Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

44回目は、前回のメムリンク号と同期となる、パリ〜ブリュッセル間のTEE列車、ルーベンス(Rubens)号を紹介します。同区間では、1964年以来、朝、日中、夜で合計4つのTEEが設定されていました。

 

イル・ド・フランス号 (PBA)

エトワール・デュノール号(PBA)

オワゾ・ブルー号 (PB)

ブラバント号(PB)

※PBA=Paris、Brussel、Amsteldamの3都市の頭文字をとった略称。

 

そのうえで、この需要旺盛なパリ〜ブリュッセル間に追加のTEEが2本加わります。

メムリンク号(PB)、ルーベンス号(PB)

 

かつ、ルーベンス号は、一度TEEから1等車のみユーロシティーに格下げ(?)されたあと、1993年に「2等車連結のTEE」として復活するという経緯があることも特徴の一つに挙げられます。

 

列車名の由来は?

16世紀後半〜17世紀に現在のベルギーで活躍した画家です。


運行されていた国 フランス、ベルギー

 

運転時期と区間

 

■初代 1974年9月29日 〜 1987年5月29日

パリ北駅 〜 ブリュッセル南駅

 

運行ダイヤとして、同時期に新設されたメムリンク号と対になる設定がなされました(’84夏ダイヤでメムリンク号は廃止)。

 パリ→ブリュッセル メムリンク号ブリュッセル→パリ ルーベンス号

 パリ→ブリュッセル ルーベンス号、ブリュッセル→パリ メムリンク号

 

1等車のみのユーロシティーとして活躍

 

■2代目 1993年5月23日 〜 1995年1月20日

パリ北駅 〜 ブリュッセル南駅  ※2等車連結のTEE列車

 

TGV運行開始にともない廃止

 

使用された車両、編成

客車

PBA型、または、ミストラル69型客車

初代、2代目ともに、フランス・ベルギー共同開発のPBA型客車、またはPBA型の改良型ミストラル69型客車が使用されました。初代の運転開始当初はTEEメムリンク号と共通編成で7両編成の4本が準備されました。

※PBA=Paris、Burussel、Amsteldamの3都市の頭文字をとった略称。

 

初代について基本編成の詳細ですが、パリから順に、

A2Dx(またはA4Dtux)+A8u+A8tu+A5rtu+A8tu+A3rtu+A8u
基本編成への増結ですが、1976年夏からはブリュッセル発でも1両増結が実施されています。 
 
2代目の編成ですが、初代と共通ながら1等車から改造された2等車を含む12両編成で運行されています。

 

牽引機

パリ〜ブリュッセル(フランス/ベルギー)間は国境間での機関車付替えを行うのではなく、お互いの国に機関車ごと乗り入れる運用が行われていました。

 

【フランス】

CC40100型4電流式交直流機関車

 

 

【ベルギー】

18型4電流式交直流機関車

CC40100型に似た18型4電流式交直流機関車だったようです。2代目時代では12型、15型も運用に入っていたようです。

 

 

 

実際の時刻表紙面

1974〜75年冬ダイヤ
78列車 ブリュッセル南駅発6:42 → パリ北駅着9:05
87列車 パリ北駅発18:45 → ブリュッセル南駅着21:05
※いづれの列車も月〜金のみ(休日の場合は運休)
前述の通り、メムリンク号とセットで、朝夕のPB間輸送を担っていました。この列車もPB間はノンストップとなっています。
ThomasCooks Continental Timetable May 1975 より
 
 
1986〜87年冬ダイヤ
84列車 ブリュッセル南駅発17:14 → パリ北駅着19:44
81列車 パリ北駅発7:10 → ブリュッセル南駅着9:37
※いづれの列車も月〜金のみ(休日の場合は運休)
PB間のTEEの整理後、イル・ド・フランス号ルーベンス号のみが残った際のダイヤ。残った2列車の朝夕の受け持ちは従来から変わり、ルーベンス号はブリュッセルを夕方発(かつてのブラバント号のスジ)、パリを早朝発(かつてのメムリンク号のスジ)として運行されています。ちなみに両列車とも1987年夏ダイヤで廃止されるので、初代の最期となる紙面です。
ThomasCook European Timetable 日本語解説版 1987年春 
 
 
1994〜95年冬ダイヤ
84列車 ブリュッセル南駅発17:10 → パリ北駅着19:42
81列車 パリ北駅発7:07 → ブリュッセル南駅着9:49
※いづれの列車も月〜金のみ(休日の場合は運休)
2等車連結TEE時代のルーベンス号(赤線)です。赤線を引いたスジの左側にTGV84という列車が、ルーベンス号廃止と引き換えのTGV列車となり、TGV化と同時に列車名も消滅します。ただ高速列車TGVといっても、当時は高速新線がブリュッセルに到達しておらず、名ばかりTGVのため所要時間はルーベンス号時代とほとんど変わりませんでした。
ThomasCook European Timetable 日本語解説版 1995年初春号 
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、ピーテル・パウル・ルーベンス(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by , Public domain, via Wikimedia Commons