Marc のぷーたろー日記 -71ページ目

「ナイトライド 時間は嗤う」('21)

 

イギリス・北アイルランドの首府ベルファストを舞台に、恋人のために裏社会から足を洗おうとハイリスク・ハイリターンの大仕事に打って出たものの、思わぬトラブルに遭遇し、真夜中の街を車で奔走することなった男をワンショットの手法で描いた犯罪スリラーです。主演はモー・ダンフォード、共演はジョアナ・ヒベイロ、ジェラルド・ジョーダン、キアラン・フリン、ジョン・トラヴァース、スティーヴン・レイ他。

 

「時間が勝負」という内容なので、ワンショットで描く意味は間違いなくあるし、それが良い効果を生んでいることは確か。

 

ただ、ストーリーがあまりにテキトーだったなぁ…。

 

弟分のヘマもそこからの挽回も全てがご都合主義。

 

もちろん、同じご都合主義でもガイ・リッチーみたいな見せ方なら充分に楽しめるんだけど、ワンショットのせいでそういう凝った見せ方はできないし…。

 

致命的につまらないというほどではないけれど、大して面白くもない映画でした。

「ソフト/クワイエット」('22)

 

差別主義的な女性グループがヘイトクライムへ駆り立てられていく狂気をワンショットで描いたサスペンススリラーです。主演はステファニー・エステス、共演はオリヴィア・ルッカルディ、エレノア・ピエンタ、デイナ・ミリキャン、メリッサ・パウロ、シシー・リー他。

 

Wikipedia「ソフト/クワイエット」

 

ワンショットで描くという制約のせいか、キャラクター造形を含めて、ちょっと単純化し過ぎているような気もしますが、不幸な偶然が重なって取り返しのつかない事態に陥ってしまうのは確かに「あり得る」と思える説得力はありました。

 

実際に起きているヘイトクライムの中にも、こういった「計画的ではない」ケースは少なくないんでしょう。もちろん、計画的でないからと言って許されるものではないですし、極端な思想を持った人間同士が集まること自体が危険ということを示している映画だと思います。

「生きる LIVING」('22)

 

黒澤明監督の名作「生きる」('52) を、イギリスの名優ビル・ナイの主演、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの脚本でリメイクした人間ドラマです。共演はエイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク、ヒューバート・バートン他。

 

Wikipedia「生きる LIVING」

 

「生きる」は日本に限定されない普遍性のある物語なので、海外でのリメイクは「あり」だと思っていましたし、もし欧米でリメイクするならイギリスが一番良いかなと漠然と思っていました。なので、このリメイクの話を聞いたときは「やっぱり」という感覚でしたし、脚本をカズオ・イシグロが担当するということに期待は高まりました。ただ、主演がビル・ナイと聞いたときにはちょっと微妙な気分に。確かに名優ではあるけれど、志村喬さんとはあまりにタイプが違うので。

 

しかし、実際に観てみると、そんなことは杞憂でした。

 

主人公のキャラクター造形は「生きる」を踏襲しつつも、イギリス人らしいキャラクターに「微調整」していて、それにビル・ナイがぴたりとハマっています。リメイクの経緯からすると、ビル・ナイに当て書きしているのかもしれませんが、そのおかげで、舞台を単に日本からイギリスに変えただけでなく、ちゃんと「イギリスの映画」になっているのはグッド!

 

また、オリジナル作品が140分を超える長尺だったのに対し、それよりも40分以上も短い尺にし、主人公の「生き様」のみにフォーカスしているのも悪くない翻案。

 

「生きる」を観たことがある人ならば一見の価値はあると思います。

 

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「シャザム!〜神々の怒り〜」('23)

 

見た目は大人だが中身は少年というDCコミックスの勇者シャザムを実写化したヒーローアクション映画「シャザム!」('19) の続編です。主演はザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、共演はジャック・ディラン・グレイザー、アダム・ブロディ、ヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、レイチェル・ゼグラー、ジャイモン・ハンスウ、ガル・ガドット他。

 

Wikipedia「シャザム!〜神々の怒り〜」

 

大ヒットした前作と比べると、興行的にも批評的にも失敗に終わったようなので、全く期待しないで観たのですが、

 

別にそんなに悪くないんじゃない?

「シャザム!」って元々バカバカしい話だし。

 

というのが正直な感想。そもそも前作も自分には合わなかったし、その自分との合わなさ度合いも前作と変わらないし。

 

むしろ前作より良かったと思える点も。

 

前作は、人種も性別も障碍の有無も関係なく、誰でもスーパーヒーローになれるというメッセージは悪くないのだけれど、何の努力もせずに神の如き力を子供たちが安易に手に入れてしまうことに違和感があり、そこが自分には最も合わなかったポイント。

 

それに対して本作では、主人公以外の子供たちがスーパーヒーローの力を使わずに、自らの本来の知恵と勇気で戦うというのはグッド!

 

それにしても、主人公の変身前の少年を演じているアッシャー・エンジェルが前作からの数年ですっかり大人になってしまい、もはや別人になっていたのにはちょっとビックリ。最も容姿が変わる年頃ではありますけど、前作での「おバカな少年」感がすっかりなくなり、むしろ「頼れる兄貴分」みたいになっていて、本来の役としての「おバカキャラ」を変身後のザッカリー・リーヴァイだけが演じていたのはちょっと気になりました。

 

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「65/シックスティ・ファイブ」('23)

 

巨大隕石が迫る6500万年前の地球を舞台に、不時着した異星のパイロットと生存者の少女が、凶暴な恐竜を相手に生還を目指す姿を描いたSFサバイバル映画です。主演はアダム・ドライヴァー、アリアナ・グリーンブラット、共演はクロエ・コールマン、ニカ・キング他。

 

Wikipedia「65/シックスティ・ファイブ」

 

作り手に何かこだわりがあるのはわかります。

 

舞台を単なる「モンスターの住む星」にするのではなく、6500万年前の地球にするとか。

 

主人公と少女の間では言葉が通じない設定だとか。

 

ところが、それらの設定が映画自体を面白くするとか、深みを与えているとか、そういった効果が全くないのはダウン

 

とにかく、細かいことが気になってストーリーに全く入り込めないくらいには「大して面白くなかった」ということです。

「いつかの君にもわかること」('20)

 

余命わずかなシングルファーザーが、4歳の息子の新たな家族を見つけようと、里親探しに奔走するさまを描いた人間ドラマです。主演はジェームズ・ノートン、共演はダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンズ、ヴァレリー・オコナー他。

 

観る前からわかってはいましたが、これは泣く (ToT)

 

過剰な演出や演技を排除し、音楽も控えめ、一貫して淡々と描かれていますが、それでも、この題材であれば心を揺さぶるのは当たり前と言えば当たり前。

 

成功したエリート役のイメージがあるジェームズ・ノートンがこの役を演じることに初めは微妙な違和感がありましたが、すぐに慣れましたし、何と言っても子役のダニエル・ラモントが、子役(特に日本の)にありがちな嫌味がないのがグッド!

 

実話から着想を得た作品だそうですが、子供がいるいないに関わらず、成人であれば主人公に自分を重ねて観てしまう映画でしょう。

「幻滅」('21)

 

19世紀のフランスを代表する文豪H・D・バルザックの同名小説を今日的な視点から映画化した風刺群像劇です。主演はバンジャマン・ヴォワザン、共演はセシル・ドゥ・フランス、グザヴィエ・ドラン、ジャンヌ・バリバール、ジェラール・ドパルデュー他。

 

観応えあり。

 

1人の青年の虚飾に塗れた成功と、そこからの転落を描いた物語としては定番な題材で、ストーリー展開に意外性は全くありません。

 

しかし、19世紀前半を舞台にした「古典」でありながらも、極めて21世紀的な観点で描かれているのが素晴らしい。フェイクニュースが蔓延する今の時代だからこそ観るべき作品に仕上がっています。

 

2時間半にも及ぶ長尺なので、他人に気軽にお勧めするわけにはいかないのでしょうが、それでも1人でも多くの現代を生きる人々に観てもらいたいです。

「キング・オブ・キラーズ」('23)

 

グラフィックノベルを原作とし、病気の娘を救うために、東京で開催される「暗殺者コンテスト」に参加することになった一流暗殺者を描いたバイオレンスアクションです。主演はアラン・ムーシ、共演はスティーヴン・ドーフ、フランク・グリロ、シャノン・クック、ケヴィン・グレイヴォー他。

 

映画というよりはテレビゲームっぽい。

 

と言っても、テレビゲームというものを全くやったことがない自分が言っても説得力はないですけど (^^;;;

 

それでも、フランク・グリロは役に合っているし、主演のアラン・ムーシも「地味」で「華が全くない」ところが「殺し屋ではあっても表向きは平凡な人物として暮らしている」という設定には合っていますし、難しいことを考えなければ、それなりに楽しめると思います。

 

ただ、日本の描き方は酷かったなぁ…。おかしいことだらけで突っ込む気力もなくすレベル。

 

最近のハリウッド映画は昔に比べればだいぶマシになってきているのに、その流れに逆行するかのような雑さ。そもそも東京を舞台にする意味が全くないし、おそらく東京の街中のシーンは資料映像を流用しているだけで、実際には撮影していないんでしょうし。

 

とにかく、その程度のC級映画と割り切って観るべきなんでしょう。

「丘の上の本屋さん」('21)

 

イタリア中部の美しい村で小さな古書店を営む初老の店主が、知的好奇心旺盛な移民の少年と、古今東西の書物を通じて交流を重ねるさまを描いたイタリアのドラマ映画です。主演はレモ・ジローネ、ディディー・ローレンツ・チュンブ、共演はコッラード・フォルトゥーナ、ピノ・カラブレーゼ、フェデリコ・ペロッタ他。

 

童話や絵本のような世界観。

 

でも、子供向けかと言われると、子供には説明しづらいシーンもあり、どの層に向けた映画なのかちょっと疑問。

 

それでも、美しい村の風景を含め、観ていて心地よさのある映画ではありました。

 

ただ、最後に明らかになる主人公が少年に贈った本のタイトルにはガッカリ。

 

意図はわかりますけど、あまりに狙いすぎだし、説教くさい。

 

このワンカットのせいで、それまでに感じた心地よさが全て吹き飛び、不快感だけが残ってしまいました。

 

もう二度と観ることはないと思います。

「オマージュ」('21)

 

ヒット作に恵まれず、新作を撮るめどが立たない状態にある映画監督の中年女性が、1960年代に活動した女性監督による映画「女判事」の失われた音声の修復作業を進める中で、自らの人生を見つめ直す姿を描いた人間ドラマです。主演はイ・ジョンウンさん、共演はクォン・ヘヒョさん、タン・ジュンサンさん、コ・ソヒさん、イ・ジュシルさん他。

 

輝国山人の韓国映画「オマージュ」

 

う〜ん…。

 

感動的な物語にできる題材を敢えてそうせず、いまだに女性に対する抑圧が強い韓国社会における働く既婚女性の姿を、時にコミカルに、時にファンタジックに淡々と描いているあたりは作り手の強いこだわりを感じますし、意図は理解できます。

 

が、単純に話として面白くない…。

 

1960年代の軍事独裁政権下にあった韓国では検閲が厳しく、自由な映画作りができなかったことや、女性への差別が酷かったことはもっと深掘りして描いて欲しかったなぁ…。作り手はそこにあまり焦点を当てたくなかったんでしょうけど、いくらなんでも描き方があっさりし過ぎ。

 

期待が大きかっただけにガッカリ。

 

ただ、主演に「普通の韓国のおばさん」にしか見えないイ・ジョンウンさんを起用しているのだけは文句なしグッド!