本の感想。おすすめ本。
みんなで夜に歩く。それが、いつしか特別なことになり、ありえない奇跡を引き寄せるのだった。恩田陸は苦手だ少しもおもしろくない僕との相性は最悪だった何で、ベストセラー作家なんか、よくわかんないなのに、平成最後の本に苦手というか、天敵の恩田陸を選んだ夜のピクニックタイトルが、ひっかかる歩行祭朝の8時に学校を出発し翌日の朝の8時に戻ってくる24時間(仮眠、休憩あり)とにかく、歩きまくる軍事教練の一つであろうか?モンスターペアレントの攻撃材料になりそうやばい24時間歩きますかって子供の頃見たリゲインのCMのようだビジネスマーン、ビジネスマーン、ジャパニーズビジネスマーン。時代に逆向しとる今は、働き方改革の時代だぞコンプライアンス的に問題ありそう教師の労働基準にも抵触しそうというか、生徒が暴動起こしそう歩け、歩け、歩け 24時間歩くのだ!何のために、こんなスパルタ行事をする?それは楽しいからだみんな、この行事が好きだからだだから、やってるいきなり、結論を言いますこれは名作ですたぶん、令和の時代になってもその次の時代になっても人々を興奮させ、感動させるそう、読むしかない作品ですすごかった気がつくと、つんのめり、夢中となりページをめくっていた自分が、知らぬ間に西脇融になっていた甲田貴子を愛おしいと思うようになっていた妹としてだよ兄妹だからね日常生活というのは、1つの物事を深く思考するのに適さない環境だと僕は思う毎日のタイムスケジュールがあって分刻みの忙しさ家でも、食事、風呂、読書、Twitterの確認いつも何かしていて、忙しくて、何かを真剣に考えるそういう環境ではない昼飯は30分それ以上かかると、次の予定が侵食されるたから、歩くのも早歩き時間、時間、時間、時間・・・むしろ、長時間連続して思考し続ける機会を阻害しているようにすら思える意識的な排除だともいえる何かに疑問を感じないようにしている疑問を感じた瞬間、前に進めなくなるからだそれがわかっているから、そうしているわざと忙しくしている深く物事を考えないためにそれが大半の大人であると、僕は思っているP73・・・朝から丸一日・・・歩き続ける限り思考が一本の川となって、自分の中をさらさらと流れていく。旅行に出た時と同じ感じに・・・いつもは、話さないようなことを疲れた頭で答えることによって隠していた本音が出たり、秘密が暴露されたり日常とは違う、非日常の時の流れがそこには成立している歩行祭を通過した印象は・・・P97過ぎてしまえば、みんなで騒いで楽しくて歩いていたこと、お喋りしていたことしか思い出さないのに、それは全体のほんの一部で、残りの大部分は、仏頂面で、足の痛みを考えないようにして、ひたすら前に進んでいたことをすっかり、忘れてしまっているのだ。これって、まるで、僕たちの人生そのものではないか?今、平成が終わろうとしているのだが頭にあるのは、その大半を占める苦しかった受験勉強のことではなく、労働のことでもないイベントごとのインパクトのある出来事ばかりつまり、歩行祭は人生の縮図なのであるP414「みんなで夜歩く。ただ、それだけのことが、どうして、こんなに特別なんだろう」それは1200人のみんなが同じことを体験した苦しみや楽しみや感動を共有したからでありやりきったからだと思う普通、24時間も歩いたりはしない1時間であっても拒否するでしょうそれを全校生でやっていることが良い意図はわかんないがそのやり遂げた達成感なら想像できるその疲れは、たぶん、すごく心地よいものだと思うこれは、西脇融と甲田貴子という異母兄弟のうち溶け合う話しなんだけどこの歩行祭という設定がなければ、これほどに爽やかには描けなかったと思うんだ今は、ちょっとしたことで、PTAが騒いだり教師の労働時間がとややこしいがこういう過酷な体験を共有することによって得られる特殊な体験というのもありそれは、たぶん、修学旅行よりも、もっと、得難い何か宝物のようなモノなのであって部活を全力でやりきったとか、学祭で頑張ったとかと同じそこに自己の存在意義を刻み込むようなそのことによって、一気に成長するようなそういう出来事なのだと思うそれが歩行祭でありこの24時間なのである読者は、それを主人公二人のフィルターを通して追体験できるというのがこの本の魅力なのです良い本なのですよおもしろいですページ数 455読書時間 約10時間読了日 2018年 4/30 (平成最後の日) 夜のピクニック (新潮文庫) 767円 Amazon
この物語を読んだ後、あなたは、きっと、和菓子屋に行きたくなるでしょう。甘いものは、人を幸せにしてくれます。一口で、気分が180度くらい変化いたします。それが甘い物の魅力です。デパ地下の和菓子屋さんでバイトを始めた アンちゃん少しだけ、ぽっちゃりしてて、自分はモテないと思って、男子を避けている女の子ですこれは、彼女の成長物語でもあります。仲間のキャラが強烈男っぽいが、接客が完璧な女性店長元和菓子職人のお姉系の美男子元ヤンの女子大生彼女たちが売っている商品は・・・和菓子です何と言っても、この物語の魅力の中心は和菓子でしょうここに描かれている和菓子が、とても美味しそうなのです和菓子の世界を、わかりやすく細部まで丁寧に描かれていますだから、読んでいくうちに、和菓子の魅力にとりつかれていくのです例えば「半殺し」という言葉があります。一見、ヤクザにしか見えない、お客さんが吐き捨てて言ったセリフですおはぎ について言ったのですが、その前にも、腹切りだの、こなし だのと物騒なことを言っていました。このおじさんは、元菓子職人の先輩の立花さん少しお姉系の美男子の師匠でしたP189「半殺しというのはね、お米とか豆とか粒状の穀物を半搗きにすることを言うの。たとえば、秋田のきりたんぽなんかがそうね」つまり、これは恫喝の言葉ではなくおはぎ についての話しだったということなのです。おはぎは、半分が米で、半分が餅つまり 半殺しこのような感じで、物語は進行していきます。前の店は、ケーキ屋さんでした。ボヤ騒ぎがあった日、そこの店員さんがケーキを大量に持ち帰りますアンちゃんが、彼女に話しかけると・・・「兄が・・・」と甘い物好きの兄さんがいるんだな・・・と思っていたのですが、実は、この兄と言う言葉が曲者デパ地下では、兄とは、売れ残りと言う意味前に生まれ出たという意味ですここに出店している店は、翌日の売れ残り(生鮮食品)は破棄するルールがありますでも、このケーキ屋さんでは売れ残った兄や、大兄(もっと前の売れ残り)まで売っていたつまり、アンちゃんが不正を見抜くきっかけとなったこんな風に、その業界独特の風習やルール、言葉がたくさん出てきてなかなか面白いのです僕が一番、好きなシーンは辻占の話しこれは謎解きなのですが、その話しではなく前振りの段階で、販売している辻占に占いが印刷されず白紙のまま入れてしまったつまり、ミスがあったと判明したのですこの時の店長とアンちゃんの会話がいいP324「でも占いが白紙というのも、ちょっとおもしろいですよね」「あら、何で?」「未来が、自由って気がしませんか?」そこに好きな文字を書き込めばいい未来は、君が決めるのさ誰かに決めてもらうもんじゃないんだぜそういうことなのです。何か、本筋よりも、このアンちゃんのポジティブさに魅力を感じました。和菓子好きには、おすすめの作品です。ページ数 405読書時間 8時間読了日 4/19 和菓子のアン (光文社文庫) 720円 Amazon
里見八犬伝の現代版?。おもしろかったが、これは別の犬人間の物語だと思う。小学生の頃、図書館で里見八犬伝を読んだ記憶がある。内容は、姫様が犬の嫁さんになり、仁義がどうのこうの・・・。つまり、はっきり覚えていません。この物語は、里見八犬伝の現代版?。贋作・里見八犬伝なのだそうです。ジャンルとしては、ライトノベルファンタジー。軽いです。アクション多めで、読みやすく、展開も早く面白い。伏 鉄砲娘の捕物帳 として アニメ映画化されています。監督は『千と千尋の神隠し』で監督助手を務めた宮地昌幸、脚本に『コードギアス 反逆のルルーシュ』の大河内一楼、ビジュアルイメージに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でデザインワークスを手掛けたokama。なんか、すごい・・・。でも、聞いたことなかった。主人公は、14歳の猟師の浜路。軽い雰囲気の女の子ですが、銃を持つとゴルゴ13ばりのハンターに早変わり、凄腕です。兄がいて、この二人で賞金稼ぎになる。何を狙っているかというと・・・伏という化け物。これは犬人間です。ここに、冥土新聞という瓦版屋の男 滝沢冥土 が加わります。冥土は、里見八犬伝の作者、滝沢馬琴の息子で冥土新聞は、犬人間の事件を追いかけた人気の紙読み物なのです。伏(犬人間)とハンターのバトルの展開から、一転滝沢冥土の書いた 贋作・里見八犬伝の世界へと移ります。ここが、物語の核です。里見八犬伝とは、一味違う、少しファンタジー色の強いそれでいて人間物語の色合いもあるかなり引き込まれたここだけで、いいと思う犬人間発生のルーツが解き明かされていきます次に、また、現代に戻ります。そこで、玉梓の呪いの部分が歌舞伎によって明かされます。この芝居の作者も 滝沢冥土その演者の中に、女形の信乃がていて、犬人間芝居見物をしていたハンターの浜路兄妹は、信乃の正体を見破り銃撃戦江戸の街の地下に張り巡らされた地下道に、落っこちて 浜路と信乃のランデブーが始まるその終着点は江戸城の天守閣の上。そこで激しいバトルという漫画のような展開の見せ場があり、そのままラストに・・・。高校生や大学生のアクション好きの男子が読むと「すごく、おもしろい」ということになると思います。20代、30代の人になると、里見八犬伝と贋作・里見八犬伝の比較という楽しみ方もできるのかもしれません。悪くはないし、楽しめるが、アニメ向きだなと思った。活字で読むと少し不満足な感じになる。ページ数473読書時間 12時間読了日 4/14 伏 贋作・里見八犬伝【電子書籍】[ 桜庭一樹 ] 720円 楽天
平成は、何の時代かと問われれば「震災」の時代となるのです。平成は、どんな時代かと問われたら・戦争がなかった時代・日本の経済力が衰えた時代・自然災害が多発した時代と答えると思う。僕は、運よく自然災害の犠牲から逃れた。関西の人間なのに、阪神淡路の大震災では、別の地におり台風などの自然災害の被害も受けていないこの物語の主人公「彼」は、東北の震災の被害者だ。彼が、水害の地である奈良の十津川をバス旅行する話し。たいくつです。バス停に停まると、解説みたいに地誌や歴史の説明が始まるそこに、過去の悲惨な思いでが入ってくる例えば、震災後、墓参りに行くと墓が流されてなかった。地が塩の臭いがしたという感じだ。墓って高台にあるでしょそこまで津波が来たってことですよね。盲目の知人が、震災後、生き抜いた。でも、仮設住宅にいた彼は、突然、どこかにいなくなる。こういう話しが、たくさん。何だか、やりきれなくなってくる。たぶん、これは日本人の中に震災被害のDNAが残っているからそれとも震災が共通認識だからだろうか?関西の年配の人が、良く言う「テレビ見ていると、地震速報出るけど、あれ見ていると心臓がドキドキする」トラウマだと思う。僕には、東北地震で親と妹を亡くした知人がいる。彼は、震災の後、故郷に行きそのことを知るでも、叔父さんだけは生きていたその叔父さんが、半年後、忽然と仮設住宅から姿を消した自分だけ生き残った罪悪感なのかなと知人は言うこの本を読んでて、この話しを思い出した。日本人の中にある災害に対する共通認識がこういう災害文学を読むと辛いという反応を引き起こさせるように思う小説としては、おもしろくなかった。でも、色々と考えさせられた。ページ数 274読書時間 6時間読了日 4/11 山海記 2,160円 Amazon
あの「黄泉がえり」の17年後を描いた続編。加藤清正まで蘇ります。「黄泉がえり」は名作でした誰にだって、生き別れた人がいます友達、恋人、ペット、両親・・・だが、生物学の常識として、一度死んだものは復活をしませんそんなことを許したら、世界が混沌に巻き込まれてしまうでも、復活して欲しいという願望はあるわけで、その読者の思いの琴線を揺さぶったのが前作でしただから、たくさんの読者を獲得し映画化されヒットしました本作は、その17年後舞台は熊本熊本地震の被害があった後の世界またしても、同じような奇跡死んだ人が蘇ります。前作同様に、色んな人の視線で、蘇えった人の物語が描かれるのだが前回は、みんな消えた中。一人だけ生き残った男の人がいたその人の娘のいずみが鍵になってくるいずみは、蘇り人と妻との子ですハイブリッド的な存在です彼女の通学地域、行動範囲で、続々と、蘇り現象が起きる皆が彼女の存在を意識しているその中には、ありえない人たちまで復活する加藤清正ミフネ恐竜加藤清正が出てきて、話しは面白くなってきましただが、違和感もあるエンタメの為に、この物語の大切な流れを壊すのではという不安です続編というのは、前作の流れの中に存在していてそれを手にとった読者は、ほとんどが、前作のファンなのだから前作の世界観を意識して、その世界に浸りたいと思い読んでいるつまり、感動を求めているせっかく、蘇った。その大切な人との別れというラストに向かっているわけです。加藤清正が、現代に蘇ったコメディは求めていない話しが崩れるかと思ったら、この清正さんが上手く動いている。崩壊した熊本城への哀愁と熊本再建への市民の思いをこの歴史上の人物を通して垣間見ることができるという構造になっていたお決まりのスーパー台風との闘い黄泉がえり人の活躍で、台風を回避し熊本市民は助かるそして、彼らは消えるのだが・・・今回は、復活する加藤清正、ミフネ恐竜・・・、皆、生き返るハッピーエンドです。人の強い思いが蘇らせる困難を可能にするそれがモチーフ変なラストだが、そこに熊本も不死鳥のように復活するぜという作者のメッセージを感じたページ数 499読書時間 11時間読了 4/9 黄泉がえり again (新潮文庫) 810円 Amazon
大沢在昌、作家生活40周年記念作品です。パラレルワールド、警察、アクション・・・。「帰去来」。このタイトルの意味は、故郷に帰るために、官職をやめてその地を去ることなのだそうです。ラストシーンが、そういうことなのかな。SFの場合、まず、それがどういう設定なのかが気になります。この作品は、パラレルワールド。ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界をさします。並行世界、並行宇宙、並行時空・・・。女刑事、志麻由子はおとり捜査中に、連続殺人犯に首を絞められ・・・・別世界へ・・・そこは「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」戦後の荒廃した世界だった。さらに、何故か出世している。いきなり警視です。営業マンのチャラい元彼が、しっかり者の部下。事情を話すと、すぐに味方になってくれる。すごく頼りになる。周囲の主要人物はそのままなのだが母親が死んでいて、殉職したはずの刑事の父親が生きているが顔も年齢も違う(これが意味がある)戦後の闇市のようなものがあり「羽黒組」と「ツルギ会」という二大組織が牛耳っていてそれを、この志麻警視が潰そうとしていた。双方に話しを持ち掛け、相討ちを狙っている。これ黒沢監督の「用心棒」のオマージュだと思います。ちょっと設定が古臭い羽黒組の親分は、シャブ中で強面のいかにもでありツルギ会は、婆さんがトップで、三人の危険な息子がいるが、長男と次男は少し滑稽なところがある何となく、ジブリ作品の天空の城ラピュタの女海賊ゾーラに見えてきた人情味のある女ヤクザなのです。当然、大沢作品なので警察小説です。両組織を解体させる方向へと向かいますが同時に、志麻警視の出生の秘密どうして、前の世界と今の世界では、父親が違うのか色々な伏線をラスト怒濤のような急激な展開で収集し最後は、納得のいく答えが出てくるという仕組みになっています。2つの世界を行ったり来たり、殺人鬼に生命を狙われる所も見せ場だと思います。ミステリーなので、詳しくは語れません。察してください。p435「そうだ、時間の流れが歪んでいて、こちらよりも、もっと時間が速くすぎることもあれば、ゆっくりの時もある。2つの世界の流れはいっしょではない」前にいた世界で、時系列がバラバラに殺人事件が起こっていたのですが犯人のこちらでの状況と合致しないのですがこのセリフで、正当化してしまうという後半荒業まで見せ、すべてのバラバラに配置されていたパズルが一応は、読者の納得いく形でおさまります。人物造形が深く。展開も軽やかでエンタメ寄り。読者を楽しい方向に向かって、どんどん誘導してくれます。最後、200ページはトイレに行くのも忘れていました。刑事ものとSFが同時に楽しめる良い作品だと思います。ページ数 552読書時間 14時間読了日 4/6 帰去来 1,944円 Amazon
結局、一週間かかってしまったが、それだけの費用対効果はあったと思います。 最後の大阪城のシーンは凄かった。まだ、興奮が冷めやらぬ。そのままの勢いで、最初から、もう一回読んでやろうか。そんなことを一瞬思いました。面白かった。 5年くらい前の僕に「好きな作家は?」と問うたら万城目さんの名前が4番目くらいに出てました。 『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』『偉大なる、しゅららぼん』。どれも、ごっちぁんでした。 最近は、ずっと、ご無沙汰で、この本も2年以上積み上げ本状態。持っていたのを思い出しラッキーでした。 薬に入れるはずの「らっきょう」と「にんにく」を面倒だと間違えたままにして、人が死んでしまったことで伊賀忍者を破門となった風太郎は、京都にやってきて、清水寺の近くの産寧坂の瓢箪屋に就職する。 ひょうたんに取りついた因心居士というモノノ怪にトリツカレて瓢箪を育てることになる。その瓢箪繋がりで、高台寺に住む秀吉の正室のねね様と知り合い。 ひさご様という太った公家と祇園園の見物に向かうが、そこで京都所司代の配下の残菊って奴らに襲撃される。この ひさご様が豊臣秀頼。 因心居士の瓢箪を完成させる職人を ねね様に紹介して貰ったところから、話しは急展開。残菊たちに殺されかけるわ、大坂夏の陣は始まるわ。 挙句の果てに、ねね様と因心居士から頼み事。戦さ真っただ中の大阪城に侵入、因心居士の術と仲間たちの助けで、やっとこさ ひさご様(秀頼)に目的の物を渡すのだが、逆に、秀頼の子を脱出させてくれと頼み事をされてしまう。 大阪城は落城寸前、徳川方の残菊たちは待ち構えている。そんな中、仲間と力を合わせて敵と戦い。赤ちゃんを守って城を脱出するという話でした。 このラストの大阪城のシーンは、映像化したら、かなり楽しめると思います。 宮藤官九郎あたりで、映画化してもらいたいなと思いました。 悪役の残菊は、もちろん、足袋屋でございます。 時代ものと言っても、司馬遼太郎とか藤沢周平のような真面目なものでなくて、モノノ怪が変身したり、風で空を飛んだり、気配がわからないから相手から見えなかったりと、どちらかというと山田風太郎と和田竜をごちゃまぜにした雰囲気です。 純粋に、エンタメを楽しみたいと思う人には良いかと思います。 750ページです。 読むのに覚悟がいります。ページ数:752読書時間 20時間くらい読了日 3/31 とっぴんぱらりの風太郎 2,052円 Amazon
テンポの良い大阪弁と、子供目線から見る世界の不思議に戸惑った。色んなものを失ってきたのだなと実感させられます。 先日、西さん原作の< まく子 >という映画を見てきた。 思春期の少年の自己嫌悪とか、大人の男を穢れた存在のように見る子供独特の視線に驚きました。 女子を意識したとたん、男はこうなります。 ラスト近くで、夢精でパンツを汚した下半身丸出しの息子の前で、父親(草彅さん)が同じように下半身丸出しになり、「きもいやろ・・・」というシーンが今でも脳裏に残っています。大人は、きもいものだから、それで普通だから心配しなくていいという父親の愛情溢れる性教育でした。 この作品、< 円卓 >は、同級生の少し大人びた女の子の眼帯に憧れる9歳の少女琴子(こっこ)が主人公です。 僕も昔、眼帯に憧れた経験があります。弟のいらなくなった眼帯をマジックで黒く塗って「海賊ーーー」と言って、友達と公園でブランコの曲芸のりをしたのを覚えています。遠近感がないので、めっちゃ怖かった。まさくし恐れ知らず。 子供は、ああいう、ちょっとしたことで、自分が違った何かに変身したような気分になるのです。その子供のころに失った懐かしい感覚を冒頭から思い出させてもらいました。 こっこ(琴子)は、公団住宅に住んでいて8人家族です。祖父母、両親。そして、中学生の美人の3つ子の姉妹。みんな、年下でかわいい こっこ を可愛がっています。 食卓に、潰れた中華料理店で貰ってきた巨大な円卓がある。ここで、わいわいがやがやと食事をとるシーンが何かいいのです。 こっこは、ジャポニカ学習帳を持っていて、そこに秘密の書き込みをしています。 表紙は、蟻です。後に、3つ子の姉の一人が、刺繍の参考にと勝手に持ち出し騒動になります。 その表紙の蟻の触覚の先に、だれもあけることならぬと幼い字で書いてあります。 そこには大切な言葉が書いてあるのです。 こっこの友達に、ぽっさんという同級生の男子がいる。彼は、どもりです。この子がいい子です。「あれやで、うちが弟や妹にやきもちやいてるんちゃうか、て思うなや。違うねん。うちは全然、そんなんやのうて、妹も弟も、いらんねん。嬉しないねん」p111・・・と琴子は彼の前で心情を吐露します。 普通、大人の感覚だと諭します。「赤ちゃんはかわいいよ」とか「そういうのは我儘だよ」 でも、この親友は、僕たちが忘れていたような感覚で琴子と接します。「う、嬉しなかったら、よ、喜ばんでも、ええ」 このセリフには痺れました。みんなが喜んでいる時、自分も喜ばないと・・・ そういう強迫観念が彼にはないのが良い。大人になると、それに無意識に縛られて雁字搦めにされてしまう。 でも、この後、琴子は朴君という男子の不整脈を真似します。純粋に、かっこいいと思って、眼帯の時と同じ感覚です。この時は、ぽっさんは叱ります。「ぼ、朴君の不整脈も。香田めぐみさんの、も、もらいものも、本人が、格好ええんやろ、て、思っとったら、え、ええけど、嫌や、い嫌やって、思てるんやったら、何もせんほうがええんと、違うか」P117でも、そんなことはわからんという話しになります。「そ、想像するしか、なんいや」 なるほど、子供なのにしっかりしていますね。 ジョン・レノンの世界か。ベトナム戦争を想像しろ。戦争の悲惨を想像しろ。不整脈で苦しんでいる友達を想像しろってことですね。深い。 ノートを失くし、母親の妊娠で引っ越すかもという不安定な中、夏休みに突入するのですが、琴子とぽっさんは、学校の兎の散歩を日課としていました。小屋を飼育係が掃除している中、兎の面倒を見ていたのです。 ぽっさんがいない日、琴子は、変態と出くわしてしまう。「ご尊顔を踏んでくれはるのん」と近づいてきます。 琴子は、変態の顔を踏み、その鼻血を足裏に・・・。 ウサギ小屋に行くと、ぽっさんはいない。一人で兎を連れて・・・ P146 こっこは、一羽を無理矢理、自分の顔に乗せた。ウサギはさらに嫌がり、何度か、こっこの顔を引っ掻いたが、やがて諦めたのか、静かになった。 思春期の少女の奇行は、他にも書かれています。「しね」という文字を紙に書き、それを机の中に無数に隠していたこっこの前の席の女の子です。 こっこは、それを誰にも言いません。 理由も聞かない。 ここが大人とは違うところ。 大人は理由を知りたがる。 追求し追いつめる。 情報収集、解析。それから判断というプロセスをとる。 子供は、そんな方法論は採用しない。 こっこたちは、新学期に登校してきた彼女の机の中に、無数の紙きれを入れておきました。 これがラストシーン。 それはこっこのノートに書かれてある。大切な宝物の言葉たち。 おもろいかたちの野菜、たこやき、こいカルピス、給食、あいこがつづく時間、みつご、円卓 それはこっこの好きな言葉たち・・・。 頭の中に、どっと、こっこが流れ込んできます。ページ数:201読書時間 4時間読了日 3/24 円卓 (文春文庫) 508円 Amazon
東京オリンピックが終了した三年後、日本は景気後退の局面に入り労働者不足から大量に移民を受け入れていた。これは近未来の物語である。作者の想像力に脱帽。 オービタル・クラウドという作者の過去作も近未来を描いていた気がしたが、これは藤井流なのか。 東京オリンピックの3年後の話し・・・。 主人公の舟津怜は、とんでもない両親から逃げる為、他人の戸籍を買い、仮部諫牟として、ベトナム料理屋の上階の六畳一間に暮らしていました。偽造戸籍です。 設定か、こういうことになっているので、やたらとベトナム人の名前が最初に出てくる。もちろん、これは、移民がたくさんいるという印象を残すため。近未来という設定の為、やたらとIT系のドローンやQRコードとかの用語が出てくる。そのようにして、読者に物語世界の背景を示唆しているようだ。かなり作為的だと思うが雰囲気は出ている。 仮部の仕事は、消えた外国人労働者の捜索と説得。724というベトナム料理のチェーン店に雇われている。在日外国人問題。 ファムさんという、ベトナム人の美人で、とても勉強のできる子がターゲットだ。 彼女は、東京オリンピックの跡地にできた東京デュアルって、働きながら学べる大学があって、そこの生徒で、724という店の社員。失踪中です。 その大学は、学費、寮費、食費も学校が貸してくれる。奨学金みたい。ただし、協賛企業に入社したら借金が半分になるという。理想郷のような学校だ。 日本の国が貧しくなったので、大学に経済的な理由で行けない人には助かる場所のように、僕には思える。 仮部は、簡単に彼女を見つけ出す。「この学校で、人身売買が行われています」と彼女は言う。犯罪小説かと思いきや・・・ つまり、この金は借金である。奨学金と同じで返さないといけない。卒業するころには、800万を超える。そうなると、生徒は協賛企業に入社して借金の半分負担をして貰うしかない。 「借金をして職業の自由がなくなることを、わたしやファムさんは人身売買と呼んでいるの」とNPOの人が言う。P179この小説の核は、ここだ。 バルクールの描写が素晴らしいとか、色々あるが、そこが大切なのではない。職業選択の自由がないのは、それは自由とは言えない。ここが重要だ。 それって、闇金に借金して、マグロ漁船に乗せられたり、アダルド動画に出演させられるのと似ている。ヤクザは、借金を返すまで骨までしゃぶるのだ。自由を奪われるのは問題だ。 不自然な時代錯誤のストライキとかも、これを際立たせる為の演出だと僕は思う。 理想的と思えたシステムにも、穴は必ずある。 僕なら、80%OKなら、全部OKとか言いたくなるのだが 藤井さんは、作品に違和感を生じさせてまで、ここにこだわった「東京デュアルの人身売買」と叫び、偽物の先導者に踊らされた哀れな民衆(学生)・・・たぶん、彼らは、自分の主張していることの意味も把握していないだろう・・・そんな数万の学生たちの代表と、学長を対話させる。公式討論会だ。中継されているのに、そこで、学長は、東京デュアルの問題を認めるという結末。 エンタメ小説としては微妙だが、このアイデアは好きです。 十分に楽しめる近未来小説だと思う。ページ数:360読書時間 7時間読了日 3/20 東京の子 1,728円 Amazon
いつも、この手の本は、神話のあらすじが固くて、すんなりと入っていかないのだけど、これは違った。物語に、きちんとキャラがついていて、物語の動きがリアルだ。 映画やお芝居、小説の比喩として、ギリシャ神話が、よく、登場する。 オイディプスの血、アリアドネの糸、パンドラの壷(箱)・・・ ギリシャ悲劇・・・ よくわからずに、納得していた。だが、知りたいと思った。で、ある人にすすめられて、この本を読みました。 本書は、12の章から構成されていて、11個の神話の紹介とまとめ(概観)のような形になっています。 どうしても専門書の神話の引用文(紹介)は固くて興味がわかなくて困るのですが、この本の作者は作家らしく、キャラ設定もきちんと出来ていて話しがリアルなので、解説部分がなくても、これだけでも満足という出来でした。解説部分もとてもわかりやすいです。 入門書なので、ざっと触れた程度ですが初心者には満足なのです。 ギリシャの神々は、実に、人間的である・・・・ 中年のおっちゃんのように女性差別的であり、頭の中がエロ男爵です。 ゼウスは、人妻にまで手を出すし、ディオ二ュソス別名にバッコスは、恋人のいる女を無理やり自分のものにする。 ギリシャ神話が悲劇的だというのは、この神々の戯れ。理不尽にあるように思いました。 阿刀田さんは、軽く男女差別と、この問題を扱っていますが、神話というのは歴史上の事実の反映がある可能性があり、民主的と思われていたギリシャに、こういうことが実際あったということではないでしょうか?。 つまり、神からすれば、女の人や人間はモノみたいなものということでしょう。 モノみたいに、人を扱う人がいたから、物語が悲劇の色に染まってしまったのではないかと思うのです。 今でいうと、夫の両親の介護をしているのに、感謝されない奥さんとか・・・。悲劇です。 フランスのルイ王朝の時代、王が臣下の妻を無理やり自分のものにし愛人にし子もなしたという話しがあります。その配下の男は、それで出世したのです。 近世以前の時代には、こういうことが平気でまかり通っていた。 人をモノ扱いです。 神話の中には、そのような事実が隠れていて、物語として読んでいる読者に「神、お前、それはないだろう!」と怒りすら感じさせるのです。 最後に、やはり、気になるパンドラの壷の話しをします。 小説や映画では、パンドラの箱。邪悪なものが閉じ込められていて、それを開けると、それらが世界を暗黒世界に変える・・・、みたいなイメージ。 まず、これは神話では壷です。パンドラという女性が持っていた「開けてはいけない壷」でした。 たいていの昔話で、開けてはいけないものは開けてはいけません。 浦島太郎とか、鶴の恩返しとか・・・・。 これはゼウス(全能の神)が、自分に知識で対抗してきた生意気なプロメテウスを陥れる為に仕掛けた罠でした。それを弟のエピメテウスが、パンドラの美しさに魅了されて・・・という話し。 パンドラの壷から飛び散ったものは、病気、悪意、戦争、嫉妬、災害、暴力など、ありとあらゆる【悪】でした。P148壷の底に残っていたものがありました。ただ1つ、かろうじて【希望】だけが残った希望は、ずいぶんと嘘つきではあるけれど、とにかく私たちを楽しい小径をへて、人生の終わりまで連れていってくれる・・・と阿刀田さんは言います。この部分が大好きです。ページ数:241 読書時間 5時間読了日 3/18
かわいらしい狼の写真を見ていると、今まで抱いていた彼らに対する偏見が吹き飛んでしまう。狼の研究者のフィールドワーク研究が凝縮した魅力的な作品でした。 狼というと、赤ずきんに出てくる悪い狼。もしくは、狼男。 絶滅、人食い、危険な獣・・・「がぉーーー」というイメージ。 この本は、そのネガティブなイメージを払拭してくれます。 たくさんの微笑ましい狼の写真だけでも癒されます。 じゃれ合う狼はかわいい。 この本の作者は、元弁護士の狼研究家です。 オオカミ研究施設ウルフパークの研修生に選ばれたことが、きっかけで、この世界に入りました。 仕事は、狼をウォッチすること。 この本には、彼女が見た狼の姿。フィールドワーク研究が書かれています。 まず、僕の目にとまったのは、狼の教育方法でした。 狼の親は、外に対して一致した行動をとるP28 人間だと、子供が悪さをしても、ママが叱るが、パパのところに行くと味方をしてくれるという矛盾した行動をとります。同じ事柄でも、気分によって叱ったり叱らなかったり。 狼は、そうではなく。両親が一致した行動をとり叱ります。 子供を間においての両親の対立などは存在しません。次に、驚いたのは狼のリーダーについての記述でした。 イメージしていたのはボス猿。集団の中で戦って勝った猿がボスになりメスを独占する。そういう形でした。 どうも、狼はそれとは違う。決闘なんて、ほとんどない。合理的な理由でリーダーを決めていたようです。キーワードは、経験でした。さらに、狼のリーダーには女性的な繊細で気配りができるというスキルも要求されるようです。もちろん、ある程度の腕力も求められます。つまり、総合力です。リーダーの地位と攻撃性は関係がない。たえず威張ったり挑発したりするリーダーは、権力の喪失を恐れているためであり、リーダーに相応しい人格ではないP45どうも、狼は独裁者を嫌う性質があるようだ。 僕たちは、カラスが嫌いだ。しかし、狼にとって、カラスは親友だった。イメージとしてはペットに近い。この二者は、とても親密な関係性を築いていた。 カラスは、現在でも狼の目と言われている。高い所から観察し狼に危機を知らせる。 二者には、どうやら共通の言語らしきものが存在するらしい。 カラスは、狼にとって警報装置であり、いっしょにエサをつつく邪魔者である。カラスは狼の糞を食べる。大人の狼の糞には、消化されずに排泄された骨や毛が含まれている`122人にとって、嫌われ者である狼とカラス。この二者は親密な関係で結ばれていた。 北欧の神話には、人とカラスと狼が出てくる。それは、人類の狩猟時代の名残だと作者は言っている。 狼は、よく遊ぶ。じゃれ合う。時には、噛んだりすることもある。この遊びの中で加減を覚えたり、大人がわざと負けることで勝つ喜びを子供に教えたりもしている。自制と役割交代を通して、どのような態度ならほかのメンバーに許容されるか、どうやって紛争を解決するか、といったことを学んでいくP156人が、よく自制をなくしてキレたり、犯罪まがいのことをするのは、子供のころの遊びの欠如もあるのかもしれません。狼は仲間同士では殺し合いをしません。 動物は感情がないと言われることがありますが、それは違うと作者は言っています。 狼は、リーダーが死ぬとみんなで遠吠えをし悲しみます。夫婦の場合は、ショックで死ぬ相方もいるようです。深い愛情があるという証拠です。狼は家族がいなくなると悲しむ。誰かが死んだり姿を消したりすると、困惑して捜索をする。・・・嘆きを込めて遠吠えを繰り返す。でも、やがて振り払い、立ち上がって、それまでの生活の営みを続ける。生活のリズムに従って、・・・自然界のあらゆる生物がするように、今、ここに生きていることを祝う。この能力を失ったのは、人間だけではないだろうか。・・・、もっと、現在を生きればいいのにP175 人が狼を忌み嫌う。そこの裏側にあるのは不安なのではないでしょうか。 狼は人間を襲う、食べる・・・。 だが、狼は人を食べない。 人を殺すのは狼よりも、件数でいうと犬の方が多く。 人間を一番殺しているのは人間であり、人間は肉食動物であり、他の生物を食べて生きているのだという意識の希薄があるのではないかと作者は言っている。 オオカミの知恵 家族を愛し、託されたものたちの世話をすること。遊びをけっして忘れないこと。ページ数 263読書時間 6時間読了日 3/15 狼の群れはなぜ真剣に遊ぶのか 2,700円 Amazon
1992年出版の芥川賞作品と三島由紀夫賞作品という2作品の入った復刻版。若い女性の心の葛藤を繊細なタッチで描き、その背景に見え隠れする社会問題まで浮彫にした名作です。至高聖所という芥川賞作品を読みたくて読んだのですが、表題作に度肝を抜かれました。《 僕はかぐや姫 》という三島由紀夫賞受賞作品について書きます。これは名作です。千田裕生は女子高に通う17歳。自分のことを「僕」と呼ぶ。大人でもなく、子供でもなく、女でもなく、男でもない。17歳が好きで、18歳になりたくない死を薄皮一枚で感じていて、なのに、死ぬのは怖い。何でも否定するのが好きとても不安定で見ていると怖くなるそういう女子高生の憂鬱な時間を、生々しく、息苦しくたんたんと描いた作品だった。彼女の友人尚子の言葉が印象に残ったぼくに与えられたぼくの日をぼくが生きるのをぼくは拒むP38彼女たちの心情が、よく表現されている。「誰も彼も己の座席の1センチ外にも関心がないほど傲慢で、また、自分は他人を非難できる者ではないと思うほど謙虚」P30そんな不安定な裕生が、生物の教室の机にボートレールの一節を刻み込んだ君は、誰を一番愛するのか?男、プラ成(生物の先生)など・・・の無数の返信が帰ってくる。机の上は返信の落書きの山その中に、塑像のように美しい女の子がいて仲良くなる待ち合わせて一緒に帰る、一緒に食事をして、いつしか心が重なっていく次第に、ほのかな恋心を抱くようになるが・・・彼女には恋人がいるそう、この時代の恋はうまくいかない。イライラ死を渇望女子高生特有の不安定さ・・・元彼と再会誕生日プレゼントに、かぐや姫の本を貰うP78 「買う前に、その本を読んだけど」と彼は言った。 「かぐや姫って、結局、男のものになんないのな」もの・・・もの・・・・・・のモノ。自分は、モノなのか?たぶん、この感覚への否定が、彼と別れた理由だろう女は、男のモノなのだろうか?誰かの所有物になりたくない嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・モノ扱いされたくない塑像のように美しい女子に憧れたのは彼女が、千田裕生を、そのように扱わなかったからなのかも。少し百合的な展開となり、困惑するがこの裕生の気持ちわかる自己のアイデンティティの否定女をモノとしか捉えぬ男社会への反発だから、17歳が好きで18歳になりたくないこのまま女子高にいたい私たちはモノじゃない人間です女子高生たちの心の叫び声が怒りが文字面から、次から次へと湧き出てくるようなそういう名作だった読後、すごく切ない気分になった。ページ数 209読書時間 5時間読了日 3/13 ([ま]9-1)僕はかぐや姫/至高聖所 (ポプラ文庫) 691円 Amazon
4年ぶりに目覚めた天才ピアニストと、彼女を殺すようにと依頼を受けた伝説の暗殺者。 ラストまで、依頼人と、その殺害目的がわからないのがポイントでした。 タロット占いを趣味にしている伝説の暗殺者。 この設定がおもしろい。わざわざ占いをして、その運勢で依頼を受けたり、アクションを起こしたりと、かなり変わっている。 そのターゲットとなる女は、4年前に交通事故にあい、ずっと植物状態で眠っていて、最近、目覚めた天才ピアニスト。彼女が参加するコンテストの後、殺すという依頼。 ひょんなことから、彼女と出会ってしまい。助けたことから接点ができてしまい。本来は業務内容にない匿名の依頼者探しまでしてしまうが、これがラストまでわからない。 彼女の父親が事故で死に、彼女は生命を狙われることになる。 彼女の心臓移植の為、数億の金が必要になり、ヤクザに頼った。彼女の父親は薬の研究者で純度の高いT5という麻薬を作って借金を返していた。ヤクザたちは、突然、事故死した父親が麻薬のレシピを残していないかと調べていた。 そのヤクザは、暗殺者の黒姫という危険な女を彼女の監視につけた。高校生の女の子(加害者の娘)が父親を亡くし困っていた彼女の手伝いに来ている。 そこに、チャイニーズマフィアが加わり、誘拐事件になり、どんどん話しは派手に動いていく。豪華客船で、暗殺者の与一と医者の後藤がライオンと戦うシーンは緊迫感があった。周囲には観客がおり見世物になっていて、全員が何秒で二人が殺されるかにかけている。 これはどこかで見たことがあるようなシーンだ。映画とかで、似たような光景が出ていたような気がする。ライオンを倒し、彼女を取り返しかけるがヘリで逃げられる。これもありがちなシーンだ。 そして、チャイニーズマフィアとの直接対決。そこにヤクザが横入りしてきて、三つ巴の戦いになり、さらに、絶体絶命の危機を謎のスナイパーの出現によって助けられる。 それで人質救出、お父さんも本当は生きていたとわかるが、与一に彼女の暗殺依頼した人間がわからない。 与一は、だから、依頼を遂行しようとして、彼女が出るコンクール会場の外で狙撃体制に、そこに、依頼人がやってきて、真意がわかるという。 映画の「レオン」と占い刑事なんたらと、色んなものをMIXしたような。それでいて、良く出来た構成で、読んだ人が高評価をあげていたのが頷ける。先の読めない話しになっていて、満足しました。 ただ、かなりご都合主義に展開していくので「それはないだろ」と突っ込みをいれたくなります。 ですが、ラノベで、このクオリティなら満足です。ページ数:288読書時間 7時間読了日 3/11 暗殺日和はタロットで [ 古川 春秋 ] 1,836円 楽天
フェルメールは、ただ、世界をあるがままに記述しようとしている。できるだけ正確に。 昔、よく美術館に行きました。 最近は、一緒に行く人がいないので、残念ながら行けません。ああいう所は、男が一人で行く所ではない気がするからです。 フェルメールと言えば、「真珠の耳飾りの少女」。スカーレット・ヨハンソンの映画を見て、あの振り返った眼差しの潤みというか震えは愛ゆえなのかと思っていたら・・・。 どうも、この本によると、モデルはフェルメールの長女のようでして、あの原作の小説は創作のようです。 彼女が見ていたのは、同じギャラリーの対面に飾ってある「デルフト眺望」という絵。 つまり、街の景色。彼らの街のデルフトでは、大惨事が起こっていまして、たくさんの死者が出たようです。フェルメールの描いた「デルフト眺望」は、復興した希望溢れる街を描いたもの。少女は、その街を見ていたというのが作者の福岡先生の解釈。 フェルメールの作品は、写真のようにきめ細やかに描写されているのが特徴なのですが、彼と同時代、同じオランダの街に、レーウェンフックという人がいました。 この人は、手製の顕微鏡。この当時で300倍というのですからすごいことです。そんなすごい顕微鏡を作り、水中の微生物やら、血球やら、精子の存在を次々と突き止めたのです。 フェルメールは、このレーウェンフックの影響を受けて、まるで電子機器のように精密な遠近法や光と影などを再現したということでしょうか。 たいていの画家って「世界はこうなっている」って絵で表現しようとしているじゃないですか、ピカソの「ゲルニカ」の反戦思想みたいに、でも、フェルメールには、そんなのはなくて、福岡先生に言わせると「スナップショットのように・・・、世界を公平に切り取った」となるのです。つまり、芸術家というよりも、科学者に近いというのです。 フェルメールが、正確な描写を心掛けていたのは有名で、その中で描かれている地図や小物は本物だった。それは、すでに知られていることなのですが、福岡先生のフェルメールオタクぶりは、そこでとどまらない。稽古の中断という絵があるのですが、この中に楽譜が出てきます。 精密に描いているなら、この楽譜もそのはずだと思った先生は、その部分の画像を処理修正し拡大した。もちろん、ぼやけた変なオタマジャクシのシミみたいなものしかわかりません。そこから、ある記号にたどり着き、バッハの時代の古い音楽の専門家たちに意見を聞き、さらに、音符を解析し、これが実際のその時代の音符だと実証したという、呆れるほどの執念。さすが理系です。 フェルメールオタクの先生は、全部の作品を時系列に見たい。当時の色に復元したいと思います。 フェルメールの絵は、高価で1つ1つがバラバラに所有されていて、作品数は少ないのですが、一堂に会するというのは無理なのです。 そこでやったのがリ・クリエイト。つまり、復興というのかな。デジタル技術をつかってやっちまいました。その全作品をこの本の中で紹介しております。それだけでも読む価値はあるし、作品の解説などで、窓に反射する光がどうたら・・・という説明も絵を実際に見て読むことができますので、とてもわかりやすく「なるほど、なるほど・・・」と納得できます。 フェルメールには、贋作が多く。そういう話しも、いくつか紹介されていて面白いです。エマオの食事のエピソードとか、なかなか興味深いものでした。 例えば、最晩年の作品である「ヴァージナルの前に座る若い女」の真贋を解き明かす話しなどおもしろかった。決め手となったのは布地。ルーブル美術館にあったのキャンパスとびたりと一致したのだそうです。 この本を読めば、福岡先生のフェルメール愛が理解でき、たくさんのフェルメールの知識が身につき、生物学の話しまでわかるという、なかなかの優れものでした。 期待していた以上に面白かったです。ページ数:264読書時間 5時間読了日 3/9 フェルメール 隠された次元 (翼の王国books) 2,376円 Amazon
500ページ強という長編なのに、あっと言う間に通り過ぎて行ったような感覚。日本推理作家協会賞受賞作品。江戸時代をベースにしたファンタジー。 金色機械とは、何なのか?。「ピコッ」「パコッ」と音を出し緑色に光る。まるで、スターウォーズのC3PO。 死んだ人間の声色を使い。戦闘マシーンのように戦いまくる。 月から来たという説明だが、それも定かではない。 主人への忠実さは中堅ゼネコン社員ならぬ、忠犬ハチ公。 熊五郎という遊郭の主は、相手の敵意や殺意を読み取ることができる能力者。元鬼屋敷の仲間であった。 遥香は、訳ありの女。手をかざすだけで相手を殺すことができた。 この三者が絡み合い、ミステリーのように、時間系列バラバラに物語は進行し、パズルのように全景が浮かび上がってくるという不思議な話しだ。 このミステリーの部分で、日本推理作家協会賞受賞ってことなんだろうけど、異議ありですね。これはミステリーじゃなく、へんてこファンタジー冒険小説だよ。 話しは半端なくおもしろい。 山田風太郎さんの忍法帖シリーズみたいに、次が気になる展開になっていて、きちんと読者をその場所に誘ってくれます。ただし、男性向け。 キーワードは、戦国時代から山の奥に存在する。月の人の末裔?。鬼屋敷の奴らです。 こいつらは江戸時代になっても、法の外にいる存在で人殺しや女を誘拐したり酷い奴らです。だけど、最初の熊五郎目線の時は、すごく魅力的な連中に見えるんです。視線を変えるごとに、印象操作を微妙におこなっている。 鬼屋敷に、連れてこられた中に、熊五郎と紅葉という少女がいた。 紅葉は、ある吹雪の日に脱走し、猟師に助けられるのだが、そいつが手をかざすだけで人を殺せる特殊能力の家系の人。 火山の噴火で、村が貧窮し彼らは、河原で暮らすことに、そこで起こった虐殺事件で遥香の両親は殺される。母親が、この紅葉です。だから、遥香には変な能力がある。 その前に、鬼屋敷の頭が殺されるという事件が発生。その犯人の一人が遥香の父親の猟師。 両親を殺したのは誰か。鬼屋敷の頭たちを殺したのは誰か。 ここがミステリーの部分。 そして、最後は金色機械を従えて犯人の復讐だーーって、簡単に話すとこういう感じです。 色んな要素がごちゃまぜで、時系列がバラバラにくるので、頭の中で交通整理が必要ですが、ミステリーとしては単純です。 この物語の魅力は、窮地に陥った時の人間の動き方です。その人、その人の特徴がよく表現されていて、とても魅力的です。 とにかく、おもしろくて、平日なのに3日で読んでしまいました。かなりの寝不足状態です。 恒川光太郎おそるべし。デビュー作品の「夜市」もおすすめです。ページ数:486読書時間 10時間読了日 3/8 金色機械 (文春文庫) 972円 Amazon
1992年から、電子書籍事業に従事していたパイオニアの語る電子書籍の歴史と、これからの可能性について。 2年ほど前から、僕も専用のタブレットを購入し電子書籍を読んでいます。 先日も、ある映画の原作の漫画を本屋さんで「在庫がありません」と言われ、電子書籍でネットで購入しました。ちなみに、1000円。紙の本なら、送料無料で1080円。本のタイトルは「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った」です。 あえて値段を出したのは、もっと安いように思える電子書籍の値段なのですが、この程度だということを知って貰いたかったからです。 これは、紙の本のコピーとして出版社が電子書籍を考えているからだと作者は言います。 なるほど、安くし過ぎると紙の本の売り上げに影響が出るということなのかな。 本書を読んでいると、初期の電子書籍の様子から、今に至るまでがよくわかります。 最初は、CD-ROMという形式だったようです。 今のように読み取り用のタブレットがなかった。 このデバイスの問題がありました。 本を流通させる電子書店も少なかった。 機器に対応したコンテンツ。つまり、商品も少なかった。 そんな中、荻野さんのパートナーのボブ・スタインは、インターネットと本の融合、その可能性を確信していた。 それまでは、本は個人が楽しむ嗜好物でしたが、ネット社会になり、本を媒介として読者がリンクするようになったのです。それをネットの初期に気づいたのが、ボブ・スタインでした。 電子書籍には可能性があるとも言っています。 だが、先ほども述べましたが、日本の電子書籍は、紙の本と一緒です。 その現状に荻野さんは不満です。 彼の出版した本を1つ紹介します。 「小津安二郎の美学ー映画の中の日本」 この本は、本文の記述に合わせて、映画の相当シーンをリンクさせています。P218このように見ていくと、小津映画の典型的なラストシーンはシークエンスを見ていくと、代表作の終わりは意図的にあるパターンを持っていた。となります。 これは、もう、本と映画の融合です。 他にも荻野さんは、片岡義男の作品の全作品を出版しました。 公開された100作品を無制限に読める。記念のTシャツ。1口1万円。さらに、特典として、新作小説のメイキングを描いた読み物を読めるという、今までの本1冊こどに売るというやり方を変えようとしました。 電子書籍にすれば、写真も動画も音楽もリンクさせられる。可能性は無限に広がる。ネットを介して、読者と読者も結び付けられると主張しています。表現形式が劇的に変化するのです。 だが、出版社は海賊版を恐れて、本文のコピーをできないようにしたり、規制の方向にベクトルを傾けていると嘆いています。 最後に、ライザ・デイリーの言葉でしめようと思います。「出版とは人が求める情報を説得的かつ魅力的に提供することです」 それ以外にはないということです。ページ数:301読書時間 6時間読了日3/5 これからの本の話をしよう 1,460円 Amazon
これは優しい童話です。いしいワールド全開。何にでもトリツカレる特異体質の男が、美少女にトリツカレる。つまり、恋ですわ。読後感もいいし、こういうの大好きだ。 三段跳びに取りつかれて、世界記録を出すって、無理設定なんだけど、大会当日に、興味が別のものに移ってしまい欠席するという、それがトリツカレ男です。 次は、探偵に取りつかれ全国を飛び回り色んな事件を解決する。 そんな風に、定期的にトリツカレるものが変化していく。トリツカレるとプロ級になる。 それがトリツカレ男です。 妙な特異体質というか、奇妙な世界観。 そこに、しゃべれるネズミという仲間が登場し、童話的な要素を深めていく。 かと思うと、動物園の前で風船を売っている美少女にトリツカレる。というか、これは恋だね。 童話的な展開から、いきなり、ラブストーリーに変化していく。 彼女の為に一生懸命に頑張る。その姿はけなげです。 経済的に助け、母親の病気も治したが、まだ、彼女には悩みがある。 婚約者がいた。それも先生。 でも、この先生は死んでいた。 これは無理だろうと思っていたら・・・。 トリツカレ男は、逆に、このホッケーのコーチの先生に乗り移られます。真冬に、彼女に逢いに行く。先生のふりして・・・、最初はふりだけど、顔も体形も、だんだん先生になっていきます。 おい、おい、おい、それはやりすぎだろうという妙な展開に。 最後は、彼女に救われて、すべての事情が明るみに出て、お決まりのハッピーエンドという、まさしく童話的な展開として結実するのですが、このストーリーのぶっ飛び具合は、もう、何と言いますか、いしいワールドとしか表現できません。 気がつくと終わっていまして、本当のところ、もっと、読んでいたかった。 おもしろかったです。ページ数:160読書時間 2時間半読了日 3/2 トリツカレ男 (新潮文庫) 464円 Amazon
「みそ、みそ、みそ、手前みそ。うちでつくろう、うちの味。おみそ、みそ、みそ、手前みそ・・・。」 つまり、発酵の話しです。それを文化人類学でアプローチしています。面白かったです。 発酵食品と言えば、味噌、醤油、酒、ワイン、ビール・・・。 たくさんあります。 例えばビール、このように作者は言っています。 これはつまり、酵素のおなら(炭酸ガス)とおしっこ(エタノール)を飲んで喜んでいる・・・。 発酵とは、アバウトに言うと、米とか麦とか大豆とかを カビとか菌が食って、それで生み出した。うんこみたいなものです。 と、この本には書いてあります。 本の内容は、発酵の話しを文化人類学的なアプローチで語ろうってことでした。 「・・・であるよ」という語り口調が、読み終えた後も余韻として残っている。 これで発酵のことが、すべて理解できるというほどの専門書じゃなく、初心者向け。 語り口調も事例もわかりやすく、どんどん入ってくるのがわかった。 話しは色んな方向に飛ぶので、結局、この本は何なのだという思いもあるのだが、色んな知識、自分とは違う発想に触れることができ、僕はとてもごきげんになりました。 どういう風に文化人類学と発酵学をコラボしているのかというと、例えば、中国の酒と日本の酒の比較とかです。 中国も日本もカビの文化圏だが、使っているカビの種類が違う。 中国の紹興酒を飲む人ならわかりますが、あれは熟成するほど美味になり、何年物。何十年物というほど価値が出てくる。それは使われているカビが、たいていの環境にも耐えられるようなものだからです。 それに対して日本の酒は、ナーバスです。仕込む時期も、温度も決まり事が多い。ちょっとしたことで味が変化する。なるべく早くに飲むのがおいしい。 それはお茶でもそうです。中国のお茶は、熟成させて発酵させるものが多いのです。何年物とか、そういうのが価値があるが、日本のは、すぐに飲みます。それが美味い。 日本と中国では、思考や捉え方の期間も違います。中国は計画的に、遠くを見て時間をかけてやってきます。それに対して、日本は目先のことばかりにとらわれる。 それは食文化。カビの違い。文化の違いだと作者は言っています。 食文化(カビ)の違いは、思考回路にも影響してくるということです。 発酵人類学とは何か?。 発酵を通して、人類の謎をひも解くことだそうです。 今は、冷蔵庫とかありますが、昔は、そんなものはなかったわけで 発酵させることで長期保存をはかったということのようです そしたら、いがいと美味となった 酒が産まれた。味噌が産まれた、ワインが産まれたということみたい。 酒は、米から作るわけですが その初出は、かなり古い 神話に出てくる、やまたのおろちの話しがあるでしょ。 あんな時代から、酒はあったということみたいです。 発酵食品の歴史はいがいと古いのです。 碁石茶などの具体的な発酵食品の紹介をしたり、実際の発酵食品の仕事に従事している人、手前みそ(自分たちで味噌を作る)活動を紹介したり、色んな角度で発酵にアプローチしていきます。 マリノフスキーのトロブリアント諸島の事例(クラ)とか、レヴィ・ストロースの主張などを引用し、発酵を秩序立てていきます。 発酵とは、糖分を食べて、乳酸とエネルギーに分解することなんですよ。P161ヨーグルトは、菌のゴミを人間が引き取ってリサイクルしている。 微生物にとっての「ゴミ」が人間にとっての「宝物」となる。 はい、ここ注目、これが発酵の要諦ですよ。 人間と微生物という異なる生物が、地球における物質循環という巨大なマーケットで、「取引」をする。人間は乳酸菌の為に牛乳のプールを用意する。乳酸菌は、そこで乳酸を生産する。その結果が「ヨーグルト」という発酵食品として結実する。 発酵とは、微生物からの贈り物だけど、微生物は、贈り物とは思っていない。それが、マリノフスキーの「クラ」に似ているという話しです。「クラ」というのは、太平洋に浮かぶ島々での、贈与の習慣です。それによって関係を円滑にして、平和が保たれるというシステムです。 部族間の間での良好な関係を、人間と微生物に置き換えたのかな。 とにかく、発酵は人間の生活をより豊かにした。 これは素晴らしいというのが、作者の言いたかったことだと思います。 とてもおもしろい本でした。 この方の他の作品も探してきて読みたいと思いました。 ページ数:384 読書時間 7時間 読了日 2/28 発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ [ 小倉ヒラク ] 1,728円 楽天
あやかしの出てくる、漫画風のミステリーものと思いきや、なかなかの読み応えあり。読後感はかなり良い。 陰陽師の末裔で、あやかしの姿が見えるという高校生が、学校のトイレに住む絶世の美女のあやかしとコンビを組み、あやかし関連の事件の真相に迫るミステリー。 夢枕獏の陰陽師のようなアクションシーンはなく。ただの謎解きミステリーです。 5つの短編からなっており、1つ1つが丁寧に作られていて、ライトノベルという範疇でとらえると少し違う感じがします。人がよく描かれており、じわっと心に沁み込んでくるような少し良い話し。 第一話は、プランターの花に、鬼のように水をやったり、花を切り裂く生徒の話し。その花は、切り刻まれたのに復活する。どうして、そんなことをするのか?。何故、花は復活するのか?。最後に、謎がわかった時、ある人物の印象が180度変化する。 2つ目の話しは、学校の裏庭にある古木の前にたたずんでいる若い女性のあやかしの話し。 そこの元生徒で、定年が近い老古典教師をじっと見つめている。 逢魔が時に一瞬、先生に姿が見えた。知っている人だという。生徒や教師を調べる。そして、教育実習の時に、思いを寄せていた古典の女の先生だと判明。二人は、いつの日か、結ばれようと約束をしていたが、彼が教師として赴任する前に、彼女は体調を崩し教師を辞めていた。 正体が判明した瞬間、姿が明確になり、言葉を発する。「あらざらむ この世の他の思い出に 今ひとたびの逢うこともがな」と 百人一首である。 これは古典教師の共通言語。 老教師は涙する。 このあやかしは、隠世鳥という名のあやかしである。 生者の最後の思いを届けるメッセンジャーらしい この句の意味は「私の生命は、もう長くありません。だから、あの世への思い出に、せめて、もう一度、あなたに逢いたいのです・・・」 このラストが良かった。まるで、除夜の鐘の音色のような余韻が残像として残る。そういう短編だった。 3話目は、老陰陽師(祖父)とあやかしの子供時代の交流と別れた理由。この真相は胸が熱くなる。 4話目は、子供のころからずっと、ある女の子を見守り続けていた祇園さんという守護あやかしと少女の別れ。これもいい。 5話目は、トイレのあやかしの正体。これも歴史の史実をからめて、よくできているが、少し強引すぎる。 優しくて、心温まる。あやかしと人間の心の交流を描いたもので、設定はウケを狙って変だが、話しはかなりオーソドックスな良い話しだった。 続きが出たら読みたいと思った。ページ数:288読書時間 5時間読了日 2/26 京都九条のあやかし探偵〜花子さんと見習い陰陽師の日常事件簿〜(一二三文庫)【電子書籍】[ 志木... 702円 楽天
第160回芥川賞受賞作。身体の動きや減量の表現がリアル。まるで、一瞬、三島由紀夫って思った。なるほど納得の芥川賞。青春ボクシング物語。 町屋さんのデビュー作「青が破れる」もボクシングを描いていた。159回芥川賞候補になっていた「しき」はダンスをやってる高校生の話だった。 たまたま、僕は、この2作品を読んでいた。「文藝」という純文学雑誌の定期購読をしていたからだ。 そして、この作品。 この作品は、くだくだのやる気のないボクサーの話しだった。 どうも、町屋さんは、身体運動を言語に落とし込もうとしているようだ。 今回の作品でも、ボクシングのシーンはリアルで、一瞬、三島由紀夫が脳裏を過った。 芥川賞選考会で審査員奥泉先生も「描写の徹底性が評価されました。ボクサーの日常やトレーニング、減量の方法や戦いに臨む心の動きに至るまで、実に、リアルだった」と述べられています。 この主人公の男は、二流のプロボクサー。才能があるわけでも、人一倍の努力をしているわけでもない。くだくだのクズだ。 ジムに、エクササイズに来ていた好みの女の子を誘惑し、彼氏のいるのに自分のガールフレンドにするような節操のない自分勝手な男なんだ。 対戦相手のSNSをチェックしたり、相手に友達のような親近感を抱いたりと、勝負師としての真剣さもない。そんな、特別でない男が、トレーナーに見捨てられ、代わりに先輩のウメキチという選手兼トレーナーが担当になることから、物語は動き出す。 それまでは、負けを引きずる情けない男だった。次の相手が決まるまで、この試合の日の記憶と、いまビデオを見ていた真夜中の記憶の中間で生きる。それ以外の人生はない。減量よりなによりも、実際、これが一番きつい 超ネガティブな男で、いつまでも負けを反芻して生きていた。 そんな彼に、ウメキチは問う。お前は勝ちたいのか?。きれいなボクシングにしがみつきたいのか?この意識もしたことのない劣等感。これが、僕のボクシング人生を頭打ちにしていたと気づかされる。 それから、僕は、ウメキチの言うことに、こくこくと頷きながら、しばらく、自分の意見を放棄した。彼の言う通りに練習した。 ウメキチは、生活にまで入り込んでくる。 翌日、ウメキチは弁当を持ってきた。「朝は、これを食え」 ぼくは、黙って受け取ったが食うつもりはなかった。 中身も見ずに自宅付近の公園に捨てる。 こういう子供っぽい反発を繰り返す。 ウメキチの特訓で強くなり、少しずつ信頼いき、弁当も食べるようになる。 ある日、ウメキチから変なことを言われる。 お持ち帰りした女の子の話しを聞いて、心が乱れたと言うのだ。おれのボクシング人生を、いったん止めたかった。ビデオのストップボタンみたいにな。それがお前だ これがウメキチが、僕のコーチになった理由。 僕に才能を見出したから。なのに、僕は不真面目にやっている。それに腹をたてたともとれるし、愛の告白ともとれる。とにかく、よくわからない師弟関係が、そこにあり、僕は真剣にボクシングと向き合うようになる。 試合前の減量のシーン。この言葉が印象に残った。空腹は心の飢餓だ。からだは痛むだけだけど、たらふく食っているであろう他人を妬み、気をつかわれて、どうしようもなく情けなく、申し訳のない好悪の感情が入り混じって内に内に閉じていく ウメキチに対する八つ当たりを反省するシーンだが、最初のころとは別人のようになっている。 いきなり、試合直前で物語は、ぶち切れる。 あくまで、試合までの内面を描いた作品なので、この努力の収穫物のカタルシスは、読者にはおあずけなのだ。それだと通俗小説になってしまう。 このイライラが、ボクシングの試合前のボクサーの内面なのだろう。意地悪なラストだなと思った。ページ数:140読書時間 4時間読了日 2/24 第160回芥川賞受賞 1R1分34秒 1,296円 Amazon