2023年 NHK
脚本:安達奈緒子
出演:大沢たかお 要潤 井川遥 迫田孝也 山崎銀之丞 榎木孝明 佐野史郎
豊原功補
①はこちら↓↓↓
NHKスペシャル 未解決事件 【松本清張と帝銀事件】①~あらすじ~
~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~
ーーー1948年(昭和23年)小倉ーーー
帝銀事件が起きたこの年、清張は生まれ故郷の福岡県小倉にいた。
朝日新聞西部本社に勤めていたが、新聞記者ではなく広告部だ。
学歴が小学校卒業の清張は記者にはなれないので、広告部で新聞広告の図案を書いていた。
※田中角栄さんは有名でしたが清張先生も小卒だったとは知りませんでした※
事件が起きた日は社内も騒めいていた。
復員して3年。
両親と妻と4人の子どもの8人分の食い扶持を稼ぐのに精一杯で、お腹いっぱい食べさせることもできず、帰宅してからもせっせと挿絵を書く日々だった。
敗戦国日本の主権は厳しく制限され、GHQ統治の元で民主化が進められていた。
中国共産党と対峙するために日本を反共の砦にする作戦なのだ。
帝銀事件の翌年には下山事件・三鷹事件・松川事件などの社会不安を煽るような国鉄3大事件が連続し、共産党員の仕業とされた。
中国の内戦では中国共産党が勝利し【中華人民共和国】が成立した。
1950年(昭和25年)6月25日 朝鮮戦争勃発
この戦争は冷戦構造の縮図となり、戦後の数年で世界の構図はソ連・アメリカ・中国の3強となった。
この年に清張に転機が訪れる。
週刊朝日に応募した【西郷札】が3等に入選し、作家となる道が拓けたのだ。
そして1952年(昭和27年)に【ある小倉日記】で芥川賞を受賞。
上京を決めた3年後の1956年(昭和31年)に日ソ共同宣言を締結。
ソ連に抑留されていた元軍人などが帰国を許された。
ハバロフスク裁判で収容されてた者たちも数名を除き帰国できた。
その中のひとり、柿沢十三夫さんは帰国の前に病死と発表されてるが自殺という話もあった。
彼は裁判の中で心情を語っています。
=当時の裁判映像が流れて、涙ながらに自分の非道を詫びています=
元少年兵の秋山氏はこうも書いている。
≪逃げ帰った石井部隊長初め多くの幹部はとうとう誰もその責任を問われなかった≫
なぜだ?
柿沢軍医のように逃げ遅れた者たちは捕まった。
関東総司令官さえ抑留された。
なぜ3000人も殺した石井四郎の責任だけは誰も何も言わないんだ???
*
田川が帰社すると編集部が騒めいている。
文藝春秋宛てに「天誅」の脅迫状が届いてたのだが、実は最近続いてるのだ。
*
ーーーとある集合住宅ーーー
表札には「竹内理一」とある。
帝銀事件の生存者、村田正子さんと結婚した新聞記者の自宅だ。
清張が突然訪問すると、幼女を抱いた正子(桜木梨奈)が出てきた。
正子の話も聞きたかったが断られ、理一(迫田孝也)が「外に出ましょう」と、
自宅には上げずに近くの公園に連れて行かれる。
そして清張はイッキに自分の推理を捲し立てる。
「警察はなぜ、突如平沢へと方向転換したか?
GHQがそう命じたってことはないでしょうか?
これは私の推測ですが、アメリカは731部隊と裏取引をしていた。
少なくともソ連に渡るのは避けたかった。
そこでデータを渡せば石井ら幹部の身柄は保証すると約束した。
ところが帝銀事件が起きた!
731が注目され、裏取引が国際社会に知られてはまずい!
そこでGHQを通じて日本の警察に捜査を転換させるよう命じた!!!
ご意見伺いたい!!!」
ーー当時、警視庁の藤田警部部長が頻繁にGHQ公安課に呼び出しを受けていたそうで
す。しかし、帝銀事件の捜査に圧力があったとは私は聞いてませんーー
「あなたは告発したかったのではないですか?」
ーー妻は当初から平沢は犯人とは違うと思うと発言してました。だから調べたーー
ーーそして知り得た限りの事実だけを書いたのがその記事ですーー
ーー私は記者だ!ジャーナリストだ!どんなに思うところがあっても憶測や主義主張
で書くことはしません!!!ーー
ーーこれでいいでしょうか?ーー
「最後にひとつ!!!記事の【警視庁捜査資料より】と書かれてますが、この資料は
どなたから入手されましたか?」
黙り込む竹内
「捜査一課第一係長の甲斐文助氏ですか?」
竹内の顔色が変わる
「あなたは記者であると共に被害者の夫だ。甲斐さんと踏み込んだ話もしたのでは?」
「山田弁護士が言ってました。皆、平沢に対しては割り切れないものがあると!」
「甲斐文助刑事も思うところがあった。だからあなたに託した!」
「あなたも書かずにはいられなかった」
*
竹内と別れた足で文藝春秋の田川のところへ寄る清張。
今度は甲斐文助に会えるツテを依頼する。
恐らく全容を知ってる!!!
「関係先を当たる」と即答の田川。
そしてノンフィクションで書かせるよう提案するが、それには渋い顔で保留にされる。
*
2階の自室にいると妻が呼ぶ。
玄関に降りると風貌の悪い男がいる。
男は特派記者の佐竹(トロサーモン久保田)という田川の情報屋だった。
「田川さんに新しいネタを持っていったが、清張さんには教えなくていいって言われ
ましてね。そう言われると教えたくなるのが情報屋の性分でね」
GHQは警察の捜査に介入しただけじゃなくマスコミにも横やりを入れていた。
石井四郎の周辺に捜査が及んだ頃、日本新報社会部次長の福本征治に藤田刑事部長から連絡がきて、出向くとGHQ公安課のイートンがいた。
その場で軍関係の調査も731を洗うのも止めるよう要請されたという。
*
清張は邸宅に田川を呼び、佐竹の話を伝えるが「裏取りが甘いから」と歯切れが悪い。
実は、田川は文藝春秋新社編集局長の池島信平に呼ばれ、
「松本清張のノンフィクション、悪くない、目玉になる」
「だが、編集者は作家を守らねばならない」
「言論と暴力は意外と距離が近い」
そもそもノンフィクションに前向きでなかった田川だったが、池島の言葉に背中を押されたのだ。
松本清張を危険に晒せない!!!
※森村誠一先生や伊丹十三監督の件が浮かびますね※
※言論と暴力は距離が近いは名言かと※
※小学館筆頭に、今は作家は利用価値のみなのでしょうか※
「読者は松本清張の小説が読みたいんです!」
「私が読者なら人の心が知りたい!」
「明日にでも絞首刑になるかも知れない平沢の心情が知りたい!」
「少年兵の、命を落とした軍医の心情が知りたい!」
「人の心は記録には残らない!けど、確かにある!」
「悲しみ、恨み、怒り!そういった人間の内心を書くのが松本清張という作家だと私
は思います」
「小説で・・・いきましょう!!!」
※このシーンはじ~ん(><)※
清張は田川が自分を守ろうとしてくれてることを察し、納得して執筆を始める。
*
1959年(昭和34年)
【小説帝銀事件】発表
清張は膨大な資料の内容を克明に書き、小説としたからこその大胆な推理を加えた。
小説は大いに話題となった。
だが、物語をどう〆るか?GHQのことまで書いていいか迷った・・・
そこで日本新報の福本征治(豊原功輔)に手紙を出し、会うことに成功したのだが、福本には脅迫文に感じたようで非常に不機嫌な態度だった。
「731部隊について書くなと言われたのは事実ですが?」
とぼける福本
「認めることはジャーナリズムの死を意味することですからね」
おもむろにムッとする福本
ーー全て先生が書いた通りだと仮定して?今更どうやって平沢を救うんですか?ーー
「あなたは新聞記者でしょ!?なぜ事実を書かない!!!」
ーー私を責めますか!?いいですか?情報は精査しないと世に混乱をきたす!伝えな
いことで安寧が保たれるならその選択は正しいのでは?ーー
「その認識が間違ってます!情報の選択権は市民にある!!!記者の唯一の責任は事
実を伝えることだ!!!」
ーーだとしたら!伝えるべき情報はひとつです!帝銀事件の犯人は平沢貞通だ!!!
日本は日本だけで成り立ってるわけではない!国際社会で立場を保つことで成り
立ってるんだ!!!ーー
「大儀のせいにするんじゃない!そうやって日本は間違ってきたんだ!!!」
ーーあなたの言うような事実はないと明言する!これを言うために来た!!!ーー
話は決裂し、福本は去っていった。
日本は本当に独立したのか・・・
※敗戦国ですもん※
確かめたかったのは、この捜査に何らかの妨害が有ったか無かったの点である。
しかしその点は発見されなかった。
だが、ある組織が占領下の保護下に置かれていたら捜査に自由がなかったと言っていいのである。
これは壁である。
とにかく世論は平沢を犯人にしてしまった。
警視庁の主観がマスコミの主観となり世論を作り上げた。
帝銀事件の真犯人は誰か?
清張は書き切ることができなかった。
ーーー1959年(昭和34年)秋ーーー
田川の病室を見舞う清張。
追突事故で大怪我をして入院したのだが、清張は故意を疑う。
※事故か故意かは謎のまま※
*
ーーー国鉄常盤線ーーー
下山事件の現場に立つ清張。
原稿待ちの田川が現れる。
田川の催促にそっちのけで、
「河川敷から人間運ぶとしたら、やっぱりひとりでは無理だと思うかね?」
次の構想で頭がいっぱいの清張に苦笑する田川。
現場を歩きながら質問する
ーー帝銀事件の真犯人は誰ですか?ーー
ーー動機は何ですか?ーー
帝銀事件が起きたのは石井たちが秘密裡にアメリカと取引した時期と重なる。これは偶然だろうか?
犯人は世の中に知らせたかったんじゃないか?
我々はこんなにも残忍な実験をやってきたのだと。
我々は人間性を失った。戦争とはそういうものだ。
人間が人間でなくなる。
しかし、その人間性を奪ったのは誰だ?
無かったことになどさせるものか。
そして清張は【日本の黒い霧】の執筆を始める。
知らされないことに怒りはある。
が、知らされないまま権力側の発表のみを無難に報じてきたマスコミの責任は?
そのマスコミが浄化した空気に乗じて、ひとりの人間を犠牲にする世論に責任はないのか?
※この時代は「ない」でしょう。ここは現代を生きる我々に向けたものかな※
*
そして清張は平沢に面会しに行く。
平沢の手には【小説帝銀事件】が。
「平沢貞通さんですか?」
頷く平沢。
「お会いしたかった。自分の目で確かめたかった」
微笑む平沢。
完
~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~~*~~
安達奈緒子さんて【下山事件】もそうなんですが脚本に心があって、ひとりひとりの個性を引き出してて凄くお上手なんですよね。
未解決シリーズは全話観てますが、つまらないのも普通にあるんですよ。
【下山事件】と【帝銀事件】は秀逸で、やっぱりドラマも映画もまず脚本だと私は思います。
いい脚本に恵まれた【下山事件】の森山未來さん、【帝銀事件】の大沢たかおさんはラッキーだったと思います^^
どちらも没入して鑑賞できました。
さて帝銀事件ですが、松本清張先生が書かれた【小説帝銀事件】は1980年に
【帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚】というドラマにもなってました。
仲谷昇さん、田中邦衛さん、小松方正さんなどが出演されてました。
これを観ても平沢さんの最後の確実なアリバイから帝銀に着くまでの所要時間が余りにも短かいのと、大きな矛盾が生じることが疑問視されてます。
ただ、今は帝銀事件に関わる動画がYouTubeに沢山あって真犯人の見立ても上がっています。
なので詳しくは書きませんが、冤罪で39年間も獄中とは、司法はどう責任を取るのでしょうか・・・
平沢さんの出所不明な大金については、春画で稼いだという説が濃厚ですが、これは近しくなった人にポロっと言ってしまったらしいです。
春画を描いたとは絶対に言いたくないプライドがあったようです。
考察
色んな方々が考察してる事件ですが、私も考察させて頂きますと、
私は事件前からアメリカが関わってると推測します。
石井四郎はソ連の侵攻が分かると、証拠隠滅は部下に任せて自分は持てるだけのデータを持ってとっとと帰国してます。
死んだことにして葬儀を出してお墓まで立てるという見事なまでの逃げっぷりです。
でもGHQに捕まりました。
そしてアメリカとの交渉が始まります。
その際に登戸研究所が開発した青酸ニトリールの威力がどれほどかアメリカは知りたいわけです。
そこで石井と多くの幹部たちの命の保証がなされるのです。
石井たちは3000人以上(村人ら民間人も含めると)も虐殺してますから、自分の命は惜しくても他人の命なんて屁でもないし、【悪魔の飽食】によると女・子どもも実験材料で殺してます。
青酸ニトリールの実験に使われたのが銀行です。
最初の銀行では効果が弱く全員無事。
2件目の銀行は支店長に断られ、紙切れ1枚消毒して終わり。
3件目の帝銀で僅かな量で遅効性で殺傷能力が高いことが実証されました。
そして、帝銀で盗まれた小切手を換金したのは【別人】ではないかと私は考えているのです。
1~3件目までは落ち着いて動じない男が、小切手の換金では挙動不審だった。
そもそもは毒の効力を実証するのが目的で、現金や小切手は強盗に見せかけるためのものだったので小切手は処分することになっていた。
ところが、その小切手をお金にしたい石井の部下がこっそり盗んで換金した。
だから「バレたら消されるかも知れない」で落ち着きがなかった。
そしてこの男はそのまま行方をくらました。
(でもその後、口封じされたと思いますが)
帝銀と同じ犯人だとしたら、実行犯手当で帝銀から盗んだ現金を貰えたが、欲が出て処分するはずの小切手を換金するのにおどおどしてしまったとも考えられますが、こんな平気で人間の命を奪える男が換金如きでおどおどするかしら?
なので、私の考察は「別人」です。
でも石井の部下で731関係者です。
帝銀事件はアメリカの保証の下で石井とその部下たちが起こした事件なのではないかと考察してみました。
青酸ニトリールの製造も含め、石井たちは帝銀事件のもっと前からアメリカの監視下に置かれていたのではないでしょうか?
石井の部下には満州からの帰国後から所在不明になってる者が数名います。
その中に帝銀実行犯と換金した者がいて、その後消されたのではないかと。
石井と多くの幹部たちは何の処罰もされてません。
帝銀事件で上がってるYouTubeでは真犯人は諏訪敬明説が有力ですが、写真を見る限りモンタージュと激似です。
この人も帰国後から所在不明のひとりです。
生存者の村田正子さん(後の竹内正子さん)も、逮捕当時57歳だった平沢はおじいちゃんに見えて、犯人とは年齢がだいぶ違ったと証言してます。
諏訪は45歳でした。
変装も研究されていたそうなので、数歳老けさせることくらいは容易いでしょう。
犯人は40代後半説と50歳前後説があります。
これは目撃者の印象なので複数あって不思議はないです。
45歳でも50歳くらいに見える場合も普通にありますしね。
下山事件もそうですが、アメリカは日本警察がここまで真相に近付くとは思ってなかったのではないでしょうか?
それで警視庁・報道機関をPSDの管理下に置いてから圧力をかけた。
これが私の考察ですが皆さんはどうでしょうか?
陰謀に巻き込まれ、冤罪で獄中死された平沢貞通さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
この【帝銀事件】の翌年に【下山事件】が起きます。
ここはセットで観て欲しいです。
【下山事件】のあらすじはこちら↓↓↓
NHKスペシャル 未解決事件 【下山事件】~あらすじ①~
NHKスペシャル 未解決事件 【下山事件】~あらすじ②~
NHKスペシャル 未解決事件 【下山事件】~あらすじ③~