記事を参照してください。

2021.9.16「Q&A3054 癒着胎盤の場合の第二子は?

2021.2.6「Q&A2832 癒着胎盤後

2020.8.7「Q&A2649 胎盤用手剥離がトラウマです

2019.5.13「Q&A2196 胎盤が剥がれませんでした

2018.5.28「Q&A1842 癒着胎盤が怖くて次が踏み出せません 

2016.6.30「Q&A1137 癒着胎盤になりやすいのでしょうか?

 

なお、このQ&Aは、約2週間前の質問にお答えしております。