Marc のぷーたろー日記 -51ページ目

「6月0日 アイヒマンが処刑された日」('22)

 

ナチスのユダヤ人大量虐殺に関与した重要戦犯として、1962年にイスラエルで死刑に処されたアドルフ・アイヒマンの処刑の舞台裏を描いた歴史ドラマ映画です。出演はノアム・オヴァディア、ツァヒ・グラッド、アミ・スモラチク、ヨアヴ・レヴィ、トム・ハジ他。

 

Wikipedia「アドルフ・アイヒマン」

 

題材としても興味深いし、建国から10数年しか経っていない当時のイスラエルを描いた群像劇としても興味深い。

 

が、実質的に主人公である少年が最後までどうしても好きになれず、嫌悪感があまりに強過ぎて物語に全く入り込めなかったのです。

 

何故この少年を物語の中心に据えたんでしょうか?

 

これが実在の人物で、エピローグの部分を含めて実話通りだとしたら、何故こんな人物を映画にしようと思ったのでしょうか?

 

同じ題材なら、社長を主人公にして、そのバックグラウンドを含めて描いた方がはるかにマシな話になったんじゃないかと思えて仕方ないのです。もちろん、それでは本来の趣旨から外れてしまうのかもしれませんが。

 

とにかく、作り手のセンスがあまりに自分と違い過ぎて「全く合わなかった」映画でした。

 

関連記事

「モスクワの伯爵」('24)

 

エイモア・トールズの同名ベストセラー小説を原作とし、ロシア革命後のモスクワを舞台に、高級ホテルに軟禁されることになった伯爵の30年以上にわたる人生を描いたドラマシリーズ全8話です。主演はユアン・マクレガー、共演はメアリー・エリザベス・ウィンステッド、フェインティ・バログン、ダニエル・セルケイラ、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン、ジョニー・ハリス、リア・ハーヴィ、ジョン・ヘファーナン他。

 

主人公の境遇が「当時の元貴族としては」あまりに恵まれ過ぎていて、イマイチ入り込めない部分もあったのですが、それでも、わかりやすく「いい話」で、原作がベストセラーであり、この映像化作品の評価が高いのも納得。ハッピーエンドとまでは言えないですが、必ずしも絶望的ではない終わり方も余韻があり、充分に楽しめる作品でした。

 

そして、今回もお気に入りの名優ジョニー・ハリスがめちゃめちゃ美味しい役だったのもグッド!

 

冷酷非情な悪役に見えながら、彼独特の「常に泣いているような、悲しく訴えかけるような目」がこの役にピッタリで、出番は多くないにもかかわらず、強烈な存在感で複雑なキャラクター造形に説得力を与えていました。

 

個人的な好みで言えば、彼の目線から主人公を描いても面白かったんじゃないかなぁという気も。彼が主人公と接する中でどのように変わっていくのかをもっと丁寧に見せて欲しかったとどうしても思ってしまうのは、自分がジョニー・ハリスを推してるからなんでしょうけど (^^)

「イノセンツ」('21)

 

夏休みの郊外の団地を舞台に、不思議な力に目覚めた子どもたちの間で展開されるサイキックバトルを描いたサスペンススリラーです。主演はラーケル・レノーラ・フレットゥム、共演はアルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、サム・アシュラフ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、エレン・ドリト・ピーターセン他。

 

ハリウッド映画的派手な演出や派手なCGを一切使わずに「もし子供たちが不思議な力を持ってしまったら」という設定をシリアス且つリアルに描いていて、不気味さ満点。

 

最後はちょっとご都合主義だなぁとは思いましたが、しっかり楽しませてもらいました (^^)v

 

ただ、移民の子で貧しく、家庭にも恵まれていない少年をこういう設定で使うのには抵抗感があるし、しかもそこに救いが全くないのはダメでしょ。

「ヒンターラント」('21)

 

第1次世界大戦後、ロシアでの長い捕虜生活を経て荒廃した故郷のウィーンに戻った元刑事が、猟奇連続殺人事件に直面する姿を描いたサスペンス映画です。主演はムラタン・ムスル、共演はリヴ・リサ・フリース、マックス・フォン・デル・グローベン、マルク・リンパッハ、スタイプ・エルツェッグ、マティアス・シュヴァイクホファー他。

 

Wikipedia「ヒンターラント」

 

第1次世界大戦後の荒廃したウィーン。

捕虜収容所で起きた悲劇に起因する猟奇連続殺人。

 

設定はどれも比較的好み。

 

が、あまりに脚本がしょぼくてミステリとしての面白みは皆無ダウン

 

ただ、全編ブルーバックによる撮影で描いた独特の映像は「興味深い」。

 

いかにもCGという背景は最初のうちはチープな書割っぽく見えてしまったのですが、荒廃したウィーンを「異世界」のように表現する手法としては「なるほど」と思えます。

 

特に、傾いた画面やダリの絵画のように歪んだ建物などは、不安定で不気味な世界観をわかりやすく表現しているように感じました。

「異人たち」('23)

 

山田太一さんの1987年の小説「異人たちとの夏」をイギリスを舞台に翻案して映像化したファンタジードラマ映画です。主演はアンドリュー・スコット、共演はポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ他。

 

Wikipedia「異人たち」

 

原作は未読ですが、同じ原作を大林宣彦監督が映画化した「異人たちとの夏」('88) は大昔に観たことがあり、終盤のいきなりのホラー描写に唖然としつつも、日本の伝統的な幽霊譚らしいまとめ方のファンタジー映画として心に残る作品ではありました。

 

ただ、当時は全く気にならなかったのですが、改めて考えてみると、今の時代には物足りないと感じる部分も。

 

1つ目は、主人公の両親が「主人公にとって都合が良すぎるほど完璧に理想的な両親」として描かれている点。もちろんそれ自体は悪いことではないのですが、現実には亡くなった両親を無邪気に理想化して追憶できる人ばかりではないはず。例えば、親との関係自体は険悪でないものの、親の期待通りの子供でなかったことに罪悪感にも似たわだかまりを抱いている人は少なからずいるはず。完璧に理想化できるのは、そんなわだかまりとは無縁、または気にならないほど充分に幸せな子供時代を過ごせていた人だけなんじゃないでしょうか。

 

2つ目は、1980年代末のバブル時代の日本ではさほど社会問題になっていたわけではないので仕方ないのかもしれませんが、都会における「孤独死」の描き方があまりにも雑と感じられる点。日本に限らず、イギリスでも社会問題になっている現代ではもっと丁寧に描く必要はあるでしょう。

 

そんな「異人たちとの夏」に感じた物足りなさを、この映画ではしっかり補っており、原作の発表から30年以上が過ぎた今の時代の翻案としては実に見事。

 

また、現実と幻が混濁し、ゴーストストーリーとも、単なる主人公の妄想とも、さらに言えば、主人公が執筆している物語とも解釈可能な、意図的に曖昧にしたストーリーを美しく幻想的な映像で描いているのもグッド!

 

ただ、結末の解釈は大きく分かれそう。

 

永遠に続く絶望的な孤独を描いたバッドエンドだと解釈する人もいれば、猛烈に切なく悲しいけれど救いのあるハッピーエンドだと解釈する人もいるはず。このあたりは観る人の死生観や人生観によって違ってくるのでしょう。そんなところも、この映画の素晴らしい点だと思います。

 

一種の「セラピー映画」ではありますが、かなり「荒療治」な内容なので、感情移入しやすい人はちょっと気をつけた方が良いかもしれません (^^;;;

「エクソシスト 信じる者」('23)

 

「エクソシスム(悪魔祓い)」を題材にしたオカルト映画「エクソシスト」('73) の正当な続編として、同作の50年後を舞台に、悪魔に憑依された2人の少女が引き起こす恐怖を描いたサスペンスホラーです。主演はレスリー・オドム・Jr、リディア・ジュエット、共演はオリヴィア・オニール、ジェニファー・ネトルズ、ノーバート・レオ・バッツ、アン・ダウド、エレン・バースティン他。

 

Wikipedia「エクソシスト 信じる者」

 

アイデアはいいと思う。

 

前作が一貫して「キリスト教の悪魔祓い」をシリアスに描いていたのに対し、本作では「邪悪な何かが取り憑くという概念は様々な宗教や文化に存在する」との前提で、キリスト教一色ではなく、むしろキリスト教の無力さの方を印象付けて描いているのは今風の味付け。

 

が、単純に面白くない…。

 

前作以降、同様の悪魔祓いを題材にしたホラー映画が数え切れないほど作られている中で、いくら「元祖」の正当な続編と言われても、これ単独で観れば、基本的には凡庸なホラー映画でしかないのです。結末も、意図はわかるのですが、物語としての面白みには欠けますし。

 

出来が悪いとまでは思わないのですが、ちょっと期待していただけに残念。

 

関連記事

「ザ・コンフィデンシャル」('23)

 

1990年代のニューヨークを舞台に、余命わずかの刑事が殉職して家族に年金などを遺そうと相棒と画策した計画の顛末を描いた異色の犯罪アクション映画です。主演はドミニク・パーセル、ニック・スタール、共演はメル・ギブソン、ケイト・ボスワース、ラッセル・リチャードソン他。

 

惜しいなぁ…。

 

犯罪捜査を中心にした刑事映画ではなく、「刑事という特殊な職業の人間」を描いた物語として題材は悪くないし、キャストも概ね合っている。

 

が、とにかく映像がチープすぎる…。

 

照明を工夫するなどして頑張っているのはわかるのですが、セットの安っぽさは隠せていないし、とにかく演出が凡庸すぎダウン

 

脚本をもうちょっと練って、演出を工夫すれば、そこそこの佳作にはなったかもしれないだけにもったいない。

「ダウンタウン物語」('76)

 

出演者を17歳以下に限定して大人を演じさせ、禁酒法時代のニューヨークのギャング社会を描いたミュージカルコメディです。出演はスコット・バイオ、フローリー・ダガー、ジョディ・フォスター、ジョン・カッシーシ、マーティン・レフ他。

 

Wikipedia「ダウンタウン物語 (映画)」

 

子供たちの「大人の演技」、特に女の子たちの演技が見事で、ギャング映画のパロディとしてはなかなかの出来グッド!

 

好みで言えば、コミカルなシーンがサイレント映画のドタバタコメディ調なのは、悪くはないんだけれど、ベタすぎるとか、結末で「大人を演じていた子役たちが子供に戻る」のも意図はわかるんだけれど見せ方として雑。そこはもうちょっと工夫して欲しかったなぁ。

 

それにしても、ボスの情婦を演じたジョディ・フォスターの大人っぽさは、見事を通り越して、ちょっと怖いくらいでした (^^;;;

「フェリックスとローラ」('01)

 

移動遊園地のオーナーの男性が、謎めいた若い女性と運命の恋に落ちていくさまを描いた恋愛映画です。主演はフィリップ・トレトン、シャルロット・ゲンズブール、共演はアラン・バシュング、フィリップ・デュ・ジャネラン、アーメッド・ゲダイヤ他。

 

冒頭に結末と思われるシーンを持ってきて、同じパトリス・ルコント監督の「仕立て屋の恋」('89) 同様の「愛する女への献身に身を滅ぼす男」の物語であるかのように観客に思わせながら「実は…」という構成自体は悪くないアイデアではあるのですが、その「実は…」があまりにしょぼくてダウン

 

思わせぶりに引っ張るだけ引っ張っておきながら、こんなしょぼい終わり方で、ガッカリ以前にビックリしてしまい、一瞬「何か重要なところを見落とした?!」と思っちゃいました。

 

作り手としては、高い評価を受けた「仕立て屋の恋」へのアンチテーゼの意図があったのかもしれませんが、それにしてももうちょっと何とかならなかったのでしょうか? 本当にガッカリ。

 

関連記事

「ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール」('01)

 

大スターの人気女優と結婚した平凡な男の気苦労を描いたコメディ映画です。主演はシャルロット・ゲンズブール、イヴァン・アタル、共演はテレンス・スタンプ、ノエミ・ルヴォフスキー、リュディヴィーヌ・サニエ、ローラン・バトー他。

 

シャルロット・ゲンズブールとイヴァン・アタルは実生活でも事実婚の夫婦で、イヴァン・アタルは監督と脚本も務めています。

 

そんなわけで、イヴァン・アタル本人の自虐ネタとしてはそれなりに笑えますし、気楽に観られるので、コメディとしては悪くないです。

 

ただ、ユダヤ人であるイヴァン・アタルが、ユダヤ人であることに対して微妙な感情を抱いているからなのは理解できるのですが、それにしても「割礼」ネタはあまりにクドすぎてちょっとしらけちゃったかな (^^;;;

 

ところで、映画の序盤に登場した若い警官、どこかで見たことがある顔だなぁと思って調べてみたら、予想通り、ジル・ルルーシュだった (^^)

 

確かに若い頃はハンサムだけれど、ただそれだけで、やはり、その後の年を重ねてからの方が個性や魅力があるな (^^)v