ロキタンスキー症候群の頻度 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ロキタンスキー症候群の頻度を国家規模の統計調査により明らかにしたものです。

Hum Reprod 2016; 31: 2384(デンマーク)
要約:デンマークの出生統計と疾患統計をもとに、1994〜2015年にロキタンスキー症候群と診断された方314名のカルテを再度見直し、正しい診断でない方を除外し、それらの方が生まれた1974〜1996年の女児の数を分母に頻度を計算しました。その結果、ロキタンスキー症候群の頻度は1/4982となりました。なお、典型例タイプIは56.5%、非典型例タイプIIは43.5%でした。また、3件ではロキタンスキー症候群が家族性にみられました。

解説:ロキタンスキー症候群の女性は、生まれつき膣上部と子宮がありませんが、卵巣は正常に機能しています。また、外陰部と膣下部も正常にあり、染色体も正常女性(46,XX)です。ロキタンスキー症候群は、下記の二つに分類されます。
 典型例タイプI:他の臓器の異常がない
 非典型例タイプII:他の臓器の異常がある
ロキタンスキー症候群の頻度については、極めて古い論文で1917年に1/5000、1949年に1/4000と報告され、最近では2001年に1/4961との報告があります。本論文は、最も洗練された最大規模の統計を用いていますが、1/4982であり、結果的にかつての報告と変わりません。ただし、これらは全て白人での報告であり、黒人や黄色人種など他の人種でも同じであるかは定かではありません。

なぜロキタンスキー症候群に注目しているかと言うと、代理母(サロゲート)あるいは子宮移植しかご本人のお子さんを授かる道がないからです。代理母(サロゲート)には様々な問題がありますので、子宮移植が残された手段です。現在、子宮移植はかなり現実的になっていますが、欧州でのことです。日本でも、ロキタンスキー症候群の女性が諦めずに妊娠治療できるようになれば良いと切に願っています。

子宮移植については下記の記事を参照してください。
2016.8.20「子宮移植での出産報告2件」
2015.2.3「子宮移植後1年」
2014.8.19「☆子宮移植の現状」
2014.1.24「子宮移植で妊娠に成功!」
2013.4.13「ヒト子宮移植に成功した女性が妊娠」
2013.3.7「☆ヒト子宮移植の成功」