新世界22-伝文 4
君には現実が必要だ!
夢が夢であることを理解するための現実
今日が綺麗な朝日で始まる一日である事を、理解することが必要だ。
今、君がここにいる事を現実のものとしてくれる人が必要だ!
ヴァーチャルじゃない!ここはリアルなリアルだ!
そう教えてくれる人が必要だ!
それは君の一番傍にいてくれる人だ。
話し合い、感じ合い、理解し合う事
そういった時間を増やしてゆくんだ!
そうしないと君は夢と現実を見間違えてしまう。
過ちを犯す前に、君は君を君としてくれる人に出会わなくてはならない。
そして、その時間を現実として確実に捉えるんだ!
2012年春の始まり、僕は仕事を辞めた。
カウンセラーは仕事は現実的空間でないと言う。
カウンセラーは傍にいてくれる人が見つかるまで自分のところに来るよう僕に指示をした。
彼は僕が現実にぶれてしまっている場合、僕を強制的に現実へと戻してくれる。
いったい僕はどこへ行くのだろう?
その不安が尽きることはない。
新世界21-夢世界 6-3
〈つづき〉
家に戻ると、少年は変わらず軒先にいて、傘を差す僕の方を睨んでいた。
少年にパンをくれてやろうと考えていた。でもシャイな僕はそれが出来ない。ただ単に、勿体無い精神が働いただけかもしれないが、、、
僕は少年の視線を痛々しく受けながら、知らないふりをして階段を下り家の中へと入っていった。僕はペンと紙を取り出し、そこに大きな文字を書いた。
そして再び家の外に出た。
少年は僕の方をいまだ睨んでいた。
「名前は?君の名前!」
僕は少年に強い口調でそう尋ねた。
「こうき、たかたこうき」
少年は素直をそう答えた。
だから僕は壁に文字を書いた紙を押し付け、そこに『たかたこうき』と付け足して書いた。
『この家の中で待つ たかたこうき』
僕はそう書いて、少年にその紙を見せた。
「これでいいだろう?家の中に入ろう」
僕はガムテープでそいつを壁に貼り付けた。
少年は立ち上がった。
きっとそういう事だ。
僕は少年と暮らし始めた。
2020年1月末の夢だった。
新世界20-無職の暇人 6
2012年、秋のある朝に目覚める。
大雨の翌日で、窓が酷く汚れていた。
僕は綺麗に生まれた朝日が窓の向こうからそっくりそのままの明かりを僕の部屋に届かせてくれるように、窓掃除をした。
心が萎えてしまうのは、部屋が汚いからとか、ほこり臭いとか、そんな小さな理由ばかりなんだ。
憂うつな気分を洗いさって、新鮮な空気を入れ込もう。
光注ぐ部屋に幸せは訪れる。
そんな気分で、まずは窓掃除。
そしてそれからいろいろすればいい。
あほんだらソースのおっさんも、水色いも虫もここにはいない。
不安は少しずつ消えてゆく。
不安が消えて、美しさが戻ってくる。
そしたら、ここに喜んで、青色のクマが僕の家を訪れてくるかもしれない。
それともここにはきっと…訪れてくれるだろうか?
新世界19-夢世界 6-2
〈つづき〉
僕は思い切って、家の外に出た。
玄関の脇に少年は座っていた。
少年は僕の視線に気づいたのか、僕の方を見返した。
「寒いか?」
僕は少年にそう尋ねた。
少年は何も言わず、こくりと縦に首を振った。
「何もないが、家の中は暖かい」
僕は少年をそう家の中に誘った。
それは僕の優しさなのか、それとも僕自身の寂しさなのか。
少年は今度、首を横に振った。
警戒心を見せているようだった。
こんな時代だから仕方ない。昔から知らない人にはついて行くな、という注意はあった。でも今はそれ以上に人と人との関係が気薄になっている。小さな関係が繋がり合う事はない。
人の善と悪はどう判断できるだろう?
僕は諦めて、家の中へと戻っていった。
腹が鳴って、朝から何も食べていない事に気づいた。酷く腹が減っていた。僕はなけなしのお金が入った財布と壊れたビニール傘を持って、あらためて家の外に出る。
再び出てきた僕の存在に少年は気づいていないようだった。今度は僕の方を見つめようとはしない。じっと遠くの方を見つめている。
でも彼は僕の存在に気づいているようだ。その態度は警戒している野良猫のように感じられる。一歩近づけば少年は突然走り出し、どこかへ逃げていってしまいそうな感じだ。
僕は一定の距離を保ったまま、少年に話しかけてみる。
「お母さんはどうした?帰らないのか?」
すでに街頭の明かりが強まり、自然光は僅かしか残っていない時間へと変わっていた。壊れたままに、直される事のないちかちかした電灯が二人を照らす。
僕はふと感じた。
ひょっとして少年は雨宿りをしているのではなく、誰かを待っているだけなのかもしれないと。
しかももう二度と戻ることのない誰かを。
2018年頃だったろうか?託児所に迎えに戻らない親のニュースが大々的に取り上げられるようになった。その頃から託児所は孤児院化してゆき、徐々に託児所と孤児院の垣根はなくなっていってしまった。国はこれらの施設に補助金を出すようになり、多くの施設がそのような児童預り施設へと変わっていった。ただし高所得者の中にはその制度を嫌がる者がいたので、託児所は託児所のままとして今も機能している所はたくさんある。
少年との距離は縮まりそうにない。だから僕は諦めてコンビニに行く事にした。壊れた傘を差し、近場の100円ショップへ行き、パンと粉スープを買う。しかも二食分。しばらくエロ本でも立ち読みして、それから家路へと戻ってゆく。
僕はどこかで少年がいなくなっている事を祈っている。
きっと何かの勘違いであってほしいと願っている。
〈つづく〉
新世界18-夢世界 6
2020年冬、曇り空に暗闇、0.5階の部屋に光が注ぐ事はない。
僕は異常なまでにやる気がなかった。冬の寒さのせいだろうか?はたまた精神的な疲れだろうか?僕は出社拒否をする社員のように家の外に出る気はしない。それでも僕の行く場所はゴミの山だし、行かなくても誰から電話が掛かってくるわけではないからいいのだが…・
地表の窓からは薄暗い明かりが覗く。
雨が降り出したようだ。窓が濡れて、地表を叩く音が地下0.5階の我が家に響き出す。
少し高い地上の窓に小さな影がある。
幼い少年が座っている。
降りだした雨に、雨宿りを始めたのだろう。
パンツの見えるミニスカの女の子なら覗きたいところだが、少年には興味がない。
光のない部屋の中は外から見ることができない。
だから少年は僕の存在には気づかない。
光のない昼は僕を眠くする。
だから僕はそのまま眠りに就いた。
どれだけ時が経ったろう。
なんとなく心地よい夢を見て、目が覚めた。
疲れはほんの少し取れていた。
窓の外にいまだ明かりはあった。
ねじ巻き時計の針は3時5分で止まっていた。
きっと今は午後3時5分から5時半の間くらいだ。
少年の姿が未だにあった。
僕が眠りに就いたのは午前中の事だった。
いつまで少年はそんな寒い場所にいるのだろう。
僕は少年の事が少し気になった。
きっと気温は10℃ない。そんな中で少年は何時間も雨宿りをしている。
ひょっとしたら一度どこかに行って、再び戻ってきたのかもしれないが、僕の見る限り少年はずっとそこにいた。いつまでもいつまでも少年はずっとそこにいたように思える。
〈つづく〉