
「二つの季節しかない村」('23)
雪深い辺境の村での単調な日常生活に不満を抱く独善的な教師の姿を描いたトルコのドラマ映画です。主演はデニズ・ジェリオウル、共演はメルヴェ・ディズダル、ムサブ・エキジ、エジェ・バージ他。
200分近い長尺、しかもドラマティックな展開が起きそうで起きないまま淡々と進むストーリーであるにもかかわらず、最後まで全く飽きずに観ることができました。
雄大な大自然を美しく見せる一方で、そこで暮らすことの閉塞感が伝わってくる内容で、とにかく、主人公のキャラクターが興味深い。
この一見、共感しづらい主人公の「小物感」がリアルで、誰もがこの主人公のダメな部分を多少なりとも持ち合わせてるんじゃないかと思わせる説得力があり、それがこの映画に最後まで惹きつけられてしまった理由なのでしょう。
ところで、主人公を演じたデニズ・ジェリオウル。目力の強さが印象的で貫禄がありますが、1986年生まれなのでまだ30代。役の「まだ若い」という設定には合っているのですが、もうちょっと実年齢相応に見えるメイクやヘアスタイリングをしても良かったんじゃないかなぁと思ったり (^^;;;
「告白 コンフェッション」('24)
福本伸行さんとかわぐちかいじさんの漫画「告白 CONFESSION」を原作とし、久しぶりに登山をした男性2人のひとりが16年前に同級生の女性を殺したと告白したことから起きる惨劇を描いたスリラーです。主演は生田斗真さん、ヤン・イクチュンさん、共演は奈緒さん。
→ Wikipedia「告白 CONFESSION (漫画)」
好みの題材だったので期待値を高く設定しすぎてしまったかなという感じ。
面白くなくはないし、出来も悪いとは思わないのですが、最初から最後まで全てが予想通りの展開で、意外性も新鮮味も全くなかったのが、ただただ残念。
繰り返しますが、出来が悪いわけではないです。
ただ、期待値が高すぎて、それを全く超えて来なかったというだけです。
「ドリーム・ガール/ママにはないしょの夏休み」('24)
1991年の同名映画のアフリカ系キャストによるリメイクで、わけあって25歳と偽ってアパレル企業で働くことになった17歳の少女の夏休みを描いたブラックコメディです。主演はシモン・ジョイ・ジョーンズ、共演はパトリシア・ウィリアムズ、ジャーメイン・ファウラー、ジューン・スキッブ、ニコール・リッチー他。
→ Wikipedia「Don't Tell Mom the Babysitter's Dead (2024 film)」
1991年のオリジナル作品を観ていないのですが、アフリカ系キャストにしたことで現代的な空気は感じるものの、それでも、このノーテンキ過ぎるノリは1991年だから成立したもので、それを2020年代に持って来ても、違和感しかない…。
堅苦しいことを考えずに、このノーテンキなノリに無邪気に乗ってしまえばいいんでしょうけどね…。
コメディとして悪い出来だとは思いません。
「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」('23)
25年ぶりに再会した2人の男の葛藤と絆を描いた、ペドロ・アルモドバル監督による短編西部劇映画です。主演はイーサン・ホーク、ペドロ・パスカル、共演はペドロ・カサブランク、ジェイソン・フェルナンデス、ジョゼ・コンデサ、マヌ・リオス、サラ・サラモ、オイアナ・クエト、ダニエラ・メディーナ、ジョージ・スティーン他。
30分という短い時間でコンパクトに無駄なくまとめられていますし、主演2人の個性や魅力も活かされていて「いい映画」だとは思うのですが、この結末でいいのかなぁ…という気も (^^;;;
また、ファッションブランド「イヴ・サンローラン」とのコラボ企画だったそうで、確かにファッションとして見るべきところはありましたが、予想よりはファッションが前面には出ていなかったので、映画としては良かったものの、コラボ企画としてこれで良かったの?とは思います (^^)
「越境者たち」('22)
生き別れた夫を捜すためフランスへ亡命しようと極寒のイタリアアルプス越えに挑む女性と、彼女を手助けすることになった男性の決死の道行きを描いたサバイバルサスペンスです。主演はドゥニ・メノーシェ、ザール・アミール=エブラヒミ、共演はヴィクトワール・デュボワ、オスカー・コップ、ルカ・テラッチャーノ、ギヨーム・ポティエ他。
もやもやした違和感が拭えない映画でした。
難しいことを考えなければ、妻を事故で亡くした夫の心の再生を描いた物語として「感動できる」のかもしれませんが、そこに「不法移民」の問題を絡めたことで、無邪気に感動することができないのです。
確かに、ヒロインが置かれている状況には同情すべきところが多々ありますし、正式な亡命手続きをしても、認められる保証もなければ、認められるまでどれくらいの時間待たされるか分からないことを考えると、仕方のないところはあります。それでも、今のこの時代に「気の毒だから」という理由だけで不法入国者を無条件に受け入れてしまって本当にいいんでしょうか?
一方、不法移民、不法入国者を追い詰める「自警団」の描き方にも疑問。確かに、警察でもない、何の権限もない一般市民が武器を持って不法入国者たちを暴力で追い詰めるのは行き過ぎです。なので「非情な悪役」として描くのは仕方ないと思いますが、それでも、移民に対して厳しい目を持っている一般市民の代表であるかのように描くのはあまりにバランスを欠いています。
とにかく、現実社会のデリケートな問題を題材として扱っていながら、あまりに幼稚で偏った、一方的な描き方をしていることに「世の中の分断を煽りたいだけ」の映画にしか見えなかったのです。
「リベンジ・オブ・ウォー」('24)
米政府に裏切られた傭兵が、ヨーロッパ各地に飛んで復讐の戦いに挑む姿を描いたリベンジアクションです。主演はフランク・グリロ、共演はロバート・パトリック、ローナ・ミトラ、ユルス・レチン他。
ヨーロッパでロケした街並みや歴史のある建物、自然の景色といった映像はいいんですが、それしか褒められるところがなかった…。
この手の映画に内容は求めていないので、雑な設定もストーリーもキャラクター造形もどうでもいいと諦められますが、アクション映画なのにアクションがつまらないのは致命的。
まず、この映画を観る人は主演のフランク・グリロのアクションを期待してるはずなのに、肝心の彼のアクションがちょっとしかない。むしろ主人公以外の登場人物のアクションの方が印象的だし、尺も長い。
それに、ただ漫然とアクションが続くだけでメリハリがなく、クライマックスのド派手なアクションシーンはいつになったら来るんだろうと思っていたら、クライマックスらしいクライマックスもなく、呆気なく終了。あまりの締まりのない終わり方に言葉を失い、もしかして自分でも気付かないうちに途中で居眠りでもしてたのかと思ってしまったほど。
とにかく、フランク・グリロのファンでも楽しむのは厳しい出来で、これって「ヨーロッパロケの名目でフランク・グリロを接待するためだけに作られた映画」としか思えませんでした。
「ボーダーライン〜正義の悪党〜」('18)
6年前にドラッグの取引現場で兄を警察に殺された青年が、仮釈放後、消えたドラッグと大金の行方を仲間と追う中で事件の真相に迫っていくさまを描いたノルウェーのクライムサスペンスシリーズ全8話です。主演はオーデン・ヴォーゲ、共演はシリエ・トルプ、インガ・イブスドッテル・リッレオース、イェスパー・マルム、ドゥク・マイ=テー、キッレ・ヘルム他。
大雑把に全体を俯瞰して観れば、それなりに面白かったのですが、満足感は低い…。
とにかく、ストーリー展開がぎこちなくて釈然としないのです。
登場人物の言動も、あり得なくはないけれど、自然に見えない…。
そして何より、主人公が活躍しそうなキャラと見た目なのに、最後までほとんど全く活躍しないというのは致命的。
続編がありそうな終わり方でしたけど、既に何年も経っているので、続編が作られることはないんでしょうね。
「ソウルの春」('23)
韓国で「ソウルの春」と呼ばれる民主化運動が盛り上がる中の1979年12月に、クーデターを起こした反乱軍とそれに抵抗する鎮圧軍の激闘を描いたポリティカルスリラーです。主演はファン・ジョンミンさん、チョン・ウソンさん、共演はイ・ソンミンさん、パク・ヘジュンさん、キム・ソンギュンさん、チョン・マンシクさん他。
韓国の現代史を題材にした作品は観応えのあるものが多いのですが、本作も予想を遥かに上回る観応えがありました。
長く独裁者として君臨していた朴正煕大統領が暗殺されたことで、軍事独裁政権が終わって民主化が進むかと期待されながら、結局、独裁者が変わっただけで軍事独裁は基本的にそのまま続いてしまった歴史を生々しく描いています。
歴史上の事実と分かっていても、あまりに虚しく、救いのない物語に、ただただ言葉を失うばかりでした。
ただ、登場人物が多いので仕方ないのは分かるのですが、登場人物たちを非常に分かりやすく単純化しているので、そこは注意して観なければいけないと思います。
「ナイト・トレイン/破滅へのカウントダウン」('24)
ハッカーの攻撃により暴走したロンドン行きの寝台列車を舞台に繰り広げられるアクションサスペンスシリーズ全6話です。主演はアレクサンドラ・ローチ、ジョー・コール、共演はパート・タケラル、ガブリエル・ハウエル、デヴィッド・スレルフォール、パメラ・ノムヴェテ、スコット・リード、シャロン・ルーニー、ダニエル・ケイヒル、アレックス・ファーンズ、ルース・マデリー、リア・マクレー、ケイティ・ルング、ロイス・チミンバ、アダム・ミッチェル、シャロン・スモール、ジェームズ・コスモ他。
いつもながら、この手のサスペンスものが、「サイバー」を荒唐無稽な魔法のように描くのは、もはや突っ込む気力もなくすレベルですが、それを素直に「一種の魔法」と割り切って観れば、充分に楽しめます。
ただ、「サイバー」以外の人間ドラマ部分が、観ている方が恥ずかしくなるほどベタベタで古臭い。敢えてそうしてるんでしょうけど、登場人物の造形や配置、言動などの全てが分かりやすくて、安易に見えちゃったんですよね…。「あぁ、そこで感動させようって魂胆ね」「あぁ、そこで『驚愕の真実!!』ってやりたいんだ」って感じで見え見え。そのあたりはもうちょっと工夫が欲しかったんですが、それは映画やドラマを大量に観過ぎているからそう感じるだけで、一般的にはこれでもいいのかなとは思いますけど。
「江戸川乱歩の陰獣」('77)
江戸川乱歩の1928年の中編推理小説「陰獣」を原作とし、殺人事件の謎解きに挑む推理作家を描いたミステリ映画です。主演はあおい輝彦さん、共演は香山美子さん、加賀まりこさん、野際陽子さん、倍賞美津子さん、若山富三郎さん他。
映像は好み。
舞台となっているはずの昭和初期ではなく、映画公開当時の「現代」っぽいところもあって気になったりはしましたが、重要なシーンでは敢えて舞台劇調の演出にするなど、特に色使いにムードがあって![]()
が、最初から最後まで、あおい輝彦さんと香山美子さんの2人がしっくり来なかったのです…。ミスキャストとまでは思いませんが、少なくとも自分が抱いているイメージとはほど遠く、そのため物語に全く入り込めませんでした![]()





