最新のデータが発表されましたので、日本と欧州の体外受精の比較をしてみました。
Hum Reprod 2018; 33: 1586(ESHRE)doi: 10.1093/humrep/dey242
日本産科婦人科学会雑誌 2018; 70: 1817(日本)
要約:2014年の欧州と2016年の日本の体外受精の統計を下記に示します。なお、体外受精・顕微授精のところの臨床妊娠率は新鮮胚移植の成績を示しています。また、臨床妊娠率とは、胎嚢確認を指します。
欧州 日本
参加国 39 1
参加施設 1279 587
総周期数 776,556 447,591
体外受精 146,148 114,611
臨床妊娠率/ET 35.8% 22.7%
顕微授精 362,285 136,508
臨床妊娠率/ET 35.0% 18.2%
凍結胚移植 192,027 191,763
臨床妊娠率/ET 27.6% 33.3%
PGT-A 15,894 〜
ドナー卵子 56,516 〜
臨床妊娠率/ET 48.7% 〜
夫人工授精 120,789 〜
出産率/IUI 8.5% 〜
ドナー人工授精 49,163 3,814
出産率/IUI 11.6% 3.7%
*「〜」は未発表あるいは該当するデータなし
解説:体外受精の実施施設数と総周期数は欧州全体で日本の約2倍あります。東洋人(日本、韓国、中国)は凍結胚移植の方が新鮮胚移植よりも成績が良い(白人では両者はほぼ同等)ことがよく知られており、本論文の結果も同様な事実を示しています。また、東洋人より白人の妊娠率が良いことがよく知られており、ドナー人工授精の妊娠率には3倍の差があります。
下記の記事を参照してください。
2017.11.29「米国での外国人のART件数から見えるもの」
2017.11.19「体外受精にステップアップする際の障壁」
2016.8.29「中東の妊娠治療の特徴」
2016.6.20「アジア人には凍結融解胚移植がお勧め!」
2015.9.19「宗教のルールによる出生数の増減」
2015.7.11「☆ICMART最新レポート」
2013.5.19「ICMART最新レポート」
2013.4.12「米国の卵子バンク事情」
2013.3.31「EU諸国の体外受精の公的補助と実施件数」
2013.2.14「イタリアの体外受精妊娠率」
2013.1.30「世界の受精卵(胚)研究事情」
2013.1.26「世界の着床前診断事情」
2013.1.22「世界のドナー卵子&代理母事情」
2013.1.13「宗教による生殖医療のルール:ユダヤ教」
2013.1.9「宗教による生殖医療のルール:仏教」
2013.1.7「宗教による生殖医療のルール:ヒンズー教」
2013.1.3「宗教による生殖医療のルール:キリスト教」
2012.12.30「宗教による生殖医療のルール:イスラム教」
2012.12.31「☆各国の体外受精費用」