ジェーンとシャルロット(字幕版)
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フランスの映画スターであるシャルロット・ゲンズブールの初監督作品で、実母である往年の大スター、ジェーン・バーキンに密着し、母娘で率直に語り合うさまを収めたドキュメンタリー映画です。
映画の中では全く何も説明がないので、あらかじめジェーン・バーキンとシャルロット・ゲンズブールの家族関係を把握しておかないと全くわからない内容。
ジェーン・バーキンにはそれぞれ父親の異なる3人の娘がいて、シャルロットは次女であること、その父親は大スターだった故セルジュ・ゲンズブールであること、シャルロットが子供の頃にジェーンが家を出て行ったこと、また異父姉の写真家ケイト・バリー(父親は作曲家の故ジョン・バリー)が2013年に事故とも自殺とも取れる悲劇的な死を遂げていること、異父妹は女優で歌手のルー・ドワイヨン(父親は映画監督のジャック・ドワイヨン)であること、シャルロットには映画監督で俳優のイヴァン・アタルとの間にベン(1997年生)、アリス(2002年生)、ジョー(2011年生)の3人の子がいること。最低でもこれくらいの知識がないと母娘の会話についていけないと思います。ちなみに、この映画にはシャルロットの末娘ジョーが出演しています。
これらを知った上で観ると、母娘の間の、険悪ではないものの、距離のある微妙な関係が理解できるし、奔放に生きたジェーン・バーキンが母親としての後悔の念を吐露するなど、さまざまな対話を通じて2人の距離が少しだけ縮まったように見えるのも、陳腐ではありますが、説得力はあります。
また、ジェーン・バーキンもシャルロット・ゲンズブールもセレブ中のセレブではあるけれども、その生活が質素で素朴なのも、彼女たちのイメージ通りで![]()
ただ、純粋に「映画」として観ると、物足りなさは否めず。
それでも、シャルロット・ゲンズブールが母親とは違い、若くして結婚(事実婚らしい)したイヴァン・アタルとの関係を長く続けているのには何かこだわりがあるんだろうなと思わせるものはありました。
あるプロアメフトチームが、プレーオフ進出の直前に選手たちがストを起こしたために代理選手たちで難局を乗り切ろうとするさまを描いたスポーツコメディです。主演はキアヌ・リーヴス、共演はジーン・ハックマン、ブルック・ラングトン、オーランド・ジョーンズ、ジョン・ファヴロー、ジャック・ウォーデン、ジョン・マッデン他。
スポーツ映画というものの定石通りのストーリーで全てが予想通りにしか展開しない陳腐な内容。
が、そもそもスポーツ映画を好んで観る人たちが期待するのはこういう話なので、そこに変な小細工は不要なんでしょう。その点では充分に「合格」な映画なのだと思います。
何と言っても、ジーン・ハックマンの存在感と説得力は見事ですし。
ただ、今の時代に観ると、どうしても古臭さは否めず。
さすがにこの映画が公開された2000年ともなれば、黒人差別を笑いのネタにすることはなくなっていますが、アジア人差別を笑いのネタにするのは問題なかったらしい…。
当時なら「仕方ないか…」と諦めるしかなかったんでしょうが、今の時代ではありえないし、許せないレベルの酷い差別描写![]()
アジア人差別も黒人差別と同じように許されないものであることがハリウッド映画で当たり前になったのは本当に最近になってからなんだということに改めて気付かされました。
ところで、聴覚障害のある若手選手を演じた俳優が、どこかで見たことがあるような気がするものの、どうしても誰かわからず、観終わった後で調べてみたらデヴィッド・デンマンだった!!
確かに面影はあるけれど、若い頃はこんなに爽やかなイケメンだったんだとちょっとビックリ (@o@)
もちろん、今は今でいい歳の重ね方をして「イケオジ」にはなってますけどね (^^)
手塚治虫の人気医療漫画を原作とし、2004年から2006年まで放映されたテレビアニメシリーズの映画版で、原作の複数のエピソードをもとにオリジナルストーリーとして再構成されています。声の出演は大塚明夫さん、水谷優子さん、内海賢二さん、富田耕生さん、鹿賀丈史さん、石垣佑磨さん、平山あやさん、大和田伸也さん他。
→ Wikipedia「ブラック・ジャック (テレビアニメ)」
もとになった原作のエピソードのいくつかは断片的に記憶に残っているものもあり、うまく再構成されているなとは思いましたが、ストーリー自体はそれ以上でもそれ以下でもなく。演出には「?」となるところもありましたけど。
映画として出来は悪くないので、それなりに楽しめましたが、映画館に足を運んでまでして観るレベルとは思えず。テレビスペシャルで充分。
ところで、映画の出来や内容そのものよりも印象に残ったのはプロの声優ではない役者さんによる吹替。
キリコ役の鹿賀丈史さんは見事。ただ、大塚明夫さんと同系統の声なので、この役には声質の異なる人を当てた方が良かったんじゃないかなぁという気もする反面、むしろ敢えて似た声の人を当てたのかなとも思ったり。
大和田伸也さんも違和感なし。見事。
石垣佑磨さんは予想していたほど悪くはなかったのですが、時々「ヤンキー」っぽくなってしまうところがあって、そこは録り直すべきだったんじゃないかなぁと。
平山あやさんも悪くはなかったのですが、もうちょっと頑張って欲しかったかな。
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かつては天才建築家と呼ばれていたものの、極度の人間嫌いになってしまった主婦が1人で南極に向かう姿を描いたコメディ映画です。主演はケイト・ブランシェット、共演はビリー・クラダップ、エマ・ネルソン、クリステン・ウィグ、ローレンス・フィッシュバーン他。
いい話。
映画としての出来もいい。
原作は未読だけれど、日本を含めて多くの国で発売されているベストセラーというのも納得。
この主人公に共感し、この物語で救われた人はきっと多いはず。
本当によくわかります。
が、全く没入できなかった…。
主人公は天才芸術家、夫は自らの力で成功した金持ちで人柄も温厚、そんな夫婦の1人娘も優秀で両親との関係も良好、文句のつけようのない家族。全てがあまりに完璧。
もちろん、そんな「完璧」に見える家族でも、必ずしも幸せとは限らないのは確かにそうだし、否定するつもりは全くないけれど、あまりに自分とはかけ離れた「殿上人」の話にしか見えず…。
これって単なる「やっかみ」でしかないんですけどね (^^;;;
自分を捨てた飼い主に復讐をしようとするボーダーテリアなど、4匹の野良犬の冒険を描いたコメディ映画です。出演はウィル・フォーテ、ブレット・ゲルマン、ダン・ペロー、デニス・クエイド、声の出演はウィル・フェレル、ジェイミー・フォックス、アイラ・フィッシャー、ランドール・パーク他。
典型的なアメリカのお下劣コメディ。
人間ではなく、犬にやらせることでお下劣度合いは「緩和」されて見えるかなと思ったら、作り手もそう思ったのか、お下劣度を上げまくってた (^^;;;
アメリカ人が大好きな「犬映画」のパロディとしては、デニス・クエイドを本人役で登場させるなど、興味深くできているけれど、とにかく生理的嫌悪感をもよおすシーンが多くて![]()
ホント、アメリカ人ってお下劣なコメディが好きだなぁと冷めた目でしか観られませんでした。
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立松和平さんの同名小説を原作とし、都市近郊でトマト栽培に励む青年の姿を描いたドラマ映画です。主演は永島敏行さん、共演は石田えりさん、ジョニー大倉さん、横山リエさん、七尾伶子さん、ケーシー高峰さん、藤田弓子さん他。
物語としては特に面白いとは思えなかったのですが、それでも、当時の都市化が進む郊外の農業従事者の現実を(多少ドラマティックに味付けして)描いた一種の記録映画としての価値は間違いなくあると感じました。
芥川賞作家・中上健次さんが、1980年に紀州・熊野で実際に起きた殺人事件から着想を得て執筆したオリジナル脚本(後に小説化)を柳町光男監督が映画化したドラマ映画です。主演は北大路欣也さん、共演は太地喜和子さん、三木のり平さん、宮下順子さん、安岡力也さん他。
実話から着想を得てはいますが、舞台設定が同じなだけで完全なフィクション。むしろ実際の事件からどうしてこのようなストーリーを思いついたのか、中上健次さんに詳細に訊きたいくらい、実話とはかけ離れています。
また、敢えて主人公の内面を詳細には描かず、曖昧な表現で観る者にさまざまな解釈を可能とさせるような作りに。そのため、ただストーリーを追っているだけでは「何じゃこりゃ?!」としかならないはず。
神話の地「熊野」が舞台ということもあり、どことなく神話のような雰囲気があり、雄大な自然の美しさと恐ろしさも相まって、一種のファンタジーのような感じも。
主人公は神の啓示を聞いたのか、魔物に取り憑かれたのか、はたまた山の女神に愛されすぎたのか、あまりに唐突な結末に戸惑うばかりですが、「山の男」を演じる北大路欣也さんの神話の登場人物のような雰囲気があまりに見事で、それだけで何となく納得させられてしまうような説得力がありました。
離婚に際して12歳の1人息子を互いに押し付け合っていた夫婦が、その息子の失踪という事態に直面する姿を描いたロシアのドラマ映画です。主演はマリヤーナ・スピヴァク、アレクセイ・ロズィン、共演はマトヴェイ・ノヴィコフ、マリーナ・ヴァシリヴァ、アンドリス・ケイス、アレクセイ・ファティーフ、セルゲイ・ボリソフ、ナタリア・ポタポヴァ他。カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作。
文字通り「愛のない」家族の物語。
とにかく、ただただ12歳の少年が哀れでならない…。こんな両親のもとにさえ生まれなければ、こんな苦しく悲しい思いをせずに済んだのに…。
序盤はそんな両親の非情さが赤裸々に描かれていたわけですが、息子の失踪をきっかけに、この両親が冷酷非情なサイコパスではなく、血の通った生身の人間であり、それぞれにタイプは異なるものの、一種の「愛着障害」なのではないかと思える描写も。
とは言え、この映画はこの両親を中途半端に同情的に描くことはせず、一貫して冷徹に突き放して描いているのが印象的。
その中で舞台となる2012年から2015年のロシアの社会情勢を織り込み、特にキリスト教原理主義にもとづく保守的な価値観が、この愛のない夫婦の関係にも少なからず影響しているのを仄めかしていて、その作劇に「なるほど」と感心。
それにしても、共産主義時代には禁止されていたはずの宗教が、ソ連崩壊をきっかけに、それまでの反動から急激に影響力を増し、ロシア人の価値観をキリスト教に基づいた保守的なものに変えてしまったことが、現在のロシアの異常さの原因の1つになっていることには、改めて共産主義も一種の宗教であり、ロシア国民の信仰が共産主義からキリスト教に置き換わっただけで、原理主義、すなわち「不寛容な社会」であることに変わりはないのだと感じます。
踊ることも話すことも突然奪われてしまったバレエダンサーの再生を通して今のアルジェリア社会の現実を描いたドラマ映画です。主演はリナ・クードリ、共演はラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、メリエム・メジケーン、ザーラ・ドゥモンディ他。
観る前は主人公の再生の物語にフォーカスした内容だとばかり思っていたのですが、それはあくまで全体のごく一部。
この映画で描かれているのは、1990年代に長く続いた内戦がいまだに影を落としているアルジェリア社会の厳しい現実。それを特に女性の立場から描いています。
イスラム圏としてはかなり世俗的で「法的には」女性の権利も自由も認められているはずのアルジェリアでも、理想とはほど遠い現実があるわけです。
この映画1本で何かが劇的に変わるわけではないですし、作り手もそんな甘い理想を持っているわけではないでしょうが、「それでも私たちは生きていくしかないんだ!!」という悲壮なメッセージを感じる映画でした。
突然の死から5日間だけよみがえることを許された青年の恋を描いた香港のラブファンタジーです。主演はリッチー・レン、共演はセシリア・チャン、ウィリアム・ソー、エリック・ツァン、エリック・コット他。日本では竹内結子さんと吉沢悠さん主演で「星に願いを。」('03) としてリメイクされています。
切ない…。
20年以上前、この映画が公開された当時に観ていれば、何のひっかかりもなく、「切ない…。」と素直に感動できたのではないかと思います。
しかし、今の時代に観ると、こういった題材の話に対して無邪気に「感動した」と言ってしまって本当に良いのだろうかとの罪悪感が拭えず…。
この映画自体に罪はないし、当時の価値観としては何も問題ないと思うのですが、今となってはどうしても引っかかるものがあって素直に観ることができないのです。それが悲しい…。