☆PGSモザイク胚について①モザイクかエラーか | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

PGS(preimplantation genetic screening)のモザイク胚について米国生殖医学会(ASRM)雑誌で特集が組まれましたので、4回にわたってご紹介いたします。なお、PGSのことを最近では、PGD-A(preimplantation genetic diagnosis-aneuploidy testing)と呼んでいます。

 

Ferti Steril 2017; 107: 1098(イタリア)

要約:モザイク胚あるいはモザイク胚の疑いとの結果が出た場合に、純粋にモザイクの場合もありますがエラーの場合もあり得ます。現在の検査法では、複数の細胞の遺伝子を全て一緒にして増幅し、バラバラに切断し並べ替えたものを検査しています。このため、技術的、生物学的なエラーが起こり得ます。前者にはDNA増幅の際のミスと他のDNAの混入があり、後者にはトリソミーとモノソミーの合体、ポリプロイド、S期細胞の混入があります。

 

解説:真のモザイク胚は5%程度とされていますが、現在の検査法ではより多くの胚がモザイクの疑いありと診断されています。そのギャップについて、本論文は現在の検査法の限界を示しています。つまり、モザイクではない胚がモザイクとされている可能性があります。さらなる改善を期待したいと思います。