Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

今回は23回目、スイス、オランダ発着のTEE、エトワール・デュ・ノール(Étoile du Nord)号です。その歴史はTEE前史が存在し、1920年代にはオランダ・ベルギー・フランスを結ぶ大幹線で豪華さ、速さが売りで運行されていた、名実ともに「輝かしい」列車です。

Youtubeチャンネル BOUILLANT Crépyより

 

列車名の由来は?

フランス語で「北極星」を意味する列車名


運行されていた国 オランダ、ベルギー、フランス

 

運転時期と区間

 

1927年にワゴン・リ社の急行列車としてパリ〜アムステルダム間で運転開始

 

1957年6月2日〜1984年6月2日

パリ(北駅) − ブリュッセル − ロッテルダム − アムステルダム中央駅 

 

その後、インターシティー列車に格下げされ運転継続

 

使用された車両、編成

ディーゼル列車

【オランダ/スイス】

DE-4型(オランダ)/RAm TEE Ⅰ 型(スイス)ディーゼル列車

1957年6月2日〜1964年8月1日
 
【フランス】
X2770型(TEE-RGP)ディーゼル列車
1958年3月1日〜1964年5月30日
 
TEE化直後はオランダ/スイスのディーゼル列車が投入され、同じTEEのエーデルヴァイス号(〜1964年8月1日)、オワゾ・ブルー号(〜1964年5月30日)と共通運用されました。
で運転開始したものの、ただでさえ旺盛な需要で座席数114の4両固定編成ではさっそく過密状態となり、くわえて1958年5月1日から開催されるブリュッセル万博博覧会への送客対応という課題も加わり、待ったなしの状態になります。そのため1958年3月1日から定期のエトワール・デュ・ノール号の前後で追加列車(TEE 123/130、のちにTEE 123/112)がパリとブリュッセル間で運転されました。これはであり、同じTEE列車である、イル・ド・フランス号(TEE 103/148)の増結編成と共通運用で2往復設定(エトワール・デュ・ノール号は1往復)されました。この追加分はどちらの列車もX2770形4連だったようです。
 
なお、この追加列車の運行は夏のバカンスシーズンを中心に、当時の旅客需要に応じて行われたそうですが、時刻表に増便の記載はなかったようです。
 
客車列車

【フランス、ベルギー】

TEE PBA型ステンレス製客車 1964年8月2日〜1984年6月2日

※PBA=Paris、Brussels、Amsteldamの3都市の頭文字をとった略称。

 

ミストラル69型客車 1974年9月29日〜1984年6月2日

 

その編成両数ですが(一例)、

  • 1964年8月2日〜 PBAのみ 11両編成(うちパリ〜ブリュッセル間は7両編成)
  • 1974年9月29日〜 PBA、またはミストラル69 10両編成(うちパリ〜ブリュッセル間は5両編成)

上記は平常期の編成例のようですが、週末にはパリ発アムステルダム行14両編成という時期もあったようです。機関車牽引の限界負荷ぎりぎりまで連結して需要に対応していたという左証です。なお、パリ〜ブリュッセル〜アムステルダム間のTEE列車は共通運用が基本であり、旺盛なパリ〜ブリュッセル間の需要に応えるべく、ブリュッセル編成、アムステルダム編成の増解結の組み合わせで緻密な運用が行われていました。

 

 

牽引機

【オランダ、ベルギー】
Class 15(150)型3電流式交直流機関車
1964年8月2日〜1984年6月2日

 

代表的な機関車は1962年製のベルギーのClass 15(150)型3電流式交直流機関車。3つの異なる電化区間を通しで走りきれる唯一の機関車だったようです。とはいえ、フランス国鉄CC40100型との共用だったので、ブリュッセル〜アムステルダムがもっぱらの活躍場所だったようです。また、一時期はディーゼル機関車が担当することもあったようですが、詳細は不明です。

 

 
【フランス】
CC40100型4電流式交直流機関車

1964年8月2日〜1984年6月2日

 

1964年からパリ〜ブリュッセル間で使用されたフランスのCC40100型4電流式交直流機関車。Class 15(150)型同様に通過する3カ国の異なる電化区間を走行できる機能は有しながら、乗り入れ先のオランダ国鉄が認可せず、結果、牽引区間はパリ〜ブリュッセル間に限定されました。ちなみにこの期間の乗り入れ認可は当時の西ドイツでも降りなかったようです。
なお、資料によるとCC40100型のほか、1964年から僅かの間、BB30000型機関車による牽引実績もあったようですので付記しておきます。

 

実際の時刻表紙面

1969年夏ダイヤ
72列車 アムステルダム中央駅発8:58 → パリ北駅着 14:02
73列車 パリ北駅発 17:45 → アムステルダム中央駅着 22:45
この列車の走るアムステルダム〜ブリュッセル〜パリの回廊は古くから大幹線として知られており、下記紙面にある兄弟列車、TEEイル・ド・フランス号のほか多数の急行列車が運転されています。いまではTGVタリスがこの区間の主役になっていますね。
Cooks Continental Timetable August 1969 より
 
 
1976年夏ダイヤ
82列車 アムステルダム中央駅発8:58 → パリ北駅着 15:08
85列車 パリ北駅発 18:43 → アムステルダム中央駅着 22:45
こちら1969年のダイヤと比較するとパリの発着時刻が1時間ずれているので、一見大幅なダイヤ修正が行われたように見えますが、これは1976年3月28日にフランスでサマータイム(CEST=OEZ)が導入された影響である、当時ベルギーとオランダが夏時間非採用だったことで発生したギャップです。なお翌年1977年からベルギー、オランダでも夏時間が採用されたため、紙面上での「ギャップ」は解消されます。
ThomasCook Continental Timetable May.30〜June 30 1976 より
 
ということで、1等車のみ編成の中では、息の長い列車の一つで、1984年のインターシティーへの格下げ時期まで運転されていました。
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

私が参考にしたドイツ語書籍。貴重な写真が多数。資料価値高いです。

 

TEEは載っていませんが、ヨーロッパの鉄道って?というはじめての一歩

 

 

参考資料:

・ThomasCook International Timetable January 1978、ThomasCook International Timetable September 1980

・TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、 Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

・写真で楽しむ世界の鉄道 ヨーロッパ1,2,3 交友社 1959、1960、1965

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・カラーバックス 世界の鉄道 国際特急 植田信行監修 徳間書店 1978年

参考サイト:TEE、パリ・ブリュッセル・アムステルダム間の列車、L'Étoile du Nord (train)、ル・ミストラル (列車)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons