Q&A3054 癒着胎盤の場合の第二子は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2017.6.8「Q&A1481 41歳、採卵3回、移植2回、化学流産2回」で、大変参考になるご意見をお聞かせ下さり、本当にありがとうございました。その後、転院し、6回の採卵、5回の移植を行い、2度の流産を経て、2019年に無事、第一子男児を出産致しました。

第一子出産時に癒着胎盤でした。自然分娩にて出産後、そのまま医師の手によって剥がして(
胎盤用手剥離術)頂いたのですが、多量出血であわや輸血のできる病院に緊急搬送されるところでした(ギリギリのところで止まりました)。後になって、母体死亡もあり得る危険なケースだと知り恐ろしくなったのと、胎盤用手剥離術の激痛を経験したことで、二度とあのような思いはしたくないのですが、第一子が癒着胎盤だと第二子も可能性が高いのでしょうか。また、それを想定して大病院での出産となった場合、やはり帝王切開での出産となるのでしょうか。予定帝王切開であれば、癒着胎盤であったとしても危険なく対応して頂けるものなのでしょうか。やはり、自然分娩で出産し、癒着胎盤であった場合に緊急対応して頂くというのは危険行為となるでしょうか。病院では当たり前のように帝王切開を勧められるので、色々と可能な方法を知りたく質問させて頂きました。

 

A 癒着胎盤がトラウマになっている方は少なくありませんが、胎盤用手剥離術で胎盤が剥がれる場合は、ホンモノの癒着胎盤ではありません。胎盤の一部が剥離しない状態か、もしあったとしても下記の(1)楔入胎盤止まりですが、説明の都合上、癒着胎盤と呼ぶことが多いです。

 

癒着胎盤の定義(重症度は1<2<3)
1 楔入胎盤:胎盤が子宮筋層表面に癒着したもの
2 陥入胎盤:筋層深くに侵入したもの
3 穿通胎盤:筋層を貫通して漿膜層に到達したもの

 

また、癒着胎盤のリスク因子は下記に示す子宮内操作などです。今回胎盤用手剝離術を実施していますので、2回目妊娠以降のリスクは増加するものと思われます。帝王切開であれば、胎盤の一部が剥離しない状態にはなり得ませんし、楔入胎盤程度ならそのまま胎盤の剥離ができます。陥入胎盤と穿通胎盤の場合には、速やかに子宮摘出術に移行できます。そのため、基本的には、大きな総合病院で、帝王切開をお勧めすることになります。


癒着胎盤のリスク因子
1 経産婦
2 内膜損傷(子宮内膜掻爬術、胎盤用手剝離術の既往)
3 子宮手術(帝王切開術・子宮形成術の既往)
4 内膜の炎症(子宮内膜炎)
5 粘膜下筋腫
6 前置胎盤

 

また、なぜ癒着胎盤ができてしまうもかも明らかにされていませんので、残念ながら癒着胎盤を防ぐ方法もわかっていません。

 

下記の記事を参照してください。

2021.2.6「Q&A2832 癒着胎盤後

2020.8.7「Q&A2649 胎盤用手剥離がトラウマです

2019.5.13「Q&A2196 胎盤が剥がれませんでした

2018.5.28「Q&A1842 癒着胎盤が怖くて次が踏み出せません 

2016.6.30「Q&A1137 癒着胎盤になりやすいのでしょうか?

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。