本論文は、キスペプチンの役割をまとめた総説です。
Fertil Steril 2020; 114: 465(フィンランド、スペイン)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.06.038
要約:現在までに判明している、キスペプチンの役割をまとめてみました。
視床下部:GnRH神経促進作用、性ホルモンのネガティヴ・フィードバック調節作用、LHサージ誘導作用
下垂体:LH分泌作用、Ca反応誘導作用
卵巣:性ホルモン産生調節作用、思春期誘導作用(キスペプチン欠損で思春期遅延)
子宮:子宮発育促進作用(キスペプチン欠損で子宮低形成)
胎盤:胎盤形成調節作用、着床促進作用
解説:キスペプチンは、Kiss1遺伝子によってコードされたペプチドホルモンであり、Gpr54(Kiss1r)を受容体とします。キスペプチンは、視床下部からのGnRHホルモンの強力な分泌促進作用をもち思春期の開始に重要であることが明らかとなっており、男女ともに生殖機能制御の中心的な役割を担っていると考えられています。キスペプチンがないと思春期が起こらず、キスペプチン作用が強いと思春期が早く来ます(早熟)。ヒトを含む多くの動物で、キスペプチンを投与すると、下垂体からのFSHとLHの分泌を促進し、卵胞発育と排卵誘発(トリガー)が生じます。本論文は、キスペプチンの役割をまとめた総説であり、視床下部作用のみならず、その他の生殖関連細胞への直接作用が多数あることを示しています。今後の応用に期待が広がります。
下記の記事を参照してください。
2020.1.28「キスペプチンでPCOSの治療が可能か」
2018.3.7「キスペプチン54トリガーによる卵胞顆粒膜細胞の変化」
2017.9.11「キスペプチンによるダブルトリガーの有用性は?」
2015.8.10「☆キスペプチンの卵巣刺激作用」
2014.12.28「顆粒膜細胞のニューロキニンとキスペプチンの役割」
2013.12.19「☆キスペブチンとは?」