Q&A1481 41歳、採卵3回、移植2回、化学流産2回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 現在41歳、結婚は40歳でしたが39歳のときから自己タイミングをとっており、1度妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、生理予定日を過ぎて1週間ほどで生理となり、化学流産に終りました。その後、6か月ほど不妊専門病院へ通い、タイミング数回と人工授精2回行い、すべて陰性です。婚姻後、体外受精ができる病院へ転院し採卵3回、移植2回行っており、現在に至ります。

検査は精液検査はいつも良好、私は最初の病院で卵管通水検査で問題なし。今の病院に転院してからの、一通りの検査は問題なしでしたが、AMHは0.85ng/mlと年齢よりも低めです。また、FSHはD3で毎回8~12くらいです。

OPU①クロミッド10日間+ゴナールエフ3回、7個卵胞が育ち6個採卵、内5個受精、1個4分割初期胚凍結(グレード1)、1個胚盤胞凍結(5AA)、2個は3日目で分割停止、1個は桑実胚まで行くもその日に分割停止です。
ET①採卵から1周期お休みした次の周期に自然周期で初期胚を移植するも陰性に終わる。
OPU②クロミッド7日間のみで誘発、卵胞3個はエコーで確認できるものの、1個のみの成長が早く予定採卵数は1個と言われる(1個が18ミリの時点で2個は8ミリ)、採卵結果2個、1個受精するも、3日目で分割停止。
OPU③クロミッド9日間+ゴナールエフ1回で誘発、卵胞5個、採卵3個、内2個受精、1個は3日目で分割停止、1個は胚盤胞まで育つもグレードが悪く破棄。
ET②初回の採卵で凍結した胚盤胞を自然周期、排卵後5日目に移植。このとき排卵に合わせ、自分達でタイミングも取る。BT3での中間判定では陰性、ホルモンも移植時と同じ数値を維持。BT7での判定日ではhCGが出るも、数値が低く、P4が7.5と下がっていたため、デュファストンを継続し、プロゲデポーを注射するも5日後の再判定で陰性です。

病院の先生からは、いい卵を移植して着床はできているし、不育症の検査もしてみましょう。次回、卵が採れたら、ホルモン周期での移植をしましょう。と言われています。しかし、私としては、今回の移植ではBT3でhCGが全く出ておらず、BT7で出ていたということは、着床時期からして、移植した胚ではなく、タイミングでの受精卵が着床したのではないか?という思いと、そもそも胚盤胞までなかなか育てなく、移植ができる状態になれないため、先生のブログでもおっしゃっているように初期胚での移植でも可能性があるのではないかと尋ねてみましたが、胚盤胞まで育たない受精卵は妊娠はできないと言われてしまいました。

また、採卵し受精した卵の内、凍結できる数が少なすぎますし、費用が重むことも踏まえ、夫も負担に感じているようで、転院を考えているところです。ただ、高齢なので転院による周期の無駄はできるだけ避けたい気持ちもあります。

質問は、先生でしたら私のような場合、どのような誘発を行い、どのように移植をしようとお考えになりますか。少しでも多くの卵を採卵したいのですが、私のAMHでは誘発を強めたところで質が落ち、採卵数も変わらないのでしょうか。

A これまで一般に正しいとされてきた事の多くが誤りであることが明らかにされています。これまでの常識は根拠がなかったわけです。

1)胚盤胞まで育たない受精卵は妊娠はできないというのは誤りです。体外培養で胚盤胞まで育たない方も、初期胚(分割胚)移植で妊娠できます。年齢とともになかなか胚盤胞まで育たなくなります。当院で45歳前後で妊娠される方の多くは初期胚の2個移植です。

2)AMHが低いと誘発を強めても意味がない、あるいは質が落ちる、というのは誤りです。その方に適切な刺激を行えば、AMH<1の方でも刺激周期が可能で、連続採卵もできます。

 

その他、気になる点は、

1)BT3での中間判定は早すぎます。

2)卵巣機能が低下している方にゴナールエフはいただけません。私なら、クロミッド+フェリング300単位連日投与で誘発します。

3)卵巣機能低下の方には、自然周期移植よりホルモン補充周期移植の方が良いことが多いですが、自然妊娠がありますので、自然周期移植を推奨します。当院では、ホルモン補充周期で自然周期的なホルモン動態にするP漸増法が可能ですので、私ならそれで移植します。

 

また、ビタミンD、DHEAS、テストステロンを採血し、不足していれば補充することで卵子の改善が期待できます。不育の検査はしっかり行なってください。