Q&A1236 どうしようか迷っています | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 今後の治療の進め方について迷っています。決定的な要因はなく、卵も採れるのですが…。なお、私(妻)側に、既往歴として、薬の副作用(との説明)による高プロラクチン血症及び多嚢胞性卵巣症候群、また、甲状腺機能低下症(現在問題なしとの説明)があります。

妻40歳、夫43歳、AMH 3.04(38歳6か月時)


①30歳頃→薬の副作用による(ドグマチール及びパキシル)高プロラクチン血症及び多嚢胞性卵巣症候群との診断あり。
*20代半ばパニック障害及びうつで精神科通院。ドグマチール服用で、生理周期に乱れあり(3~5日程度)。30歳、生理が大きく遅れた(10日遅れ)ため、近所の婦人科受診。高プロラクチン血症及び多嚢胞性卵巣症候群との診断あり。ドグマチール及びパキシルの服用を伝えたところ、薬副作用の可能性ありとの診断。プラノバール服用で生理起こす→経過観察後、数値及びエコーでの所見での問題がなくなったため、通院終了。それ以降、働き方を見直し、同時に臨床心理士によるカウンセリング治療に切替え、寛解。現在、大きな不調はないものの不妊治療によるストレスの管理のため、かかりつけの精神科医のもと漢方の四逆散を少量使用、及びかかりつけの臨床心理士による定期的なカウンセリングを受けている。
②36歳時(2012年12月)→甲状腺機能異常(いったん亢進→低下)により、チラージンを5か月間服用(その後服用なし)。その後半年ごと(6月と12月)に検査。いずれも異常なしとの診断。
※TSHの数値ですが、先生のブログを拝見し、内科医が考える正常値とは違うということを知り、再度確認したところ、以下のようでした。
2013年末には<2.5になったものの、2014年12月に3.03、
不妊治療に入ってからの数値は、
15年4月1.67
15年6月2.92(やや高い?)
15年8月2.20
15年12月1.64
16年6月1.17となっています
(15年は体調不良があったため、定期検査以外にも通院し検査しています)


①32歳時(2005年)、胃がんにより、胃全摘出。寛解。
②未破裂性脳動脈瘤(1年~2年の定期検査でフォロー中)
※精子所見問題なし

【治療までの経緯】2014年10月(妻(以下妻の年齢)38歳2か月)子供を考えるも、主人が避妊なしでの性行為ができなくなり、2015年4月(38歳7か月)に人工授精を受けるため、甲状腺治療でお世話になっていた都内大学病院(以下A病院)を受診。
→卵管造影検査を受けたところ、「右側の卵管が通っていない。左も通りが悪い可能性があるから、体外受精の方が良い」との説明を受け、5月から体外受精を実施。
・その他不妊治療の診断結果→プロラクチン(負荷前)38.0と若干高値(生理が止まる等身体的に問題はなし)のため、カバサール(5週間)の服用開始。また、ビタミンD(25ジヒドキロシビタミンD)24と若干低下のため、サプリメントの服用開始。

【A大学病院での治療成績】
①2015年5月
・D3-7 クロミッド50㎎服用。D5、7、9に、HMGフェリング75単位。
 D12スプレキュア(卵胞サイズ、ホルモン値不明)。
・D14採卵→MⅡ卵2個
・ICSI→2個受精。3日目、4細胞で分割停止(G2、G3)

※凍結精子使用のため、顕微受精。
※採卵持、D11と卵胞サイズが変わらなかったものの(後日若干小さくなった?と説明した医師も?)、「このままでは排卵してしまうので」との説明があり、採卵
※採卵時カバサール服用なし及び正常値かの確認なし

②6月
・D3-7 クロミッド50㎎服用。D5、7に、ゴナールエフ150単位。
 D9スプレキュア(卵胞サイズ1.8 他不明、E2 475)。
・D11採卵→未成熟卵(MⅠ卵)2個
・培養後、ふりかけ法にて1個受精。分割スピードが遅いため、胚盤胞移植に切り替えるも、変性で培養中止(どこまで育ったかは不明)。
※採卵時カバサール服用なし及び正常値かの確認なし。なお、採卵後の7月頭にプロラクチン及びビタミンDの再検査をお願いし確認したところ、プロラクチン36.6と若干高値(ビタミンDは問題なし)。再びカバサールの服用開始。

【B不妊専門クリニックの治療成績】
※プロラクチン→7月末にBクリニック移転後、再度数値を測ったところ、14.8と低下。生理が止まったり、乳汁が出たりと身体的な問題がなければ大丈夫とのことでで、カバサール服用中止。
※ビタミンD→A病院で7月再検査時に正常値になっていたため、このまま、続けて飲むことを指示される(Bクリニックでも説明と了承済み)。
※8月、9月は、レトロゾール(D3~D7)及びプラノバール(スプレキュア使用で排卵後2週間)を用いて調整。10月は採卵周期に入ったものの、D13でE2やや低値のままLH上昇。結果が思わしくないと予想されたため、採卵中止。
①2015年11月(採卵と移植)
・D3-7 レトロゾール2.5㎎。D10 フォリスチム150単位。
 D12スプレキュア(卵胞サイズ2.43、1.47 E2 210)
・D14採卵→MⅡ卵 3個(うち卵胞一つに2個)
・ふりかけ法により、2個受精。いずれもG1。1個新鮮胚移植、1個凍結に。
・3日目初期胚移植(新鮮胚移植)も陰性(HCG 0.0)
※12月LUFとなり、移植中止。なお、医師から、私は卵が採れるものの、E2があまり上がらない体質かもしれないとの指摘を受ける(以下、追記あり)。
②2016年1月(移植)
着床の窓ずれの可能性があるため、2日目に初期胚(凍結胚)移植。
→着床した可能性があるものの陰性(HCG 1.6)
③2月(採卵)
・D3-7 レトロゾール2.5㎎。D8、10、12HMGフェリング225単位。
 D13スプレキュア(卵胞サイズ2.63、1.42、1.00 他小さいもの5個 E2 225)
・D15採卵→MⅡ卵 3個
・ふりかけ法により、3個受精。うち2個胚盤胞に(いずれも4BC)。
 6日目朝に凍結できるレベルの大きさになったため、凍結で次周期移植に。
④3月(移植)
5日目に、凍結胚(融解及びアシステットハッチング後6BCに)移植
→着床(HCG 11.0)するも化学流産に
※凍結卵のグレードも良くないため、再度、採卵を行いたい旨を伝え、2か月調整周期(レトロゾール及びプラノバール使用)を設け、採卵より再スタート。
※いい機会なので、治療で増えた体重を減量(6キロ減量。BMI25→22へ)。
⑤7月(採卵)
・D3-7 レトロゾール2.5㎎。D8、10 HMGフェリング225単位。
 D12スプレキュア(卵胞サイズ2.37、他小さいもの6個 E2 288)
・D14採卵→MⅡ卵 1個
・ふりかけ法→受精せず
⑥8月(採卵)
・D3-7 レトロゾール2.5㎎。D8、10 HMGフェリング225単位。
 D12スプレキュア(卵胞サイズ2.49、1.12 他 小さいもの3個 E2 437)
・D14採卵→MⅡ卵 1個
・ふりかけ法→受精。分割が進んでいるものの、成長速度が2日目朝で3細胞と遅い。
3日目に8細胞になったものの、6日目にコンパクションのまま発育停止となりました。
甲状腺ですが、移植前8月に測ったところ、TSHが2.0となっており、正常範囲ですが、やはり、やや高めになっていました。以前のメールにも書きましたが、去年梅雨時期、卵の成長が止まってしまった際も、あとで見てみると2.9と高めでした。以前、ご質問された方で、数値は問題がないもののチラージンを服用したことにより、状況が改善されたというケースがあったので、私も似たような状況なのかな?と思ったりします。

9月の移植前に、レトロゾール使用し、卵胞を育てた際は、E2 231 サイズ、2.49、1.05 以下5個と、前月2回とは変わって、私らしい(?)結果となっています。残っていた胚盤胞(アシステットハッチング後6BC)を移植日.より、ホルモン補充(ジュリナ、デュファストン、ルティナス使用、移植日P4 21.2で低値のためか?)で移植しましたが、移植後1週間でHCG32.7で陽性、その後薬継続で、移植後12日目に、HCG3.7で化学流産となりました。

 

また、結果、4回の移植のうち、3回は着床があったものの、超初期で化学流産となってしまいました。不育症の検査で何とかなるものなのでしょうか。それとも、もう卵も採れなくなっているので、終わりの時期が近付いているのでしょうか。そろそろ、治療を終えようかと考えています。ですが、なんとなく、他にも手があるような気がして、あきらめきれていないところもあります。以下で悩んでおり、また今後について、3つの選択肢で悩んでいます。
※なお、AMH以外の情報としては、D3のFSH→治療開始時は11とやや高値になったことがあるものの、最近は7~9で推移。D3の卵胞数は、化学流産直後に3個と少なくなったものの、平均して5個~8個。


質問
 採卵前のE2について質問です。レトロゾールを使ってはいるものの刺激なしで150~200、刺激ありで200台前半で、医師からは、E2が出にくいが卵は採れているから大丈夫との説明を受けていました。しかし、7月、8月と育つ数、採れる数が減ってきているのに、288、437と今までの倍近く、一般的な数値が出るようになっています。排卵後のプラノバールの服用を、1年以上続けてきた等も影響あるのでしょうか。もしくは根本的に、何か卵巣の反応が変わったのでしょうか。もしくは、数値に出ていないだけで、甲状腺又はプロラクチン等、ホルモン値に何か問題が出ているのでしょうか。
 その場合、特に甲状腺については、今と同じような半年に一度の血液検査で問題ないでしょうか(ちなみに、直近は6月でTSH 1.17と問題ありませんでした)。それとも、頻度を上げて検査等した方がよいでしょうか(その場合、どれくらいの期間で検査をすればよいでしょう)

また、今後、以下の選択肢で悩んでいます。
①たまたま卵の質(←ホルモン値?妊娠率が低下?)が悪かっただけ。また、同じ方法で採卵する。→甲状腺を患って以来、数値的に問題はないものの、6月~8月の夏場に体調が悪化します。以前先生のブログで、夏場は卵の質(←ホルモン値?妊娠率が低下?)が悪化との記載がありましたが、そういったこともあるのでしょうか。
②刺激方法を変えて採卵する(高刺激?それとも自然周期?)。
③左の卵管は「通りが悪い可能性がある」との説明でしたので、人工授精を行う、または、心理的な要因を解消して、タイミングで妊娠を目指す。いずれも、一度も試していません(避妊なしでの性行為もありません)。→お互い体にトラブルが続き、子供を考えたのが約2年前でした。主人は、胃がん、脳動脈瘤等病気の心配からか将来への不安が強く、普段の生活では問題がないのですが、避妊なしで性行為をしようとすると「子供を育てられるのだろうか?」との不安が頭をよぎり、できなくなってしまうようです。なので、タイミングは彼にとって酷かなとも思います。

A 年齢とともに生理周期が短縮し、1個の卵胞あたりのE2が増加する傾向があります。したがって、上記の状況は特別変わったことではありません。また、甲状腺については、変動が激しい方は月1回程度採血し、微調整されることをお勧めいたします。なお、プラノバールの服用はできる限り控えた方が得策です。化学流産が3回ですので、不育症専門医のもとで不育症検査を行ってください。

 

①DHEAS、テストステロン、ビタミンDの採血を行い、不足していれば補充をお勧めいたします(ビタミンDサプリメント服用中のデータも必要です)。夏場は、相対的に卵子の状態がよくないように思います。おそらく気温のためと考えます。

②私なら迷わず高刺激を選択します。

③卵管鏡下卵管形成術(FT)を行い、人工授精をトライしてはどうでしょうか。