「終りに見た街」('24)
これまでにも何度かテレビやラジオでドラマ化された他、舞台化もされている脚本家・山田太一さんの同名小説を原作とし、現代から昭和19年にタイムスリップしてしまった家族を描いた戦争ドラマです。脚本は宮藤官九郎さん。主演は大泉洋さん、共演は吉田羊さん、堤真一さん、三田佳子さん、勝地涼さん、奥智哉さん、當真あみさん、今泉雄土哉さん他。
3度目のテレビドラマ化で、過去2作はいずれも原作者である山田太一さん本人の脚本だったのが、本作では既に故人である山田さんに代わって宮藤官九郎さんが脚本を担当。宮藤さんらしい脚色と大泉洋さんの相性はいい。
ただ、原作未読、過去のテレビドラマもラジオドラマも、舞台版も全く観たことがない完全初見の自分にとっては「伝えたいことはとても分かるけれども、その見せ方に違和感あり」としか思えず…。
悲惨な戦争や紛争が世界のあちこちで起きている今の時代に、このドラマを制作した意図はとてもとても分かるのです。衝撃的なエンディングはもちろん、若者が簡単に周囲に影響されてしまうことなど、「警鐘」の意図は非常によく分かります。
それでも「何か違う」感じがして仕方ないのです。
この原作が出版された、冷戦時代真っ只中の1980年代なら、この物語は「警鐘」としての意味が間違いなくあったと思います。
しかし、当時とは違う「複雑な」世界となった今の時代の感覚では「そんな単純な話ではない」と思うのです。もちろん、複雑に考えるべきではない、戦争はいけない、人を殺してはいけない、というシンプルな正義感こそが大事なんだという意図は分かるのですが…。
今の時代ならば、SNSなどを通じた誤った情報に踊らされやすい、つまり周囲の影響を受けやすいのは若者よりも中高年の方が深刻です。また、かつての冷戦時代のような分かりやすい対立構造ではなく、複雑に利害が絡み合った国際情勢や多様な価値観が混在する社会の分断という過去に類を見ない難しさを、この物語は完全に無視して「綺麗事の理想論」をかざしているだけに見えてしまったのです。
だからと言って、この物語に意味がないわけではありません。今の時代にドラマ化した意味は間違いなくあると思います。ただ、再放送ではなく、敢えて今の時代に新たに映像化するなら、もうちょっと「アップデート」があっても良かったんじゃないかなぁと思えて仕方ありませんでした。
「オファリング-悪魔の生贄-」('22)
古代より封印されていた悪魔を解き放ってしまった男性と、子どもを連れ去る悪魔の罠を描いたオカルトホラーです。主演はニック・ブラッド、共演はエミリー・ワイズマン、ポール・ケイ、アラン・コーデュナー、ダニエル・ベン・ゼノウ、ソフィア・ウェルダン他。
欧米のオカルトホラーは、当然ながらキリスト教をベースにしているものが多い中、敬虔なユダヤ教徒のコミュニティをベースに描いているのはちょっと新鮮。
ただ、結末はこれでいいんですかね…。
「恐怖はこれで終わらない」というのはホラー映画の定番の終わり方ですが、それ以前に、何の決着もつけず、救いも何もないまま呆気なく終わるってのは、ホラー映画の定番を外した新鮮味を狙ったにしても、そもそもホラー映画の客層が期待するものから離れすぎているように思います。
そこに至るまではそれなりに楽しめただけにガッカリ。
「スティーヴン・キング エイジ・オブ・パンデミック」('20)
これまでに何度か映像化されているスティーヴン・キングの短編「トウモロコシ畑の子供たち」を原作とし、大人たちに反旗を翻した子どもたちの暴走を描いたアクションホラースリラーです。主演はエレナ・カンプーリス、共演はケイト・モイヤー、カラン・マルヴェイ、ブルース・スペンス、スティーヴン・ハンター、ジェイデン・マッギンレイ他。
う〜む…。
原作は読んではいませんが、あらすじを読む限りでは完全な別物。
一種の不条理劇で、この世界観は短編だからこそ成立する話。
それを無理やり長編映画にしたことで、不自然さや現実味のなさが際立ってしまい、全く物語の世界に入り込めませんでした。脚本家を含めて、作り手は誰もおかしいと思わなかったんでしょうか?
それでも、主人公である女子高生を演じたエレナ・カンプーリスの、可愛らしいルックスながら大人びた声と雰囲気は印象的でしたし、カルトのリーダーとなった孤児の少女を演じたケイト・モイヤーの憎々しさは見事で、この2人を観られただけで一応は満足できましたけどね。
「フライキャッチャー/捕食船」('24)
海で漂流し、臓器密売業者の漁船に救助された3人の若者の運命を描いた海洋サバイバルサスペンスです。主演はイザベル・グラヴィット、共演はジェニア・ウォルトン、ディーン・キャメロン、コア・トム、ギャレット・ウェアリング他。
予想通りにしか展開しないですし、取り立てて何か新しいところがあるわけではないですが、それでも充分にハラハラドキドキさせてもらえましたし、娯楽映画としては充分な出来。
だからと言って「期待」するほどの内容ではないですけどね (^^;;;
ちょっと意外だったのは、エピローグに当たる部分がかなり長めで、しかも本作の中で恐らく最もお金がかかっているシーンになっている点。普通なら省いてもいいところに、ここまでこだわる理由は、正直なことを言えばよくわかりませんでしたが、ここまで長くしっかり描いていると言うことは、そこに何らかの意図はあるんでしょう。
「街のあかり」('06)
家族も友人もなく孤独に生きてきた男が次々と襲いかかる悪夢の末に行き着く先の運命を描いたアキ・カウリスマキ監督によるドラマコメディ映画です。主演はヤンネ・フーティアイネン、共演はマリア・ヤンヴェンヘルミ、イルッカ・コイヴラ、マリア・ヘイスカネン、ヨーナス・タポラ他。
めちゃめちゃ好みの題材なので期待して観たのですが、これが驚くほど自分に合っていませんでした orz
主人公のキャラクター造形も自分には違和感しかなくて全く合わないし、演じるヤンネ・フーティアイネンも役に合っているように思えず。
さらに「運命の女」を演じるマリア・ヤンヴェンヘルミの顔があまりに怖過ぎて、こちらも役に合っていると思えず。
とにかく、アキ・カウリスマキ監督とは感覚が合わないことを確認しただけの映画でした。
「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」('87)
シェイクスピアの「ハムレット」を、アキ・カウリスマキ監督が現代(映画公開当時)のフィンランドを舞台に翻案したブラック・コメディです。主演はピルッカ=ペッカ・ペテリウス、共演はエスコ・サルミネン、カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ、カリ・ヴァーナネン、プンティ・ヴァルトネン他。
変な映画。
モノクロの陰影を活かした映像でシリアス且つスリリングなサスペンスのように描き、役者も一貫してシリアスな演技。
が、ところどころに挟み込まれる変な描写が「これは笑っていいの?」という居心地の悪さを感じさせ続けます。
そもそも美男美女のイメージがあるハムレットとオフィーリアをお世辞にも美形とは程遠い2人が大真面目に演じるところからしておかしいし (^O^)
ストーリーの大筋は原作戯曲通りですが、終盤の展開にかなり大胆なアレンジが加えられていて、それが成功しているかというと微妙なところですが、新鮮味はありました。
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「罪と罰」('83)
アキ・カウリスマキ監督の長編劇映画初監督作品で、ドストエフスキーの「罪と罰」を、現代(映画公開当時)のフィンランドを舞台に翻案したドラマ映画です。主演はマルック・トイッカ、共演はアイノ・セッポ、エスコ・ニッカリ、マッティ・ペロンパー、オッリ・トゥオミネン他。
ドストエフスキーの「罪と罰」は、文学史における価値はあると思いますが、現代の感覚からすると、あまりに厨二病臭とナルシスト臭がきつくて読むに耐えない、ただの「ライトノベル」に過ぎないので、本作に対しても全く期待はありませんでした。
が、思いの外「普通に」観られました。
原作をそのまま映像化して、主人公が内面をぐだぐだと語るような観るに耐えないシーンはなく、演出も演技も抑えめ。原作とは異なる設定や展開も多く、「罪と罰」を原作としているというよりも、あくまで「原案」としているだけの別作品のような印象を受けました。
これを当時まだ20代半ばだったアキ・カウリスマキ監督が撮ったというのは確かに驚き。
ただ、そもそも原作の「罪と罰」自体が退屈でつまらないので、この映画も、原作よりはだいぶマシですが、大して面白くはなかったですけどね (^^)
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「青春シンドローム」('94)
1970年代半ばに青春時代を謳歌した悪友5人組の甘酸っぱい思い出を描いた、セドリック・クラピッシュ監督の半自伝的青春群像劇です。出演はロマン・デュリス、ヴァンサン・エルバズ、ニコラス・コレツキー、ジュリアン・ランブロスキーニ、エロディ・ブシェーズ他。
フランス版「再会の時」とも言われる本作。その時点で嫌な予感がしたのですが、少なくとも「再会の時」よりはマシ。まだ何とか観られました。
でも、こういうタイプの青春映画はどうしても好きになれないことを再確認しただけでした。もう二度と観ることはないです。
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「猫が行方不明」('96)
パリに住む若い女性の行方不明になった飼い猫をめぐる下町人情あふれる愉快な探索劇を描いたコメディです。主演はギャランス・クラヴェル、共演はジヌディーヌ・スアレム、ルネ・ル・カルム、オリヴィエ・ピィ、ロマン・デュリス、エステル・ラリヴァズ他。第46回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、セドリック・クラピッシュ監督の出世作となった作品です。
ただただ苦痛なだけの映画でした…。
「パリの下町を舞台にした人情喜劇」は好みだし、ストーリーそのものは悪くない。
が、当時はこれで問題なかったのかもしれませんが、今の感覚で観ると、登場人物のキャラクター造形、特に男たちが猛烈にうざくて吐き気がするキャラクターばかりで、その嫌悪感が耐えられないレベルのせいで、ストーリーが全く頭に入って来なかったのです…。
そういった男たちが登場するたびに視聴を断念したくなり、本当に「頑張って」最後まで観たのですが、結局、苦痛な不快感しか残りませんでした…。
観たことを後悔しましたし、もう二度と観ることはないと思います。
「ダンサー イン Paris」('22)
舞台上で大けがをした若きダンサーがリハビリに励む中で第二の人生へ向けて新たに歩み出す姿を描いたドラマ映画です。主演はマリオン・バルボー、共演はホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス、スエイラ・ヤクーブ、ピオ・マルマイ、フランソワ・シヴィル他。
コンテンポラリーダンスって、踊ってる人たちは本当に楽しそうだし、きっと素晴らしいものなんだろうなということはわかったものの、自分には良さがわからないということを再確認しただけの映画でした。もちろん、映画としての出来が悪いわけではなく、単純に「自分とは波長が全く合わなかった」というだけです。
ダンス経験があるとか、ダンス経験者としての視点からダンスを観るのが好きとか、そういう人だと、この映画の良さもわかるんだろうなぁとか思ったり。
そんなわけで、映画そのものには全く惹かれなかったのですが、脇役で出演していたピオ・マルマイが、役作りかはわかりませんが、かなり増量していて、ちょっとドゥニ・メノーシェっぽくなっていたのが印象的でした (^^)







