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不況で労働時間は減ったのか?

6月14日の日経新聞に労働時間に関するアンケート結果が掲載されていました。

100年に1度の大不況でさぞかし労働時間は減っただろうとの予測に反して、7割弱もの方々は減らないと回答していました。理由は、「早く帰れるような職場環境ではない」が53%、「景気悪化で逆に忙しくなった」が19%だそうです。

バブル崩壊以降、各企業はリストラを断行し、景気が回復しても採用には必ずしも熱心ではありませんでした。その結果、1人当たりの労働負荷が大きくなり、精神疾患者がそれに伴って増えていきました。仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の重要性が叫ばれるようになり、政府も様々な施策で後押しをしていますが、このようなアンケート結果を見るとまだまだ浸透するようになるには時間がかかるようです。特に中小零細企業では人員は常に余裕がなく、代替要員はいないのが通常でしょう。週60時間以上働く長時間労働者は30代男性では5人に1人だそうです。週60時間を月に換算しなおせば90時間弱に相当します。これは過労死との因果関係が疑われるような時間にあたります。

ワークライフバランスの観点から、または、従業員の健康管理の面からも従業員1人1人の労働時間管理について見直しをしてみたらいかがでしょうか。

当事務所では、労働時間管理の見直しのヒントの冊子(PDF形式、18ページ)を作成いたしました。詳細は、コチラの新着情報6月5日をご覧下さい。

採用コンサルタント・社会保険労務士 田中謙二

都内事業所のサービス残業の実態

東京都がまとめた労働時間管理に関する実態調査によると、都内事業所の4割弱にサービス残業が存在し、時間外手当の支給されない残業時間は月8時間に上ることが分かった。サービス残業は労働基準法に違反する行為だが、根強く残っているようだ。
 サービス残業の有無を事業所に尋ねたところ、「まったくない」が51%に上ったが、「一部の職場にある」(33%)、「多くの職場にある」(4%)との回答もあった。持ち帰り残業については23%の事業所が「ある」と答えた。
 残業した従業員に昨年9月の残業時間を尋ねたところ、平均は23・6時間で、このうち平均8時間分は手当が支払われていない。支給されない理由は「定額で支給されている」(13%)、「自分の都合で残業しているため」(8%)など。
 有給休暇については、07年に「取得した」との回答は75%だった。しかし、実際に消化した日数が付与日数に占める割合(消化率)は30%にとどまった。すべて消化しなかった理由は「病気などのために確保しておく」(42%)のほか、「仕事が多い」(29%)、「要員・人員が不足している」(27%)など。多くの事業所に有給休暇を取りにくい雰囲気があるようだ。
 調査は昨年10~11月に都内の従業員30人以上の3000事業所と、そこで働く従業員2000人を対象に実施した。 (2009.6.10日経新聞朝刊)

この調査は実態を反映していないことに注意が必要です。理由は、調査対象が従業員30人以上となっていること。調査時期が昨年10~11月に行われたことの2点です。日経平均が昨日瞬間的に1万円台を回復したそうですが、特に雇用関係の統計はこれからまだ悪化するというのが多くの意見です。解雇を踏みとどまった企業に雇用調整助成金を出し、失業率が低く抑えられている現状を見ますと雇用実態は表面数字以上に悪化していると評価するのが正解でしょう。

一般的に、企業規模が小さくなるにつれてサービス残業は拡大していく傾向にあります。今回の調査結果では4割弱にサービス残業があるとしていますが、調査規模を例えば10人以上とした場合、その結果はさらに悪化するものと思われます。

100年に一度の大不況期。この時期だからこそ、従業員の働かせ方、時間管理について考えてみてはいかがでしょうか。当事務所では、労働時間管理の見直しのヒントを冊子(PDF形式、18ページ)を作成いたしました。詳細は、コチラの新着情報6月5日をご覧下さい。

採用コンサルタント・社会保険労務士 田中謙二

労働判例研究会

週末は労働判例研究会の定例勉強会でした。ある社労士さんが紛争調整委員会のあっせんに参加した例を題材に、争点の整理、あっせん案の検討など討議方式でおこないました。

大学院の理論的勉強とは違い、まさに目の前で起こった事案に対して体験から語られた内容だけに学ぶべきことが多かった勉強会でした。ご披露いただいた講師に感謝いたします。

テーマ 紛争調整委員会の実例から学ぶ

争点 

(1)退職強要があったか (2)採用面接での賞罰聞き取りに対して保護観察処分を申告しなかったことが虚偽事実の申告にあたるか

検討

(1)は言った言わないの世界で証拠もないので割愛します。問題は(2)です。保護観察処分が「罰」に当たるか否か。一般的に、面接時に自分が不利になるような話はしないでしょうし、保護司はいわないようにとのアドバイスを行うのが一般的だと思われます。さて、検討の前提として保護観察についてみます。

保護観察の類型は原則的に次の4つ。

1.「1号観察」…少年法第24条第1項第1号の保護処分を受けた者に対する保護観察
2.「2号観察」…少年院から仮退院を許された者に対する保護観察
3.「3号観察」…仮出獄を許された者に対する保護観察
4.「4号観察」…刑の執行を猶予され、刑法第25条の2第1項により、保護観察に付された者に対する保護観察

今回の事案は1号観察に該当します。また、本件採用面接時において、労働者が処分中であったか、処分を終えていたかは結論において問題となるでしょうか。仮に、処分を終えていた場合は、過去の処分歴が会社が採用するに当たり、仮に知っていたら採用をしなかったような重要な要素になるか否かで判断はわかれるとも考えられそうです。判断に当たっては、会社の業種、職種によって合理的な説明が出来るかどうかがポイントとなりそうです。さらに、より問題となりそうなのは、現に保護観察処分中だった場合です。

次に、保護観察処分が「罰」にあたるか否かですが、この点、大きな問題とはならないというのが私の意見です。何故なら、もともと企業には採用の自由が存在し、かなり広い範囲で裁量権が認められているからです。したがって、保護観察中であったか否かの検討、保護観察処分が「罰」にあたるか否かの検討をするまでもなく、「採用の自由」を根拠に拒否できたと考えます。

一般的に採用の自由は5つに分けて説明されます。①雇入れ人数決定の自由、②募集方法の自由、③労働者選択の自由、④特定労働者との労働契約の締結を強制されない自由、⑤調査の自由です。

③についは昭和48年の三菱樹脂事件という有名な最高裁判決があります。最高裁は「使用者は、…いかなる者を、いかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り原則として自由に決定することができ…労基法3条の思想・信条等による差別は採用には適用されず、企業が特定の思想・信条を有する者をそれを理由として雇い入れを拒んでも当然に違法とすることはできない」と判示し、使用者の採用の自由を広く認める考え方を示しています。

さて、保護観察処分を申告しなかったことが虚偽事実の申告にあたるかの点です。採用に当たり犯罪歴はどこまで申告義務があるのでしょうか。犯罪歴詐称については、裁判所は期間満了後あるいは刑の執行後長期間経過している場合や少年時の非行歴を除いて、執行猶予期間経過後の刑罰については、採用面接にあたり申告すべき義務があるといわれており、判例では、犯罪歴詐称は懲戒解雇に値するとしながら、現状の勤務状況、前科の程度・消滅、勤続年数等を考慮して慎重に判断する傾向にあります。

また、今回の争点ではありませんが、保護観察処分中、あるいは過去の処分歴の事実を告げず採用されたことが、仮に,、就業規則上経歴詐称にあたり、かつ、それが懲戒解雇事由に該当していたら、重要な経歴を詐称したと評価され、懲戒解雇の対象にもなり得ます。

 

労働紛争は増加しています。特に採用時、退職時に問題が起こるケースが多いようです。企業としては、具体的にどんなリスクがあるのか、常時点検を怠らず、必要があれば社労士等の専門家に相談するのが紛争の事前防止として有効であることを検討いただければと思う次第であります。

紛争調整委員会によるあっせんについてはこちら

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採用コンサルタント・社会保険労務士 田中謙二