本論文は、卵管妊娠後のART治療の予後に関する最大規模の検討です。
Fertil Steril 2020; 113: 1032(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.12.036
Fertil Steril 2020; 113: 934(イタリア)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.01.019
要約:2015〜2018年に初回ART治療の新鮮胚移植を実施する2892名を対象に、既往妊娠別の出産率を後方視的に検討しました。なお、自然妊娠による卵管妊娠511名(17.7%)、子宮内妊娠1044名(36.1%)、妊娠歴なし1337名(46.2%)の3群で比較しました。結果は下記の通り、いずれも有意差を認めませんでした。
出産率 生データのオッズ比 修正オッズ比
〜29歳
卵管妊娠 1.14 1.08
子宮内妊娠 1.24 1.23
妊娠歴なし 〜 〜
30〜34歳
卵管妊娠 0.91 0.82
子宮内妊娠 0.91 0.92
妊娠歴なし 〜 〜
35歳〜
卵管妊娠 1.00 1.02
子宮内妊娠 0.83 0.88
妊娠歴なし 〜 〜
また、卵管妊娠の治療法による違いもありませんでした。早産や低体重児にも3群間で有意差を認めませんでした。
解説:子宮外妊娠(医学用語では異所性妊娠)は1〜2%に見られ、子宮外妊娠の既往や体外受精も次回子宮外妊娠のリスク因子と考えられていました。しかし、それらの報告はいずれも小規模な検討であり、大規模な検討が待たれていました。本論文は、このような背景の元に行われた最大規模の研究であり、卵管妊娠後のART治療の予後に有意なデメリットがないことを示しています。
コメントでは、これまでの研究を紹介しつつ本研究の意義を称賛するとともに、後方視的検討であること、新鮮胚移植であるマイナスポイントを指摘しています。新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植の方が子宮外妊娠率が低いことが知られており、凍結融解胚移植での検討も必要であるとしています。
子宮外妊娠については、下記の記事を参照してください。
2020.3.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子:子宮内膜厚」
2019.8.17「初回子宮外妊娠の方の次回の妊娠予後」
2019.1.7「☆子宮外妊娠のリスク因子」
2017.8.4「子宮外妊娠のリスク」
2016.7.28「子宮外妊娠のリスク因子」
2015.12.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子とは?」
2015.9.5「子宮外妊娠のリスクを低下させるには」
2015.4.17「凍結融解胚移植で子宮外妊娠率低下」
2014.12.3「凍結融解胚移植で子宮外妊娠が減少」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」