「恋の骨折り損」('00)
シェイクスピアの同名恋愛喜劇を、ケネス・ブラナーの監督・脚本・主演で映像化したミュージカル映画です。共演はアレッサンドロ・ニヴォラ、マシュー・リラード、エイドリアン・レスター、アリシア・シルヴァーストーン、ナターシャ・マケルホーン、ネイサン・レイン、ティモシー・スポール、エミリー・モーティマー、カーメン・イジョゴ他。
→ Wikipedia「恋の骨折り損 (2000年の映画)」
ケネス・ブラナー、どうしちゃったの?! (@o@)
この映画の製作時点でも既に役者としてはもちろん、映画監督としても高い評価を得ていたはずの彼が、なんでこんな映画を作っちゃったのか本当に謎。
シェイクスピアの喜劇を、第二次世界大戦直前の1939年を舞台に翻案し、既存のミュージカルの名曲を使って、1940年代から1950年代のハリウッド製ミュージカル風の演出と映像でミュージカル化するというアイデアは実に面白いし、多くの人が期待するはず。
それが、視聴自体が苦痛なレベルでこれっぽっちも面白くない…。
作り手はキャストを含めて楽しんでる感じはするんですけど、全てが空回りしていて、ただただ寒い…。
アイデア自体は悪くないので、脚本と演出を一から見直して再映画化して欲しいくらいなんですが、まぁ、無理でしょうね…。
残念。
「トゥモロー・モーニング」('22)
2006年にロンドンで初演され、その後、日本を含む世界各地で上演された同名ミュージカル舞台劇を原作とし、1組の男女の結婚から離婚までを描いたミュージカル映画です。主演はサマンサ・バークス、ラミン・カリムルー、共演はジョーン・コリンズ、フルール・イースト、ジョージ・マグワイア他。
どう考えてもミュージカル向きと思えない物語を敢えてミュージカルで表現した理由に興味があって観てみたのですが、その点は「なるほど」という感じ。
ストレートプレイなら陳腐過ぎて物語として成立しない退屈な話を、ミュージカルという表現を使うことで観客を満足させられる代物に見せることができるわけですから。
が、それはあくまで「舞台なら」ですけどね。
生の演技、生の歌があれば、それだけで充分に楽しめると思いますが、映像では「生」でない分、物語としての面白味もなければ鑑賞には耐えません。
まさに映画にすること自体が間違いのミュージカル。
何でも映像化すればいいというものではないことくらい誰でも知っているはずなのに、何故この作品を映画化しちゃったんでしょうね。
「スピリットウォーカー」('21)
12時間ごとに違う人間の体に乗り移るようになってしまった記憶喪失の男が、命を狙われながらも記憶と真実を求めて闘うさまを描いたアクションスリラーです。 主演はユン・ゲサンさん、共演はイム・ジヨンさん、パク・ヨンウさん、パク・ジファンさん、ユ・スンモクさん、イ・ソンウクさん他。
アイデアは面白いし、アクションスリラーとしてもそれなりに楽しめたのだけれど、ストーリー自体があまりにテキトーなのが![]()
猛烈な勢いで突っ走ることで、ご都合主義全開の展開もあまり気にならないようにはなっていましたけど、それにしても…。
特に、あれだけ人を殺すことに躊躇のない連中が、主人公とその恋人だけは何故かなかなか殺そうとしないというは、いくらなんでも無理があります。
アイデアありきで、ストーリーが後付けなので仕方ないんでしょうけど、本当にもったいないです。
「美しき運命の傷痕」('05)
22年前に起きた「事件」によって幼くして父を亡くした3姉妹が抱える問題と、父の死の真相を描いた人間ドラマです。主演はエマニュエル・ベアール、カラン・ヴィアール、マリー・ジラン、共演はキャロル・ブーケ、ジャック・ペラン、ジャック・ガンブラン、ジャン・ロシュフォール、ギヨーム・カネ、マリアム・ダボ他。
3姉妹が現在抱えている問題が、22年前の父の死のトラウマから来ているとしたい作り手の意図はわかるんですけど、この映画を観ていると、父親の死そのものよりも、両親のそもそもの関係やその後の母親の育て方の方がよっぽど問題に見えるので、もっと母親の毒親ぶりを告発する内容の方がしっくりきたのではないかと思えてなりません。
最終的に誰も悪くないかのような結末にはもやもやしちゃいます。
「EXPO−爆発物処理班−」('22)
連続爆弾テロ事件に挑むロンドン警視庁・爆発物処理班の女性を描いたサスペンスドラマシリーズ全6話です。主演はヴィッキー・マクルア、共演はマーク・スタンリー、ウォーレン・ブラウン、エイドリアン・レスター、ケリー・ゴッドリマン、マンジンダー・ヴァーク、ナディーン・マーシャル、カル・マカニンク、エリック・シャンゴ、ユアン・ミッチェル他。
悲痛…。
ミステリとしては真犯人は見え見えだし、動機にしろ、最後にとる言動にしろ、かなり陳腐。あまりに既視感のある話で「また、これかよ…」という気分に。
それでも、爆発物処理班の仕事の過酷さはリアルに伝わってくるし、主人公の物語としてはあまりに悲惨なストーリーでかなり強烈なインパクトがあります。
主人公がこれだけ辛い経験をしても、それでもなお仕事を続けていく、その逞しさには魅力を感じますし、彼女をとりまく人間模様にも興味があるので、製作が決まったという第2シリーズを今から楽しみにしています。
「ダウントン・アビー/新たなる時代へ」('22)
1912年から1925年のイギリスを舞台に、ある伯爵家とその使用人たちの生活を描いた人気テレビシリーズのその後(1927年)を描いた映画版の1年後を舞台にした続編です。出演はヒュー・ボネヴィル、エリザベス・マクガヴァン、マギー・スミス、ミシェル・ドッカリー、ジム・カーター、イメルダ・スタウントン、ヒュー・ダンシー、ローラ・ハドック、ナタリー・バイ他。
→ Wikipedia「ダウントン・アビー/新たなる時代へ」
あぁ、おもしろかった (^O^)
はっきり言ってしまうと、映画にするほどの内容ではないし、テレビシリーズのスペシャル版で充分だとは思いますが、それでも魅力的な登場人物たちの「その後」が観られるのは嬉しいし、サブタイトル通りの「新たなる時代」を感じさせるエンディングは![]()
それにしても、前作の映画版を観た時にも感じたのですが、ジュリアン・フェロウズの脚本は実に見事。これだけ多くの登場人物がいながら、それぞれにちゃんと見せ場を用意して、それでも盛り込み過ぎと感じさせずに2時間程度の尺にしっかりと収めているんですから。
とにかく、このシリーズはできるだけ長く続けて欲しいです。
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「愛する人に伝える言葉」('21)
末期がんで余命宣告を受けた演劇教師が、人生の整理に努めながら死と対峙する姿を描いた人間ドラマです。主演はブノワ・マジメル、共演はカトリーヌ・ドヌーヴ、セシル・ドゥ・フランス、ガブリエル・サラ、オスカー・モーガン他。
この手の題材を扱った映画はどうしても「お涙頂戴」の陳腐な話になりがちで、この映画にもそういう要素がないわけではないですが、それでも、この映画で注目すべきは主治医をはじめとする医療関係者側の人々の姿も描いている点。
これによって物語の普遍性が一段と高まり、観る人の多くに「自分なら死をどのように迎えたいか」また「自分の愛する人の死をどのように受け入れるか」を感情的ではなく、冷静に考えさせる効果を生んでいるように感じました。
そして何より心に残ったのは主治医エデのキャラクター造形。
演じているのはプロの役者ではなく、現役のガン専門医であるガブリエル・サラ。エマニュエル・ベルコ監督が彼の経験をもとに本作を撮ろうと考えたとのことですが、その説得力は見事としか言いようがありません。彼の発する言葉の全てが、数多くの患者とその家族に接してきた彼だからこそ言えるものであり、彼の「誠実さ」と「包容力」の塊のような姿には、自分の最期もこんな素敵な医師に診てもらいたいと思う人は少なくないはず。
ある意味で「理想的な死」を描いた物語であり、既に自分のことを含めて「死」について考えざるを得ない年齢になった自分にとっても他人事ではない、胸に迫る切実な映画でした。
「あるいは裏切りという名の犬」('04)
実話を下敷きに、パリ警視庁の次期長官の座を目指すライバルの男性2人を描いた犯罪ドラマ映画です。主演はダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、共演はアンドレ・デュソリエ、ヴァレリア・ゴリノ、ロシュディ・ゼム、ミレーヌ・ドモンジョ他。
韓国版リメイク「ビースト」('19) を先に観てしまったせいもあるのでしょうが、韓国版の方が面白かったな…。こちらも充分に良くできた「フレンチノワール」なんですけどね…。
韓国版では主人公2人が「どっちもどっち」であるのに対し、フランス版は勧善懲悪とまでは言えないものの、かなり善悪がはっきりしていて、その分、わかりやすいし、感情移入もしやすく、娯楽映画としてはこれで充分だとは思います。それでも、韓国版の、どちらにも完全に感情移入はできないけれども、猛烈に突っ走る勢いを観た後では、どうしても物足りなく感じてしまうのです…。
やはりこちらを先に観てから韓国版を観るべきだったと後悔しています…。
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「ミスタームーンライト 1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢」('23)
1996年に武道館で行われたビートルズの伝説的コンサートの舞台裏を、多くの関係者による証言から描いたドキュメンタリー映画です。
表向きの話だけでなく、資金調達の話や宣伝活動での「やらせ」など、通常は公にされないような裏話まで当事者が顔を出して証言していているのがとにかく印象的。半世紀以上が過ぎ、とっくに「時効」になっているという感覚なんでしょうね。
また、ビートルズの存在を日本の戦後音楽史の中で捉えるだけでなく、日本の文化や社会に与えた影響にまで言及したり、最近まで公にされていなかった当時の映像を紹介したり、ビートルズに特に思い入れがない僕でも「おおっ!!」と思ってしまうような内容で観応えがありました。
少なくともビートルズのファンなら必見ですし、そうでない方も一見の価値はあると思います。
「MEN 同じ顔の男たち」('22)
夫の死を目の前で見てしまった心の傷を癒すために地方で独り暮らしを始めた女性が、周囲の男性たちがほぼ同じ顔をしているなど、悪夢のような経験をするさまを描いたサスペンスホラーです。主演はジェシー・バックリー、共演はロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン他。
「面白い」映画でした。
主人公が見舞われる奇妙な出来事について何も説明がないので、観る側がそれぞれ自由に解釈すればよいと思うのですが、最後まで観て、僕はこの映画は「コメディ」なんだと思いました。
確かにホラーではあるし、主人公が抱えることになったトラウマを考えればシリアスな人間ドラマでもあるのですが、それでも最後に再会した「ある人物」の言葉に対する主人公の呆れたような表情から、この映画は「世の中の男ってどうしてこんなにキモくてゲスな奴ばっかりなの?」「男って本当にバカでクズ!!」という世の女性たちの怒りを込めた嘆きを描いた一種の社会派映画であり、同時にコメディなんだと思えてきたのです。
ただ、グロテスクな描写が多いので観る人は相当に選ぶと思います (^^)v
