〜守り抜け!!〜
久方ぶりに新ヨゴ皇国を訪れた、人呼んで“短槍使いのバルサ”は、嵐の後の荒れ狂う青弓川に落ちた第二皇子チャグムを救う。
川の中で神秘的な体験をしたのもつかの間、バルサはチャグムの母であるニノ妃に、彼女の館に密かに招かれる。
実父である帝に命を狙われているというチャグムを帝の魔の手から一生涯守り抜くようニノ妃から依頼を受けたバルサは承諾し、チャグムを連れて館を後にした。
そして、チャグムに時折表れるこの世のものとは思えぬ数々の異質な現象――その原因として、チャグムは百年に一度というサイクルで異世界である“ナユグ”の水の精霊“ニュンガ・ロ・イム”の卵をその身に宿すという、“ニュンガ・ロ・チャガ”――<精霊の守り人>であることが判明。
更には、その卵が孵化する時、新ヨゴ皇国一帯を大旱魃が襲うというのだが……。
上橋菜穂子先生による言わずと知れた児童文学の傑作「守り人シリーズ」。
日本の…いや、きっと全世界のファンタジー文学史を塗り替えたであろうその一発目「精霊の守り人」、そのアニメがかつてNHKのアニメ枠で放送されていた。
懐かしい限りである。
…が、実は放送時間が午前の早い時間だったので俺は武道があったから、リアタイはおろか殆ど観ることすら出来なかったのであった…(´・ω・`)
非常に恥ずかしい限りだが、「精霊の守り人」のアニメ版を超絶今更ながら真面目に観た。
なぜなら、アマゾンプライムビデオに思いっきり普通にあったから。
で、「守り人シリーズ」は全巻読んでないけど今でも大好きだし、アニメ放送当時はその話題性はド田舎な俺の地元でも凄まじかった記憶がある。
周りが競って『精霊の守り人』を貪るように読み進める中、俺はといえば原作は「夢の守り人」まではとっくに通過済みなのでマジに余裕のよっちゃんなのであった。
思えば、「守り人シリーズ」からは子供心にほんとに色んな衝撃を受けたもんです。
まずは、主人公が色気皆無の超逞しいオバサン(「精霊の守り人」開始時30歳)という衝撃。
次に、ストーリーがめちゃくちゃ面白くて読み手に寄り添うような凄く丁寧な文章という衝撃。
迫力満点の戦闘シーンと生き死にの生々しさという衝撃。
出てくる食いもんや飲みもんが軒並み揃ってめちゃくちゃ旨そうという衝撃。
そして、油紙の活用法という衝撃ですよ!!
そんな名著のアニメ版。では、以下感想をば。
今手元にある原作は文庫版しかないんですが、それを読んで比べてみると、根本的なものは変えてないけどあとはかなり改変していた感じですね。
また、キャラデザがリアタイ当時も想像してたのとだいぶ違うなーなんて思ってたら、やっぱり原作と結構違っていた。
特にやっぱバルサのキャラデザが未だにあんまし慣れないなぁ…。
(↑短槍使いのバルサ。カンバル王国出身、花の30歳)
バルサって、あんなにみずみずしい美人ではないよね…(笑)
リアタイ当時も思ったんだけど、スタイル抜群な巨乳の色気たっぷりのいかにもな美人っちゅーのは、悪いけど原作から俺が思い描くバルサでは全くない…。
一方のチャグムはリアタイ当時と変わらずに結構想像通り。
タンダは想像してたまんま!だと思ってたら、原作読んだら全然違ってた(笑)
大好きなキャラだけに自分の思い込みがめちゃくちゃショックでした(泣)
シュガは「THE・シュガ」って感じ。
トロガイ師はなんかジブリキャラみたいになっていてリアタイ当時も容姿は苦手だったけど、キャラはまんまトロガイ師なんだよな~(笑)
ジグロは服装はあれだと感じますが、容姿はリアタイ当時と変わらず個人的にはイメージ通りです。
やっぱジグロめっちゃかっこいー!!
もうね、守り人シリーズではタンダとジグロが大好きなんですよ〜!!
で、原作を読み返すとアニメ版で一番イメージぴったりだったのはトーヤとサヤ!!
トーヤなんかまんまトーヤじゃねーか!!(笑)
で、<狩人>(帝直属の暗殺者集団)はカッコつけすぎ!(笑)
始めの頃の山場として“扇の下”(トーヤやサヤが住む貧民街)を出たバルサとチャグムが月夜の田畑で<狩人>に襲撃されるんですが、あそこは原作でも個人的にかなり大好きなシーンなので真面目に観たら正直結構がっかりだったというか…。
アニオリ改変でのっけから槍が痛んでいるというハンディを背負うバルサが田んぼから道に敵を一人ずつ誘導して確実に倒していく、というのは良かったんですが、原作のような重量感ある熾烈さが無かった。
あと、<狩人>がめっちゃ目立ち過ぎだろ!!(笑)というね…(´・ω・`)
「その格好では目立ちすぎる!」って、そういう意味じゃねーから!!(笑)
一方で、
キャラとストーリー含めて本作最大の改変はやはりサグム(チャグムの腹違いの兄貴)。原作での彼はチャグムに対して蚊ほどにもなーんも感情を持ってないし、チャグムもサグムに対しては完全に赤の他人な感じで無味無臭だった感じなんですけど、アニメ版のサグムは次期帝たる立派な人物であり、非常にマトモで弟想いのめちゃくちゃ良い兄貴。
原作は改めて読み返したら(大人向けである文庫版だったせいもあってか)本当に救いようがない話だったんですが、アニメ版はサグム殿下の存在がめちゃくちゃデカくて、帝側ではサグム殿下パートがめっちゃ癒し。
穏やかな人柄であり、知恵があって頭が非常にキレるサグム殿下はシュガを密かにサポートしてくれる。
そんなサグム殿下の持病が悪化して回を追う毎にやつれ果てていって、周りに寂し笑いする様は見るに堪えなかった。
そして、その末に第14話で鳥(ナージ)の旅立ちと共に静かに亡くなるのでした…。
で、殿下ーーーッ!!!!!。゚(゚´Д`゚)゚。
サグム殿下の死に顔を見た俺はそんな感じ。
サグム殿下の死は原作とは当然比べようがなく遥かに悲しかったですよ…。
こういう人の上に立つ人の中でもマトモな人物ってなんか本当に幸薄げで短命だよね…(´;ω;`)
サグム殿下はきっとナージになったんじゃよ…(´;ω;`)
あとは、原作では「帝の手下に捕まったら洗いざらい全部吐け。じゃあな」的なわりとあっさり気味な別れ方をしたトーヤとサヤの物語的なアフターケアがしっかりしてた。
物語を通してトーヤとサヤの強かさがよく分かる描写でした。
で、ヒビ・トナン(聖導師(シュガ達“星読み博士”の最高位の人))が原作よりも俗物だったのが結構マイナスですかね…。
原作ではやはりそれなりの大人物なんですよ。
で、本作はキャストが揃って個人的には本っ当ーに素晴らしすぎ!!
まずは、肝心のバルサ。
洋画吹き替えとかでよく聞く印象の安藤麻吹さんはまさにバルサそのもの!
特に戦闘シーンの時の雄叫びが、昔の記憶通りで大変良かったでござんす!
幼いながらも頑張るチャグム、穏やかなタンダ、頑固で超個性的なトロガイ師、若きエリートなシュガ、西凜太朗さんのボイスが漢気を醸し出す超絶激渋なジグロ、所詮は箱入りだけどしっかりしたザ・セレブなニノ妃、原作よりもマトモっぽい帝、無骨で覚悟と気骨が滲み出るモン、義理堅さを絵に描いたような漢ジン――etc.
皆良すぎ!!
もうね、キャストは揃いも揃ってもー超サイコーなんですよ!!
すいませんね…、語彙力がないもんで…(;´∀`)
そんな本作は、全26話という結構な尺!
この尺でもって、原作にリスペクトを捧げつつ原作未読組を含めた老若男女全員に理解できるアニメ作品にするために一体どう料理をするのか…、ということへのプロの心意気を確かに見ましたよ!(偉そう)
原作では、新ヨゴ皇国の扇の下から都を脱出→バルサが<狩人>の襲撃によって負傷してタンダの家へ→秘密の<狩穴>へ→チャグムが産気づいたんで出産しがてらラルンガと対決、といった感じ。
原作は都を脱出してタンダのもとに着くまでがハイスピード感満載で、あとは結構ゆったりしていてクライマックスがまた怒涛の畳み込みがあるという素晴らしい感じなんですけど、冷静になってみると意外と展開が結構早い印象なんですよ。
で、一方のアニメ版では狩穴に至るまでがとにかく長い。
それは当然仕方のないことだと思います。それでいても原作シリーズの空気を崩さずにアニオリ改変をしていく様が原作を読んだ身としては好感でした。
とはいえ、灯台下暗し作戦というバルサの計画はいくらなんでも絶対にハイリスク極まりないと思うし(周りの農村では普通にチャグム呼ばわりしてたりされたりするから尚更)、更には本作のキーマンであるトロガイ師が偉そうなわりにはかなり無能に感じてしまったため、基本的に計画が結構行き当たりばったり感があってなんかもやっとしました…。
うん、結局は灯台もと暗し作戦は全然意味ない感じがしましたよ。
あんなにハイリスクな事すんなら、原作みたいに最初っから狩穴に潜伏して対策練ればいーじゃん!みたいな…。
それ言ったら終わりですが…。
で、アニメ版ではバルサが<狩人>を思いの外ボコボコにしなかったので、アニメ版では<狩人>のメンバーの復帰がなんか早い印象だったので、灯台もと暗し作戦は余計に無計画に思えてしまいました。
あとは、ガカイがマトモな人でなんだか笑えてしまいました。
原作での話ですが、そもそもニノ妃がチャグムの異変に際して星読博士を所望し、ヒビ・トナンが無能なガカイをチャグム診察に回さなければ事は悪い方に果てしなく大きくなることはなかったでしょう。
ガカイは新ヨゴ皇国の関係者の中ではサグム殿下と並んで指折りにマシな人であり、シュガが脇が甘すぎる若者として描かれていたのが非常に新鮮でした。
アニメ版では、ヒビ・トナンがかなりの俗物であり、原作では俗物だったガカイが有能で、原作でのシュガの活躍が殆どガカイの活躍に改変されています。
アニメ版は、登場人物達は皆自分の役目に忠実なだけであって悪人という悪人が居ない、という作風になっています。
故に、クライマックスにかけて物事が一つに集約していく中で、最終的に皆が力を合わせて<精霊の守り人>の運命に立ち向かっていく姿が非常に胸熱ですよ!!
因みに、<卵食い>ことラルンガがイメージ通りでした。
ラルンガ、やっぱし、き…、キモいッ!!
で、このアニメには、今回もやはり個人的に確かに色々と思うところはありました。
しかしながら、テレビアニメとは思えないほど綺麗な画に川井憲次BGMがパねぇ!
原作未読のお初の人なら尚更このアニメは確実に面白い筈!!
原作は、暗く、厳しく、非情で無情、悲壮感が常に漂います。
それをよくぞここまで原作愛溢れるエンタメ作品にしたなぁ!!と思いましたよ。
いつの世も、人は生きている。
笑い、喜び、悲しみ、泣き、怒り、苦しみ、憐れみ、楽しみ、夢を見る。
そして、時が来れば死んでいく。
この大宇宙における自然の摂理のもとで、人はその一度きりの人生を旅するのでしょうね――。
最後になりますが、先日亡くなられた篠原恵美さんのご冥福をお祈りします。
今回、『精霊の守り人』を観ていく最中にニュースで知りました。
『精霊の守り人』では、篠原恵美さんはニノ妃を演じています。
自分はセーラームーンの旧作のドンピシャ世代ですが、男であるし当時は幼稚園児ということもあって、少しだけしか観れなかったけれど、セーラージュピターが一番好きでした。
また、出身県が同じということもあって、御本人とは本当に全く接点が無いにもかかわらず、誠に勝手ながら親近感を抱いておりました。
そして、何より、好きな役者の一人でもあります。
繰り返しになりますが、改めて、篠原恵美さんのご冥福をお祈りします。