Marc のぷーたろー日記 -16ページ目

「Ganymede」('23)

 

キリスト教原理主義者の家庭に生まれ育ち、抑圧されて生きてきたレスリング選手の男子高校生が、本来の自分を受け入れられずに苦悩するさまをホラータッチで描いたドラマ映画です。主演はジョーダン・ダウ、共演はパブロ・カステルブランコ、ロビン・ライヴリー、デヴィッド・ケックナー、ジョー・クレスト、マリッサ・レイエス、ソフィア・イエペス、アンナ・シュレーゲル他。

 

題材としては定番で目新しくはないのですが、主人公が受けている抑圧や、そこからくる罪悪感をグロテスクなクリーチャーとして表現し、ホラー映画のような見せ方をしているのはちょっと新鮮。終盤の正気を失った母親の姿は、サイコスリラーでしたし。

 

ただ、結末はちょっと呆気なかったかな…。エピローグもノーテンキ過ぎるし。

 

それでも、超保守的で、キリスト教原理主義に基づいて公然と差別や迫害、人権蹂躙を行なう人々が数多く存在するアメリカでは、こういった映画などを通じて啓発し続けることはとてもとても大事。これもまた日本人の多くが知らないアメリカの実態なのです。

「君たちはどう生きるか」('23)

 

太平洋戦争中、母親の死をきっかけに田舎に疎開した少年を描いた、宮崎駿監督による冒険ファンタジー映画です。声の出演は山時聡真さん、菅田将暉さん、柴咲コウさん、あいみょんさん、木村佳乃さん、木村拓哉さん、大竹しのぶさん、竹下景子さん、風吹ジュンさん、阿川佐和子さん、滝沢カレンさん、國村隼さん、小林薫さん、火野正平さん他。

 

Wikipedia「君たちはどう生きるか (映画)」

 

2000年以降の宮崎作品をイマイチ好きになれないので、この作品も全く期待しないで観たのですが、期待値が低かったのか、最近の宮崎作品としては「悪くなかった」です。それでも、はっきり言ってしまうと「大して面白くなかった」ので、もう二度と観ることはないと思います。

 

ただ、観る前はもっと観念的で分かりにくい内容かと思っていたのですが、確かにいろいろ深読みできる内容ではあるものの、表面的には非常にシンプルな異世界ファンタジーで、子供でもストーリーは追える内容になっていたのはちょっと意外でした。そこは外さないのは流石「宮崎駿」という感じ。

「きみの色」('24)

 

人が「色」で見える高校生の少女が、友人と組んだバンドを通じて成長していく姿を描いたアニメーション映画です。声の出演は鈴川紗由さん、髙石あかりさん、木戸大聖さん、やす子さん、悠木碧さん、寿美菜子さん、戸田恵子さん、新垣結衣さん他。

 

Wikipedia「きみの色」

 

もっと「音楽映画」の要素が強いのかと思っていたのですが、あくまで「青春映画」に徹していたのは意外。それでも、映像は美しいし、「共感覚」の表現も印象的。

 

主人公たちが作った歌の詞は監督の山田尚子さんによるものだそうですが、いかにも素人の高校生が書いたような絶妙な「ダサさ」がリアルで、玄人感がないのがグッド!

 

とにかく、とても丁寧に作られた映画という印象でした。

 

が、自分でも驚くほど、全く心に響かなかったのです。

 

メインのキャラクターの3人が自分にはさほど魅力的なキャラクターに見えず、そのため距離を感じて共感や没入を妨げられたのでしょう。

 

出来が悪いわけではないのですが、完全に「not for me」な映画でした。

「ザ・リバー~隠蔽された事件~」('17)

 

フィンランドの国境付近の川で切断された手が発見されたことをきっかけに、軍や警察の陰謀が明らかになって行くさまを描いたノルウェーのサスペンスシリーズ全8話です。主演はエスペン・レボリ・ビェルケ、共演はインゲボルグ・ラウストル、デニス・ストーロイ、アンネ・マッギャ・ヴィゲリウス、エーリク・スミス=メイエル、スティーグ・ヘンリク・ホフ、ハンネ・マティーセン・ハーガ他。

 

題材は興味深い。ノルウェーの地政学的背景を考えれば説得力はあるし。

 

また、北欧サスペンスらしい、雄大で美しいが恐ろしさも感じる大自然を背景に、暗く寒々しい空気感がサスペンスを盛り上げてくれてグッド!

 

全体としてはそれなりに楽しめました。

 

が、脚本と演出には甚だ疑問。というより、はっきり言ってヘッタクソ。

 

主人公をはじめとする登場人物の言動が自然ではないので、観ていてイチイチ引っかかってしまって物語に入り込めないし、ストーリー展開に合わせて無理やり動かされてる感じしかしないのです。演出も分かりづらいし。

 

そして一番ダメなのはラストシーン。ここで「ある真実」が明かされ、ある人物の言動が不自然だった理由が分かるのですが、取って付けた感しかなく、こういうオチなら、それなりに伏線を張ったり、匂わせたりする場面や演出があって然るべき。そういう緻密さがなく、雑なところがダウン

 

北欧サスペンス好きならそれなりに楽しめると思いますが、積極的に他人に勧めたいと思うほどの出来ではありませんでした。

「アイアンクロー」('23)

 

伝説的プロレスラー、フリッツ・フォン・エリックとその一家の栄光と悲劇を描いたスポーツドラマ映画です。主演はザック・エフロン、共演はジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、リリー・ジェームズ他。

 

Wikipedia「アイアンクロー (映画)」

 

悲痛…。

 

映画では幼くして亡くなった長男を含めて5人兄弟として描かれていますが、実際には弟がもう1人いて、その弟もプロレスラーになったものの若くして亡くなっています。

 

これだけの悲惨な結果に対して、父親を「毒親」と断じてしまえば話は簡単なのかもしれませんが、そんな単純な話じゃないですよね…。そもそも怪我や病気は父親のせいじゃないですし、もし怪我も病気もなければ、息子たちは大成していたかもしれず、そうなったら間違いなく父親は「立派な父親」と称賛されていたはず。

 

もちろん、「プロレス以外に人生はない」と息子たちを洗脳し続け、他の生き方を選択できるような精神的「逃げ道」を断ち、息子たちを追い詰めたのは父親ですけどね…。

 

「親であること」の難しさを考えさせられるとともに、1人生き残った次男が、別の生き方を見つけ、妻子や孫たちと幸せに暮らしていることを知って「本当に良かった…」と言いたい気持ちでいっぱいになりました。

「愛に乱暴」('24)

 

吉田修一さんの同名小説を原作とし、夫の実家で静かな家庭生活を送る主婦の日常生活が次第に崩壊してゆくさまを描いたサスペンス映画です。主演は江口のりこさん、共演は小泉孝太郎さん、馬場ふみかさん、水間ロンさん、風吹ジュンさん、斉藤陽一郎さん他。

 

すっかり見入ってしまいました。

 

あらすじにしてしまえば、物語としては実は平凡な話。

 

それでも、一貫して主人公の視点でじっくりと丁寧に彼女の姿を追うことで、スリリングな心理サスペンスになっているのは見事。

 

そして何と言っても、江口のりこさんの説得力!!

 

このハラハラドキドキ感は彼女だからこそ出せるもの。

 

ストーリーそのものではなく、彼女が醸し出す独特の「スリル」を存分に味わえる映画でした。

 

「アイスマイヤー曹長の選択」('22)

 

実話をもとに、同性愛者であることを隠しているオーストリア軍の鬼教官と同性愛者であることを公言している新兵を描いたドラマ映画です。主演はゲアハート・リーブマン、ルカ・ディミッチ、共演はユリア・コーシッツ、アントン・ヌーリ、カール・フィッシャー、クリストファー・シャーフ他。

 

Wikipedia「Eismayer (Film)」

 

実話をもとにしている上に、主人公2人は実名で登場。本人たちも制作に協力しているようなので仕方ないとは思うのですが、あまりに主人公に都合よく綺麗に描き過ぎ。

 

差別や偏見はありつつも、周囲は比較的すんなりと受け入れているし、基本的に主人公である鬼教官の内面の問題として描いているのは2020年代の今らしくて悪くないのですが、妻や息子との関係があまりにあっさりとしているせいで、主人公の葛藤の末の「変化」を無邪気に祝福できないんですよね…。どうしても、もやもやとしたものが残ってしまうのです。「元妻とお子さんはこの映画をどう思ってるんだろう?」と気になって仕方ありませんでした。もちろん、当事者たちがちゃんと納得しているなら問題はないんですけど、そもそも「美談」のように描く話ではないと思います。

「熱血男児」('06)

 

復讐のために韓国南部にやって来たヤクザの2人組を描いた人情アウトローアクションです。主演はソル・ギョングさん、共演はチョ・ハンソンさん、ナ・ムニさん、ユン・ジェムンさん、リュ・スンリョンさん他。

 

輝国山人の韓国映画「熱血男児」

 

昔の少年漫画みたいなタイトル(原題の韓国語の直訳)ですが、内容は1970年代の日本映画みたいな感じ。登場人物たちのキャラクター造形もとても21世紀とは思えない古臭さを感じたのですが、登場する携帯電話からすると、映画が公開された当時を舞台にしていることは明らかで、そのあたりのギャップにちょっと戸惑いも。

 

とにかく、主演のソル・ギョングさんをはじめとするキャストの演技にねじ伏せられちゃって何となく「いい映画」と思えちゃうし、実際に悪い出来ではないのですが、ちょっと冷静になって考えると、ストーリー展開は見え見えで全てが予想通りにしか展開しないし、主人公の弟分のキャラクターの描き方が中途半端だし、物足りなさがあるのは否めず。

 

ただ、この手の映画を好んで観る人のニーズは充分に満たしているとは思います。

「カヴァー・バージョン」('18)

 

初の大型ロック・フェス出演を翌日に控えたバンドが直面した「事件」に対して4人のメンバーがそれぞれ「バージョン違い」の証言を行う中で徐々に真相が明らかになっていく様を描いたミステリ映画です。主演はケイティ・キャシディ、ドレイク・ベル、オースティン・スウィフト、ジェリー・トレイナー、共演はデビー・ライアン、アシュリー・アルゴタ、ジェン・アン、ブライアン・ホウ他。

 

同じ出来事を複数の視点から描く、いわゆる「羅生門」構造の作品。

 

「羅生門」構造の作品は好きだし、話としても面白くなくはないのだけれど、終盤で明らかになる真相にしろ、さらにポストクレジットシーンで示唆されるドンデン返しにしろ、「あぁ、そうだったのか!!」という驚きがほとんどない…。ここで驚かすのが「羅生門」構造の作品のキモだと思うんだけどなぁ…。

 

オチを考えると、最初からブラックコメディとして作ったほうが面白かったんじゃないかと思えて仕方ないです。

 

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「シドニー・ホールの失踪」('17)

 

若くして人気ベストセラー作家となった青年の突然の失踪の背景や真相を3つの時系列で並行して描いた青春ドラマ映画です。主演はローガン・ラーマン、共演はエル・ファニング、カイル・チャンドラー、ミシェル・モナハン、ブレイク・ジェナー、ティム・ブレイク・ネルソン、マーガレット・クアリー、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、ジャニナ・ガヴァンカー、ネイサン・レイン他。

 

典型的なダメ映画。

 

題材や構成などは悪くない。キャストも充実してる。

 

が、ストーリーがとことん安易で作為的。

 

感動させようという意図が前面に出過ぎていて、登場人物たちの言動が不自然で嘘っぽい。

 

「結論ありき」で強引にそこに持って行こうとしてるからなのは明らかで、もうちょっと脚本を練れば良かったのに、どうしてこのレベルで制作にGOサインが出たのか謎。