ゴジラ-1.0
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ゴジラシリーズの第37作で、「シン・ゴジラ」('16) 以来7年ぶりとなる日本版と、そのモノクロ版です。主演は神木隆之介さん、共演は浜辺美波さん、山田裕貴さん、吉岡秀隆さん、佐々木蔵之介さん、青木崇高さん、安藤サクラさん他。ゴジラ生誕70周年記念作品で、第96回アカデミー賞では日本映画・アジア映画史上初の視覚効果賞を受賞しています。
いろいろ突っ込みたいところはあるけれど「娯楽映画」としては充分な出来。
主人公以外の登場人物にも人間としての魅力を持たせ、見せ場を用意しているのも![]()
人間ドラマに比重を置き、ゴジラ映画を全く観たことがない人でも楽しめることを強く意識した作りになっていて、このあたりも国内外でヒットした理由の1つなのでしょう。
ただ、良くも悪くも「山崎貴監督の映画」という感じ。
山崎貴監督の作品はとにかく「わかりやすい」。
伏線の張り方も「ここが伏線なのでちゃんと覚えておいてね」とじっくり見せるし、伏線を回収する際も「◯◯で張った伏線をここで回収してますよ」と誰にでもわかるように見せる。このあたりのわかりやすい演出は(好みは別として)本当に「よくできてる」と思います。ストレートに感情に訴えるセリフも印象的ですし。
が、そのあまりの「わかりやすさ」のために、観ていて全然ハラハラもドキドキもしないんですよ…。全てが予想通りにしか展開しないんですから。もちろん、多くの観客が期待する通りに展開するので、満足する人が多いのは当然だと思いますが、僕はどうしても物足りなく感じちゃうんです。こういったところが、僕が山崎貴監督作品を「苦手」とする理由なんですけどね。また、本作の場合は役者のオーバーアクトな演技も(内容に合ってはいるものの)観ていてゾワゾワしちゃいますし。どれも単なる好みの問題でしかないですけど (^^)
ちなみに陰影を強調して重厚感を増したモノクロ版は、舞台の時代設定もあって、ゴジラ生誕70周年記念作品として映画第1作「ゴジラ」('54) へのオマージュを一段と強く感じる仕上がりになっていて![]()
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数々の文学賞を受賞したフランスのベストセラー小説を原作とし、別居をしているセレブ夫妻の息子が母親の恋人の娘を性的暴行した容疑で逮捕された事件の裁判で明かされる真実を描いたサスペンス映画です。主演はシャルロット・ゲンズブール、共演はマチュー・カソヴィッツ、ベン・アタル、ピエール・アルディティ、スザンヌ・ジュアネ他。シャルロット・ゲンズブールのパートナーであるイヴァン・アタルが監督を務め、2人の息子ベン・アタルがシャルロット・ゲンズブールの息子役で出演しています。
性犯罪の裁判で焦点となることの多い「同意の有無」は、現実には客観的に判断することが極めて難しいことを、いわゆる「羅生門効果」「信頼できない語り手」の手法を用いて描いた作品で、実に観応えがありました。人間は自分の都合のいいように記憶する生き物ですからね。
ただ、この物語で描いている事件に関しては、いくら若い大学生とは言え、20歳を過ぎた男性が、出会ったばかりの17歳の少女と性行為をしている時点で同意があろうとなかろうとダメでしょう。フランスの法律がどうなっているのかはわかりませんが、事件当時の被害者の年齢がほとんど全く問題になっていないことにはかなり違和感がありました。そのため、この題材なら、被害者も成人女性にした方が、問題の難しさがよりわかりやすくなったのではないかと思えて仕方ありませんでした。原作は未読なので、どこまで原作通りなのかはわかりませんが。
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大富豪との結婚寸前に逃げ出した女性歌手と孤島で暮らす不思議な男性の出会いと恋のトラブルを描いたロマンティックコメディです。主演はイヴ・モンタン、カトリーヌ・ドヌーヴ、共演はルイジ・ヴァヌッチ、トニー・ロバーツ、ダナ・ウィンター他。
主人公の男性が、本人としては全てを捨てて自分1人の力で生活しているつもりが、実はそうではなかったことが明らかになるあたりからの展開はそれなりに楽しめましたが、そこに至るまでは本当に苦痛。
コメディの場合、確かに序盤で登場人物のキャラクターを印象付けるためや、特殊な状況に持っていくための方便として、登場人物たちに極端な言動を取らせることが多いのですが、この作品ではあまりに度を超えていてドン引き。
ヒロインの婚約者も相当のサイコパスですが、とにかくヒロインの言動が酷すぎて笑えないどころか憎悪しか感じず。そんな「異常者」なヒロインに振り回される主人公のお人好しぶりにもイライラ。
ただ、デジタルリマスタリングした映像は美しく、特に海の美しさには目を奪われます。それだけでも観た甲斐はあったかもしれません。
ところで、主人公を演じたイヴ・モンタンは、自分が持っているイメージとはちょっと違っていて、最初はイヴ・モンタンと気づかなかったほど。そして意外だったのは、髭を生やしていると年齢相応の「ナイスミドル」に見えるのに、髭を綺麗に剃ってしまうと急に「おじいちゃん」に見えちゃったこと。一般的には髭がある方が老けて見るはずですけど、役のせいもあるとは言え、ちょっと驚きました。
世界各地の女性監督と女優たちが集結し、苦難にめげず奮闘する女性たちを力強く描いた7編の短編からなる、イタリア・インド・アメリカ・日本合作のオムニバス映画です。日本からは呉美保監督と杏さんが参加しています。
監督:タラジ・P・ヘンソン
脚本:キャサリン・ハードウィック
主演:ジェニファー・ハドソン
実在の人物を描いた作品でメッセージもはっきりしていますが、「大スター」のジェニファー・ハドソンの熱演が前面に出過ぎてしまっているような印象も。
監督・脚本:キャサリン・ハードウィック
主演:マーシャ・ゲイ・ハーデン、カーラ・デルヴィーニュ
実在の女性医師の活躍ぶりを描いており、描かれているエピソード自体は短編としてちょうどいい内容。ただ、彼女の活躍をもっと観たい気持ちが強く残り、「これで終わり?」となっちゃいましたけど (^^;;;
監督・脚本:ルシア・プエンソ
主演:エヴァ・ロンゴリア
描きたいことはとてもとてもわかるんですが、あまりに尺が足りなくて物足りなさでいっぱい。長編にするには凡庸な題材ですが、短編でも30分くらいの尺は欲しかったところ。
監督・脚本:呉美保
主演:杏
短編向きの「いい話」をバランスよくまとめ上げているし、杏さんの説得力のある、演技とは思えない自然な姿が![]()
監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ
脚本:ジュリア・ルイーズ・スタイガーウォルト
主演:マルゲリータ・ブイ
スリリングな内容を短い尺でうまくまとめた印象。
監督:リーナ・ヤーダヴ
脚本:リーナ・ヤーダヴ、シャンタヌ・サガラ、クルパ・ゲ他
主演:ジャクリーン・フェルナンデス
性的少数者に対する差別が根強く残るインドで、特にトランスジェンダー女性を勇気づけたい意図はとてもよくわかりますし、映像表現は凝っていて美しく、とても印象的。ただ、「物語」としては意味不明で、いくら短編でも、そこはもうちょっと何とかして欲しかったかなぁ。
監督・脚本:ルチア・ブルゲローニ、シルヴィア・カロッビオ
実写を交えたCGアニメーション。非常に尺が短く、映画全体のエピローグの意図があるのでしょうが、ちょっとわかりにくかったかな…。他の6作品の映像を少しはめ込むだけでも、わかりやすくなったかも。映像としては美麗。
大和和紀さんの漫画「菩提樹」を原作とし、両親を失くした女子医大生のあしながおじさんとの出逢いと、愛と苦悩を描いたドラマ映画です。主演は南野陽子さん、共演は神田正輝さん、竹本孝之さん、柳沢慎吾さん、比企理恵さん、結城しのぶさん、入江若葉さん、鈴木瑞穂さん、松原千明さん、神山繁さん他。
観る前から分かってはいましたが、絵に描いたような「1980年代のアイドル映画」。舞台設定、ストーリー、キャラクター造形、その全てが古臭くて、観ている方が恥ずかしくなるレベル。
しかも、90分の尺ではどう考えても無理があり、これでは主人公が「自分の不幸に酔いしれてるだけの頭のおかしい女」にしか見えない (^^;;;
とにかく、南野陽子さんの可愛らしさを懐かしむ以外に何もない映画でした。
スペインの文豪ベニート・ペレス・ガルドスの小説を原作とし、1920年代から1930年代のスペイン・トレドを舞台に、身寄りのない女性と、彼女を養子に迎えた貴族の愛憎を描いたドラマ映画です。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ、共演はフェルナンド・レイ、フランコ・ネロ、ローラ・ガオス他。
性的搾取の被害者である若い女性の復讐を描いた物語と言ってしまえば簡単ですが、そこまで単純ではない複雑な感情が入り混じっているのが面白い。ただ、ちょっと展開が早すぎて戸惑うところも。
原作が出版されたのが19世紀末、映画の舞台は1920年代から1930年代、そして映画が公開されたのは1970年。原作は未読ですが、映画化にあたって舞台設定以外も原作から変えられているらしく、この映画にも1970年代のフェミニズムの感覚が色濃く感じられます。
そのセンスは21世紀の今の感覚からするとちょっと古臭く感じられちゃいますが、それでも「1970年の女性映画」として映画史における価値は間違いなくあると思います。
2023年12月から2024年1月まで上演された舞台の東京・PARCO劇場での2023年12月20日の公演を収録し、WOWOWで放送したものを観ました。出演は小日向文世さん、高橋克実さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、平田満さん。第31回読売演劇大賞で高橋克実さんが優秀男優賞を受賞しています。
「みごとな伏線」「大どんでん返し」との宣伝文句にちょっと騙された気分。
確かに、伏線はあったし、どんでん返しもあったけれど、正直言って全然大したことないし、面白くもない。
ストーリーそのものよりも、個性的な登場人物たちの、この物語では描かれていない部分、特に過去の話に興味が湧き、そちらの方を観てみたいと思えるほど、登場人物のキャラクターの方が印象的でした。
とは言っても、登場人物たちが「魅力的か?」と言われると微妙ですけどね (^^;;;
ところで、5人のベテラン俳優を生年月日の順に並べると↓こんな感じ。
平田満さん:1953年11月2日
小日向文世さん:1954年1月23日
浅野和之さん:1954年2月2日
大谷亮介さん:1954年3月18日
高橋克実さん:1961年4月1日
高橋さん以外は全員同学年で、高橋さん1人だけがだいぶ若いのですが、最年長にも見える役を演じていて、しかも違和感がないのは、さすが20代の時から老け役をやってただけのことはあります (^^)
北海道・洞爺湖の湖畔で、ある夫婦が営む小さなパンカフェに集う人々を描いたドラマ映画です。主演は原田知世さん、大泉洋さん、共演は森カンナさん、平岡祐太さん、光石研さん、八木優希さん、中村嘉葎雄さん、渡辺美佐子さん、あがた森魚さん、余貴美子さん他。
良くも悪くも、誰もが予想し、期待する通りの内容。
だからと言ってダメというわけではなく、このようなタイプの映画を観たいと思う人の期待を満たしているという意味では良作。
あまりに浮世離れした世界観(どう考えても採算が取れるはずのないカフェや登場人物たちの生活感のなさ)が気にならないと言えば嘘になりますが、水彩画のような淡い色調の映像はとても印象的でした。
ただ、この手の映画に触発されて、安易に地方への移住を決めるのだけはやめて欲しいです。
ところで、これは自分の感覚がおかしいんでしょうが、登場するパンや料理がどれも全く美味しそうに見えず、むしろ不味そうにしか見えなかったのです…。それもこの映画に微妙にハマれなかった理由です (^^;;;
太平洋戦争開戦前夜の魔都・上海を舞台にしたモノクロのスパイ映画です。主演はコン・リー、共演はマーク・チャオ、パスカル・グレゴリー、トム・ヴラシア、ホァン・シャンリー、ワン・チュアンジュン、チャン・ソンウェン他、日本からはオダギリジョーさん、中島歩さんが出演しています。
モノクロの映像はとてもとても美しいし、ムードもあって印象的なのだけれど…。
それだけだった…。
でも、この映画はそれでいいんだと思います。
1820年のアメリカ西部を舞台に、とある商売で一攫千金をもくろむ男性2人組の運命をオフビートなタッチで描いた異色のドラマ映画です。主演はジョン・マガロ、オリオン・リー、共演はトビー・ジョーンズ、ユエン・ブレムナー、リリー・グラッドストーン他。
いわゆる西部劇と同じ舞台でありながら、およそ西部劇とは縁遠そうな非マッチョな男2人を主人公にしている新鮮さと、ほのぼのした空気感で最後まで飽きることなく観られたのですが、観終わった後はちょっと切ない…。
冒頭の現代のシーンが結末のネタバレなのか、そう見せておきながら実はどんでん返しがあるのかと観ている側をドキドキさせておきながら、そこで終わらせますか…。
好みで言えば、結末にどんでん返しとまでは言わないまでも、もう一捻り欲しかったなぁと思えて仕方ありません…。
それでも、主人公2人の「熱くない強い絆」は最後まで微笑ましかったですけどね (^^)