【レビュー】 アドラー『人間知の心理学』 | 数学を通して優しさや愛を伝える松岡学のブログ

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アドラー心理学的な世界観のコラムやエッセイを書いています

アドラーによる著書 『人間知の心理学』 のレビューをします。

 

本書は、ヨーロッパで1926年に出版されました。

 

続いて英語に翻訳され、

アメリカで1927年に出版されました。

 

アメリカでの初期の作品です。

 

 

「人間知」 とは、自分や他人のことを知ることをいいます。

 

 

ちょうどその頃のアメリカの時代背景と、

アドラーの考えが合っていたのでしょう。

 

アメリカではミリオンセラーになり、

アドラーのアメリカでの地位を確立した本となりました。

 

 

この頃、

 

アドラーは、アメリカに活動を移し始め、

 

1年の半分ずつを

ヨーロッパとアメリカで過ごすようになります。

 

 

ちょうどいいタイミングで、

この本がアメリカでブレイクしたのです。

 

 

 

当時のアメリカの出版社による広告には、

次のように書かれていました。

 

 

~ ~ ~

 

あなたは劣等コンプレックスを持っていますか?

不安ですか?

臆病ですか?

横柄ですか?

従順ですか?

運命があるのを信じていますか?

隣人を理解していますか?

自分自身を理解していますか?

 

一夜を自分自身と共に過ごしなさい。

自分自身の内側を見つめる冒険をしなさい。

 

時代の最も偉大な心理学者の1人が、

あなたが正し場所で正しいことをする手助けをしましょう。

 

※ 『パブリッシャー・ウィークリー』 (1928年1月)

 

~ ~ ~ 

 

 

とてもキャッチ―な宣伝文句ですね。

 

 

いつの時代も 「人の心」 というのは、

人々の関心のテーマなのかもしれません。

 

 

一方、

 

本書の序言には、

アドラーによる言葉

 

 

人類の道を照らすという目的に役立つことを願う

 

 

が書かれています。

 

アドラーは、とても壮大な目的や使命感をもって、

アドラー心理学を伝えていたことが分かります。

 

 

(アドラー自身は、個人心理学と呼んでいましたが、

ここでは、アドラー心理学の用語で統一させていただきます)

 

 

 

 

本書には、「第1章」 の前に、

「序論」 があります。

 

 

序論のはじめに、

 

 

かつては、人間が今日ほど孤立して生きることはなかった

 

 

と書かれています。

 

アドラーによるこの言葉を見て、

 

100年前のヨーロッパやアメリカの状況が、

今の日本にも当てはまると感じました。

 

 

しかも、

 

現在の日本では、

 

人が、ますます孤立する方向に、

社会の仕組みが変わってきています。

 

 

 

思うのですが、

 

この100~200年で、

私たちの文明は、一気に進歩しました。

 

科学技術資本主義が発達し、

便利な世の中になりましたが、

 

それとともに、

 

人は孤独になりました。

 

 

そう思うと、

 

アドラーの言葉には、考えさせられます。

 

 

 

また、

 

アドラー心理学を実践するうえでの

心がまえが書かれています。

 

 

アドラー心理学を、

 

 

軽々しく使ってはいけない

過剰に知識をひけらかすことはいけない

謙虚でなければいけない

 

 

など、

 

しっかり受け止めなければいけない言葉が続きます。

 

 

 

今の世の中、

 

 

ネットでは、

 

過剰に知識をひけらかし、

 

自分を必要以上に大きく見せている

人たちが多いように思います。

 

 

競争社会が進み、

結果がすべてのような世の中になり、

 

仕方がないのかもしれませんが、

 

そんな世の中だからこそ、

本書の序言が心に響きます。

 

 

 

アドラー心理学を実践する前に、

 

この序言をよく読んで、

肝に銘じなければと思いました。

 

 

 

さらに、

 

心がまえとして、

 

人間知は本から得られる知ではなく、

実践的に習得される

 

と書かれています。

 

 

私はこの文章を見て、

 

野田俊作先生が、

 

「アドラー心理学はお稽古ごとです」

 

と繰り返し、書かれていることを思い出しました。

 

 

アドラー心理学は、本では学べない。

 

単なる知識ではなく、

実践的に、体験的に学ばないと身に付かないのです。

 

 

 

 

本書の第1章には、

 

私たちの精神の活動は運動している

 

という運動の法則がはっきりと書かれています。

 

 

今の言葉でいうと、

 

相対的マイナスから相対的プラスへの目標追求性

 

といいます。

 

 

目的論を中心に据えた

アドラー心理学の考え方を理解することができます。

 

 

また、本書では、

 

ライフスタイル共同体感覚を軸にした

アドラー心理学の概要がはっきりと記されています。

 

本書を読むことで、

アドラーの考え方に触れることが出来ると思う。

 

 

 

私の感想ですが、

この本を読んで、

 

アドラーの 「初期衝動」 を感じました。

 

 

私は、本書の前に、 アドラーの著書

『人生の意味の心理学』 を読んでいました。

 

こちらは、『人間知の心理学』 から

5年後の1931年に出版された著書です。

 

考え方や内容が熟成されてきたのでしょう。

 

まとまりがあり、よく練られていて、

アドラーの考え方がよく理解できました。

 

 

『人生の意味の心理学』は、

 

アドラー心理学を知るうえで、

とても良い本だと思っています。

 

 

 

一方、

 

本作 『人間知の心理学』 は、

アメリカでの初期の先品。

 

理論の柱は、『人生の意味の心理学』 と共通しつつも、

よりストレートな印象を受けました。

 

 

 

誤解を恐れずに、

音楽にたとえるなら、

 

 

『人生の意味の心理学』 がベストアルバムだとすると、

本作 『人間知の心理学』 はファーストアルバムでしょうか。

 

 

そのアーティストがどんな音楽を

演奏しているのか知りたいとき、

 

最初にベストアルバムを聴くと、

そのアーティストのことが、よく分かります。

 

 

だけど、

 

そのアーティストの

初期の作品を味わいたいときは、

 

ファーストアルバムを聴くと、

初期衝動が伝わってきます。

 

 

私は、好きなアーティストの作品は、

ファーストアルバムから聴くようにしています。

 

そのアーティストの音楽性を

より深く感じることができるからです。

 

 

そのような意味で、

 

アドラーのアメリカでの出発点となった本作を、

ぜひ、ゆっくりと味わってほしいと思います。

 

 

 

 

アドラー心理学の核である共同体感覚は、

分かりにくい概念なのですが、

 

本書では、共同体感覚について、

はっきりと記述されています。

 

ここでは、

 

人としての理想像として明記され、

 

いかなる完全な人も、共同体感覚を育成し、

十分実践するのでなければ、成長することはできない

 

と書かれています。

 

 

さらに、

 

次のように書かれています。

 

 

~ ~ ~ 

 

共同体感覚は、家族だけではなく

一族、国家、全人類にまで拡大する。

 

さらには、

この限界を超え、

 

動物、植物や無生物まで、

 

ついには宇宙にまで広がる。

 

~ ~ ~ 

 

 

壮大な考え方ですね。

 

 

全宇宙にまでひろがる ・ ・ ・

 

 

宇宙意識というか、

 

スピリチュアルな気持ちにもなります。

 

 

 

以上、私の感じたことを書いてきました。

 

 

まとめると、

 

本書は、アドラー心理学のアメリカでの出発点

とでもいうべき作品になっていて、

 

この本がアメリカでブレイクした頃、

アドラーは活動の拠点をアメリカに移し始めました。

 

 

この作品を読むことで、

 

アドラー心理学の心がまえや考え方の柱に

触れることができます。

 

また、共同体感覚は理想像として明記され、

さらにスピリチュアリティを感じます。

 

 

ぜひ読んでおきたい一冊だと思います。

 

 

 

 

 

※ 岩井俊憲先生のレビューは、こちらになります。

 

アドラーを読もう(4)『人間知の心理学』

 

 

 

※ 関連記事

 

 

アドラー心理学と共同体感覚

 

ペルグリーノ博士のワークショップに初めて参加しました

 

 

 

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