キスペプチン低値が流産診断の指標になる | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、キスペプチン低値が流産診断の指標になることを示しています。

 

Fertil Steril 2021; 116: 809(ベルギー)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.04.031

Fertil Steril 2021; 116: 672(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.06.047

要約:2014〜2017年に子宮内妊娠した1242名(18〜49歳)を対象に、hCG値とキスペプチン値を2週間毎に測定し、流産群と妊娠継続群に分けて前方視的に検討しました(妊娠14週あるいは流産確定まで測定)。流産群では、hCG値とキスペプチン値共に低値でした(それぞれ、79%70%)。RCO曲線によるAUCは、hCG単独で0.874、キスペプチン単独で0.859、hCG+キスペプチンで0.916となりました。

 

解説:キスペプチンは、Kiss1遺伝子によってコードされたペプチドホルモンであり、Gpr54(Kiss1r)を受容体とします。キスペプチンには、胎盤形成調節作用着床促進作用があることが明らかにされており、キスペプチン減少が流産のマーカーになる可能性が示唆されていますが、賛否両論があります。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、キスペプチン低値が流産診断の指標になることを示しています。

 

コメントでは、対照群の選択について、統計学的手法について、キスペプチン測定までの保存法について苦言を呈しています。キスペプチンは半減期が短く、分解しやすいため、検体の採取と保存方法が重要であり、また検査費用が高額なため普及するにはハードルが高いとしています。

 

下記の記事を参照してください。

2020.10.4「キスペプチンの役割:まとめ

2020.1.28「キスペプチンでPCOSの治療が可能か

2018.3.7「キスペプチン54トリガーによる卵胞顆粒膜細胞の変化

2017.9.11「キスペプチンによるダブルトリガーの有用性は?

2015.8.10「☆キスペプチンの卵巣刺激作用
2014.12.28「顆粒膜細胞のニューロキニンとキスペプチンの役割」
2013.12.19「☆キスペブチンとは?」