イギリスのインド料理店の多くはバングラデシュ人のお店 | スパイシー丸山「カレーなる365日」Powered by Ameba

イギリスのインド料理店の多くはバングラデシュ人のお店

日本のインド料理店の多くは

 

インド人ではなくネパール人が働いてますが

 

カレー大国イギリスのインド料理店の多くは

 

インド人ではなくバングラデシュ人が働いているのですよーー!!

 

 

しかも、そのバングラデシュ人のほとんどが

 

シレット(Sylhet)という地域出身だというから興味深いのです!!

 

英語版wikiによると、

 

そもそもイギリス在住バングラデシュ人の約85%は

 

シレットからやって来た人なんだとか!!

 

一体、どうしてバングラデシュのシレットなのか??

 

このブログでは何度も登場している

 

リジーコリンガム著「インドカレー伝」の情報をメインに

 

詳しく紹介していきたいと思います。

 

※他の情報も参考にしています。最後にリンク先を載せているので興味のある方はチェックしてみてください。

※インドカレー伝ではSylhetはシルヘットと書かれていましたが、WikiやGoogleマップや他の色々なサイトでシレットになっていたのでシレットにしています。

 
 

まずおさらいですが、

 

インドは1947年までイギリスの植民地でした。

 

そのイギリスによるインド支配の

 

足がかりとなった場所が東インドのベンガル地方。

カルカッタ(現コルカタ)が1772年から1911年まで

 

イギリス領インドの首都であったことからわかるように

 

ベンガル地方はイギリスにとって重要な場所だったのです。

 

 

今でこそバングラデシュとインドは違う国ですが

 

かつてはインドの一部であり同じベンガル地方の仲間。

 

※イギリス領インド時代は現在のバングラデシュ、西ベンガル州、ビハール州、ジャールカンド州、オリッサ州が1つの「ベンガル州」でした。

 

 

またシレットはインドのアッサム地方のすぐ隣りで、

 

この地域を流れる運河や河川が

 

アッサムの茶の農園とカルカッタの港を結ぶ近道だったため

 

戦略的な要衝となっていたのでした。

 

 

船頭をしていた人が多かったシレットの人たち。

 

もともとは穏やかな水路でゆっくり船をこいで暮らしていましたが

 

イギリス人が運河や河川に蒸気船を導入したため

 

蒸気船の機関室で火を焚くハードな仕事をするように。

 

1849年に海運規則が変わると

 

ラスカーと呼ばれる安い給料でよく働く水夫が一気に増え

 

シレットで仕事を見つけられなくなかった船頭は

 

蒸気船に働き口を見つけあくせく働くことになります。

 

 

教育を受けていない彼らは英語を必要とする

 

待遇のいい甲板作業には就くことはできず

 

過酷な機関室に雇われていったのでした・・。

 

 

仕事を求めシレットのラスカー(水夫)たちは

 

外国でも働くようになります。

 

ラングーン、シンガポール、ニューヨークなど

 

主要な港にはかろうじて食いつないでいる

 

彼らの姿がどこでも見られることに。

 

 

インドの宗主国であるイギリスにも

 

たくさんのシレット出身のラスカー(水夫)たちがやって来て

 

蒸気船の機関室での過酷な仕事に就いていきます。

 

 

ロンドンのイーストエンドには

 

元船員とその妻たちによって経営された

 

ラスカー(水夫)のための下宿屋のネットワークがあり、

 

下宿屋とカフェが併設されたところでは

 

水夫たちはカレーとライスを買うことができたんだそうな。

 

そんな水夫たちのカフェを元に

 

イギリスのインド料理店は発展しくことになるんですね。

 

 

これらのカフェは船の出航を待つ船乗りに

 

宿や食事を提供するためのものでしたが

 

着実に増えつつある脱船者(水夫をやめた人)たちの支援網も

 

こうしたお店が提供していたというのです。

 

脱船者の多くが従事することになったのが飲食業。

 

レストランやクラブやホテルの厨房で

 

下働きや清掃係、皿洗いとして働いていましたが

 

その中にはインド料理店も含まれていました。

 

 

当時のイギリスのインド料理店は

 

ロンドンの時流に乗った金持ちや

 

かつての暮らしを懐かしむ元文官たちに

 

アングロインディアン料理を提供していたお店が

 

わずかしかありませんでしたが、

 

ロンドンに住むインド人学生を相手にしたお店が

 

少しずつ誕生していきます。

 

これらの草分け的なインド料理店は

 

いずれも厨房で元船員を雇っていたので

 

1940年代、50年代にイギリスで暮らしていたシレット出身者は

 

かなり高い割合でインド料理店で働くことに。

 

多くの船員たちは自分のレストランを開くことを夢見ていたのです。

 

 

終戦の頃には空襲を受けて修復が必要なカフェがいくらでもありました。

 

シレットの船乗りたちは苦労して貯めた資金で

 

これらのカフェやフィッシュアンドチップスを売る

 

小さな店を買いあさっていきました。

 

 

お店の新しい店主となったシレット人たちは

 

フィッシュアンドチップスやホットパイなど従来のメニューを提供し続け

 

昔のメニューにカレーだけを追加しました。

 

彼らは夜の23時以降も営業し、

 

パブが閉店する時間に客をつかまえていきます。

 

酔っ払いやマナーの悪い客が大勢やってくるようになりましたが、

 

徐々に白人の客は大胆になり、

 

お店のカレーを味見していくように!!

 

こうしてイギリスの労働者階級は

 

ビールでいっぱいになった胃に

 

ヴィンダルーがとりわけよく合うことを発見し、

 

パブで夜を過ごしたあとにカレーを食べる伝統が生まれたのでした!!

 

 

客がさらにカレーを好むようになっていくと

 

こうした小さいカフェやフィッシュアンドチップス店は

 

メニューからイギリス料理を追い出し

 

テイクアウト・インド料理店か安いインド料理店に変わっていきます。

 

 

カフェやフィッシュアンドチップス店で成功したシレット人は

 

今度はインド料理だけを提供する

 

インド料理レストランを開業するようになり、

 

1940年代から50年代にかけて

 

こうしたインド料理レストランがイギリス各地に登場!!

 

シレット出身者はレストラン業界で幅を利かせるようになります。

 

 

故郷のバングラデシュではお米を中心とした

 

北インドとは違うカレーや料理を食べますが

 

シレット出身の船乗りたちが料理を覚えたレストランでは

 

アングロインディアン風のパンジャーブおよびムガル料理という

 

北インドの料理を提供していました。

 

 

シレットの船乗りたちが開業したお店では

 

ロンドンのレストランで覚えた料理がベースになっていたので、

 

チキンビリヤーニー、ローガンジョシュ、きのこカレー、

 

ほうれん草とトマトの添え物etc.

 

アングロインディアン風のパンジャーブおよび

 

ムガル料理が提供されることに。

 

こうしてインド国内ではムガル料理は

 

国民的な料理にはならなかったにもかかわらず

 

インド国外ではムガル料理は

 

全てのインド人が食べている料理だと

 

見なされるようになっていったのでした。

 

 

1960年代に南アジアからイギリスに渡る移民が増え始めた頃には

 

シレット人はイギリスにおける飲食業界における一大勢力に。

 

またシレット人は自分たちの子供を訓練して

 

レストラン事業を手放さないように心がけました。

 

子供たちは役立つようになるとすぐに両親か親戚

 

または友人のレストランで働かされるようになります。

 

夜の宿題をする代わりに

 

料理をしたり客にカレーを給仕するために

 

夜遅くまで起きていなければなりませんでした。

 

技師や映画俳優になりたいと夢見ていても

 

彼らはみな料理人、給仕係、レストラン店主になり

 

その結果、イギリスのインド料理店の90%近くが

 

シレット人によって運営され続けることになります!!

 

 

新しいスタイルのお店は誕生しているものの

 

シレット人によるインド料理店の経営は受け継がれ

 

現在も多くのシレットの人たちが

 

イギリスのインド料理店を取り仕切っているのでした!!

 

こちらの2020年の記事やこちらのWikiページによると現在もバングラデシュ経営のお店は80%以上、その95%はシレット出身となっていますね。

 
こちら記事によると移民規制・ビザ制限・家賃高騰etc.によりバングラデシュ人経営のカレーハウスは閉店するお店が増え、昔ながらのアングロインディアン風ムガル料理の人気も衰えつつある傾向に。それに呼応するように、本物のバングラデシュ料理を提供する新しいタイプのお店も登場するようになってきているようです。
 
※イギリスのバングラデシュ人経営のインド料理店。ロンドン在住の日本の方によるこちらのブログ記事ではリアルな感想や写真もたくさんあって興味深いですよ!
 

 

日本ではインド人が営むインド料理店には

 

なかなか出会えなかったりしますが、

 

カレー大国イギリスも長きにわたり同じ状況で

 

パンジャーブ・ムガル料理を覚えた

 

シレット出身のバングラデシュ人が調理し経営していたとは!!

 

 

日本のナン&カレーの人気を全国に拡大したのはネパール人ですが

 

今のスパイスカレーブームを作っているのは日本人。

 

カレーという食べ物をグローバルな視点で見ると

 

インド移民が根付いている土地以外は

 

インド人以外の手によって発展していると言っても

 

過言ではないのかもしれませんね。

 

 

リジー・コリンガム「インドカレー伝」の内容がわかりやすく

 

インドカレー伝の内容をベースにまとめてみましたが

 

サクッと検索するだけで、

 

イギリスにおけるラスカーの話、

 

シレット出身のバングラデシュ人の情報や

 

バングラデシュ人経営のインド料理店情報が

 

たくさんヒットしてビックリ!!

 

以下、参考にしたサイトのURLも載せてみるので興味のある方は

 

併せてご覧になってみてください。

 

Lascars

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Lascar

https://islandhistory.wordpress.com/2015/04/14/the-lascars/

https://www.pandosnco.co.uk/lascars-two.htm

 

British Bangladeshi 

https://en.m.wikipedia.org/wiki/British_Bangladeshis

 

History of Bangladeshis in the United Kingdom

https://en.m.wikipedia.org/wiki/History_of_Bangladeshis_in_the_United_Kingdom

 

UK Indian restaurant in1950s

https://amp.theguardian.com/lifeandstyle/2017/jan/24/rising-popularity-indian-restaurants-britain-1957

 

A History of Indian Restaurants in London

http://www.southlondonguide.co.uk/indianhistory.htm

 

History of blick lanes curry restaurants 

https://www.runnymedetrust.org/blog/beyond-banglatown-the-rich-history-of-brick-lanes-curry-restaurants

 
Why the UK’s ‘Indian’ Curry Houses Are Starting To Celebrate Their Bangladeshi Roots
 
 

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