〜総ては愛ゆえに――!!〜
197X年、日本で一人の赤子が誕生した。
その赤子の頭に北斗七星の形のアザを見た第63代北斗神拳伝承者・霞羅門(後のリュウケン)は、常に蒼天と共にあった兄に思いを馳せる――。
時は遡り、1935年。
戦争の暗雲が訪れる直前の混沌とした魔都上海の裏社会に“閻王”として名を轟かせた第62代北斗神拳伝承者・霞拳志郎。
拳志郎は、武術家や紅華会との戦いの果てに最愛の女性・潘玉玲や彼女の兄であり青幇の親分である光琳をはじめとする数々の朋友を残して日本へと帰国。
そして、今や素性を隠してうだつの上がらない一教師として女学院の教壇に立っていた。
そんな中、愛親覚羅溥儀の訪日と共に拳志郎の朋友の一人である元青幇の李永健が遠く中国から拳志郎の元を訪ねてくる。
涙の再会もつかの間、拳志郎は李老人から衝撃の事実を知る。
拳志郎が上海を離れている間に、覇権を握ったはずの光琳たち青幇は西洋列強と手を組んだ紅華会によって壊滅し、更に玉玲も殺害されてしまったというのだ。
愕然とする拳志郎の前に彼との死合を望む拳士・金克栄が現れ、李が病の犠牲となってしまう。
李の魂を中国の地に持っていくこと、そして、全ての真実を確かめる決意をした拳志郎は再び魔都の地を踏むが、彼の行く手を紅華会と北斗の分派拳士達が拒む。
やはり、この時代の北斗神拳伝承者も北斗の宿命からは逃れられない運命にあるのであった――。
かの『北斗の拳』の前日譚的位置にある『蒼天の拳』。
暇を見つけては数年越しで完走。
これまた長いマラソンであった…(´Д`;)
で、早速感想をば。
『蒼天の拳』は、動乱の193X年代の中国を舞台にし、ケンシロウから数えて2代前の北斗神拳伝承者・霞拳志郎の宿命を描き、そして、やたら態度がデカい拳志郎が主に煽りと拳でもって北斗の関係者たちを軒並み更生させていく話です。
そんな、朋友(心の友的なやつ)を第一にして漢の仁義に厚い拳士・拳志郎は、第61代伝承者・霞鉄心の実子にて北斗神拳の始祖であるシュケンの血を引き継ぐ者。
即ち、ケンシロウと同じくバリバリに北斗宗家の本家の血が流れとるんですな。
そして、ケンシロウの養父・リュウケンはこの時はまだ生意気すぎるガキンチョ。
リュウケンの本名は霞羅門といい、拳志郎とは異母弟という関係。
で、リュウケンの母は謎なんですけど、実は拳志郎の実母の存在がすげー重要になってくるんですわ。
早速ネタバレすると、もう拳志郎はサラブレッドの中のサラブレッドというか、もう生まれるべくして生まれたという北斗というか天の申し子的な存在というかね。スター・ウォーズでいうところのアナキンみたいな。
『蒼天の拳』において判明した新設定事実で、北斗神拳は三国時代に三つに分派したんですが、拳志郎の実母の本名・月英こと美福庵主はその中の一派である“北斗劉家拳”伝承者の娘なんす。
してこの北斗劉家拳、もう明らかに北斗琉拳の前身っすよ。
つまり、『北斗の拳』において決して交わることがなかった北斗神拳と北斗琉拳という二つの流派の血が交わってるのが拳志郎なんですよ!
はえ〜、凄くね?
シュケンとリュウオウからはじまる1800年もの間相容れなかった北斗の二つの宿命が、なんと男女の愛という形で拳志郎にて実は既に帰結していた、と…。
す、凄え…。
そして、ケンシロウが垣間見たであろう北斗神拳の誕生譚がこの作品にて判明。
ケンシロウとヒョウまで続く北斗宗家の血筋、そして、北斗神拳とはシュケンによる血みどろの記憶を内包しながらも、同時に、シュケンと恋に落ちた女性・ヤーマとの愛の結晶であったことが最終局面にて判明!
“北斗宗家の拳”拳士であるシュケンは北斗宗家の高僧たちの命により、戦乱の世にて行き詰まっていた北斗宗家の拳を新たな次元へ押し上げるべく西方の秘拳・“西斗月拳”を採り入れることを目指した。
西斗月拳とは、人体各所に存在する秘孔を突いて相手を倒す戦うための戦場の拳法。
そして、西斗の民にうまく取り入ったと仲良くなったシュケンはヤーマと電撃的な恋に落ち、シュケンを心から愛したヤーマはシュケンにヘアヌードその身を以て秘孔の知識を授けたのでした。
こうして、シュケンとヤーマのセッk愛の営みによって北斗神拳が誕生!
そう、北斗神拳は死神の拳法なんかじゃなかったんですよ。
だから、『北斗の拳』にて女人像が示した北斗神拳の真髄「愛に彷徨する者の救済こそが北斗神拳伝承者の使命」というのは、まさに北斗神拳が男女の尊き愛によって誕生した愛の拳法だからだったんですよ!!
す、すっげえ…!!!!!
そして、『北斗の拳』が漢たちの物語だったことに対して、『蒼天の拳』は女たちの物語。
玉玲、美玉、エリカ、庵主様、文麗、ヤーマ、女人像etc.…、『蒼天の拳』に出てくる女性は皆揃いも揃って強い。強すぎ!!
慈愛という、ただその一点のみにおいて唯一絶対無二の揺るぎなき神々しさ。
そして、『北斗の拳』同様に愛がテーマですが、『北斗の拳』と同じく様々な愛が描かれるのも時代は違えどやはり北斗ワールド。
実に様々な愛。
けれど、やはり帰結するのは慈愛なんですなぁ。
尊い…(´ω`*)
そんな本作のキャラの中では、ぶっちぎりで玉玲が大好き!!
てか、北斗シリーズの女性キャラで一番好き!!
「男たちはみんな勝手な理由で死んでいく。でも…、女は違うわ…。女は生き延びるのよ、愛した男たちの思いを抱いて…。それが女の役目…」
玉玲は、まずは、清らかで慈悲深い心を体現したその美しさ!
そして、馬賊でかなり鍛え上げられたのか記憶を取り戻して以降の肝っ玉の凄さよ!
更に、光琳のアニキの跡目を継いで青幇のボスとなって以降は特に女傑としての貫禄がヤバすぎ!!
完璧超人な拳志郎とはお似合いの夫婦なんですが、それにしたって玉玲、かっこよすぎ!!
レジェンズリバイブでは、一番最初期に光琳のアニキと連続で当たって本当に咽び泣くほど嬉しかった。
そして、次に好きなのが流飛燕!!
本当に好きだわ…。
子安武人さんで脳内再生して読んでたら(漫画や本を読む際には、俺は登場人物は声優さんで脳内再生する癖があります)、アニメ版でやっぱ子安さんだったという!!(笑)
北斗劉家拳の流れをくむ極十字聖拳の使い手である素朴な飛燕。
ギーズ大佐殺ったことにはじまり色々と無駄な殺戮は全然擁護できねーんだけども、飛燕はエリカに命を救われて無事に改心して更生!
一度失った命を以降はまっさらな心になって義と愛に生きる漢になった飛燕は、なによりも子供たちの味方!
ヤサカのクソ野郎が子供を出汁に飛燕を襲った際に、飛燕は子供を危険な目に遭わせたことの方に激怒してましたからね。
その独特の口調等、最初から非常に存在感がある魅力的なキャラでした。
故に、ヤサカは絶対に許せん。
そして、次いで好きなのが「男の顔は生き方で決まる」でもお馴染みの光琳のアニキ!
光琳のアニキ、本当に良い漢っす…。
この兄貴の啖呵は序盤で一番、通しでも指折りに好きなところです。
いや〜本当に良い男。
皆ついてくわけだわ。
更に、光琳のアニキと同率で大好きなのがギーズ大佐。
ニヒルで食えない軍人キャラ(主に見た目)かと思ってみれば、作中屈指の普通の人だった(笑)
そして、良き兄であり、また良き人でもあった…。
北斗孫家拳は護身術と言いながら、劇中の節々の様子から彼もまた一人の拳法家であったという気がしてなりませんよ。
軍人と拳法家としてのその塩梅が凄く良かった。
でもさ、殺される意味はあったの…?(´;ω;`)
飛燕とギーズ大佐は、レジェンズリバイブで当たらなかったのが唯一未だに悔やまれる!
また、北斗孫家拳の師父も好きです。
北斗シリーズの師匠キャラではオウガイと並んでまともっぽい師父ですね。
人は神には勝てないと弟子の狂雲に諭した師父。
惜しかったですね。
で、どう転んでも一番嫌いなのがヤサカ。
いや、流石に最初から最後まで擁護できんわ…。
まさか、リュウガやジュウケイを超える屑キャラだとは思わんかったし、加えて全く反省すらしねーで自分の罪からトンズラここうとしてましたからね。
いえね、キャラデザは結構好みだったんですよ。
何故にあんな全く意味のないことを…。
ふざけんなよガチで。
てか、エリカや拳志郎とか人間デカすぎだろ…。
ムリムリ。
また、本作はこれた「聴いてねぇよ!(´Д`;)」ってことで、上の通りで北斗神拳はとっくの昔に三つに分派していました。
それが、“北斗三家拳”。
時の支配者を守護し導くのが北斗神拳の役目。
ということで、中国の三国時代に魏・呉・蜀の三皇帝を守るために三つの分派したと。
魏の国は“北斗曹家拳”。剛の流れを汲む連続攻撃が特徴的な流派です。そして、秘孔は相手を操ることに特化しています。
呉の国は“北斗孫家拳”。“操気術”という、闘気を自由自在に操ることに特化した流派です。
蜀の国は“北斗劉家拳”。闘気によって周囲に結界を形成して空間を歪ませる等、明らかに北斗琉拳の前進であることを伺わせる流派です。
このような三派のそれぞれの使い手と戦ったり和解したりして拳志郎は終始無双していきます。
だが、そんな拳志郎も所詮人間だった。
一人の孤児と拳志郎は出会う。
その少年こそ、後の北斗琉拳拳士・ジュウケイであった。
それは結果論でしかないし、第一、天が定めた宿命だったのだとも思う。
多分、てか明らかにジュウケイは成長した後、北斗劉家拳伝承者の劉宗武の門下に入るのだろう。
そうじゃないと理屈が合わない。
で、多分なんですが、宗武の後を継いで北斗劉家拳拳士となったジュウケイは結局自らの闘気を憎しみにして耐えられなくなってしまったわけですが、ジュウケイの代をもって北斗琉拳と改めたか、或いは北斗劉家拳と改められたリュウオウの拳を回帰させたのだと思います。
正直な話、多分俺は後者なのではないかと思います。
リュウオウの拳は北斗宗家から溢れた者たちによって継承されてきた憎しみの拳。
しかしながら、劉玄信も魏瑞鷹も宗武も憎しみに支配されて自我を失った描写は全く無い(但し、宗武は慢心に支配された模様)。
つまり、三国時代の折に北斗琉拳は闘気を憎しみで満たさぬ北斗劉家拳として改められたのではないか。
即ち、北斗琉拳→北斗劉家拳→北斗琉拳という変移だったのではないかと。
それなら一応合点がいくのです。
そして、北斗神拳伝承者として真に認められるには、天に認められねばならない。
北斗神拳伝承者は、寧波にある北斗劉家拳の菩提寺である泰聖院にて、天が見守る中で北斗劉家拳の者と死合わなければならないのである。
この“天授の儀”が本作のクライマックス。
拳志郎が寧波に赴く18巻から、ほんとにガチでマジに最高で神でしたよ!!
天命に挑む拳志郎の本気と、荒波のような気性を頭を丸めると共に聖なる炎の中へと捨て去った宗武の本気、まさに武の境地である死括(死中において括を見出すこと)に至った拳志郎と宗武の魂のぶつかり合いと魂の輝きは本当に神々しくて美しかった!!
まず、生まれずに死んだ我が子に父としての役目を果たすことを決意した宗武がたどり着いた悟り、「己にも誰にも恥じず、そしてなんとも快い負け」は本当に感動した!
いつもの北斗ワールドのように、いつの間にやら宗武の方に感情移入してたよ!
人間を超えようとしていた…というか軽く超えた拳志郎。
人間の域を出ず(出られず)、最後には一人の人間の父となった劉宗武。
俺は、宗武の方を応援してたかな…。
そして、天は…いや女人像は、一端人間を離れたような拳志郎を、母を求める一人の子として人間に引き戻してくれた。
拳志郎の天授の儀の意味。
その締めが本当に良かった。
『北斗の拳』と同じで泣いたよ、ガチで。
天も本当に粋なことをするよね!!(*´ω`*)
拳志郎だけじゃない。
天は、天授の儀を通して拳志郎に関わる者を皆救ってくれたんだよ。
本当に素晴らしいじゃないか!!
その他に一体どう表現すればいいのか全く分からん!!
そして“天帰掌(てんきしょう)”。
そう、『北斗の拳』にてケンシロウとトキが交わしたあの構え北斗天帰掌が本作では非常に重要な意味を持つ!
その意味とは、「拳士ならば、死合う時はたとえ死しても相手を恨まず、ただ強敵とめぐり合えたことを天に感謝する」、そして、「たとえ死すとも一片の後悔をせず、ただ天に帰るのみ」!!
更に、北斗神拳の真の究極奥義・“蒼龍天羅(そうりゅうてんら)”が登場!!
もうね、拳志郎は息をするように人間を更に辞めていきますな…(´Д`;)
てか、煩悩を捨て去って自然体であるらしい拳志郎はやっぱケンシロウの域を余裕で凌駕しているのか…。
つーか、ケンシロウは最終話の時点でもまだまだ発展途上だった感じなんで、やがてこの蒼龍天羅の域に至って欲しいですね。
そして、伝授の儀編が終わって、また最初期の空気で〆!
「これが、魔都上海!!ドオォォォン」って(笑)
ん〜、この後先考えてない投げやり感が実に蒼天の拳らしくて良い流れだったかと(爆)
そんな『蒼天の拳』は、作風が『北斗の拳』よりも更にぶっ飛びまくりな感がしましたけど、最後まで至るとやっぱ『北斗の拳』シリーズの一作だと思いました。
俺は寧波編からが特に大好きです。
要は、そう…、これは大変良い漫画です!!(*´ω`*)































