☆男性ホルモン関連のまとめ | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

これまで、下記の記事でご紹介した男性ホルモン関連の記事をまとめてみると、ひとつのストーリーができます。
2012.10.7「育毛剤の精子(精液)への影響は?」
2013.8.18「☆プロペシア以外の育毛剤やハーブの影響は?」
2013.8.24「アボルブ、知ってますか?」
2013.12.11「☆ポストフィナステリド症候群(PFS)」
2013.12.11「Q&A175 薄毛か性機能か」
2014.2.24「フィナステリドを使うのはやめましょう」
2014.3.25「☆妊娠を目指す男性に男性ホルモンはいけません!」

まず、「男性•女性ホルモンを含むステロイドホルモンの生成経路」について、一連の流れを示します。本当は、もっと多数の物質が介在していますが、ややこしくなるので、かなり簡略化してあります。


ステロイド骨格を持つものをステロイドホルモンと言います。この中には当然、「ステロイド」と巷で呼ばれる糖質コルチコイド(グルココルチコイド)がありますが、鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)男性ホルモンも含まれます。これらのホルモンの原料は一緒で、「コレステロール」から合成されます。これらのホルモンは、細胞内にある核の中の受容体に結合することでその作用を発現しますが、これ以外のホルモンは細胞膜の外側にある受容体に結合して作用を現します。このように、ステロイドホルモンはお互い親戚関係にあり、交差反応するものがあります。下記の記事も参考にしてください。
2013.10.4「☆低用量ピルの違い」
2013.9.14「☆新しいプロゲステロン受容体調節薬:ステロイドホルモンを考える」
2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2」

次に、男性の場合、男性ホルモンであるテストステロンを投与するか、テストステロンを増加させる薬剤を用いると造精機能が低下することが知られていますから、この図のようなストーリーが成り立つのではないかと考えられます。


テストステロン(T)ジヒドロテストステロン(DHT)には男性ホルモン作用がありますが、DHTの方が強力です。DHTは前立腺と毛胞に作用することから、フィナステリド(プロペシア)デュタステリド(アボルブ)が前立腺肥大症と男性型脱毛症の治療に用いられます。T→DHTに変換する5α-還元酵素には2種類あり、1型は皮膚と肝臓と精巣に、2型は外陰部の皮膚と精巣上体に存在します。プロペシアは2型5α-還元酵素を阻害することでDHTを70%減少させますが、アボルブは1型と2型の両方の5α-還元酵素を阻害しDHTを90~95%減少させます。TとDHTがどのように精子形成に関与しているか明らかではありませんし、同様に5α-還元酵素の1型と2型が造精機能にどのような役割を持つか明らかではありません。
また、フェマーラはT→E2に変換する酵素アロマターゼを阻害し、女性ではE2が1/4程度に低下します(2013.2.17「フェマーラを使用するとE2は1/4になる」)。排卵誘発にはTが少し必要ですので、E2を抑制してフィードバック機構を利用しながらTが増加する「フェマーラ」が有効です。なお、DHEAは男性ホルモンと同義のような記述がネット上では散見されますが、図に示すように男性ホルモンと女性ホルモンの前駆物質ですので、誤解されないようにしてください(その理由から図の☆マークにカッコをつけています。つまり、男性ホルモンばかりが増加するのではありません)。