猫と、とうさん
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コロナ禍中の2020年を主な舞台に、愛猫を心の支えにして試練を乗り越えたキャットダッド(=猫の飼い主たち)の姿を描いたドキュメンタリー映画です。
観る前は「猫とおじさんの萌え動画」を延々と見せる映画なのかと思いきや、かなりメッセージ性の強い内容でビックリ。
大前提として、アメリカ社会では、猫が好きだとか、猫を飼っているなんて男性は「男らしくない」という価値観が今も根強くあるのだということ。
この映画は、そんなアメリカ社会に向けて、猫の愛らしさ、猫を飼うことの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいとの意図を持って撮られているのです。
この映画が実際にどれくらいの影響を与えたのかはわかりませんが、SNS上でこれだけ多くの「猫動画」が広まっていることを見ても、アメリカ社会も変わりつつあるんだろうなと思いますし、そう信じています (^^)
秋のニューヨークで出会った香港人の男女が繰り広げる恋を描いた恋愛映画です。主演はチョウ・ユンファ、チェリー・チェン、共演はダニー・チャン、ジジ・ウォン他。
全く知らない映画だったのですが、評価も高いみたいだし、チョウ・ユンファが主演なので、それなりに楽しめるだろうと期待して観てみたら、驚くほど中身がなくてすっかすか![]()
公開当時、まだ若い頃に観ていたら印象はだいぶ違ったのかもしれませんが、それにしても、評価が高いのは当時としてはニューヨークでロケ撮影した香港映画が珍しかったからなんでしょうか?
とにかく、ニューヨークを舞台にしているとは言っても、ただの「書割」程度の意味しかなく、ニューヨークが舞台であること自体に何の意味もない。登場人物も中華系ばかりでセリフもほとんど広東語なので、これならアジアの中国人街がある国のちょっと小洒落た場所で撮影しても同じ。
それでも、主演2人は間違いなく美男美女だし、2人のファン向けのアイドル映画だと割り切れば充分に楽しめるのでしょう。
と言いつつも、僕自身は主人公2人のキャラクターに魅力を全く感じませんでしたし、むしろ嫌悪感すら抱いちゃったくらいなんですけどね (^^;;;
アジア某国を舞台に、連続して起きている華僑の令嬢を狙った誘拐・脅迫事件の裏に潜む悪徳IT企業に立ち向かう女性特殊工作員チームの活躍を描いたアクション映画です。主演はリー・マァンマァン、共演はウェイラン・チェン、チャン・ドン、チャン・シュアンリ、リー・ユエ他。
中国版「チャーリーズ・エンジェル」ってことなんでしょうけど、そこまでノーテンキな明るさはなく、基本的にはアジア的陰鬱な世界観。それなのにところどころに中途半端にコミカルな要素を加えるミスマッチさは意図的なんでしょうけど違和感しかない。
そしてとにかく古臭い。
サイバーの要素を入れることで現代っぽく見せているけれど、それ以外は男女の描き分けにしろ、悪役の描き方にしろ、全てが古臭く、1970年代から1980年代のノリ。
また、いかにも今の中国映画らしいのは「悪いのは全て外国(白人)資本の大企業」としているところ。悪玉のボスや幹部は白人で、下っ端の部下はアフリカ系や東南アジア・インド系という露骨な人種差別的表現を恥ずかしげもなく見せているあたりも、中国らしい下品さ。
こんなくだらないB級アクション映画にも「中国という国の後進性」ははっきりと見えてしまうのです。
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ある豪華客船が海賊に襲撃され、無人島に避難した乗員・乗客たちがサバイバル生活を送る中で主従が逆転する様を描いた不条理劇です。出演はハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソン、ヴィッキ・ベルリン、ズラッコ・ブリッチ、ドリー・デ・レオン他。
風刺劇としてはとてもわかりやすく、よく考えられて作られている。
が、それがあまりに「これ見よがし」で鼻につく。無駄にダラダラと長いし。
最初は笑えても、徐々に笑えるはずの部分で全く笑えなくなり、観ていて気持ちがどんどん冷めていくのを感じるほど。
同じリューベン・オストルンド監督のコメディなら「フレンチアルプスで起きたこと」('14) の方がはるかに面白かった。残念。
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イランの聖地で実際に起きた娼婦連続殺人事件をもとにした社会派のサスペンス映画です。主演はメフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ、共演はアラシュ・アシュティアニ、フォルザン・ジャムシドネジャド、シナ・パルヴァーネ他。
イラン社会に根強く残る女性蔑視の問題など、社会的メッセージ性を強く前面に出しつつも、サスペンス映画としての娯楽性も充分に持たせていて、映画としての出来は![]()
監督の意図が前面に出過ぎているため、誇張も多く、イラン政府やイラン国民から激しい反発を受けているのもわかりますが、その反発も含めて「イランという国の現実」を表現している作品と言えると思います。
とにかく、とても心配なのは、この映画の中心的関係者が現在はイランを離れ、国外で活動している一方で、犯人役のメフディ・バジェスタニはイラン国内で活動している俳優だけに、この映画に出演したことでイラン国内で何らかの迫害を受ける可能性が高いこと。これもまた「イランという国の現実」なわけです。
母親と暮らす小学生の息子の周囲で続く不審な出来事を通じて、現代人それぞれの心に潜む「怪物」に迫った、是枝裕和監督によるドラマ映画です。出演は安藤サクラさん、永山瑛太さん、黒川想矢さん、柊木陽太さん、高畑充希さん、角田晃広さん、中村獅童さん、田中裕子さん他。
第76回カンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞した作品ですが、その一方でクィア当事者からは問題点を指摘された本作。そのクィアの要素を除けば、同じ出来事を複数の視点から描く、いわゆる「羅生門」構造を持った作品としての出来は素晴らしいです。人間がいかに自分に都合よく物事をとらえ、記憶する生き物であるかがよくわかります。同じカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したのも納得。
ただ、クィアの描き方に関しては、この映画が20年以上前に作られた作品なら問題視されることはなかったと思うのですが、2020年代の今の時代に作られた映画としては確かに難あり。少なくとも子供たちに間違ったメッセージを送る可能性の高い作品ではあります。そんな、クィアの描き方に問題のある作品がどうしてクィア・パルム賞を受賞できたのか、それが不思議でなりません。
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犯罪組織に誘拐された10代の娘を取り戻すべく懸命に奔走するシングルマザーの姿を描いた社会派スリラーです。主演はアルセリア・ラミレス、共演はアルバロ・ゲレロ、アジェレン・ムソ、ホルヘ・A・ヒメネス、デニッセ・アスピルクエタ他。
中南米では誘拐や殺人が日常茶飯事と言われているので知識としては充分に知っていても、こうやってつぶさに映像で見せられると、日本で生まれ育った自分には「ありえない」としか思えないことの連続で言葉を失います…。
着想元となった事件をどこまで忠実に再現しているのかわかりませんが、少なくとも映画で描かれている通りであれば、メキシコという国はもはや「国」としての体をなしておらず、まともな人間であれば一刻も早く国を捨てて逃げ出すべきレベル。世界にはここまで酷い国が存在する現実を知るには良い教材かもしれません。
その一方で、あまりに極端な内容なので、メキシコに対する偏見を助長するものでもあり、観ていてもやもやした気持ちになる映画でした。
母国カメルーンからヨーロッパに向かう途中で出会ったベナン生まれの幼い少年とともに、異国ベルギーで生きるために犯罪の世界に足を踏み入れてしまった10代の少女を描いた、ダルデンヌ兄弟によるドラマ映画です。主演はジョエリー・ムブンドゥ、共演はパブロ・シルズ、アウバン・ウカイ、タイメン・ホーファーツ他。
いつもながら、ダルデンヌ兄弟の着眼点、テーマの選び方は見事だと思います。描きたいこともわかります。
が、この映画に関しては終始ダルデンヌ兄弟の「作為」が露骨に感じられてしまって、どうしても物語に入り込めず。もちろん「ありえない」とまでは思わないですし、こういうことも充分に起こり得ることはわかりますが、見せ方が不自然に感じられてしまったのです。
特に葬儀のシーンでは「そんな呑気に参列して大丈夫な状況じゃないでしょ?」というツッコミしか感じず…。
ダルデンヌ兄弟の映画では初めて納得のいかない作品でした。
松田優作さんが一匹狼の殺し屋「鳴海昌平」を演じた「遊戯」シリーズの第1作です。共演は田坂圭子さん、荒木一郎さん、内田朝雄さん、草野大悟さん、片桐竜次さん、山西道広さん他。
非常に有名な作品であるにもかかわらず、特に興味もなかったので観ていなかったのですが、たまたま機会があったので観てみました。
松田優作のPV
清々しいまでに内容は全くなく、とにかく最初から最後まで、松田優作さんの個性や魅力をアピールする映像が延々と続くだけ。
一応、日本が舞台ではありますが、「どこの日本ですか?」と言いたくなるくらい現実離れした世界観。
普通なら「なんじゃこりゃ?!」となるところですが、そんな欠点などどうでもよくなるくらい松田優作さんの魅力が溢れていて、それだけで特異な世界観も納得させられてしまうほど。
ただ、今の時代に観ると、女性の扱いや描き方が酷すぎて、そこだけは「う〜む…」となっちゃいましたけどね (^^;;;
10年前に金銭目的で大陸の男性と偽装結婚をしていた女性が、同棲中の恋人との結婚が決まったことをきっかけに、今も偽装結婚が継続していると知り、後始末に翻弄されることになる姿を通して、香港の中国本土との微妙な関係や結婚観などを描いた社会派恋愛ドラマ映画です。主演はステフィ・タン、共演はチュー・パクホン、パウ・ヘイチン、ジン・カイジエ、イーマン・ラム他。
観る前はもっとお気楽なロマンティックコメディかと思っていたら、確かにコミカルな要素はあるものの、基本的にはかなりシリアスな話。
同棲と結婚は違うという当たり前のことをわかりやすく描いており、同棲中のカップルに対して、将来どうしたいのか、2人の関係はどうしたいのかを考えさせるきっかけになるような映画かもしれません。
ところで主人公の恋人を演じたチュー・パクホンってどこかで観たことあるなぁと思って調べてみたら、ミカ・カウリスマキ監督のフィンランド映画「世界で一番しあわせな食堂」('19) で主人公の中国人料理人を演じていた人でした (@o@)
あまりに違うタイプの役なので全く気づきませんでした (^^;;;
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