これまでにも何回か育毛剤使用による精液所見低下についてご紹介いたしました。本論文は、フィナステリドの投薬中止により精子数(濃度)が改善することを、これまでで最大数の調査で明らかにしたものです。
Fertil Steril 2013; 100: 1542(カナダ)
要約:2008~2012年に男性不妊外来を訪れた4400名のうち、フィナステリドを使用している方が27名(0.6%)おられ、平均1.04mg/日を57.4ヶ月使用していました。フィナステリドの投薬を中止したところ、精子数(濃度)は平均11.6倍に改善し、精子数が改善しなかった方はいませんでした。特に、500万/mL未満の乏精子症の方の57%は、フィナステリド中止により1500万/mL以上に改善しました。ホルモン値、精子運動率、奇形率には変化はありませんでした、
解説:フィナステリド(プロペシア)もデュタステリド(アボルブ)も5α-還元酵素阻害薬(5ARI)で、テストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素をブロックします。DHTが減少すると育毛には良いのですが、精子形成や性機能に影響します。これまでのところ、男性不妊に関してFDAは何も警告文を発表していませんが、症例報告が多数存在するのは事実であり、本論文でも男性不妊外来通院中の0.6%の方が使用していました。対象患者はわずかではありますが、投薬中止により全ての方の精子数が改善しています。つまり、妊娠を目指している男性は、フィナステリドおよびデュタステリドの使用を控えるべきだと考えます。
また、フィナステリドおよびデュタステリドの服用中止後も持続する副作用、勃起障害やうつ状態があり、ポストフィナステリド症候群(PFS)と呼ばれています。
下記の記事も参考にしてください。
2012.10.7「育毛剤の精子(精液)への影響は?」
2013.8.18「☆プロペシア以外の育毛剤やハーブの影響は?」
2013.8.24「アボルブ、知ってますか?」
2013.12.11「☆ポストフィナステリド症候群(PFS)」
2013.12.11「Q&A175 薄毛か性機能か」
2013.12.31「☆脱毛のレーザー治療で毛が生える?」