労働判例研究会 | tanakasrのブログ

労働判例研究会

週末は労働判例研究会の定例勉強会でした。ある社労士さんが紛争調整委員会のあっせんに参加した例を題材に、争点の整理、あっせん案の検討など討議方式でおこないました。

大学院の理論的勉強とは違い、まさに目の前で起こった事案に対して体験から語られた内容だけに学ぶべきことが多かった勉強会でした。ご披露いただいた講師に感謝いたします。

テーマ 紛争調整委員会の実例から学ぶ

争点 

(1)退職強要があったか (2)採用面接での賞罰聞き取りに対して保護観察処分を申告しなかったことが虚偽事実の申告にあたるか

検討

(1)は言った言わないの世界で証拠もないので割愛します。問題は(2)です。保護観察処分が「罰」に当たるか否か。一般的に、面接時に自分が不利になるような話はしないでしょうし、保護司はいわないようにとのアドバイスを行うのが一般的だと思われます。さて、検討の前提として保護観察についてみます。

保護観察の類型は原則的に次の4つ。

1.「1号観察」…少年法第24条第1項第1号の保護処分を受けた者に対する保護観察
2.「2号観察」…少年院から仮退院を許された者に対する保護観察
3.「3号観察」…仮出獄を許された者に対する保護観察
4.「4号観察」…刑の執行を猶予され、刑法第25条の2第1項により、保護観察に付された者に対する保護観察

今回の事案は1号観察に該当します。また、本件採用面接時において、労働者が処分中であったか、処分を終えていたかは結論において問題となるでしょうか。仮に、処分を終えていた場合は、過去の処分歴が会社が採用するに当たり、仮に知っていたら採用をしなかったような重要な要素になるか否かで判断はわかれるとも考えられそうです。判断に当たっては、会社の業種、職種によって合理的な説明が出来るかどうかがポイントとなりそうです。さらに、より問題となりそうなのは、現に保護観察処分中だった場合です。

次に、保護観察処分が「罰」にあたるか否かですが、この点、大きな問題とはならないというのが私の意見です。何故なら、もともと企業には採用の自由が存在し、かなり広い範囲で裁量権が認められているからです。したがって、保護観察中であったか否かの検討、保護観察処分が「罰」にあたるか否かの検討をするまでもなく、「採用の自由」を根拠に拒否できたと考えます。

一般的に採用の自由は5つに分けて説明されます。①雇入れ人数決定の自由、②募集方法の自由、③労働者選択の自由、④特定労働者との労働契約の締結を強制されない自由、⑤調査の自由です。

③についは昭和48年の三菱樹脂事件という有名な最高裁判決があります。最高裁は「使用者は、…いかなる者を、いかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り原則として自由に決定することができ…労基法3条の思想・信条等による差別は採用には適用されず、企業が特定の思想・信条を有する者をそれを理由として雇い入れを拒んでも当然に違法とすることはできない」と判示し、使用者の採用の自由を広く認める考え方を示しています。

さて、保護観察処分を申告しなかったことが虚偽事実の申告にあたるかの点です。採用に当たり犯罪歴はどこまで申告義務があるのでしょうか。犯罪歴詐称については、裁判所は期間満了後あるいは刑の執行後長期間経過している場合や少年時の非行歴を除いて、執行猶予期間経過後の刑罰については、採用面接にあたり申告すべき義務があるといわれており、判例では、犯罪歴詐称は懲戒解雇に値するとしながら、現状の勤務状況、前科の程度・消滅、勤続年数等を考慮して慎重に判断する傾向にあります。

また、今回の争点ではありませんが、保護観察処分中、あるいは過去の処分歴の事実を告げず採用されたことが、仮に,、就業規則上経歴詐称にあたり、かつ、それが懲戒解雇事由に該当していたら、重要な経歴を詐称したと評価され、懲戒解雇の対象にもなり得ます。

 

労働紛争は増加しています。特に採用時、退職時に問題が起こるケースが多いようです。企業としては、具体的にどんなリスクがあるのか、常時点検を怠らず、必要があれば社労士等の専門家に相談するのが紛争の事前防止として有効であることを検討いただければと思う次第であります。

紛争調整委員会によるあっせんについてはこちら

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採用コンサルタント・社会保険労務士 田中謙二