Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

今回は24回目、スイス、オランダ発着のTEE、オワゾ・ブルー/オワゾブルー(L'Oiseau Bleu)号です。前回のTEEエトワール・デュ・ノール号につづき、ベルギー・フランスを結ぶ大幹線において、古くから運行されていた列車です。

 

列車名の由来は?

フランス語で「青い鳥」を意味する列車名。この「青い鳥」ですが、ベルギーの作家、モーリス・メーテルリンクの著作にちなんでいるそうです。そう!チルチルとミチルがでてくる物語!ちなみに、チルチル(Tyltyl)とミチル(Mytyl)って綴るようですよ!

 


運行されていた国 ベルギー、フランス

 

運転時期と区間

 

1929年にワゴン・リ社の急行列車としてパリ〜アントワープ間で運転開始

 

1957年6月2日〜1984年6月2日

パリ(北駅) − ブリュッセル北駅

 

 

使用された車両、編成

ディーゼル列車

【オランダ/スイス(それぞれが保有)】

DE-4型(オランダ)/RAm TEE Ⅰ 型(スイス)ディーゼル列車

1957年6月2日〜1964年5月30日

 

編成両数は、固定の4両編成(うち1両は動力車)。

1959年夏ダイヤの運行表によると、同じTEE列車である、エーデルヴァイス号(チューリヒ〜アムステルダム)、エトワール・デュ・ノール号(アムステルダム〜パリ)と4日間サイクルで共通運用されていました。

共通運用(4日間サイクル交代)の詳細は以下の通り。

(4日間総走行距離3532km、1日平均883km)

1日目:TEE 108 オワゾブルー号 ブリュッセル-パリ → TEE 125 エトワール・デュ・ノール号 パリ-アムステルダム、

2日目:TEE 31 エーデルヴァイス号 アムステルダム-チューリッヒ

3日目:TEE 30 エーデルヴァイス号 チューリッヒ-アムステルダム

4日目:TEE 128 エトワール・デュ・ノール号 アムステルダム-パリ → TEE 145 オワゾブルー号 パリ-ブリュッセル

 
 

客車列車

【フランス】

DEV鋼製客車 1964年5月31日〜同年8月1日

 

【フランス/ベルギー】

TEE PBA型ステンレス製客車 1964年8月2日〜1984年6月2日

※PBA=Paris、Brussels、Amsteldamの3都市の頭文字をとった略称。

 

その編成両数ですが

  • 1964年8月1日まで 6両(コンパートメント3両+食堂車+荷物車)
  • 1964年8月1日以降 5両編成
  • 1969年9月28日以降 繁忙期のみ7両編成に増結

でした。

 1964年の3ヶ月間だけ登場した既存鋼製客車は、PBA形ステンレス客車の納入遅れ(詳しくはイル・ド・フランス号とブラバント号への納入を優先した影響)をカバーするための一時的な対応だったようです。

 1等車のみの豪華な編成であり、パリ〜ブリュッセル間無停車で最終的には7両編成でも採算が取れていたという旺盛な需要を感じさせる時代です。

 なお、オワゾ・ブルー号は、同じパリ-ブリュッセル間のブラバント号と共通運用され、1日で2都市間を2往復で1サイクルをとっていました。

 
 
牽引機

1964年からTEE PBA型客車が登場することで、電気機関車が牽引することになります。このパリ〜ブリュッセル間においては、ベルギー・フランスのそれぞれの国鉄の機関車が相手国に乗りいれしていたようです。

 

【オランダ、ベルギー】

Class 15(150)形3電流式交直流機関車

1964年8月2日〜1984年6月2日

 

その他、Class 15の代替ではClass 16(160)型4電流式交直流機関車も運用についています。その後交通量の増大とそれに伴う牽引荷重の増大に対応するため、フランスCC40100型に似たClass 18型4電流式交直流機関車を製造、牽引担当に就いています。

 

 

【フランス】

CC40100型4電流式交直流機関車

1964年8月2日〜1984年6月2日

 

CC40100型のほか、1964年から僅かの間のBB30000型機関車による牽引実績もあったようですので付記しておきます。

実際の時刻表紙面

1962〜63年冬ダイヤ

108列車 ブリュッセル南駅発 7:40 → パリ北駅着 10:39

145列車 パリ北駅発20:42 → ブリュッセル南駅着 23:40

この当時はDE-4/RAm TEE Ⅰ形ディーゼル列車が運用に就いていた時代です。 この記事に明記がないのですが、ベルギーのモンス(Mons)駅、フランスのサン=カンタン(St.Quentin)駅にも停車(1958年9月末から)。またベルギー国内では電化工事がたけなわで、両方向とも5分ほど運転時間が延びていたようです。

Cooks Continental Timetable March 1963 より

 

 

1969年夏ダイヤ
62列車 ブリュッセル北駅発 7:13 → パリ北駅着 9:57
63列車 パリ北駅発20:42 → ブリュッセル北駅着 23:18
 1965年夏ダイヤからブリュッセルの発着駅が南駅から北駅に変更されています。
 1963年夏ダイヤから運転されているTEEブラバント号とペアでパリ・ブリュッセル間のシャトル列車としてダイヤが組まれていました。オワゾ・ブルー号のダイヤは日帰り需要を満たすべく、ベルギー発が早朝、到着が深夜というダイヤでした。
Cooks Continental Timetable August 1969 より
 
 
1980年夏ダイヤ
80列車 ブリュッセル北駅発 7:13 → パリ北駅着 10:05
89列車 パリ北駅発20:28 → ブリュッセル北駅着 23:12
 1974年秋ダイヤから、TEEルーベンス号メムリンク号がこの2都市間シャトル列車の仲間に加わりますが、この列車の運転時間帯への影響はありませんでした。
 また、1979年夏ダイヤからか(推察)、運転日がこれまでの毎日運転から、南行は月〜土(日曜運休)、北行は月〜金、日(土曜運休)と週6日運転に変わっています。この理由は明確にはわかりませんでした。効率をもとめた乗車率調査の結果ではないかと思います。
ThomasCook International Timetable September 1980 より
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable August 1969、ThomasCook International Timetable September 1980

・写真で楽しむ世界の鉄道 ヨーロッパ1,2,3 交友社 1959、1960、1965

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、 Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

・カラーバックス 世界の鉄道 国際特急 植田信行監修 徳間書店 1978年

参考サイト:TEE、パリ・ブリュッセル・アムステルダム間の列車、ル・ミストラル (列車)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons