「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('43)
ジェームズ・M・ケインの同名小説を独自に翻案・映画化したルキノ・ヴィスコンティ監督のデビュー作です。主演はマッシモ・ジロッティ、クララ・カラマーイ、共演はフアン・デ・ランダ、エリオ・マルクッツオ、ディーア・クリスティアーニ他。
→ Wikipedia「郵便配達は二度ベルを鳴らす (1943年の映画)」
第2次世界大戦中のファシズム政権下で、公開直後に反ファシズム的として上映禁止処分となっただけでなく、原作者の許諾を得ずに映画化したためにアメリカや日本での正式な劇場公開は1970年代後半まで持ち越されることになったとの曰く付きだが、ネオレアリズモの先駆的傑作として高く評価されている本作。ヴィスコンティ監督の作品は好きでかなり観ている方ですが、この作品だけはこれまで機会がなくて観ることができませんでした。
そんなわけで期待値を高くしすぎたせいか、観終わった時には「う〜む…」という気分に。
印象的なシーンは確かにありました。
特に、ただの浮浪者に見えた主人公の顔が初めてはっきりと画面に映るシーンで、マッシモ・ジロッティがとてつもなくハンサムに見えるような写し方をして、ヒロインの一目惚れに説得力を与えていたのは![]()
そんな「いい男」が物語が進むにつれて、ひたすら「ヘタレ」になっていく一方となることを一段と際立たせる意図があったのでしょう。
が、この主人公のキャラクター造形からすると、マッシモ・ジロッティでは成熟した大人の男に見えてしまって説得力に欠けるのです。
実際には撮影当時の彼はまだ20代前半で、ヒロインを演じたクララ・カラマーイよりも実年齢で9歳も若く、役の上でも同じようにヒロインの方が年上という設定であれば、主人公の終盤のヘタレぶりにも説得力があったのですが、むしろヒロインよりも年上に見えるので、どうもしっくりこないのです。「ありえない」とまでは思いませんけどね…。
そんな違和感がどうしても拭えず、最後まで物語に入り込めませんでした…。
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「ベルファスト」('21)
1969年の北アイルランドを舞台に、9歳の少年の視点から時代の混乱の中でも変わらない家族愛を描いた、ケネス・ブラナー監督の自伝的ドラマ映画です。主演はジュード・ヒル、共演はカトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、コリン・モーガン他。
切ない話だったなぁ…。
今も世界のあちこちで、規模の大小はあれど、紛争は起きており、そのために慣れ親しんだ生まれ故郷を離れざるを得なくなっている人々がいくらでもいるのですから。
そして、両親を美男・美女の役者に演じさせ、祖父母を魅力的なキャラクターとして描いているところに、ケネス・ブラナーの「想い」が強く表れていて印象的でした。
「キャッチ&リリース」('21)
ノルウェー北部の小さな村を舞台に、元医師の殺害をきっかけに起きる不可解な事件に挑むことになった新人警官の女性を描いたサスペンスドラマ全8話です。主演はマチルデ・ソフィエ・ヘンリクセン、共演はイェスパー・マルム、アニッタ・スイッカリ、エスペン・マウノ、クリスティーネ・ハットゲン、アギー・フロスト他。
う〜ん…。
新人の女性警官を主人公にした普通のサスペンスドラマと思って観ると、かなりがっかりしちゃうでしょう。
ミステリとしても真犯人に意外性はなく、謎解きの面白さは皆無。また、視聴者には最初から「巨悪」の存在も少女売春の問題も見え見えなので、なかなかそこに辿り着けない警察の姿は間抜けにしか見えません。よく言えば描写が丁寧なんでしょうが、とにかくテンポが悪く、展開が遅すぎるのです。さまざまな登場人物が事件の真相に迫ろうとしていますが、それらがほとんど全く絡み合わないのも観ていてイライラしますし。
警察側にシャーロック・ホームズ級の天才がいないのは当然としても、あまりに無能すぎるし、そもそも主人公の女性警官が大して有能でもないのに妙に自信満々な態度なのも観ていて共感しづらく、これもまたこのドラマをつまらなくさせている原因の1つ。
「スーパーマンなど存在しない、普通の人々が織りなす物語」と好意的に解釈すれば確かに現実味のあるストーリーとも言えますが、それでも、真犯人を追い詰めながら、最後の最後で目の前で見逃し、それを敢えて追いかけない主人公たちの「警察官としてはありえない」現実離れした行動など、この物語の脚本家は一体どういう考えでこんな結末にしたのか本当に謎。
時間の無駄でした。
「ポゼッサー」('20)
他人の脳と体に入り込み、遠隔操作で計画殺人を実行する暗殺者を描いたサスペンス映画です。主演はアンドレア・ライズボロー、共演はクリストファー・アボット、ロッシフ・サザーランド、ショーン・ビーン、ジェニファー・ジェイソン・リー他。
設定やあらすじの印象では「近未来SFアクションスリラー」っぽいですが、実際にはかなり観念的な内容。単純明快な娯楽映画を期待して観ると失敗しちゃうかな。
1人の身体に宿る2人の人格というのは比較的好みの題材だし、映像も凝っていて、それなりに楽しんで観ていたのですが、一般的に期待される結末とは真逆の結末にちょっと「納得がいかない」気分に。もちろん、敢えてそういう結末にしていることは理解できますし、こういう救いのない結末も「あり」だとは思うのですが、「後味が悪い」を通り越して「不快」なレベルまで行っているので、これは(映画評論家は別として)相当に好みが分かれるんじゃないかと思います。
「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」('21)
型破りな刑事専門弁護士を描いた人気テレビドラマシリーズの劇場版で、15年前にある村で起きた毒物事件の再調査を始めたことで窮地に立たされる主人公たちを描いたドラマコメディ映画です。主演は松本潤さん、共演は香川照之さん、杉咲花さん、片桐仁さん、マギーさん、馬場園梓さん、馬場徹さん、映美くららさん、池田貴史さん、岸井ゆきのさん、西島秀俊さん、道枝駿佑さん、蒔田彩珠さん他。
→ Wikipedia「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」
テレビシリーズは未見。
それでも充分にストーリーは理解できるし、楽しめるように作られています。
また、自分の好きな「閉鎖的な田舎の村ほどクソなものはない」をストレートに描いてくれているので観終わった後には爽快感も。
ただ、やはり登場人物たちのキャラクター造形やコメディ要素のウザさがどうしても生理的に合わず…。
「リスペクト」('21)
ソウルの女王と呼ばれる伝説的女性歌手アレサ・フランクリンの半生を描いた音楽伝記映画です。主演はジェニファー・ハドソン、共演はフォレスト・ウィテカー、マーロン・ウェイアンズ、メアリー・J.ブライジ、オードラ・マクドナルド他。
伝記映画としてはアレサ・フランクリンの音楽史やアメリカの現代史における業績を充分に描き切れているとは言えませんが、まずはジェニファー・ハドソンの歌唱力を堪能するという点では![]()
また、黒人差別が根強く残っていた時代を背景に公民権運動を重要な要素として描いていますが、それよりもむしろ、人種に関係なく、妻や娘を抑圧する男たちが当たり前のように存在する中で我慢を強いられていた女性たちの解放を象徴的に描いた映画という印象を強く受けました。
それにしても、アレサの実父の極悪非道っぷりはもっと赤裸々に描いても良かったんじゃないかなという気も。公民権運動で有名な活動家で、当時は「立派な人物」と見なされていたわけですが、その正体はただのクズ男。既婚の牧師でありながら、愛人を作りまくって子供まで産ませた上、アレサたち姉妹の母親である妻に暴力までふるっていたなど、救いようがないクズ。当時はそれが珍しいことではなかったとは言え、映画の中で最終的に「愛すべき父親」のように描いちゃっているのには、少なくとも今の時代の映画としては違和感が否めませんでした。この描き方はアレサが赦していたからなんでしょうけどね。
「ヴァンゲリス、そしてイタキへの旅」('20)
2022年5月に79歳で亡くなったギリシャ出身の音楽家ヴァンゲリスの創作の源を探求するドキュメンタリーです。出演はヒュー・ハドソン、リドリー・スコット、ロマン・ポランスキー、オリヴァー・ストーン、ジョン・アンダーソン他。
ヴァンゲリスの音楽を昔からとてもとても愛していますが、実はヴァンゲリス本人についてはほとんど知りませんでした。知っていたのは、ギリシャ出身であることとメディアへの露出がさほど多くないことくらい。そのせいで「いかにも天才芸術家らしい偏屈な世捨て人」のようなイメージを抱いていました。
ところが実際には、そんな勝手なイメージとは異なる人物でした。
基本的には典型的な「陽気で親しみやすいギリシャ人」。そして無類の女性好き。
その一方で、セレブとして扱われることが苦手で、社交の場に出るのは好きではなく、たまにメディアに出るのは「生存証明」であり、それも仕事として必要なことだと理解しているから。また、信頼していた仲間に裏切られた経験を何度か経て、真に心を開くまでには時間がかかる、少々疑り深い人物でもある。
そして、映画音楽の作曲家として広く知られているが、特定のジャンルにとらわれない革新的な音楽家であるとともに画家でもあり、また「孤独」を理解して受け入れている、ある意味で哲学家でもある。
とにかく、芸術家としての純粋さを大事にしつつも、人との関係も大事にしている、いい意味で「大人」な人物であり、子供と大人の両面をバランスよく兼ね備えている人物と感じました。
「シン・オブ・アメリカ」('21)
ジョージア州の田舎町で発生した、武装した男女に老薬剤師が人質に取られた事件の裏に、陰謀が潜んでいることに気付いた町の保安官を描いたクライムアクションです。主演はブルース・ウィリス、共演はロブ・ゴフ、アナ・ハインドマン、トレヴァー・グレツキー、カレン・G・チェンバーズ、ティモシー・V・マーフィ、ヨハン・アーブ他。
アイデアは悪くない。
でも、それを「物語」として組み上げることに失敗してる。「何故そうなる?」と突っ込みたくなる無理な展開ばかりで、この脚本でよく制作にGOサインが出たなと。
それにしても、いつもながらブルース・ウィリスが出演する意味が全くなく、主演のはずなのに出番も見せ場も極端に少なく、最後の最後においしいところを持っていくことで主演らしさを見せているだけ。
ある意味で新鮮でしたけど (^^)
「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」('22)
「ハリー・ポッター」シリーズと同じ魔法界を舞台に、世界を旅する魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描いた「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第3弾となるファンタジー映画です。主演はエディ・レッドメイン、共演はジュード・ロウ、エズラ・ミラー、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、カラム・ターナー、ジェシカ・ウィリアムズ、キャサリン・ウォーターストン、マッツ・ミケルセン他。
→ Wikipedia「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」
前作は、本作への「つなぎ」としては充分に面白かったのですが、このシリーズをジェイコブとクイニーのラブストーリーと思って観ている自分にとっては、ジェイコブがほとんど活躍しなかった上にクイニーとの関係にも不穏な空気が流れるだけだったのが不満でした。
それに比べると本作はジェイコブがかなり活躍するし、クイニーとのラブストーリーとしても大満足 (^^)v
シリーズ自体はまだ続くようですが、まずは一段落という感じ (^o^)
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「バニシング:未解決事件」('21)
ソウル警察の刑事と、訪韓中のフランス人法医学者が、不可解な変死事件の裏に隠された臓器密売ネットワークの存在を突き止める姿を描いた韓仏合作のクライムサスペンスです。主演はオルガ・キュリレンコ、ユ・ヨンソク、共演はイェ・ジウォン、チェ・ムソン、イ・スンジュン、パク・スヨン他。
映画全体の落ち着いた雰囲気や映像のタッチは悪くなかったのですが、脚本の細かいところが雑。短い尺で観やすくはあるのですが、もうちょっと「ちゃんと」描いて欲しかったなぁ…。もったいない。
脇役好きとしては、犯罪グループの「運搬係」役のチェ・ムソンさんや主人公の刑事の相棒役のソン・ジルさんが印象的でした (^^)