町の本屋さん -18ページ目

幸せのありか

哲生との夜は優しい時間が流れた。
大事な物を触れるようにそっとそっと私を抱いた。
傷つけないように、怖がらせないように。
静かに燃え、静かに尽きた。
拓実とは対象的だった。
何度も何度も覆い被さってくる拓実とは違い、私を気遣い、優しく触れる哲生の手には愛情があった。
ただ、私の体は満足していなかった。
手順から、力加減から、敏感なつぼから、すべて拓実のやり方に体が慣らされていたことを私は実感した。
哲生の横で眠る私の体は中途半端。
これからずっとこんな夜が続くのだろうか。
愛情で体も満たされる日がくるのだろうか。
拓実に抱かれたい。
私はそう思ってしまった。

幸せのありか

二人でテレビを見て笑っていた。
時々見る彼の目線は見上げるくらい上にあって、それだけで私はドキドキした。
斜め下から見上げる山崎さんの横顔は初めて。
体育座りをしている、山崎さんの長い腕が時々私に触れるたびにキュンとしてしまう。
私はその腕に触れてみたくなって、肩にそっともたれかかった。
山崎さんは驚いて私を見る。
「へへっ。」
私は照れ笑いでごまかした。
山崎さんは長い手を私の肩に回し、頭を優しくなでてくれた。
だんだん山崎さんの手に力が入る。
きっと山崎さんも緊張してるんだろうな。
と思った。
「薫ちゃん。」
「薫でいいよ。」
と私が言うと、
「照れるなぁ。」
と山崎さんは苦笑いした。
「薫。好きだよ。」
そう言って、山崎さんは力強くぎゅっと抱きしめてくれた。
「私も。」
「薫も俺のこと名前で呼んで。」
と山崎さんは言うので、
「哲生。」
と呼んだ。
そして私達はゆっくりキスをした。
優しく優しく、傷つけないように。

幸せのありか

山崎さんの家につくと、「ほんとにいいの?」
と山崎さんは一言。
私は黙ってうなずいて、車を降りた。
山崎さんの一歩後ろをついて行った。
山崎さんが家の鍵をあけ「どうぞ。」
とドアを開けてくれた。
「お邪魔します。」
と私は家に上がる。
部屋はきれいに片付けてあった。
そうだった。彼は女のいらない男だった。
と一人思った。
「その辺に座って。」
そう言って山崎さんはキッチンのほうに向かった。
私はソファーに座る。
ゆっくり二人座れるくらいだ。
二人でここに座るのかと勝手に想像して恥ずかしくなった。
山崎さんはコーヒーを入れて持ってきてくれた。「薫ちゃん、いつも会社でコーヒー飲んでたよね。」
「よくご存知で。」
と私が言うと、
「いつも見てますから。」
と笑顔で答えた。
その笑顔が可愛く見えてくるから不思議だ。
やっぱり山崎さんは隣りに座った。
想像どおりじゃん。
と私は心の中で叫んでいた。
一人興奮していた。