「私たちの声」('22)
世界各地の女性監督と女優たちが集結し、苦難にめげず奮闘する女性たちを力強く描いた7編の短編からなる、イタリア・インド・アメリカ・日本合作のオムニバス映画です。日本からは呉美保監督と杏さんが参加しています。
ペプシとキム
監督:タラジ・P・ヘンソン
脚本:キャサリン・ハードウィック
主演:ジェニファー・ハドソン
実在の人物を描いた作品でメッセージもはっきりしていますが、「大スター」のジェニファー・ハドソンの熱演が前面に出過ぎてしまっているような印象も。
無限の思いやり
監督・脚本:キャサリン・ハードウィック
主演:マーシャ・ゲイ・ハーデン、カーラ・デルヴィーニュ
実在の女性医師の活躍ぶりを描いており、描かれているエピソード自体は短編としてちょうどいい内容。ただ、彼女の活躍をもっと観たい気持ちが強く残り、「これで終わり?」となっちゃいましたけど (^^;;;
帰郷
監督・脚本:ルシア・プエンソ
主演:エヴァ・ロンゴリア
描きたいことはとてもとてもわかるんですが、あまりに尺が足りなくて物足りなさでいっぱい。長編にするには凡庸な題材ですが、短編でも30分くらいの尺は欲しかったところ。
私の一週間
監督・脚本:呉美保
主演:杏
短編向きの「いい話」をバランスよくまとめ上げているし、杏さんの説得力のある、演技とは思えない自然な姿が![]()
声なきサイン
監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ
脚本:ジュリア・ルイーズ・スタイガーウォルト
主演:マルゲリータ・ブイ
スリリングな内容を短い尺でうまくまとめた印象。
シェアライド
監督:リーナ・ヤーダヴ
脚本:リーナ・ヤーダヴ、シャンタヌ・サガラ、クルパ・ゲ他
主演:ジャクリーン・フェルナンデス
性的少数者に対する差別が根強く残るインドで、特にトランスジェンダー女性を勇気づけたい意図はとてもよくわかりますし、映像表現は凝っていて美しく、とても印象的。ただ、「物語」としては意味不明で、いくら短編でも、そこはもうちょっと何とかして欲しかったかなぁ。
アリア
監督・脚本:ルチア・ブルゲローニ、シルヴィア・カロッビオ
実写を交えたCGアニメーション。非常に尺が短く、映画全体のエピローグの意図があるのでしょうが、ちょっとわかりにくかったかな…。他の6作品の映像を少しはめ込むだけでも、わかりやすくなったかも。映像としては美麗。
「菩提樹 リンデンバウム」('88)
大和和紀さんの漫画「菩提樹」を原作とし、両親を失くした女子医大生のあしながおじさんとの出逢いと、愛と苦悩を描いたドラマ映画です。主演は南野陽子さん、共演は神田正輝さん、竹本孝之さん、柳沢慎吾さん、比企理恵さん、結城しのぶさん、入江若葉さん、鈴木瑞穂さん、松原千明さん、神山繁さん他。
観る前から分かってはいましたが、絵に描いたような「1980年代のアイドル映画」。舞台設定、ストーリー、キャラクター造形、その全てが古臭くて、観ている方が恥ずかしくなるレベル。
しかも、90分の尺ではどう考えても無理があり、これでは主人公が「自分の不幸に酔いしれてるだけの頭のおかしい女」にしか見えない (^^;;;
とにかく、南野陽子さんの可愛らしさを懐かしむ以外に何もない映画でした。
「哀しみのトリスターナ」('70)
スペインの文豪ベニート・ペレス・ガルドスの小説を原作とし、1920年代から1930年代のスペイン・トレドを舞台に、身寄りのない女性と、彼女を養子に迎えた貴族の愛憎を描いたドラマ映画です。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ、共演はフェルナンド・レイ、フランコ・ネロ、ローラ・ガオス他。
性的搾取の被害者である若い女性の復讐を描いた物語と言ってしまえば簡単ですが、そこまで単純ではない複雑な感情が入り混じっているのが面白い。ただ、ちょっと展開が早すぎて戸惑うところも。
原作が出版されたのが19世紀末、映画の舞台は1920年代から1930年代、そして映画が公開されたのは1970年。原作は未読ですが、映画化にあたって舞台設定以外も原作から変えられているらしく、この映画にも1970年代のフェミニズムの感覚が色濃く感じられます。
そのセンスは21世紀の今の感覚からするとちょっと古臭く感じられちゃいますが、それでも「1970年の女性映画」として映画史における価値は間違いなくあると思います。
「海をゆく者」('23)
2023年12月から2024年1月まで上演された舞台の東京・PARCO劇場での2023年12月20日の公演を収録し、WOWOWで放送したものを観ました。出演は小日向文世さん、高橋克実さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、平田満さん。第31回読売演劇大賞で高橋克実さんが優秀男優賞を受賞しています。
「みごとな伏線」「大どんでん返し」との宣伝文句にちょっと騙された気分。
確かに、伏線はあったし、どんでん返しもあったけれど、正直言って全然大したことないし、面白くもない。
ストーリーそのものよりも、個性的な登場人物たちの、この物語では描かれていない部分、特に過去の話に興味が湧き、そちらの方を観てみたいと思えるほど、登場人物のキャラクターの方が印象的でした。
とは言っても、登場人物たちが「魅力的か?」と言われると微妙ですけどね (^^;;;
ところで、5人のベテラン俳優を生年月日の順に並べると↓こんな感じ。
平田満さん:1953年11月2日
小日向文世さん:1954年1月23日
浅野和之さん:1954年2月2日
大谷亮介さん:1954年3月18日
高橋克実さん:1961年4月1日
高橋さん以外は全員同学年で、高橋さん1人だけがだいぶ若いのですが、最年長にも見える役を演じていて、しかも違和感がないのは、さすが20代の時から老け役をやってただけのことはあります (^^)
「しあわせのパン」('12)
北海道・洞爺湖の湖畔で、ある夫婦が営む小さなパンカフェに集う人々を描いたドラマ映画です。主演は原田知世さん、大泉洋さん、共演は森カンナさん、平岡祐太さん、光石研さん、八木優希さん、中村嘉葎雄さん、渡辺美佐子さん、あがた森魚さん、余貴美子さん他。
良くも悪くも、誰もが予想し、期待する通りの内容。
だからと言ってダメというわけではなく、このようなタイプの映画を観たいと思う人の期待を満たしているという意味では良作。
あまりに浮世離れした世界観(どう考えても採算が取れるはずのないカフェや登場人物たちの生活感のなさ)が気にならないと言えば嘘になりますが、水彩画のような淡い色調の映像はとても印象的でした。
ただ、この手の映画に触発されて、安易に地方への移住を決めるのだけはやめて欲しいです。
ところで、これは自分の感覚がおかしいんでしょうが、登場するパンや料理がどれも全く美味しそうに見えず、むしろ不味そうにしか見えなかったのです…。それもこの映画に微妙にハマれなかった理由です (^^;;;
「サタデー・フィクション」('19)
太平洋戦争開戦前夜の魔都・上海を舞台にしたモノクロのスパイ映画です。主演はコン・リー、共演はマーク・チャオ、パスカル・グレゴリー、トム・ヴラシア、ホァン・シャンリー、ワン・チュアンジュン、チャン・ソンウェン他、日本からはオダギリジョーさん、中島歩さんが出演しています。
モノクロの映像はとてもとても美しいし、ムードもあって印象的なのだけれど…。
それだけだった…。
でも、この映画はそれでいいんだと思います。
「ファースト・カウ」('19)
1820年のアメリカ西部を舞台に、とある商売で一攫千金をもくろむ男性2人組の運命をオフビートなタッチで描いた異色のドラマ映画です。主演はジョン・マガロ、オリオン・リー、共演はトビー・ジョーンズ、ユエン・ブレムナー、リリー・グラッドストーン他。
いわゆる西部劇と同じ舞台でありながら、およそ西部劇とは縁遠そうな非マッチョな男2人を主人公にしている新鮮さと、ほのぼのした空気感で最後まで飽きることなく観られたのですが、観終わった後はちょっと切ない…。
冒頭の現代のシーンが結末のネタバレなのか、そう見せておきながら実はどんでん返しがあるのかと観ている側をドキドキさせておきながら、そこで終わらせますか…。
好みで言えば、結末にどんでん返しとまでは言わないまでも、もう一捻り欲しかったなぁと思えて仕方ありません…。
それでも、主人公2人の「熱くない強い絆」は最後まで微笑ましかったですけどね (^^)
「6月0日 アイヒマンが処刑された日」('22)
ナチスのユダヤ人大量虐殺に関与した重要戦犯として、1962年にイスラエルで死刑に処されたアドルフ・アイヒマンの処刑の舞台裏を描いた歴史ドラマ映画です。出演はノアム・オヴァディア、ツァヒ・グラッド、アミ・スモラチク、ヨアヴ・レヴィ、トム・ハジ他。
題材としても興味深いし、建国から10数年しか経っていない当時のイスラエルを描いた群像劇としても興味深い。
が、実質的に主人公である少年が最後までどうしても好きになれず、嫌悪感があまりに強過ぎて物語に全く入り込めなかったのです。
何故この少年を物語の中心に据えたんでしょうか?
これが実在の人物で、エピローグの部分を含めて実話通りだとしたら、何故こんな人物を映画にしようと思ったのでしょうか?
同じ題材なら、社長を主人公にして、そのバックグラウンドを含めて描いた方がはるかにマシな話になったんじゃないかと思えて仕方ないのです。もちろん、それでは本来の趣旨から外れてしまうのかもしれませんが。
とにかく、作り手のセンスがあまりに自分と違い過ぎて「全く合わなかった」映画でした。
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「モスクワの伯爵」('24)
エイモア・トールズの同名ベストセラー小説を原作とし、ロシア革命後のモスクワを舞台に、高級ホテルに軟禁されることになった伯爵の30年以上にわたる人生を描いたドラマシリーズ全8話です。主演はユアン・マクレガー、共演はメアリー・エリザベス・ウィンステッド、フェインティ・バログン、ダニエル・セルケイラ、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン、ジョニー・ハリス、リア・ハーヴィ、ジョン・ヘファーナン他。
主人公の境遇が「当時の元貴族としては」あまりに恵まれ過ぎていて、イマイチ入り込めない部分もあったのですが、それでも、わかりやすく「いい話」で、原作がベストセラーであり、この映像化作品の評価が高いのも納得。ハッピーエンドとまでは言えないですが、必ずしも絶望的ではない終わり方も余韻があり、充分に楽しめる作品でした。
そして、今回もお気に入りの名優ジョニー・ハリスがめちゃめちゃ美味しい役だったのも![]()
冷酷非情な悪役に見えながら、彼独特の「常に泣いているような、悲しく訴えかけるような目」がこの役にピッタリで、出番は多くないにもかかわらず、強烈な存在感で複雑なキャラクター造形に説得力を与えていました。
個人的な好みで言えば、彼の目線から主人公を描いても面白かったんじゃないかなぁという気も。彼が主人公と接する中でどのように変わっていくのかをもっと丁寧に見せて欲しかったとどうしても思ってしまうのは、自分がジョニー・ハリスを推してるからなんでしょうけど (^^)
「イノセンツ」('21)
夏休みの郊外の団地を舞台に、不思議な力に目覚めた子どもたちの間で展開されるサイキックバトルを描いたサスペンススリラーです。主演はラーケル・レノーラ・フレットゥム、共演はアルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、サム・アシュラフ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、エレン・ドリト・ピーターセン他。
ハリウッド映画的派手な演出や派手なCGを一切使わずに「もし子供たちが不思議な力を持ってしまったら」という設定をシリアス且つリアルに描いていて、不気味さ満点。
最後はちょっとご都合主義だなぁとは思いましたが、しっかり楽しませてもらいました (^^)v
ただ、移民の子で貧しく、家庭にも恵まれていない少年をこういう設定で使うのには抵抗感があるし、しかもそこに救いが全くないのはダメでしょ。








