イギリス式カレー 誕生と衰退 | スパイシー丸山「カレーなる365日」Powered by Ameba

イギリス式カレー 誕生と衰退

日本にカレーライスを伝えてくれたのはイギリス。

 

では、イギリスには誰がカレーを伝えたのか??

多くの書籍や情報サイトで書かれている

 

初代インド総督ウォーレン・ヘイスティングというのは誤りで、

 

イギリスのインド進出によって生まれた
 
アングロインディアンやインド成金の存在により、
 
ゆるやかに伝わっていったのではないか!!!!!!

 

との考察を書かせていただきました。

 

※詳細→https://ameblo.jp/maruyamashu/entry-12265693762.html

 

 

 

今回はその続きです。

 

イギリスが日本に伝えてくれたのは

 

インド式のカレーではなく、イギリスで独自に進化した、

 

シチューのような洋風カレーライス。

 

そう!

 

現在の市販のルーで作る、あのカレーの原形なのです!!

 

では、

 

一体、どんな経緯でインドカレーが

 

似て非なるイギリス式カレーに変化し、日本に入ってきたのか??

そして、伝えてくれたイギリスでは

 

どうしてシチュー式カレーライスが絶滅してしまったのか??

 

一部の人しか興味を持たない(笑)レアなトピックについて

 

再び長文でたっぷりと書いていこうと思いまーーす!!!!

 

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参考となるテキストがほとんど存在しないので、

毎度、引用しているリジー・コリンガム著「インドカレー伝」から
http://books.rakuten.co.jp/rb/4234800/

紐を解いていきましょう。

 

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まずは18世紀以降のイギリスでのインドカレーの盛り上がりから。

 

ネイボッブ人口の増加とともに

 

※ネイボッブ(Nabob)とは一攫千金を目指しインドに渡り、成功して財をなしイギリスに戻ってきた“インド成金”の人たちのこと。

 

イギリス国内では、

 

インド料理を欲する人がどんどん増えていったようです。

 

ロンドンのヘイマーケットにあった

ノリスストリート・コーヒーハウスでは

 

少なくとも1773年にはカレー料理を出していた!という記録があり
 

1811年3月27日、「タイムズ」紙には

 

『退職してロンドンに住む東インド会社の関係者に、新しく開業したヒンドスターニー・コーヒーハウスで「申し分のない完成度のインド料理」が楽しめる!!!』

 

という内容の広告が出た、との記録も残っているんですね。

 

 

とはいえ、大金とともに帰国したネイボッブ(インド成金)たちは

 

インドで雇っていたインド人乳母、下男、料理人を連れて

 

帰国する人が多かったようで、

 

レストランに行かずとも、自宅で、インド生活を懐かしみながら

 

インド人料理人のインド料理を楽しんでいたようです。

 

 

インド料理を再現したいと考える人たちに向けた

 

専門的なレシピ本も登場するようになります。

 

1831年東洋翻訳委員会による「インド料理」という小冊子は

 

「この国に住む相当数の個人や家族で、東洋に長く暮らしたため、インド風の生活様式をことのほか好むようになった人びと」

 

のために発行されたようで、

 

プラオ、コルマ、ドーピアーザ、キチャリ、カバーブなどの

 

作り方が載っていたそうな。

 

アングロインディアンの定番料理らしいですが、

 

それでも、インド料理の流れを汲んでいたようです。

 

はいっ、

 

この辺りまでは、インドの延長にあった、と思われるのですが、

 

ある時から、日本カレーのルーツである、

 

イギリス流に改良された、英式カレーが台頭するようになります。

 

一体、いつ頃に生まれたのでしょうか??

 

 

カレー粉という便利な混合スパイスが誕生したことが

 

独自の進化をはじめるきっかけとなったようで、

 

興味深い記録としては、1845年、エドマンド・ホワイトという方が

 

イギリスのカレーを以下のように嘲笑しているんですね!!

 

『まずいシチューと大して変わらず、どうしても皿の中に浮いてくる黄緑色の大量の脂肪のせいで、さらに不快で不健康なものになっている。そんな料理を・・・本物のインドのカレーと呼んだり、その健康増進の特性について語ったりするのはばかげているだろう。これらは単に、イングランドで一般につくられている料理の一種としか考えられない』

 

1845年。もう、この頃にはインドカレーとは似て非なる

 

イングランド式カレーが出来上がっているようであります!!!!

 

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イングランド式カレーの特徴は以下の3つになるようです。

 

・香辛料ミックス(カレー粉)を使うこと

 

・カレー粉をだし汁、または水を加えるのと同時に入れること

(スパイスの扱いがわかっていない、ということ)

 

・カレー粉と小麦粉を混ぜたルーを使いトロミを付けること

(シチューやキャセロール料理のトロミを付ける手法)

 

 

本場の材料を加えると、それでも少しは本格的になったのですが

 

材料が手に入らないために

 

タマリンドの代用としてレモン汁が使われるようになり、

 

マンゴーの代わりにリンゴが使われ、

 

ニガウリの代わりにキュウリ、ペポカボチャが使われるように。

(ニガウリはベンガル料理でよく使われる食材)

 

 

時代とともに、

 

こうした食材は“代用品”として見なされなくなり

 

むしろ、よいカレーを作るための“不可欠な材料”と

 

考えられるようになった!!というから面白いです!!!

 

 

この時期のレシピを1つ紹介してみましょう。

 

◆仔牛肉のカレー(ジョゼフ・エドマンズ、カレーとその作り方)

【材料】

仔牛肉ローストの残った肉、玉ねぎ4個、リンゴ(薄切り)2個分、カレー粉大さじ2、小麦粉デザート用スプーンで1杯、だし汁または水1/2パイント(284cc)、レモン汁大さじ1

【作り方】

薄切りにした玉ねぎとリンゴを少量のバターで炒める→それをとり出す→薄切りにした肉をほんのり焦げ目がつくまで焼く→カレー粉と小麦粉を加える→玉ねぎとリンゴを再び入れ、だし汁か水を加える→柔らかくなるまで煮込む→仕上げにレモン果汁を加える→かたわらにライスをよそい盛り付ける。

 

 

 

こっ、

 

 

これって、

 

 

最初の薄切りのリンゴと仕上げのレモン汁以外は

 

 

日本で作るカレーライスの基本じゃないっすか!!!!!!!

 

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ってことで、

 

イギリス流に変化していった

 

1800年代前半~中期のイングランド式カレーライスが

 

日本のカレーライスのルーツと言って間違いないですね!!!!!

 

 

さぁ、そんなイングランド式カレーですが、

 

その後、不思議な運命をたどることになります。

 

まず、1859年の開国とともに、日本に伝わります。

 

そして、インドの食べ物ではなく、

 

イギリス生まれの“洋食”として人気を博すことになります。

 

その後、庶民に広まり、おうち料理の定番に。

 

21世紀になってもなお不動の人気を誇る、

 

みんな大好きな、お家の料理の定番として君臨するわけです!!

 

そう!

 

ここ、日本では!!!!!!

 

 

では、イングランド式カレーライスを伝えてくれた

 

イギリスは??というと、

 

 

なんと、

 

 

徐々に家庭で作られることはなくなり・・、

 

 

なんと、

 

 

今では、ほぼ、絶滅状態なのであります。。。。。

 

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どうして、そんなことになってしまったのか??

 

日本での人気の上昇とは対照的に、

 

イギリスでは、何故か人気が低下していってしまいます。。。

 

まず、

 

イギリスが世界の中心であったヴィクトリア時代(1837~1901)に

 

カレー人気は全盛期を迎えていたのですが、

 

以降、カレーは

 

「イギリスの中流階級のまともな人びとの胃には、香辛料が効きすぎていて不快なもの」

 

という偏見が生まれるようになったんだとか!!!!

 

 

また、台所事情の変化も影響していて、

 

それまで台所は地下にあるのが一般的だったのですが

 

1950年代に居間付近に作られるのが普通になったので

 

カレーを料理すると

 

臭くなってしまう・・、と敬遠されるようになっていったそうです。。。

 

 

いや、私たちが思っている以上に

 

イングランド式カレーを伝えてくれたイギリスでは

 

カレー熱がどんどん低下していき・・・、

 

1950年代、60年代には、

 

多くの人にとって、インド料理を食べるということは

 

せいぜい、毎週食べるシチューに

 

カレー粉をちょっぴり加える程度だったんだそうな。。。

 

 

1960年代といえば、

 

日本では1963年にハウス食品のバーモントカレーが発売になり

 

1968年には世界初のレトルトカレー、ボンカレーが発売になったり

 

めちゃくちゃ盛り上がっていた時期なだけに、

 

なっ、なんか、拍子抜けしちゃいますよね。。。。。

 

 

誤解してはいけないのが、

 

イギリス人がカレーを嫌いになったわけではないとうこと!!!

 

自宅で作る料理から、

 

お店で食べる料理へと変化していったのであります!!!!!

 

きっかけも、ちゃんとありまして、

 

まず、イギリスの食習慣に革命が起きます。

 

1958年には200万人以上のイギリス人が海外旅行をしたんだそうな。

 

旅行は人びとの視野を広げ、

 

新しい食べ物に目を向けさせることに。

 

これにより、イタリア料理店が流行の場所になったんだそうです!

 

徐々に

 

食べ物が中流階級のステータスとして再浮上し、

 

夕食会に客を招待し、

 

料理の腕を見せる機会を楽しむようになっていくようになります。

 

流行のイタリア料理やフランス料理に必要な

 

新しい本格的な食材も

 

手軽に手に入れられるようになっていくのです!!!

 

それと同時に、

 

手頃な値段で夕べを過ごせる場所にも

 

人気が集まるようになっていったのですが

 

そこにバシっとハマったのが、インド料理店だったのです!!!!

 

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移民、イギリスの富、他文化の料理への関心があいまって

 

インド料理店はイギリスのどんな町でも景観の一部となり、

 

1970年代には、インド料理店は2000軒まで増えるように!!!

 

気づくと、

 

カレーは、ほぼ全てのイギリス人の

 

食生活の一部となるようになったのです!!!!!!!!

 

 

まぁ、そんなこんなで、

 

イギリスの人たちは今も“外食のインドカレー”を愛し、

 

国民食とまで言われるくらい、食べまくっているのでした♪♪♪

https://theryugaku.jp/1807/

 

 

 

それにしても、

 

進化の途中にあったイングランド式カレーが

 

偶然、日本に渡ることになり、

 

本家が絶滅してしまったのに、日本ではおうちで作られ続け、

 

様々なタイプのカレールーが開発され、

 

そして、

 

こっちの方(お家で作るイングランド式カレー)が

 

国民食にまで登りつめるようになったとは!!!!!!!

 

食文化というのは、本当に不思議なものですね。

 

 

そういえば、

 

CoCo壱番屋(ココイチ)が

 

今年、2017年に英ロンドンに欧州1号店を開業する!!

 

とのニュースがあったんですよね!!!!

http://www.asahi.com/articles/ASK283TZTK28OIPE00L.html

 

英国には今後5年で計10店を展開する予定で、

 

将来は欧州各地に店舗網を広げるんだとか。

 

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本家でほぼ絶滅してしまったイングランド式カレーですが、

 

日本のココイチがきっかけで、時を経て“復活”!!!!!

 

なんて日が来るのも、

 

もしかすると、そう遠くはないのかもしれません。

 

今回も長文にお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

追記その1:   Q&Aサイトで「イングランドとアイルランドのパブで食べたパブカレーのレシピが知りたい!」との投稿を見つけました。文章から察するにシチュー式カレーのことではないかと。『インドカレー伝』ではイギリスのパブではビンダルーなどのインドカレーを食べる!となっていたのでそのように理解してましたが…。お店によってはパブに今もシチュー式カレーが残っているのかもしれません。恥ずかしながらイギリス行ったことがないもので…。この辺のシチュー式カレーの情報がGET出来ずに困っています。情報をお持ちの方はコメントで教えていただけると嬉しいです!

 

追記その2:  イギリスのすぐ隣の国アイルランドでは小麦粉でトロミをつけるシチュー式カレーライスが今も食べられていてお金をかけたTVCMまで存在することがわかりました。詳細はこちら

 

追記その3: ついに貴重な現地情報をツイッター経由でGET!情報によるとイングランドのウェスト・ヨークシャーにある小さな村、ハワースのレストランで25年前に食べたとのこと。この記事に登場する画像のようにお米を円形に盛ってあり、スパイシー感はほぼゼロのお子様カレーみたいな味だったようです。クラシックなイングランド式カレー&ライス。やはり、残っているところには残っているようですね!


追記その4:    新たな事実がわかりました!小麦粉でトロミをつけるシチュー式カレーはフィッシュ&チップス店(Chip shop)でフライドポテトにかけるカレーソース(チップショップカレーソース)としてイギリスで食べられていました!絶滅していなかったようです。ライスとポテトのハーフアンドハーフもできるので、イギリスで小麦粉を使ったシチュー式カレーライスが食べたい時はフィッシュ&チップス店に行きましょう。詳細はこちら



スパイシ~~♪♪♪

 

 

 

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