「ビースト」('22)
家族を守るため、村1つを壊滅させた凶暴なモンスターライオンに立ち向かう父親の死闘を描いたサバイバルアクションです。主演はイドリス・エルバ、共演はシャールト・コプリー、イヤナ・ハリー、リア・ジェフリーズ他。
「イドリス・エルバとライオンのガチ対決!!」みたいな宣伝文句があったので、もっと現実離れした内容かと思っていたら、意外に普通の話でちょっと肩透かし。結末も呆気なくて生煮え感。もちろん、いろいろ都合が良過ぎて現実離れしているところはありましたけどね (^^;;;
内容よりも、長回しを多用した演出が印象的。それが本当に良い効果を生んでいたかはちょっと微妙なところもありますが、少なくとも臨場感はあったと思います。
ただ、夜のシーンがいかにもセット撮影という感じのチープな映像で、ここはもうちょっとなんとかならなかったのかなぁと残念。
「愛欲の渦」('20)
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスと港町ロサリオを舞台に、それぞれの町に暮らす対照的な2人の女性と関係を持ち続ける船員の男の運命を描いた官能ドラマ映画です。主演はフアン・バルベリーニ、共演はナタリア・テナ、ベラ・カメロ、ディルク・マルテンス、アレクサンドル・カーティ、マルセロ・ダンドレア他。
確かに「官能映画」ではありますが、性描写はそこまで激しくないし、美しく撮られているので比較的観やすい映画です。
あとは、主人公の「クズ男」ぶりをどう思うかによって映画自体の受け止め方も大きく変わるでしょう。
自分としては、主人公はもっと痛い目に遭うべきだし、もっと絶望を味合わせるべきだと思うので、結末には不満 (^^)
「ダークスカイズ」('13)
郊外の静かな住宅地に暮らす家族を次々と襲う怪奇現象を描いたサスペンスホラーです。主演はケリー・ラッセル、ジョシュ・ハミルトン、共演はダコタ・ゴヨ、ケイダン・ロケット、J・K・シモンズ他。
新鮮味は全く感じませんでしたが、ホラー映画としては充分に楽しめました。キャストも合っているし、ホラーの演出も悪くないですし。
ただ、最後にちょっとしたひねりはあったものの、あまりにインパクトが弱く、平凡な結末だったのは残念。
ちょっと惜しい。
「フィル・ティペット 狂気と怪物たち」('19)
希代のストップモーションアニメーター、フィル・ティペットの足跡・功績を振り返ったフランスのドキュメンタリー映画です。出演はフィル・ティペット、ジョー・ダンテ、ポール・ヴァーホーヴェン、ジョン・デーヴィソン、デニス・ミューレン他。
フィル・ティペットの実績はそれなりに知っているつもりでしたが、改めてこうやって1本の映画にまとめられて紹介されると、彼の才能には本当に驚かされます。本人は自分のことを芸術家ではなく、あくまで職人だと述べていますが、このセンスは明らかに芸術家。
この映画を観る前は気難しい人だと思っていたので、気さくな人物だというのはちょっと意外でしたが、その気さくさが、CGの登場で消えると思われたストップモーションアニメの技術を、逆にCGに活かすという柔軟性につながっているのかなと思ったりもします。
そして何より、このドキュメンタリー映画で印象に残ったのは妻の存在。彼女の一目惚れで、彼女からのプロポーズで結婚。その後は公私にわたるパートナーとして夫を支え続け、経営のセンスの全くない夫に代わって、夫のスタジオの社長を務めているのは、夫の才能を信じ、尊敬しているからこそできることだと思います。
ただ、彼の渾身の最新作である「マッドゴッド」('21) は、彼の好みが前面に出ているのはわかるのですが、あまりにグロテスクで生理的嫌悪感をもよおす描写が多いので僕は苦手ですし、二度と観たくはないです (^^;;;
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「殺しの烙印」('67)
殺し屋同士の暗闘を鈴木清順監督が奇抜な形で描いた問題作にして世界的カルト映画とされるアクション映画です。主演は宍戸錠さん、共演は真理アンヌさん、小川万里子さん、南原宏治さん、玉川伊佐男さん、南廣さん、長弘さん他。
とにかくビックリ (@o@)
あまりに奇抜すぎて、これが1967年に公開された日本映画だということに驚くしかありません。しかし同時に、その後の映画や漫画、アニメなどの創作物に与えた影響の大きさもよくわかりました。
通常ならあるべきシーンやカットがないため突然時間がジャンプしたように見える、省略の多い独特の演出に最初は戸惑いましたが、中盤以降の不条理劇風の展開は好みだし、舞台劇風の演出をはじめ、凝った画面構成と照明など、映像の美しさにすっかり魅了されてしまいました。
とにかく、ストーリーはどうでもいいんです。
モノクロの映像の美しさを堪能すべきアート作品なのですから。
「最後まで行く」('14)
通行人を車ではねて死なせてしまう事故を起こしながら、死体を隠して事故を隠蔽した悪徳刑事が次々と災難に見舞われ、悪戦苦闘する姿を描いたサスペンスコメディです。主演はイ・ソンギュンさん、共演はチョ・ジヌンさん、チョン・マンシクさん、シン・ジョングンさん、キム・ドンヨンさん他。
面白かったぁ (^O^)
観る前は、イ・ソンギュンさんがどう考えても刑事役に合っているとは思えないので「どうかなぁ」と思っていたのですが、むしろ刑事に見えないところが本作のコミカルな部分にぴったり合っていて「なるほど」と感心![]()
いろいろ都合が良過ぎるところもあるのですが、そんなことを気にしている暇などないほど猛烈な勢いで突っ走る展開もいい (^^)v
そして何より、チョ・ジヌンさんの縦にも横にも大きな体格が「怪物」感をストレートに表していて説得力抜群。
後味もいいし、とにかく娯楽映画に徹しているのがいいです。
お勧め (^^)v
「スノータウン」('11)
1990年代にオーストラリア南部アデレードのスノータウン周辺で起きた猟奇的な連続殺人事件を、犯行グループの仲間にさせられた16歳の少年の目を通して描いたサスペンス映画です。主演はルーカス・ピッタウェイ、共演はダニエル・ヘンシュオール、ルイーズ・ハリス、アンソニー・グローヴス、デヴィッド・ウォーカー他。
典型的な「有害な男らしさ(toxic masculinity)」が原因の事件で全く救いのない話。
直接的な描写は控えめにしつつも、ストーリーとしては徹底して残酷で、後味を悪くしているのも作り手の意図通りなんでしょうけどね…。
とにかく主人公よりも、母親の恋人で主犯格の男を演じたダニエル・ヘンシュオールの「平凡そうに見えるサイコパス」っぷりが印象的でした。
「ニトラム/NITRAM」('21)
1996年4月28日にオーストラリアのタスマニア島で起きた、同国史上最悪の無差別銃乱射事件を引き起こした当時28歳の青年マーティン(ニトラム)を主人公に、子供の頃から情緒不安定で絶えずバカにされながら育った彼がいかにして冷酷な無差別殺人犯へと変貌を遂げたかを描いたドラマ映画です。主演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、共演はジュディ・デイヴィス、エッシー・デイヴィス、ショーン・キーナン、アンソニー・ラパリア他。
観る前は銃乱射事件を「精神的な障害のために周囲から迫害され続けてきた男の復讐」のように描いているのかと思っていたのですが、そういった犯人を同情的に描くことは一切なく、一貫して「理解不能で同情の余地のない人物」として描いているのが印象的。
「物語」としての面白さは皆無ですが、こういう危険人物が実在し、そういった人物でも容易に銃が手に入れられてしまう社会への批判の意図は強く感じました。
この映画のエピローグでも説明されているように、この事件をきっかけにオーストラリアでは銃規制が厳しくなったものの、実際には充分に遵守されておらず、この事件当時よりも多くの銃が出回っているというのは実に嘆かわしい話です。
「英雄の証明」('21)
SNSに振り回される服役囚の男性の運命を描いた、アスガル・ファルハーディー監督による人間ドラマです。主演はアミール・ジャディディ、共演はモーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディ、サレー・カリマイ他。
切ない話だったなぁ…。
主人公は決して悪人ではありませんが、一貫して呆れるほど浅はかで愚か。観ていてイライラするほど。彼の不遇は基本的に自らの愚かさのため。前の妻に逃げられたのも、借金の貸主である元義兄に憎まれているのも、自業自得といえば自業自得。とにかく、そんな愚か者の主人公に振り回され続ける息子が可哀想でなりません。
しかし「浅はかで愚か」であることは罪なのでしょうか?
あまりに愚かすぎて共感しづらいところはありますし、信用されないのは自業自得と切り捨てたくもなりますが、ここまでの「罰」を受けるほどなのでしょうか?
いつもながら、アスガル・ファルハーディー監督は「極悪人では決してないごく普通の人間の愚かさやちょっとした悪意が招く、取り返しのつかない悲劇」を鋭く描いており、高い評価を得ているのも大いに納得できる作品でした。
「TITANE/チタン」('21)
幼少時に起こした自動車事故で重傷を負って頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれた女性がたどる数奇な運命を描いたサスペンス映画です。主演はアガト・ルセル、共演はヴァンサン・ランドン、ギャランス・マリリエ、ライ・サラメ、ドミニク・フロ他。
不思議な映画。
ジャンル分けが難しい、というか、さまざまな要素が複雑に絡み合っていて、特に前半と後半では全く違う作品のよう。一見すると支離滅裂で現実離れした世界観なのだけれど、最後まで観るとちゃんと一貫性もある…。
「よくもまぁ、こんな話を思いついたなぁ」と感心しちゃうと同時に、クレイジーすぎて「呆れちゃう」部分もあるんだけどね (^^;;;
ただ、第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞したのは大いに納得。いかにもカンヌが好きそうな感じ。
それに、こういうエログロな作品って若手の男性映画監督が撮りそうなイメージだけれど、実際には1983年生まれの女性映画監督が撮っているのはちょっと驚きだし、主人公を女性に設定しているところも新鮮。