【アドラー心理学からのスピリチュアルへのアプローチ】
1.アドラー心理学とスピリチュアルタスク
アドラー心理学とスピリチュアルの相性は どうなのでしょうか?
ここでは、そんなことを考えてみます。
もともとアドラーは、、、
人の悩みの種類を、
仕事
交友関係
愛
の3つに分けました。
その後、、
現代のアドラー心理学では、
セルフ (自分自身についての悩み)
スピリチュアル
の2つが加わりました。
これらを5つのライフタスク (人生の課題) と言います。
どういうことかというと、
人の悩みというのは、そのほとんどが、
仕事、交友、愛
セルフ、スピリチュアル
の5つのうち、どれかだということです。
家族の悩みは、 愛 (家族愛) または、交友のどちらかに入ります。
ただ、、、
この中でも特に、スピリチュアルはデリケートな側面があるため、
現代でも、あまり触れられていません。
死生観や宗教など、
人によって価値観が違うので、 踏み込みにくい領域であることは確かです。
2.アドラー心理学と宗教
アドラー自身、スピリチュアルなことへ関心はあったと思われますが、
かなり慎重な姿勢を見せていました。
公の書籍などでは、ほとんどスピリチュアルについて書いていません。
(論文では若干書いているようですが、ほんのわずかです)
日本と違い、海外では様々な宗教の信者の方がいます。
だからこそ、
どんな宗教の人にとっても、
アドラー心理学が相性のいいように作られているのです。
「アドラー心理学 プラス それぞれの宗教」
といように、
柔軟に組み合わせることができるのです。
とはいえ、
アドラー心理学は心理学である以上、
学ぶときは宗教と混同しないようにしなければ、
正しく学ぶことができません。
それに自分の宗教的な思想を他人に押し付けたり宣伝すると、
争いになる危険性もあります。
そのあたりの区別も必要です。
昨今、アドラー心理学が流行っているからこそ、
アドラー心理学を学ぶ人の中にも、
そのあたりの礼節をわきまえていない人が増えているように思います。
ところで、、、
日本にアドラー心理学を導入した野田俊作先生は、
英語では、「スピリチュアル」 と 「スピリチュアリティ」 を区別する人が多いが
日本では 「精神世界」 と1つの用語で表現されていると指摘しています。
スピリチュアルというのは、占いや霊的な世界を言い、
スピリチュアリティというのは宗教の抽象的な思想をいう。
そのことを踏まえ、
興味深い話を紹介していますので、
ここで引用させていただきます。
~ ~ ~ ~ ~
後に偉大なヨーギンになるスワミ・ヴィヴェーカナンダがまだ若いころ、
河原から美しい石を拾ってきて、
それを神さまだと言って拝んでいる男がいた。
ヴィヴェーカナンダは、
「それはただの石であって神さまではない。神さまは心の中にいるものだ」
と言って、男に石を捨てさせようとした。
それを聞いていた師匠のラーマクリシュナが、
ヴィヴェーカナンダを叱責して、
「あの男にとってはあの石が神なのだ。お前の神を押しつけてはいけない」
と言った。
※ 野田俊作 「補正項」 より引用
~ ~ ~ ~ ~
アドラー心理学では、
人は意味づけの世界で生きている
という言葉があります。
これは、人の感じ方や主観はさまざま。
石を見て、
冷たいと感じる人もいれば、
優しいと感じる人もいて、
どんなふうに感じたとしても、
それはその人にとって正解であって、
絶対的な尺度というのはないのです。
野田先生は同じ記事で、
次のようにも指摘しています。
~ ~ ~ ~ ~
それにしても、迷信が流行っている。
現代科学技術の行き詰まりははっきりしてきているし、
一方でスピリチュアリティは忘れられて久しいし、
そうなると人々は、
河原の石を拾ってきて神さまにするんだ。
捨ててこいとは言いませんがね。
~ ~ ~ ~ ~
AIの技術やスマホ、インターネットなど、
デジタルな科学技術が全盛の現代ですが、、
スピリチュアルやスピリチュアリティについて、
じっくり考えるべきときがきているのかもしれません。
3.お勧めの本
アドラー心理学のスピリチュアルなアプローチとして、
私がぜひ紹介したい本は、次の2冊です!
野田俊作先生の 『グループと瞑想 -アドラー心理学を語る2-』
岩井俊憲先生の 『失意のときこそ勇気を -心の雨の日の過ごし方-』
野田先生、岩井先生とも、
日本を代表するアドラー心理学の伝道師です。
誤解を恐れずに言うならば、、
「西の野田、東の岩井」
と言ってもいいほど、日本の両巨頭だと思います。
野田先生は大阪を拠点に、晩年は滋賀に移り、
岩井先生は東京の神楽坂を拠点にされています。
特徴としては、、
野田先生は理論派で知られ、
論理的なアドラー心理学を伝えておられます。
一方、
岩井先生は北米のペルグリーノ博士からの影響も受け、
柔らかで優しいアドラー心理学を伝えておられます。
ペルグリーノ博士は、アメリカに伝わるアドラー心理学の
「シカゴ学派」 「ニューヨーク学派」 「サン・フランシスコ学派」
のすべてを学んだ、世界で唯一の人です。
そのような大御所のアドレリアンである野田先生と岩井先生の書かれた本。
(アドレリアンとは、アドラー心理学を生活の中で実践している人のことを言います)
野田俊作先生の著書
『グループと瞑想 -アドラー心理学を語る2-』 では、
瞑想を用いてアドラー心理学を
理論的に説明されています。
とても味わい深い、
スピリチュアリティ―を感じる一冊です。
岩井俊憲先生の著書
『失意のときこそ勇気を -心の雨の日の過ごし方-』
こちらは人生の雨の日を過ごしておられる方への著書、
岩井先生ご本人も35歳の時、
仕事、財産、家族をすべて失い、
人生の大きな挫折を味わわれました。
そんな経験をもとに、
陰陽思想
仏教の教え
アドラー心理学
を交えながら、
その心得を書かれています。
特に、
勇気を持つことの大切さ
絆の維持・回復のためにできること
を読んで、
私は心に深く響きました。
※ 岩井先生のこちらの動画もご覧ください。
4.アドラー心理学とスピリチュアルの接点
アドラー心理学は心理学ですから学問ですが、
スピリチュアルと相性のいい心理学
だと言われています。
なぜか?
それは ズバリ、
共同体感覚
の考え方があるからです。
これは、分かりやすくいうと、
共同体に対して、
所属、信頼、共感、貢献などの感覚を持つことを言います。
共同体というのは、
家族、学校や会社、地域、日本 ・ ・ ・
と、広げて考えていきます。
一体、
どこまで広がるのでしょうか?
世界、地球、太陽系 ・ ・ ・ ・
と果てしなく広がっていき、
全宇宙にまで広がるのです!
宇宙的な愛
とでもいうのでしょうか。
しかも、
過去 ・ 現在 ・ 未来
を超越した考え方。
そんな壮大な考え方が共同体感覚なのです。
なんだかスピリチュアルですね。
あなたもぜひ、アドラー心理学とスピリチュアルの関係を
探究してはいかがでしょうか。
※アドラー心理学とスピリチュアルの境界領域の探究と実践について、
興味のある方は、次の本をご覧ください。
電子書籍とペーパーバックがあります。
数学・物理学の視点についても、少しだけ書かれています。
(ココCLAFT出版)
【執筆者】
松岡 学
高知工科大学 准教授、博士 (学術)
数学者、数学教育学者
大学で研究や教育に携わる傍ら、
一般向けの講座を行っている。
アドラー心理学の造詣も深く、
数学の教育や一般向け講座に取り入れている。
音楽 (J-POP) を聴くのが趣味。
ファッションを意識し、自然な生活を心がけている。
出版物:『数の世界』ブルーバックスシリーズ、講談社。
『5歳からはじめる いつのまにか子どもが算数を好きになる本』スタンダーズ社。
※ プロフィールや 各 SNS へのリンクは、こちらの Lit Link をご覧ください。
< お問合せ先 >
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※ ただし、出版社様からの執筆(出版)のご依頼は、
こちらから直接ご相談ください。
■ 恋愛・結婚生活の本
大切なパートナーと幸せになれるような、
アドラー心理学のエッセンスを詰め込んだ本となります。
(出版社:CLAP)
■ コラムやエッセイ
【本のレビュー】 失意のときこそ勇気を― 心の雨の日の過ごし方
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アドラー心理学のコラムやエッセイの一覧 ~ 幸せな光に包まれて ~