「潜水艦クルスクの生存者たち」('18)
2000年に起きたロシア海軍の原潜クルスクの沈没事故を題材にした、ルクセンブルクのミリタリードラマ映画です。主演はマティアス・スーナールツ、共演はレア・セドゥ、コリン・ファース、ペーター・ジモニシェック、マックス・フォン・シドー他。
ロシアという国の愚かさを示す事件で、それを1人でも多くの人に知らしめる意味では価値があるのかもしれませんが、それ以上のものではなく、この事件を西側で映像化しても大して意味はないんじゃないかなという気も。
いつになるかは今の状況では全く想像できませんが、ロシアという国が変わり、こういった過去の「恥」に真摯に向き合い、それを悔いて反省する目的で、この事件を「ロシアで」映像化できるようになる日が来ることを願ってやみません。
ロシアは歴史的に西欧に極端なコンプレックスがあり、その反動で異常なまでにプライドが高く、自らの失敗を決して認めない「文化」があるので、そんなロシアが変わるには、まず「適切な自己肯定感」を持つことからではないかなと思うわけです。
「鬼平外伝 最終章 四度目の女房」('16)
池波正太郎さんの時代小説「鬼平犯科帳」を原作とした時代劇ドラマシリーズの番外編です。主演は片岡愛之助さん、共演は前田亜季さん、山本陽子さん、高橋長英さん、本田博太郎さん他。
とても丁寧に作られた人情時代劇。
切なさに溢れる結末を含め、心にじんわりと沁みます…。
ただ、こういう話は昔から本当に好きなのですが、この物語を観る気分ではなかったようです…。
「その気分」になったら改めて観直そうと思います。
「理由なき反抗」('55)
問題を起こしては転校を繰り返す17歳の少年が、新たな転校先で不良グループに目をつけられたことから起きてしまった不幸の連鎖を描いた、ジェームズ・ディーンの主演2作目となる青春映画です。共演はナタリー・ウッド、サル・ミネオ、ジム・バッカス、エドワード・プラット、デニス・ホッパー他。
何十年ぶりかで観てみました。
若い頃はジェームズ・ディーン扮する主人公の「若さ故の反抗」しか目に入らなかったのですが、年を重ねてから観ると、映画全体の印象がだいぶ違って感じられます。
主人公は確かに子供っぽさはありますが、17歳にしてはかなり成熟した大人の部分もあるし、父親を深く愛しているが故に、今の父親の弱々しくも見える姿に反発している、実はとてもいい子。
また、それなりに成熟している主人公に対して、サル・ミネオ扮する、裕福だが両親から疎まれている孤独な少年プレイトー(プラトン)は完全に子供で、それが故に彼の物語として観ると、ただただ痛切な話…。
主人公の物語としては、最終的に両親となんとか折り合いをつけられそうな希望を持たせて終わりますが、プレイトーの物語としては全く救いがなく、そのギャップに感情の置き所をなくしてしまって戸惑うばかりでした…。
「チェルノブイリ1986」('21)
1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故を、当時の現地で暮らしていた人々の視点から再現したロシアのパニックサスペンス映画です。監督・主演はダニーラ・コズロフスキー、共演はオクサナ・アキンシナ、フィリップ・アヴデーエフ、ラフシャナ・クルコヴァ他。
単なる事故ではなく、当時のソ連政府の隠蔽体質によって対応が大幅に遅れ、その結果として多くの市民が被曝し、甚大な被害につながった「人災」であることに一応は触れているものの、それはほとんど言い訳程度。この映画はあくまで現場で命懸けで対応に当たった人々を「英雄」として描いた娯楽映画にすぎません。これ自体はハリウッドをはじめ、どの国でもやっている「美化」なので致し方ないとは思います。純粋に娯楽映画と割り切れば、出来は悪くないです。
しかし、今の世界情勢でこの映画を観ると、どうしても納得がいかない気持ちになります。
極端に言ってしまえば、「ロシアがウクライナで犯してきた歴史上の様々な犯罪行為の中でも最悪なものの1つ」であるチェルノブイリ原発事故を「ロシアの英雄の物語」のように描くなんてありえないでしょう。
この映画のプロデューサーはウクライナ人だし、監督・主演のダニーラ・コズロフスキーはロシア人ではあるものの、ロシアのウクライナ侵攻に反対の立場を表明しているようですが、それでもこの内容は受け入れられないです。
「クリエイション・ストーリーズ〜世界の音楽シーンを塗り替えた男〜」('21)
1990年代に数多くの人気バンドを世に送り出し、ブリットポップを牽引した音楽レーベル「クリエイション・レコーズ」の共同創設者であるアラン・マッギーの破天荒な人生を描いた音楽伝記映画です。主演はユエン・ブレムナー、共演はスーキー・ウォーターハウス、レオ・フラナガン、リチャード・ジョブソン、トーマス・ターグーズ他。
自分は「クリエイション・レコーズ」にもアラン・マッギーにも全く思い入れがないのだけれど、思い入れがある人ならきっともっと楽しめたんだろうな…。
音楽業界を舞台にしているとは言っても、プロデューサーが主人公なので、ミュージシャンの伝記映画とはちょっと違う。
ミュージシャンの伝記映画では定番とも言える、親との関係や薬物依存の問題などは盛り込まれているし、ちょっとした悲劇性もあるにはあるけれども、存命中の破天荒な人物を、そのままクレイジー且つコミカルに、そして一貫して猛スピードで描いていて、その「軽さ」と「スピード感」は![]()
ただ、ユエン・ブレムナーは確かにハマり役なのだけれど、撮影当時既に40代後半で、その実年齢通りの見た目のまま、20歳くらいから演じるのはちょっと無理があったかな (^^;;;
「金の糸」('19)
ジョージアを代表する女性映画監督ラナ・ゴゴベリゼが日本の「金継ぎ」から着想を得て27年ぶりに91歳で発表した作品で、ジョージアの苦難の歴史と過去との和解を描いた人間ドラマです。主演はナナ・ジョルジャゼ、共演はグランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ他。
1本の映画として観ると、もうちょっと物語としての抑揚があっても良かったかなと思わないでもないですが、それでも、「金継ぎ」からこういう物語をイメージできる監督のセンスは素晴らしいと感じました。
「母へ捧げる僕たちのアリア」('21)
南仏の海沿いの町の公営団地で、昏睡状態にある重病の母親の自宅介護をする4人兄弟の苦難に満ちた日常生活を、年の離れた末弟の14歳の少年の目を通して描いたフランスのドラマ映画です。主演はマエル・ルーアン=ベランドゥ、共演はジュディット・シュムラ、ダリ・ベンサーラ、ソフィアン・カーメ、モンセフ・ファルファー他。
移民の子としてフランスで生まれ育った(おそらく)北アフリカ系の家族の「現実の一例」を描いていて評価が高いのは理解できます。
ただ、最後までしっくり来ない映画でした。
オペラが好きなだけで取り立てて歌がうまいわけでもない主人公の少年が、有名オペラ歌手に「素質がある!!」と急に見込まれちゃうのは、物語の展開上、そういった「外の世界に飛び立てるきっかけ」が必要なのはわかりますが、いくらなんでも無理がありすぎ…。
また、3人の兄のキャラクターが強烈なせいで肝心の主人公の印象があまりに薄く、魅力に乏しいのも![]()
もちろん、主人公に魅力がなくても、それを補ってあまりある魅力的なキャラクターの友人や家族が登場すればいいのですが、それもなく、確かにそんな都合の良いキャラクターを敢えて登場させないのはリアルと言えばリアルなんですけどね…。
とにかく、3人の兄たちは確かに個性的。
母親の在宅介護にこだわる長男は、その気持ちは理解できるけれども、あまりに頑なすぎるし、若いのに超保守的な家父長制の価値観で生きている人物で共感しづらい。終盤の「ある行動」も充分に理解はできるけれども、ただ感情的に涙を流すだけで罪悪感といったものが全く感じられず、その後は憑き物が落ちたかのように、ただ「すっきりさっぱり」しているのも微妙に違和感…。長男としての重荷から解き放たれ、ようやく弟に対する愛情や優しさを示せるようになったのはよかったけれど…。
そして、三男はクズすぎて論外。物語を盛り上げるためにこういうトラブルメーカーが1人は必要だったんでしょうけど、そういう作為が見え見えでシラけちゃう。
そんな中、金持ちを相手に男女関係なく身体を売っているチャラ男の次男が一番穏やかで優しく、愛情深いというのは唯一の救いなのだけれど、かと言って主人公の魅力のなさを補うほどの出番も見せ場もない…。
こうやって不満をいろいろと述べちゃいましたけれど、逆に言えば、これだけ言いたくなるくらいには印象に残る映画だったと言えるのかもしれません (^^)
「弟とアンドロイドと僕」('22)
大学で教員として働きながら、密かに自分とそっくりのアンドロイドの開発に情熱を傾ける孤独なロボット工学者の日常を描いた人間ドラマです。主演は豊川悦司さん、共演は安藤政信さん、風祭ゆきさん、本田博太郎さん、片山友希さん、吉澤健さん他。
阪本順治監督が豊川悦司さんを想定して脚本を執筆しただけあって、役へのハマり具合は文句なし。彼が持つ独特の「生身の人間離れした気持ち悪さ」が存分に活かされています。
また、意識的に現実味を廃し、SFというよりオカルトホラーのような雰囲気で描くことで、特異で現実離れした登場人物たちの存在を観ている側が許容できるようにしているのも印象的。
さらに、どのシーンのどのカットを取っても構図が決まっていて、深みのある色調と合わせて「動く絵画」のような趣。
本来は小説で描いた方がふさわしい物語を敢えて映像で表現した「気概」は強く感じます。
が、純粋に1本の映画として「面白いか?」と訊かれれば、面白くなくはないけれど、積極的に他人に勧めたくなるほどの面白さはないという感じ。僕は嫌いじゃないですけど。
「ザ・シューター」('16-'18)
スティーヴン・ハンターのベストセラー小説「ボブ・リー・スワガー」シリーズと、その第1作を映画化した「ザ・シューター/極大射程」('07) をもとにしたテレビシリーズ全3シーズン全31話です。主演はライアン・フィリップ、共演はシンシア・アダイ=ロビンソン、オマー・エップス、シャンテル・ヴァンサンテン、エディ・マクリントック、ジョシュ・スチュワート他。
難しいことを全く考えなければ、毎回見せ場となる派手なアクションシーンはあるし、それなりにハラハラドキドキできるし、気楽に観られる娯楽作品としては充分な出来。
が、ちょっとでも真面目に観てしまうと、辻褄の合わないご都合主義な展開の連続で、そのあまりに雑でテキトーな脚本に呆れちゃう。しかも、アメリカを影で牛耳っているはずの謎の秘密結社が「仮面ライダー」のショッカー並みに現実味がないし、組織としてあまりに脆弱でしょぼいのには![]()
結局、妻子を大事にする家庭的な夫の顔を見せながら、人を殺すことに何の痛みも感じない主人公が一番のサイコパスである点を含め、全てがいい意味でも悪い意味でも「アメリカン」なドラマでした。
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「ハウス・オブ・グッチ」('21)
世界的高級ブランドの創業者ファミリーであるグッチ家の崩壊を描いた、リドリー・スコット監督によるサスペンス映画です。主演はレディー・ガガ、共演はアダム・ドライヴァー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、ジャック・ヒューストン、サルマ・ハエック他。
冒頭で、あくまで実話から着想を得たフィクションであることを明言はしていますが、登場人物は実名だし、この映画が実話通りだと思っちゃう人は多そう。
それはともかく、この題材なら主人公であるパトリツィアを徹底的に悪女に描くか、逆にそういう生き方をするしかなかった愚かで哀れな女性として描くか、どちらかにした方が物語としては面白くなったと思うのですが、敢えてそうせず、映画全体をブラックコメディとして描こうとした作り手の意図はわかります。確かに一般庶民の感覚からしたら、常軌を逸した人々が自らの愚かしさのために一族全体を自ら滅ぼしちゃったなんて、「バカじゃね?」としか思えませんし、そのようなグッチ家を蔑みたくなる感覚を前面に出したかったのでしょう。
でも、そのために主人公が中途半端なキャラクターになってしまい、ダラダラと長い尺と合わせて、ただただ退屈な話に。アル・パチーノとジャレッド・レトの大げさなコメディ演技も笑えない上に浮いてるし。
題材も役者もいいけれど、料理の仕方を失敗しちゃったという感じ。
