1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、24回目は、ミケランジェロ号を取り上げます。

 

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

ミケランジェロ・ディ・ロドヴィコ・ブオナローティ・シモーニ(1475年 - 1564年)は、イタリアの画家、彫刻家、建築家、詩人。

 

ユーロシティが設立された1987年からわずか1年後となる1988年5月29日より、ブレンナー峠を越えるドイツ〜イタリア間の既存のレオナルド・ダ・ヴィンチ号に加えて、EC80/81 ミケランジェロ号が新設された。FS編成による北行EC80は、イタリアの首都の最重要駅であるローマ・テルミニ駅発7:45で、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅(9:59着/10:08発、機関車交換と方向転換)、ボローニャ中央駅、ヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅(12:42着/12:54発、再び方向転換)、ロヴェレート、トレント、ボルツァーノ、ブレッサノーネ、フランツェンスフェステ、国境駅ブレンナー(16:10着/16:25発、ÖBB(オーストリア国鉄)-1044型機関車に交換)、インスブルック、ヴェルグル、クーフシュタイン、ローゼンハイムを経て終点のミュンヘン中央駅着18:58、所要時間11時間13分、走行距離973kmの鉄道旅、表定速度87km/hだった。この編成は、ミケランジェロ号の名称のままIC880として、30分ほど後にアウグスブルク中央駅(20:07着、20:09発)を経由してニュルンベルク中央駅(21:22着)まで旅を続ける。

 

DB(ドイツ国鉄)-103型電気機関車が牽引するEC81 ミケランジェロ号の南行きFS(イタリア国鉄)車編成の運行は、ニュルンベルク中央駅発6:57が始発駅となる。アウグスブルク中央駅、ミュンヘン中央駅(8:48着/9:00発、ÖBB-1044型機関車に交換、方向転換)、ブレンネロ/ブレンナー(11:29着/11:44発)、ヴェローナ(14:53着/15:05発)、フィレンツェ(17:36着/17:45発)に停車し、所要時間13時間01分かけて終着のローマ・テルミニ駅着19:58。3回の方向転換と16回の停車にもかかわらず、90km/hの表定速度を実現した。

 

1990年5月27日より、ミケランジェロ号の所要時間が南北両方向で短縮された。北行EC80は、この日からローマでの発車時刻が15分繰り下げた出発となったが、従来どおり19時前にはミュンヘンに到着。対向の南行EC81は、ニュルンベルク発7:08と出発時刻が11分遅くなってもローマ到着時間は以前より8分早かった。その結果、表定速度は89km/hと92km/hにスピードアップ。1991年6月2日の有名なダイヤ改正は、ミケランジェロ号にも直接的な影響を与え、ニュルンベルクから運転はなくなり、ミュンヘン発着と運転区間が短縮された。このタイミングでミケランジェロ号の列車番号EC80/81を引き継ぐユーロシティ ガルダ号が新設され、ミケランジェロ号は新たな列車番号EC84/85となった。FS車の共通運用ローテーションをレオナルド・ダ・ヴィンチ号と行い、時刻も若干調整された(EC84:ローマ発7:35→ミュンヘン着18:30/EC 85:ミュンヘン発9:30→ローマ着20:15)。翌年(=1992年)のダイヤではローマ発着時間に変更が発生、EC84はローマ7:30発、EC85はローマ20:25着となっ。1993年5月23日以降、所要時間は両方向とも5分延長された。

 

1995年5月28日から、イタリア区間ではかなりの加速が可能になった。EC84はローマ発8:15と従来より50分遅く発車となったが、ブレンネロ/ブレンナー(15:49)およびミュンヘン中央駅(18:30)への到着時間は変わらず。対向のEC85は、ミュンヘンとブレンネロの出発時刻は変わらず、ローマ着19:45と維持できた。この結果、95km/hという驚異的な表定速度を叩き出している。その後ミケランジェロ号には大きな変更はなかったが、2001年6月10日のダイヤ改正でアレッツォ、プラート(以上、イタリア)、イェンバッハ(オーストリア)、ミュンヘン東駅(ドイツ)が新たに途中停車駅が加わった。これにより、所要時間はEC84(ローマ発7:54→ミュンヘン着18:30)で10時間36分、EC85(ミュンヘン発9:30→ローマ着20:02)で10時間32分となった。ミュンヘン~ブレンネロ/ブレンナー間の牽引機にも変更が生じ、ÖBB-1044型「アルペンの掃除機」電気機関車から新型電気機関車「タウルス」(ÖBB-1016型電気機関車)に担当が切り替わった。さらに2002年末からはÖBB-1116型電気機関車もミケランジェロ号の牽引機で見ることができた。2003年12月14日以降、時刻表の「ヨーヨー(=揺り戻し)」は続いた。EC85は1995年当時と同じ時刻でで運行され、テルミニ駅着19:45になり、EC84も2分「遅れ」を取り戻した。

 

2005年12月11日以降、ミケランジェロ号は再び遅くなり、北行EC84はローマ発7:42、ミュンヘン着18:26と、所要時間10時間44分、対向南行EC85はミュンヘン発9:33、ローマ着20:10、所要時間10時間37分となった。その後2年間はダイヤ、所要時間はおよそ2年間は維持され、2007年12月9日のダイヤ改正で抜本的変更が行われた。ミュンヘン〜ヴェローナ間の時刻表位置は維持されたが、トレニタリア(=旧FS)担当のミケランジェロ号は、ポルタ・ヌオーヴァ駅からの従来のルートから外れ、ボローニャ中央駅、ファエンツァ、フォルリ、チェゼーナを経由して、新しい終着駅(始発駅でもある)はリミニ駅に変更された。EC85はミュンヘン発9:31、リミニ着17:43(EC84はリミニ発9:53、ミュンヘン着18:27)。この列車は、EC86/87 ティエポロ号と併結運転された。走行距離672km、所要時間はそれぞれ8時間12分と8時間34分、表定速度はそれぞれ(わずか)82km/hと79km/hとなる。なお、ユーロシティ ミケランジェロ号に必要な車両は、運行開始以来FSとトレニタリア社が独占提供している。

 

ミケランジェロ号は、ドイツ・オーストリア・イタリアを走る他のユーロシティ列車と同様に、2009年12月13日に施行される2010年通年ダイヤで名称を失う。 その日以降、ÖBB、DB、LeNord(ルノルド)がEC84/85を「DB-ÖBB EuroCity」の名称で引き継ぎ、車両編成はその日からオーストリア連邦鉄道から提供された。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1989年夏ダイヤ 

コンパートメント車(1等・2等)、食堂車連結、途中増解結はなし。イタリアの車両のみ。

 

今回は以上です。

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)