マンタムのブログ -2ページ目

マンタムのブログ

この世にタダ一つしかないカタチを作ろうとしているのですが出来てしまえば異形なものになってしまうようです。 人の顔と名前が覚えられないという奇病に冒されています。一度会ったくらいでは覚えられないので名札推奨なのでございます。


トリックオブジェの世界

2014年11月20日(木)~12月6日(土)

11:00~19:00 (€最終日17:00まで)

上野シゲユキ、内林武史、菊地拓史、北見隆、木村龍、
桑原弘明、はがいちよう、緋衣汝香優理、百武朋、
マンタム、矢沢俊吾、山脇隆
特別出展: 荒木博志

昨日なんとか搬入をすませ 他の出品者の方々の作品を堪能させて頂きました。

今回は大御所実力者揃いで相当見応えの在る展示になっています。

是非いらして下さいませ!

私は 永久機械#6 プリシラ Po noc #2 の3作品を出品しています。

今回の為に造り上げたPo nocは2度目になるのですが前回作った時に果たせなかった色々な事に決着をつけるためあえてもう一度カタチにしたのですが本当はもう一度合いたかったようです。

今回物語も新しいPo nocに合わせて少しですが変えてあるのです。

20日 24日 27日 4日 6日と在廊し Po nocによる演奏会を行います。

1940年代から50年代の貴重なSPレコードをかけますのでよろしければ聞きに来てやって下さいませ!




   +  少しだけ変化した新しいPo nocの為の物語  +



ガランドウのカラダとそれが紡ぎだす夜について


Po noc



彼女は生まれた時から抜け殻でガランドウな存在だったがそれは彼女のせいではなかった。

彼女自身自分がいつ生まれたのか知らなかったしいつから今あるようにここにいるのかも理解出来ていなかった。

でも気がついたときには所々漆喰が剥がれ落ち古い木地がのぞいているロココ調の広間に家具や複雑なカタチをした自動演奏機械に埋もれるように置かれていたのだ。

彼女は豚の頭部に漆喰で塗られたガランドウのカラダを持つだけの存在だったがそれでも誰よりも美しい声で唄い他者の悲しみを理解する心を持っていたのでこの家を訪れる多くの客に好かれていた。

家族は父親だけで彼はその古い格式張った家の主でもあったが誰でも受け入れ身分を問わずに相談に乗り悩みを聞いてやっていたので客足が絶えること はなかった。

元々人が絶えることがなく集められたオルゴールや自動演奏機械のおかげで賑やかだった広間は彼女の唄が加わることで更に華やかさを増していた。

天空に月が輝く良く晴れた夜には手入れの行き届いた中庭で彼女を囲んで唄を聞く事が集まった村人達の一番の楽しみになっていた。

やがて彼女の唄と存在は中央の貴族達の知るところとなり秋から次の春にかけての期間は父親につれられて特別仕立ての馬車で外国まで遠征するように なったのだ。

彼女は請われればどんな唄でも唄った。



当時高名だったあらゆる演奏家達と競演の機会を得て時代の寵児のように扱われたがそれでも慢心することは無く誰の要求であろうと応えあらゆる楽曲 を唄った。

彼女は一躍人気者となりサロンの寵児となったがそれを良く思わぬものも少なからず存在した。

それは彼女によって唄う場を奪われた歌い手やその関係者たちであり同時に異形のものを受け入れることのできない悲しい人間達だった。

彼らは彼女に恥をかかせようと現在の人間では唄いこなせないカストラート用に作られた楽曲を持ち込んだりしたがそれさえ彼女が苦もなく唄いこなしたので彼らの目論みは失敗に終わり逆に彼女の名声を高める結果に終わってしまった。

演奏を妨害したり客席から野次を飛ばしてみたりしたがたいした効果はなくむしろ顰蹙をかったのは彼らのほうだった。

彼らの多くは本来あるべき努力や持つべき誠意を持たず人間関係を利用する事で自分にとって都合の良い状態を得ようと考え行動する傾向にとらわれて いた。

それだけに彼女の有り様は本来あるものよりも更に強大に感じられ彼らの憎しみと敵意を日々増大させていた。

そもそも彼女は人でさえないのだ。

言わば便利な自動演奏機械のようなものでそんなものが自分たちの大切な仕事を奪って行くのを許すべきではないと考えるようになったのだ。

彼女を殺すのではない。

余計な機械を壊すだけだ。

新大陸で自動的に鉄道の線路の釘を打つ機械が発明され多くの黒人の仕事を奪おうとした時それと闘って機械を廃棄させた黒人のように我々は我々の権 利を守るのだ

そのすり替えられた思考は談合するたびに歪み徐々に具体的な計画となりある冬の夜それは実行された。

演奏会の帰りにたまたま父親が別件で人に会う為に彼女をその屋敷の召使いに任せたのだ。

だがその召使いは幾ばくかの金を握らされて彼らを招き入れてしまったのだ。

殺しはしない 

それは酷いことだから 

我々は貴女を唄えなくするだけだ 

そうしないと我々が生きて行ける場所がなくなるからだ 

貴女は食べなくても生きて行ける体と環境があるが我々には日々のパンが必要なのだ 

惨い事だとは思うが理解してもらいたい 

出来るだけ手早く済ますつもりだ 

ゆるして欲しい

彼女は抗弁したかったがそれさえ許されなかった

彼女が助けを呼ばないように用意してあった口かせを閉め込まれていたからだ

彼らは用意してきた解剖刀で彼女の顎の下を切り開くと金属の口かせで押し込められ小さくなっている舌を根元から切り取り頭部をハンマーで砕いた。

するとPo nocの頭部は不死と言う永劫の時間から解放されたかのようにゆっくりと溶け始めたのだ。

彼らはその光景に恐れを抱いたがそれでも切り取った彼女の舌を切り刻むとそれを皆で食べてしまった。

彼女の舌には霊力がありそれを食すれば美声が出せると口かせを作った魔導師がそう彼らにふきこんだからだ。

でも もう彼女がそれを悲しんでいるかどうかさえ誰にもわからなかった。

残されたものは漆喰でがらんどうの体と溶け残った穴だらけの顔の皮だけだったからだ。

魔導士には彼女の本体はがらんどうの体の中に居て頭は声を出す道具に過ぎないと聞かされていたから破壊できたのだがそれは同時に彼女を只の奇怪な置物に変えてしまう事でもあった。

もう彼女の声は誰にも届かなくなったのだ。

次の日の朝になって彼女の異変は帰って来た父親によって発見されたがもはや手の施し用はなかった。

多くの彼女の信奉者達が嘆き悲しんだがもうその時点では彼女が生きているかどうかさえわからなかったのだ。

やがて彼女は馬車に乗せられて家に帰って行った長い家路についた。

彼女が唄えなくなった事でそれまで湯水のように資金を出してくれていたパトロン達の支援が潰えたからだ。

父親は彼女のおかげで多くの人に囲まれ贅沢な暮らしが出来ていたわけだがこれからは節約して慎ましく暮らして行かねばならないだろう。

長い冬がようやく終わりを告げ解けた氷が道をぬかるませていた。

父親はあの夜彼女の元を離れた事を後悔していたがそれでも彼女を厳重に梱包した羅紗から解こうとはせず馬車の荷台に積んだままにしていた。

家を出るときにはずっと一緒に馬車に乗り歌を歌わせていたのにというのにだ。

家につくと大勢の彼女の崇拝者たちが悲報を聞いて駆けつけた。

彼女はようやく厳重な梱包から解かれ父親に呼びつけられた剥製職人によって皮だけになった頭部を出来る限り以前と同じように修復しいつもの場所に据えつけた。

だが会話する事も唄う事も出来ない状態では只の置物に過ぎずあらためて良く見ればそれは奇怪で異様な存在でしかなかった。

それでも初めの半年ほどは時々様子を見に来たり見舞いにくる客もいたが一年が過ぎる頃には誰一人屋敷を訪れるものはいなくなり屋敷はだんだん荒れ 果てて行った。

最初の5年程は彼女のおかげで蓄えた財産があったのでまだ暮らして行けたがそれも乏しくなりやがて借金を重ねるようになっていた。

ちょうどその頃ある友人が父親を元気づけようと手に入れたばかりの蓄音器という機械を見せに屋敷を訪れた。

その機械でよく彼女が歌っていた楽曲を友人に訊かせてもらううちに父親は彼に懇願しその蓄音器を譲ってもらっていた。

それをもう誰も見向きをすることもなく居間の隅で埃をかぶっていた彼女に組み込んだのだ。

ガランドウのカラダを切り開き蓄音器の機械を中に組み込み大きなラッパを頭に取り付けた。

そうやってレコードをかけてみるとまるで彼女が唄っていた幸福なあの日のような気分に浸れるのだった。

それではじめて父親は彼女の事を深く愛していた事を理解したが同時にそうやって音を出す事しかできない彼女の存在がたまらなく辛くも感じるのだった。

ハンマーによって傷つけられた痕がそのまま穴のようになっていてそこから漏れる音が彼女の死を告げているようにしか思えなくなったからだ。

それでも父親は暫くのあいだ彼女と暮らしていたがある日忽然と姿を消してしまった。

付き合いは広かったが特に親しくしていた人間もいなかったので行方の探し用も無く親戚縁者などというものも現れなかった。

暫くして事件の可能性もあるとして警察が入ったことによってようやく彼女と父親の実像というものがつまびらかにされたのだ。

父親は鍊金術師の家系にあったがそれほどの才能はなく先人達の研究成果を切り売りするようにしながら収入を得ていた事。

あるとき先代からの顧客からの依頼で降霊を頼まれシャーマンを雇って研究するうち偶然降霊した霊を入れる器として彼女を使った事。

その器にされたものが彼女で 元は先代が当時の中国の貴人からの依頼で不死薬の研究中に投薬実験の副産物として生まれた頭部だけが不死となった豚の頭部を切り離したものでありそれに霊を縛るために高僧の骨から作った漆喰で塗り固めた身体と組み合わせたものである。

それは死を認識出来ない存在であり故に不死である為それは死者にとって自身を認知されない牢獄のようなものだった。

だが降霊された霊はその器を嫌わず共生しやがて自身の身体としてそれに合わせた新しい人格と記憶を紡ぎあげて行ったのだ。

元がどういう霊だったのかはもはや知る由もないし未だに彼女の中に存在するかどうかさえ定かではなかった。

やがて屋敷は借財者達によって競売にかけられ中にあった雑多な家具や自動演奏機械や先祖から受けついできた膨大な鍊金術の資料や薬なども皆二束三 文で売り払われた。
彼女はもともと彼女の事も父親の事も良く知っていた骨董商に引き取られたようだがその後を知るものはいない。

人々は時々彼女を思い出しそのうちの誰かがPo. Noc(月夜)と名付けた彼女の小さな墓を作った。

それは共同墓地の隅に作られた小さななにも埋まっていない墓だったが人々は彼女を思い出すとそこでもうすっかり遠くなってしまった日々に思いを馳 せるのだった。



10月4日から31日までh.NAOTO+原宿店(渋谷区神宮前3-18-23)でSTEAM BLOODという展示が開催されます。

h.NAOTO デザイナーである廣岡直人さんのプロデュースによる展示で二階研さんからの招聘で参加する事になりました。

二階さんとは去年のマルイワンでのハロウィンイベントに続いて今年もまた一緒にハロウィンをやることになったわけです。


私の子供のころにはそんなものカゲもカタチもありませんでしたので二階さんと関わる迄は砂漠の彼方の蜃気楼のような存在でしたがおかげさまでようやくなんたるかが理解出来つつある今日このごろなのです。



今回の為に書き下ろされた 二階健さんのSTEAM BLOODという物語をベースに錬金術師が古代から連綿と伝わるキメラ ホムンクルス等 人工生命を造り出すという秘術と蒸気機関を極度に発達させた工学技術を融合させた人造人間を造りだす空間と言う設定になっています。

とはいえお任せということでしたのでやりたいことをやりたいように思う存分やらせて頂きました。



階段を上がると先ず正面にこの物語を写真にした二階健さんの展示空間があるので物語を読みながら1枚1枚観て頂き それから右手に在るカーテンの奥にその人造人間を武器として作り出し世界の経済と軍事を掌握しようとした秘密結社のロッジが現れます。


ロッジの奥には2階建ての研究施設があり勿論中に入って階段を登り物語の世界が現実に立ち現れる様を観て頂ければと思います。



私の作品には物語があり 小冊子がぶら下がっていたり 鳥の王という本が置いてあったりしますが読んでもらえると嬉しいです。


今回は今回の物語に合わせて造った新作 電磁波銃 R.I.P(静かに眠れ)、人工心臓「Steamy Heart Beat」他7点が展示されていて全て販売されていますのでよろしくお願いします。
更に村崎百郎館の構築にも協力して頂いている太田翔さんの怪物20体強がいたるところに存在しているのです。


31日には同会場でハロウィンパーティが開催されます。
私のほうからは特別ゲストとして


Hieros Phoenix
1989年、衝撃的な神秘体験と共に実践的西洋魔術と邂逅。以後「黄金の夜明け」団の儀式魔術体系、並びにアレイスター・クロウリーが提唱したセレマ主義を中心に四半世紀にわたり実践を積む。I∴O∴S∴、B.O.T.A. (神殿建設団)、F.L.O. (隠れたる光の兄弟団) 等、幾つかの魔術団体を経て、現在は世紀末の獣、アレイスター・クロウリーが三代目の首領を務めたO.T.O. (東方聖堂騎士団) の日本代表として活動中。またアレイスター・クロウリーが前世期初頭に設立した魔術結社A∴A∴(銀の星団) を主軸とした修行生活を送りながら、西洋と東洋の秘教体系の研究に従事している。



神木ミサ(魔術師・作家)

魔術の学院「I∴O∴S∴」正式メンバー。天秤座のA型。好きな魔術は召喚魔術。
贔屓の天使はツァドキエル。

2012年、自身のプロベイショナー(参入修練者)時代の魔術日記に基づいた小説「天使由来」上梓。

作品のモットーは「リアルな magical fairy tale」。現在、ぼちぼち次回作を執筆中。

複数の魔術結社に在籍して平行しながら学習する魔術師達が多い中で、今時珍しい、ただ一つの魔術団体で「薔薇の伝統の径」を探究し続けている魔術師。
I∴O∴S∴主宰者であり師匠の秋端勉の三代前がW・E・バトラー、バトラーの師はD・フォーチュン、フォーチュンはM・マサースが創設した「A∴O∴」の参入者ということで、源流を辿れば、魔術系統は「The Hermetic Order of the Golden Dawn(黄金の夜明け団)」。

のお二方の魔術修行者をお迎えし現在の魔法とはどういうものでどういう活動をされているのかなどをお話していただこうと考えています。

更にゲストライブとして
『20141031』
Script / Lyric : 天城凛太郎
Vocal : 甘束まお
Violin : Jumpei
Guitar : 金子"レフティ"裕亮
Bass : 翼
Keyboard : 難波 研
Electronics : 谷地村啓

これは 悪魔のバイオリンをテーマにした朗読劇になるとのことです。
まだ時間等詳しいことは決まっていませんが宜しくお願いします。
http://www.kincs.jp/info/ai1ec_event/22180?

まぁ でも 4日にトークショーに参加させて頂いたときにもつくづくと感じたのですがまさかこの年になって裏原宿の有名なこんなオシャレなお店でこいういうことをするようになるとはユメにも思いませんでした。

10年程前の私の人生設計としてはこの時期には骨董屋として優雅に暮らしているはずだったしそれより更に40年程前の人生設計では孫を連れて動物園に行ったり公園に犬を連れて散歩していたりしていたハズなのですが日々作品製作と空間設営に追われています。

11日から13日までは大阪の自然史博物館で開催されるホネホネサミットに参加して20日から26日までは愛知県立美術館で開催されるアートセッションに参加します。

11月には渋谷 ノトリア 新宿 A STORY 銀座スパンアートギャラリーで展示があります。

確かに一番やりたかった事なので有り難いことではあるのですがちょっと過酷すぎますね。

人生と言うのは時に実に不可解なものであることを実感させられているのです。






村崎百郎館記念祭






2014年7月15日から30日迄 午後12時より午後8時迄

東京の神田画廊において 伊東のまぼろし博覧会に去年の6月より多くのボランティアの方達の協力によりようやく完成した 村崎百郎館 完成記念祭という展覧会が開催されます!



村崎百郎氏についてはウィキペディアにあるページをご覧になって頂ければと思います。 

http://ja.wikipedia.org/wiki/村崎百郎

ただ 補足するなら良くありがちな鬼畜とか反社会的な仮面を被っていたが本当は誠実な良い人などではなくて自身の中にある狂気や彼が言うところの電波という押さえることが出来ない衝動と正面から向かい合いそれを覆い隠す事無く社会そのものと対峙した希有な人間であり表現者であったと私は考えています。



今回 村崎百郎氏の配偶者である森園みるくさんからこの仕事を依頼されたときはここまで大変な事になる等とは夢にも思わず二つ返事で受けてしまいましたが実際に作るべき現場を見た時にはかなり後悔しましたね。

なんとなれば現場は崩壊しそのまま放棄されている温室の廃墟だったからです。中には200キロ超えの石がごろごろと転がっているし枯れた樹木がそこかしこに横たわり蔦があらゆるところを這い回っていてトドメのように不要とされた資材がそこに積み上げられていたからです。

これなら更地から作る方がどれだけ楽なことか。

それにそもそも私は村崎百郎という人間を知りませんでした。

接点と言えば同じ出版社の世話になっていたことが在ると言うくらいでこの依頼もその編集長の紹介によるものだったのです。



そこから村崎百郎の著作と関連した資料を読みあさり残された遺物の中から何をどう誰に展示するのかと言う基本的な命題に取り組む事になったのです。

結論的に言えば元々多重人格的な要素を多分に持っていたところから空間を3つにわけ説明的にではなくて彼の脳の中身をぶちまけるような展示にしようと。

最初の部屋を原点であるゴミを拾い集め捨てた人間をプロファイリングする部屋にし真ん中の部屋を編集者としての部屋にして 最後に魔術に傾倒し修行者としての村崎百郎を作ろうと。





結果として40日近くの時間がかかりのべで200人程度の人手がかかったのではないかと思います。

部屋の構築だけではなくて10年以上も土砂に埋もれた300メートルはあろうかという遊歩道を復活させたり猪対策で鉄条網を張ったりと兎に角やることだけはヤマの用にあったのですから。

それを愚痴一つ言わず今迄の人生で触った事も無い電動工具や鶴嘴や鉄道バールや大ハンマーや一輪車でこちらの無理無体な要求に応えてくれたボランティアの方々には本当に感謝あるのみなのです。




おかげさまで 併設のギャラリー 未確認生物博覧会の会場も含めようやく完成致しました!



前置きが長くなってしまいましたが 今回 この 村崎百郎館 の完成を記念して 村崎百郎館記念祭として神田画廊さんのご好意で展覧会を開催できる運びとなりました。

しかも神田画廊さんの最後の展示となります。

今回の展示は 村崎百郎の名前のもとに集まった多くのクリエイター達がどこで繋がっていたのかをひもとく為の展示でもあるのです。




参加作家

榎本由美(漫画家)
大石容子(漫画家)
黒史郎(小説家)
土谷寛枇
P.P★★★CRYSTAL(ガラスアーティスト)
ユキミドリ(美術家/画家)
森園みるく(漫画家)
マンタム(美術作家)
太田翔(画家 彫刻家)
さちこ(画家)
橋本 章聖(アクセサリー)
雛菜雛子(魔法画家アイドル)
中村欽太郎(デザイナー)

神田画廊


展示期間中 15日のオープニングパーティには 

サイエンスライター 川口友万さんのキルリアン実験の実演 午後6時より30分程度

ミュージシャン&舞台&映画女優&音楽芸者 
DemiSemiQuaverのボーカル&キーボードの 
エミ・エレオノーラによるアコーディオン投げ銭ライブ 午後8時より

 《20140726》
7月26日(土)《20140726》@神田画廊
開場■18:30
開演■19:00
料金■2000円
出演■T'風呂n'T(谷地村啓&難波研)with甘束まお
TFT5年ぶり位のライヴです。ご予約は難波まで。

7月27日(日)

開演■16:00
前売り予約1500円
当日2000円
村崎百郎館完成記念祭 特別ライブ 『ナカヒラ ミキヒト』
(vocal & resonator guitar ナカヒラミキヒト / washtub bass 小林勇介)

是非聴いて欲しいシンガーです。
ブルースと言うと取っ付きにくいという人が居るかもしれませんが彼のは既に彼の音楽になっていてとてもスマートなのです。

http://www.kemusi-blues.com/

等のイベントが開催されます。

現在神田画廊さんでもイベントを企画中だということですので決まり次第下記のリンクで告知させて頂きます!

https://www.facebook.com/events/1381893975412679/?ref_dashboard_filter=calendar


皆様何卒宜しくお願いします!!

とある収集家の遺物より出て来たもので木箱に走り書きのようなメモとともに残されていた。

収集家はあらゆる奇妙な物を集めていて 他にも 鬼の手 ジャッカロープの幼体の液浸標本等があった。

これらの標本は他の収集物と一緒に古物の市場に出品されたのを競り落としたもので伊東のまぼろし博覧会の中に作られた村崎百郎館と併設されている未確認生物博覧会に展示されている。

http://maboroshi.pandora.nu/






河童は卵生であり3年から4年に一度くらいのペースで川の上流で産み落とされるがその時点では鮭の稚魚等と酷似しており判別は難しい。

だが成長は早く1ヶ月程度で30センチ程度に迄成長し河童の特徴である甲羅もほぼその時期にはおおよそながらカタチになっていて手足も生えている。

その時期に陸上を移動して沼等に移動するが乾燥に弱くそこで死ぬものも多い。

基本的に臆病で警戒心が強く夜行性でもあるのでまず見つける事は出来ない。




知能的には人間の5歳児程度と考えられているが声帯の構造が単純なため人間のような複雑な音域をつかえず言葉も持たず集団行動をとる事は稀である。

一度に20から30の卵から孵化するが成体になれるものは僅かである。

殆どは1年以内に他の生物に補食されるか乾燥等によって死ぬが死ぬと甲羅は外れてしまうので狸や鳥の死骸と誤認されその死骸の発見例ですら非常に希少である。

今回の死骸は幼体の時に朽ち木に隠れて成長していたがその朽ち木がなにかの原因で川に流され成長時において体を挟むような格好になった為朽ち木から離れる事が出来ず死んだ孵化後一ヶ月程度の個体と推測される。

朽ち木に捕らえられるような格好になっていたため骨格が分解する前に乾涸び奇跡的に原型を多くとどめた貴重な標本である。





            


               夜を作る機械







その世界には夜が無かった

長い時間をかけて議論されたが結局夜は必要がないと結論づけられたのだ。

地下500メートルの深さにしつらえられた急ごしらえのシェルターは確かに巨大なものだったがそれでも元々その国にいた人口の2%程度を収容するのがやっとだったのだ。

予想もしない時期に氷河期がはじまり地表がブリザードと氷に覆い尽くされる前の限りある時間の中で選ばれた人間達だけがなんとかそこに逃げ込む事が出来たのだ。

地表の様子はある程度は計器で調べる事が出来たし少しの時間なら地上に出る事も出来たが地表の事はあまりわからないことになっていた。

それは地表に残して来た過去を早く忘れるべきだったし残された人々がむかえているあまりにも過酷な状況を誰も考えたくなかったからだ。

氷に覆われた地表に比べればここは楽園だった。

地熱発電によってエネルギーは豊富であったし当初は地上から回収されたものでまかなわれていた食料もやがて地下で作られるようになったので生きる為に必要な全てのものが充分に足りていたからだ。

人々は夜の無い世界で閉ざされた地下の世界を掘り進みながらその領域を広げそこに残された人類の未来を見出す事になった。

だが 3世代目あたりから明らかに人類と言う種の変質が認められるようになりそれは種としての危機的状況を予想させるに充分なものだった。


彼らには時間的概念が存在せず時系列を理解することが出来なかったのだ。

それに所謂シンパシーが極度に欠如していたのもあって彼らの多くは時間概念の欠如を問題と認識出来ず修正しようとは考えなかったのでそれはより深刻な事態と変化した。

つまり過去と未来と現在が同時、もしくは点在するように存在するため社会的な統一した行動がとれず社会的基盤が崩壊し始めたからだ。

治療の方法はその時点で皆無であってこのままではこの地下世界は遅かれ早かれ崩壊し人類は進化する前の状態に戻りこの地底の中で果てるだろうと予測された。

人々は穴を掘り広げ自らの領土を拡大する事さえやめて治療法を探しはじめた。

唯一原因として考えられたのは夜が無い事だが今更夜を作り出す事はできなかった。

夜と言うのは概念であってただ暗くなれば良いと言うものではなかったからだ。

夜と言う存在 夜と言う状態が本当はどういうものだったかを知る者はもう誰もいなかったのだ。

だが 錬金術という古代の魔法のようなものを知る一族が残っていて彼らが地表から持ち込んでいた資料の中に「夜を作る機械」というものが存在していた。

資料は古く曖昧だったがそれが残された唯一の希望といっても良いものだったので地下世界の指導者達は必要な物資を手に入れるため地上に探査隊まで送り出し結果多くの犠牲をはらったがその機械を作らせることに成功した。

それは夜の鳥である「梟の死骸」をベースにしたもので作動原理すら理解出来る代物ではなかったが錬金術の末裔達は正確に機械を造り上げそれはちゃんと作動して夜を作り始めたのだ。

機械は向き合うと体内にある鳥籠に相手の耳(聴覚)を取り込み相手に自分しか聞こえない音を聞かせる事が出来たのだ。

それは共有する時間であってそれが必要とする音であって梟の死骸に無数に取り付けられた記憶の断片とそれを音に変える鈴の音だった。

夜は共有される時間と記憶でありそれはあらゆる生物に必要不可欠な生きる区切りを示すものでもあったのだ。

夜を失う事は過去を失う事でもありそれは結果として未来への必然を否定しかねないものだったのだ。

だが 多くの人間は夜から帰る事が出来なかった。

あまりにも長い間夜を喪失していたので夜に抗えなくなっていたせいだ。

それでも誰も機械を止めようとはしなかった。

機械の持つ夜はあまりにも甘美でありそこにある記憶は残骸となって出口を簡単に塞いでしまったからだ。

もう穴を掘り広げる者はいなかった。







地下世界はゆっくりと滅び始めたのだ。






「ヴァイオリンの為の音楽」




ときどき かさかさと音がしてそれがずっと気になっていたのだ

練習をしたくても構えたヴァイオリンに弓をあてようとすると必ず音がして

それが気になって集中出来ないのだ



勿論先生には何も聞こえないので

私のやる気がないからと母親に告げ口されてしまう

母親はその度に私の手を小さな枝で打ったが

だからといって音が消える事はなかった



私はその音が小さな悪魔がヴァイオリンの中でなにか呪いの儀式のようなことをしているように思えて

恐くて仕方がなかったのだ

だから折角買ってもらったヴァイオリンもちゃんと演奏される事はなく

私はいつまでたってもきぃきぃと小さな獣の鳴き声のような音しか出せないままだった










ある夜 

月の光が窓から差し込んで

ヴァイオリンを照らしていたときに

ヴァイオリンが不自然に動き机から落ちてしまった

慌てて拾いあげたのだが背板が少し浮いていてそこからなにかが這い出そうとしているのが見えた




月の光に照らされたそれは間違いなく人の指に見えるものだった

白っぽく細い指がその浮いた背板から這い出そうとしていたのだ

とても恐くてヴァイオリンを投げ出したい衝動にとらわれたが

それよりもその細い指の事が気になってどうしても目が放せなかった



やがて月の位置が変わりヴァイオリンが影の中に入ったので 

ようやくヴァイオリンを放せたのだが

朝になってみると背板は元通りになっていて、Fホールから覗いて見ても振ってみても

指のようなものの気配さえ感じることは出来なかった









その事があってから私はますますヴァイオリンとその稽古から遠ざかるようになり

やがてヴァイオリンも何処かに仕舞われたまま私の目に触れる事さえなくなっていた


あらためてそのヴァイオリンを見たのは母の葬儀のあとで

大切に仕舞っていたらしいヴァイオリンを客が引き上げたあと父親から手渡されたのだ


私はそのまま家に持ち帰ったのだがあれからずっと頭を離れる事がなかったあの月の夜のことが

どうしても気になったので職人に頼んでヴァイオリンを切断してもらった


そうすると


縦に割られたヴァイオリンの棹の付け根のところから

細長くて白い(死んだ母親の指を思わせるような)水晶が出て来たのだ

それは夜の月のようにほの青く光りその光が私の目の中に差し込んで来た

その光はとても不思議な感触で既に遠くなった母親の記憶を想起させるのに充分なものだった








私は壊れたヴァイオリンとその水晶で卓上を照らす為のスタンドを作らせ

今もそれは机の上で読むべき書物を照らしている


母親が何故私にヴァイオリンを弾かせたかったのかはわからなかったが

結局その誰も顧みる事のなくなったヴァイオリンを彼女は捨てる事が出来なかったし

私もその頃の記憶だけは今でも鮮明に焼き付いている


今は時々だがこのヴァイオリンのランプで本を読む時に母親が渇望し弾けなかった曲をかけている

それは



あの月の夜と今は遠い母親の為に。






名古屋Sipkaでの個展 「記憶の残骸を照らす為の月」が無事に始まりました。
今回は私の原点に在るシュールレアリスムとの邂逅となるよう造り上げているつもりです。
2月5日より3月16日迄 まだ正確には未定ですが3月6日にトークショーも開催する予定です。

基本的には平日になりそうですが東京から会場迄のツアーも考えています。

流星号で朝 小田急線相模大野駅もしくは橋本駅で集合してそのまま名古屋の個展会場を目指しその日の夜名古屋を出て早朝相模大野に戻ると言うツアーです。

気になる方はメッセージ等お願いします!


「 Lebka konjugát  」





今回の名古屋Sipkaでの展示作品の一つです。
今回の作品の多くはやはり物語を内包していてそれが作られた順番に全体の世界を構成して行くパズルのようになっています。

まだ全部が公開されているわけではなくそれは今回の会期中に徐々にひもとかれて行くのです。

「 Lebka konjugát  」

その豚は産まれた時に既に自我を持つ程非常に高い知能を有していた。
母親から乳離れする頃には人語を理解しており同時に畜産農家で産まれた自分の未来がどういうものになるのかも理解出来ていた。

その現実は彼を常に絶望的な気分に追い込んだ。

いくら高い知能が在ると言ってもそれだけで容易に回避出来る未来ではなかったからだ。

自分の周りの人間に知能の高さを証明出来たとしても一時期は珍しがられ延命出来るかもしれない、だが結果としてその高い知能の秘密を探るために身体も脳も切り刻まれてしまうことだろう。

それでもどうしても生きていたかった。

生きてなにかをなしたいわけではない。

ただあまりにも絶望的な運命にたいしせめて本来在るべき彼の時間を生きていたかったのだ。

そもそもあまりにも高い知能をもった彼にとって仲間の豚は全く別種の生物であり彼は始めから孤立していたのだ。

だから仲間達に愛情も同情心も持てなかったし彼らの運命等彼にはどうでも良いことだった。

彼らはその事実を一切認識出来ず与えられた餌を食べる事だけにしか興味が無いくだらない生き物でしかなかったからだ。

だが 家畜小屋の隅に放置されていたとても大きな鏡に映る自分の姿は自分が見下している仲間達と寸分違わぬ姿でありそのことがより彼を絶望的な気分に追い込んだ。

それでもこの家畜小屋には他に見るべきもの等無くやがて彼はその鏡の前で過ごす時間が増えていったのだ。

彼に残された時間は半年程であってそのときになれば仲間と一緒に屠殺場に送られ棍棒で気絶させられた後逆さに吊るされて頸動脈を一気に切断され出血死させられるのだ。

血が抜けると首と手足を切断され皮を剥がされ背骨のところから両断されただの肉塊と化す。

それに至るのには30分もかからないだろう。

だが

そのどの時点で命が潰えるのだろう?

それを何処迄認識しているのだろう?

血を抜かれたからと言って直ぐに意識が消え去るわけではない。

首を切断されてもまだ意識があるかもしれない。

脳に送られる血液が途絶えたからといって直ぐに死ねるわけではないのだ。

自分の手足が切断され皮を剥がれ背骨を切断されて行く絶望的な光景を延々と眺めなくてはいけないのかもしれないのだ。

それは堪らなく辛い事だった。

それもあってか 彼は時間の許す限り鏡の前で自身を凝視するようになっていた。

まるで脳裏に自分の生きている姿を焼き付けるかのように。

だが

彼が屠殺場に送られる3週間程前に奇跡が起こった。

彼は鏡の中に入れるようになっていたのだ。

そうやって彼は幽霊のような存在になった。

餌を食べると鏡の中に入ってしまうので人には補足出来ないのだ。

でも 鏡の中を覗けばそこに彼の姿があるのだが誰もそんなことは思いつきさえしなかったのだ。

彼は鏡のなかで安全に成長し続けていた。

しかし家畜小屋では居る筈のない豚が餌を食べているところが何度も目撃されるのでやがて近所の少年を雇って監視までさせていたが豚は用心深く彼が居眠りする僅かな間に出て来て餌を食べ鏡に戻ってしまうので結局なにもわからないままだった。

豚を出し入れするゲートの鍵は頑丈で開けづらいものにかえられ塀も鉄柵に変えられたがそれでもその幽霊のような豚は現れ餌を食べるとこつ然と消えてしまったのだ。

気味が悪くなった家畜小屋の主人は色々な学者や研究者に相談を持ちかけたが誰も明快な回答を出せないので知人のつてを頼って古代の魔術や錬金術を研究しているという乞食のような老人に問題の解決を依頼した。

老人は家畜小屋を念入りに調べると銀の弾丸を込めた古めかしい古式銃と大きな鏡をもって満月の夜に再び現れた。

家畜小屋の従業者達に手伝ってもらい大きな鏡を元々あった鏡の前に向かい合わせて平行におくとそこに無限の光の回廊が出現した。

すると老人はその鏡と鏡の間に特にその豚が好んで食べるという餌をおいた。

人々が隠れて見守る中真円の月が真上に昇ると辺りはほの青い光に照らされ鏡の奥から豚が餌を食べに現れた。

だが 直ぐに古式銃を構えかくれている老人に気づいてそのまま老人が置いた正面の鏡の中に逃げ込もうとしたのだ。

ドンという大きな音がして豚が逃げ込もうとした鏡が粉々に砕け散った。

細かく砕けたガラス片のなかで それは実に奇妙な光景だったが 2匹の豚が頭が繋がった状態で悲鳴を上げもだえ苦しんでいたのだ。

だが暫くすると奇妙な豚はだんだん動かなくなりそのまま死んでしまった。

老人は問われるがままに結果を説明し始めたがそれは理解しがたい話だった。

この豚が人に勝る知性を有していた可能性が高い事。

その知性によってか それとも本来あり得ない知性を授かったのと同じように自身を光のようなものに変える能力を持っていてその力で鏡の中に隠れていた事。

それをおびき出して慣れない違う鏡に逃げ込ませ一瞬豚が躊躇したその隙に鏡を割って豚を捕らえたのだが現実に在る身体と鏡に映り反射している身体が鏡を銀の弾丸で割ってしまった事で実体化しこのような奇妙な姿になった事等。

どれもこれも信じがたい話であり家畜小屋の人達は魔物と恐れそのままその奇妙な豚を焼き捨てようとしたが老人は首だけを切り離し研究用にと持ち帰った。

結局彼への報酬はそれだけですんだようだ。

それから戦争がありその家畜小屋も空襲で焼けてなくなり跡地は映画館等と言う新しい歓楽施設になっていた。

人々がまだ目新しい映画という娯楽に熱狂していた頃その奇妙な頭が繋がった豚の頭骨で作られたランプが町外れの骨董屋の店先に並んでいたそうだ。

それをかつて家畜小屋従で見張りをしていたという男が見つけて購入したのだがそれはそう高価なものではなかったということだ。
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「感情の為の機械」 Mantam Exhibition 10月18日から11月12日

A STORY TOKYO SHINJUKU

オープニングパーティー 10月18日(金) 19:00~21:00
会場音楽 Közi (ZIZ/XA-VAT/EVE OF DESTINY/ex.MALICE MIZER)

-個展中イベント-
Közi ライブ 10月19日(土)
チェコっとシネマ 10月25日(金)
チェコっとシネマ 11月8日(金)
難波研 ライブ11月9日(土)
スカンク ライブ (詳細未定)

ライブではMantamの製作した楽器を使用する予定です。

2010年10月 パラボリカ・ビスで最初の個展 「錬金術師の憂鬱」を開催

2011年9月 名古屋Sipkaで「錬金術師の遠望」

2012年6月 パラボリカ・ビス『夜 歩く犬―崩れた塔に向かう郷愁 』

2012年9月 大阪月眠ギャラリー「畜骸曲舞団」

2013年5月 パラボリカ・ビス 「 残骸に在るべき怪物 」 

6回目になる個展を私が空間設計と施工も担当させて頂いた新宿A Storyで開催致します。

A Storyは創作アクセサリーを主体としてセレクトショップでありカフェスペースを有しています。

個展はそのカフェスペースで開催されますが今回の展示の為に更に改装工事を行い会場を広くする予定です。

作品展数は新作を10点前後 旧作を5点から7点展示する予定です。

いつもなら会場がやたらと広く兎に角大きな作品を作っていましたが今回は大きくてもギター程度のサイズでボックスアートな作品も作る予定です。

空間も可能な限り創りあげます。

質感のある展示に出来ればと思っています。

今回は会場音楽をKoziさんに担当していただき19日にはライブも開催されます。

チケットは10分で完売になったそうでありがたい限りです。

Koziさんのことは全く知らなかったのですが私の展示に良く来てくれていた女性がKoziさんのファンで「がらくたからたから」を読んでみて!とプレゼントしてくれそれをみて興味をもったKoziさんが新宿A Storyの設営に参加してくれたことがそもそもの始まりだったのです。

チェコっとシネマは もとチェコ大使館一等書記官でありチェコセンター所長としてチェコの色々な文化や作家 映画等を紹介されて来たペトルホリーさんによるもので

25日は親交の深い ヤン・シュヴァンクマイエル監督が作ったという怪獣が出演している日本未公開のユーゴとチェコの合作映画のダイジェスト上映とやはりシュバンクマイエルと今は亡き奥様のエバさんが美術で関わっている ナインハートという映画の上映をホリーさん自身の解説付きで上映します。

8日は人形劇とチェコアニメも上映が行われます。 非常に興味深い上映になると思います。

9日には難波研さんによるライブが開催されます。まだ詳しい事は決まっておりませんが難波さんは 「夜歩く犬」 の会場音楽を始め 私が企画開催したチェコ大使館チェコセンターでの「ヤン・シュヴァンクマイエル氏への逆襲」展 パラボリカ・ビスでの「逆襲展2」の会場音楽も担当して頂きました。

とてつもない才能を秘めた音楽家です。

今回のライブでは私の作った楽器を使って演奏して頂く予定です。

スカンクさんのスケジュールはまだ未定なのですが公式「鳥の王」演奏者で(私が勝手にそう決めているだけなのですが)過去3度 鳥の王を演奏してもらっています。

会場音楽も「残骸に在るべき怪物」私が企画し夜想の今野さんの力をお借りして開催した「諸星大二郎トリビュート展」を担当して頂いております。

ダンサーとの親交が深く 指輪ホテル NIBROLL 等の音楽面を担当。

パラボリカ・ビスで2012年10月に開催されたマンタムとP.P★★★CRYSTALのコラボによるCATASTROPHEなBAR mantam+P.P★★★CRYSTAL「 CATASTROPHE GLASS BAR」では名誉バーテンダーに就任。

バーテンダーとしても腕をふるって頂きました。

今回はまだ詳しい事が決まっていませんが出演そのものは受けてもらっているので現在スケジュールの確定を待っているところです。

これ以外にも突然グリーンカレーパーティ(おそらく27日頃になる予定です)等を企画していますのでフェイスブック ツイッター等で告知をお待ち下さいませ!




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「感情の為の機械」新宿A Story 10月18日~11月12日



               「感情の為の機械」

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私は感情を喪失してからもう随分長い間独りで暮らして来た

だから感情があるということがどういうものなのか今はわからないし

わざわざ必要なものだとも考えていなかった

だが

道に堕ちていた天使の羽根を拾った時に

それをなにかすら理解出来ず その有効性もいかせないまま

壊してしまった事で

私の日常は劇的に変化し 感情をなくした事で得る事が出来た

充分に強大な社会的地位と莫大な収入も同時に失う事になってしまったのだ

だからといって

一度身に付いた贅沢な暮らしを諦める事はどうしても出来ない相談だった

あらゆる方法を駆使して失ったものを取り戻そうとしたが全ての方策が失敗に終わりなす術を失った私はすがる思いで高名な占い師に相談を持ちかけた

占い師は一度喪失した感情を取り戻し過去感情を捨てるに至った経緯を再度追体験する事が必要だと私に告げ法外な相談料を要求した

それで私はなんの躊躇もなく彼を殺し床下に隠していた金貨や銀貨 宝石等を持ち出すとそれを使って世界中を放浪するかのように探し求めようやく応える事の出来る錬金術師を見つけたのだ

それで



感情の為の機械という実に奇妙な機械と向き合っている

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この機械は感情を喚起させる為にのみ存在する

仕掛けは理解出来なかったが仕組みは簡単だ

人間は人間同士の関係性によってはじめてその存在の意義を理解出来る集合生物だ

つまり感情等と言うものはその為に存在し発達してきたと言っても過言ではないだろう

ならば感情を失うキッカケになるものはその関係性にありそれを与えるのもまた関係性によるものなのだ

この顔の部分を抉られた奇妙な機械は感情を失うキッカケになった人間を作り出しそれによって感情を取り戻すという仕掛けなのらしい

私が向き合うと暫くして機械は獣が唸るような音を立て始めたかと思うとやがて顔らしきものが抉られた金属部分から生えるようにその姿をあらわしはじめた

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だが それは良く見知った顔であってそれでようやく思い出したのだ

かつて貧困のどん底で喘いでいた頃どうしてもその環境から抜け出したくて私は悪魔と契約したのだ

悪魔に魂を売り成功に必要な人間にしてもらったのだ

機械から浮かび上がり徐々にカタチになって行くそれはまさしく私が契約した悪魔に他ならない存在だった

つまり魂とは感情そのものであることを私はそこで漸く理解したのだ。
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予言の為の機械 

その小さな猿は200年を生きていた。
生茂った深い森の中で気侭に暮らしていたのだ。

彼は生来未来を見る事が出来たので本来在るべき全ての災厄からいとも簡単に逃れる事が出来た。

そんな事が出来るのは何千匹も居る一族の中でも彼だけだったが彼はその能力故に疎まれる存在であり常に孤独だった。

だがそれも200年も生きると実にどうでも良い事であり彼はその特出した能力を気侭に行使して暮らしていた。

その力をもってヒトの世界にも入り込みヒトの仕掛けた罠や飼われている家畜を含め多くの動物達を逃がしたが所詮それは只の気まぐれで罠を壊されて悔しがるヒトの様子が面白かったからにすぎなかった。

もともと同族だけではなくあらゆる森に住む生き物が彼の気侭さに愛想をつかしていたしケージから放された家畜達の殆どは自然の世界で生きて行ける程強くはなく大半がより強力な動物に食べられてしまうだけだった。

神出鬼没で捕らえることのでき無いこの厄介な猿を村人達は 夜 と呼びいつか恐れるようになっていた。


だが ある時遠い北の国からきた年老いた女性の学者に彼は夢中になったのだ。

それは人と人との関係であれば恋と呼んでもいい感情だったが愛する事も愛される事もなかった彼にそれを理解する事は出来なかった。


彼はやがて研究室にも忍び込むようになり彼女も彼の存在を認識するようになっていた。

彼女は夜になると訪れる彼に村人からならった呼び名を自身の母国語になおしNocと呼んでいた。

彼もそれを認め始めてNocという名前を持った。

Nocと彼女が一緒に暮らすようになるのにそう時間はかからなかった。

2人はとても仲のいい友人として暮らしていたがその事自体が村人達には理解しがたいことだったしだからといってNocに対しての恐怖や怒りが収まる筈もなかった。

そもそもその女性の学者の研究自体が突飛も無い物で村人達の理解を超えていたのだ。

彼女の研究は時間に干渉することであり元々この村に来たのもNocの噂を聞いたからでもあった。

噂では森林の中で200年以上生きた猿があらゆるヒトの仕掛けた狡猾な罠を見破り村人達を翻弄し手を焼かせているということだった。

彼女はそれを母国の大学で発行されていた自然科学の分野の機関誌の記事で知ったのだ。

この記事から彼女は200年という途方もない時間を生きているという事実とあらゆる罠を避け得るということからこの猿がなんらかのカタチで時間に関与している可能性があると考えたのだ。

それで村の中の一番森に近い場所に住居を作りそこで暮らしていたらどういう風の吹きまわしかNocのほうから近寄って来たのだ。

きっと 何処かで言葉では説明出来ないなにかががお互いを引き合ったのかもしれない。

そう彼女は考えていたが今や家族となったNocを実験材料にする気にはなれずただ彼との意思の疎通を図りより彼を理解しようと努めていた。

声帯の構造にムリがあって喋るようにはなれなかったがそれでもNocは彼女の言う事を理解できるようになり彼女もNocの意思や感情を理解出来るようになっていた。

Nocは相変わらず我が侭で勝手気侭に暮らしていたが彼女にだけは敬意を払い彼女の意思と考えを尊重していた。

200年という時はそれでも大切な人間と折り合いを付ける事が出来る程度の必要最低限なシンパシーをNocに与えていたのだ。

だが村人達のNocに対する怒りや恐怖は変る事が無く異邦人でもあった彼女もやがて村のシャーマンと些細な事対立してからは段々と疎まれるようになり魔女として誹られるようになっていった。

村人が彼女に食料を売らなくなりその為にNocが食料を盗むようになったことが更にそれに拍車をかけたのだ。

そして彼女の本国が隣の大国に侵略され本国からの彼女への支援も潰えた時に村人達との関係は断絶し彼女は森林の中でNocと2人だけで暮らすようになったのだ。

帰るべき場所を失い同時にここに在るべき理由も明確でない状況で日々の食事にも事欠く毎日だった。

やがて時間がゆっくりと彼女の精神を蝕み始めていた。

村人達もシャーマンも彼女の事をかつての賓客ではなくNocと同等の厄介者と考え魔女として焼き払おうとしていた矢先に彼女の国を侵略した軍隊が彼女を捜しにやってきて村を占拠してしまった。

彼らは彼女が所属していた大学を自分たちの都合で作り替えようとしている最中に資料を見つけ彼女の研究そのものに興味を持ったのだ。

彼女は森林から引き出され話し合いという尋問にかけられ研究の継続を要求された

それは未来を予見出来る方法を構築する事だった

それ自体は元々の彼女の研究領分であったしNoc自体が未来を予見出来Nocの観察と対話による研究でそれなりの結果は出せそうだったが彼女は彼らに協力する事がなによりも嫌だった

自分の故郷を焼き家族や友人の多くを殺した彼らの手先に等断固としてなりたくなかったからだ。

だが 村を占拠した軍隊は出来なければ村を焼き払うと言い彼女の目の前でシャーマンを射殺してしまった。

彼女は非常に動揺し苦しんだがそれでも自身の研究を彼らに渡すことはなかった。

彼らに研究を渡せばもっと多くの人々が大変な不幸に見舞われる事を彼女は理解していたかからだ。

だがNocにはそんな事は理解出来なかったし理解出来たとしてもどうでもいい事だっただろう。

彼は200年もの間ずっと孤独だったしその孤独から救ってくれた彼女を異邦人の軍隊が苦しめる事等到底容認出来ない事だったからだ。

Nocはすすんで彼らの元に現れ彼らの実験の為の材料になった

彼らは直ぐにNocの足を切り離し逃げられないようにするとそのまま複雑で不格好な機械の中に埋め込んでしまった


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彼女がその事を知った時はもうなにもかもが手遅れだったのだ

Nocの身体はあちこちが切り離されて機械と融合されていたのでもうどうやっても元通りにする事など出来なかったのだ

彼女は嘆き悔やんだがもうどうすることもできなかった

唯一の救いは機械に繋がれた事でNocの意思や感情が以前より明確にわかるようになったことくらいだった。

結果としてだが彼女は自らがあれほど拒否していた人間達に協力する事になっていた。

だがそうする以外にNocと同じ時間を過ごす事もまたこれ以上切り刻まれる事を止めさせる為にも他に道はなかったのだ。

でも Nocは悲しんでいなかった 彼にははじめからこうなることはわかっていたからだ

これは彼女と生きて行くうえで避けがたい未来であってこれ以外に選択する道などなかったからだ

彼は今迄全ての未来を自身の欲求に従って変えていたわけでそれは本来あるべき未来と向き合わずに生きて行く事でもあった

不都合な未来は回避して都合の良い現実だけを選択するという事は本来あるべき運命と対峙しないと言う事でもありそれが彼の運命や未来を曖昧にしていたとも言えるだろう

未来は現在の行為によって決定されるものであり運命とはそれによってもたらされる結果に過ぎないからだ。

Nocが不死であることもそういったことが少なからず関係しているではないかと彼女は考えていた。

彼は死なないのではなくてそれ故に死ねないのではないかと。

本来あるべき生物としての生を全うしていないと言う事は始めから死んでいるのと変らないのではないかと。

未来を知ると言う事はとても簡単に可能性を否定する事にもつながるのだ。

それは非常に楽な生き方だがあるべき変化や進化に必要な情報も得る事が出来ない、それ故死ぬという区切りの中に入れないのではないかと。

Nocが残酷な未来を回避せず受け入れたのは一番大切な事は自分たちのどちらかの命が尽きる迄を共にいることでそれ以外の事はもう二人にとってそんなに大きな意味を持っていなかったからだ。

Nocは初めて自身の未来と対峙したのだ。

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Nocは問われるがままに未来を見せてやった。

ただその未来を決して変えさせなかった。

それは変えた時点で本来在るべき予言ではなくなるからだ。

未来を変える事は彼らと彼らの軍隊と彼らの信奉する総統に良からぬ影響を与え確定していない未来へ向かう事は現在の状況と自身の存在さえ曖昧で不確定なものにしてしまうからと彼女に説明させた。

それは半ば事実であったしNocが不死であるのも彼自身が確定しない時間にいたからだったがそれを知られると彼らは積極的に未来に介入し結果として不死の軍隊になってしまう可能性が高かった

その為にNocは彼らの時間に介入し未来を決して変えさせなかったのだ

それには膨大な力を必要としてNocはその代償として自身の残された僅かな肉体を溶かしてしまうことになったがそれでも彼は介入を止めなかった

それは彼女の願いがより多くの人達を不幸にしないことでそれを叶えてやりたかったからだ

2年と言う時間が経過しNocの身体の大半が溶けて消えた頃戦争は彼らの敗戦で終わり軍隊はなにもかもを廃棄して敗残兵として祖国へ引き上げて行った

彼らが来た大陸は瓦礫の山と化し多くの死が世界を覆っていたがそれでもようやく戦争は終わったのだ

それは結果としてNocの見た未来と同じだった。

その未来が見えたからこそNocは自ら彼らの元に自身を引き渡したのでありその未来を変えさせない為に身体を切り刻ませたのだ

未来を変えさせない為にはかつて村人の仕掛けた罠を壊す程度の力では対抗出来ず強大な力が必要でその為にも自身が機械と一体化して未来に介入する必要があったからだ。

なにもかもが終わりNocもはじめて未来を受け入れた事で彼の時間はようやく動き始めた

Nocの時間は本当ならもうとうの昔に終わっていたはずのものだったのだ。

彼にもようやく迎えるべき死が訪れたのだ

彼女もそれは理解出来ていたのでとても悲しく辛い事だったがもう受け入れられない現実ではなかった

むしろNocが未来を変えさせない為に自身の身体を溶かしながら闘っている姿を見守らなければならないほうがずっと辛くて苦しい日々だったのでそれから解放されるNocを看取ることが出来る方がまだ幸福だったのだ。

軍隊が引き上げ村にも平和が戻り彼女が見守る中でNocの命の火はゆっくりと消えて行った。

役目を終えたNocを彼女が大きな機械から切り離したからだ。

軍隊がいなくなったことでもうその機械の為に必要な電力を供給出来るシステムが村にはなかったしなによりNocが強くそう望んだのだ。

Nocは充分な時間を生きたし最後の時間を彼女の為に使えてそれがとても幸福だったのだ。

だからどのみち潰える命であるなら彼女の手で終わりにしてほしかったのだ。

Nocは機械から外されてもそのままだったが少しだけ手が動いてそれからなにもかもが止まるのがわかった。

彼女は長い間泣き続けていたが残された研究資料や機材を焼き捨てるとNocの躯をもって故郷への長い旅路についた。

Nocは残された村人達に神として祀られる事になったがそれは彼の望む事ではなかっただろう。

彼は夜がそこにあるように村人達の傍らにいただけで最後の最後迄気侭に暮らしていただけのことなのだ。

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