あやかしの出てくる、漫画風のミステリーものと思いきや、なかなかの読み応えあり。
読後感はかなり良い。

陰陽師の末裔で、あやかしの姿が見えるという高校生が、学校のトイレに住む絶世の美女のあやかしとコンビを組み、あやかし関連の事件の真相に迫るミステリー。
夢枕獏の陰陽師のようなアクションシーンはなく。ただの謎解きミステリーです。
5つの短編からなっており、1つ1つが丁寧に作られていて、ライトノベルという範疇でとらえると少し違う感じがします。人がよく描かれており、じわっと心に沁み込んでくるような少し良い話し。
第一話は、プランターの花に、鬼のように水をやったり、花を切り裂く生徒の話し。その花は、切り刻まれたのに復活する。どうして、そんなことをするのか?。何故、花は復活するのか?。最後に、謎がわかった時、ある人物の印象が180度変化する。
2つ目の話しは、学校の裏庭にある古木の前にたたずんでいる若い女性のあやかしの話し。
そこの元生徒で、定年が近い老古典教師をじっと見つめている。
逢魔が時に一瞬、先生に姿が見えた。知っている人だという。生徒や教師を調べる。そして、教育実習の時に、思いを寄せていた古典の女の先生だと判明。二人は、いつの日か、結ばれようと約束をしていたが、彼が教師として赴任する前に、彼女は体調を崩し教師を辞めていた。
正体が判明した瞬間、姿が明確になり、言葉を発する。
「あらざらむ この世の他の思い出に 今ひとたびの逢うこともがな」と
百人一首である。
これは古典教師の共通言語。
老教師は涙する。
このあやかしは、隠世鳥という名のあやかしである。
生者の最後の思いを届けるメッセンジャーらしい
この句の意味は「私の生命は、もう長くありません。だから、あの世への思い出に、せめて、もう一度、あなたに逢いたいのです・・・」
このラストが良かった。まるで、除夜の鐘の音色のような余韻が残像として残る。そういう短編だった。
3話目は、老陰陽師(祖父)とあやかしの子供時代の交流と別れた理由。この真相は胸が熱くなる。
4話目は、子供のころからずっと、ある女の子を見守り続けていた祇園さんという守護あやかしと少女の別れ。これもいい。
5話目は、トイレのあやかしの正体。これも歴史の史実をからめて、よくできているが、少し強引すぎる。
優しくて、心温まる。あやかしと人間の心の交流を描いたもので、設定はウケを狙って変だが、話しはかなりオーソドックスな良い話しだった。
続きが出たら読みたいと思った。
ページ数:288
読書時間 5時間
読了日 2/26
