Q&A2832 癒着胎盤後 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 31歳、ふたり出産してており、ふたりとも体外受精での妊娠です。
 

ひとりめ出産前に子宮外妊娠をしていて子宮内掻爬術後、左卵管を摘出しています。
ひとりめ出産時、胎盤がなかなか出てこず医師が少し手を入れて出したらしいのですが、ふたりめの時は癒着胎盤になっていて3.5リットル近く出血し緊急搬送後処置を受けました。
凍結胚がまだ残っており、3人目はどうするかはわからないのですが3人目も同じことが起こる可能性が高いなら子どもはもうふたりいますので諦めようと思っています。かかりつけ医からは胎盤の癒着は体質ではないから、3人目は気にしなくてもいいと言われているのですが見解を教えていただけるとありがたいです。

 

A 癒着胎盤がトラウマになっている方は少なくありませんが、初回の出産では胎盤用手剥離術で剥がれていますので、癒着胎盤ではありません。2回目はどの程度の癒着胎盤であったかがポイントだと思います(おそらく下記の1程度?)。

 

癒着胎盤の定義(重症度は1<2<3)
1 楔入胎盤:胎盤が子宮筋層表面に癒着したもの
2 陥入胎盤:筋層深くに侵入したもの
3 穿通胎盤:筋層を貫通して漿膜層に到達したもの

 

また、癒着胎盤のリスク因子は下記に示す子宮内操作などです。初回妊娠では子宮内膜掻爬術が、2回目妊娠では胎盤用手剝離術がリスク因子になります。3回目の妊娠では、2回目はどの程度の癒着胎盤で、どの程度の処置により剥離できたかがポイントですが、リスクはさらに増加するものと思われます。


癒着胎盤のリスク因子
1 経産婦
2 内膜損傷(子宮内膜掻爬術、胎盤用手剝離術の既往)
3 子宮手術(帝王切開術・子宮形成術の既往)
4 内膜の炎症(子宮内膜炎)
5 粘膜下筋腫
6 前置胎盤

 

また、なぜ癒着胎盤ができてしまうもかも明らかにされていませんので、残念ながら癒着胎盤を防ぐ方法もわかっていません。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。