いつも、この手の本は、神話のあらすじが固くて、すんなりと入っていかないのだけど、これは違った。
物語に、きちんとキャラがついていて、物語の動きがリアルだ。

映画やお芝居、小説の比喩として、ギリシャ神話が、よく、登場する。
オイディプスの血、アリアドネの糸、パンドラの壷(箱)・・・
ギリシャ悲劇・・・
よくわからずに、納得していた。だが、知りたいと思った。で、ある人にすすめられて、この本を読みました。
本書は、12の章から構成されていて、11個の神話の紹介とまとめ(概観)のような形になっています。
どうしても専門書の神話の引用文(紹介)は固くて興味がわかなくて困るのですが、この本の作者は作家らしく、キャラ設定もきちんと出来ていて話しがリアルなので、解説部分がなくても、これだけでも満足という出来でした。解説部分もとてもわかりやすいです。
入門書なので、ざっと触れた程度ですが初心者には満足なのです。
ギリシャの神々は、実に、人間的である・・・・
中年のおっちゃんのように女性差別的であり、頭の中がエロ男爵です。
ゼウスは、人妻にまで手を出すし、ディオ二ュソス別名にバッコスは、恋人のいる女を無理やり自分のものにする。
ギリシャ神話が悲劇的だというのは、この神々の戯れ。理不尽にあるように思いました。
阿刀田さんは、軽く男女差別と、この問題を扱っていますが、神話というのは歴史上の事実の反映がある可能性があり、民主的と思われていたギリシャに、こういうことが実際あったということではないでしょうか?。
つまり、神からすれば、女の人や人間はモノみたいなものということでしょう。
モノみたいに、人を扱う人がいたから、物語が悲劇の色に染まってしまったのではないかと思うのです。
今でいうと、夫の両親の介護をしているのに、感謝されない奥さんとか・・・。悲劇です。
フランスのルイ王朝の時代、王が臣下の妻を無理やり自分のものにし愛人にし子もなしたという話しがあります。その配下の男は、それで出世したのです。
近世以前の時代には、こういうことが平気でまかり通っていた。
人をモノ扱いです。
神話の中には、そのような事実が隠れていて、物語として読んでいる読者に「神、お前、それはないだろう!」と怒りすら感じさせるのです。
最後に、やはり、気になるパンドラの壷の話しをします。
小説や映画では、パンドラの箱。邪悪なものが閉じ込められていて、それを開けると、それらが世界を暗黒世界に変える・・・、みたいなイメージ。
まず、これは神話では壷です。パンドラという女性が持っていた「開けてはいけない壷」でした。
たいていの昔話で、開けてはいけないものは開けてはいけません。
浦島太郎とか、鶴の恩返しとか・・・・。
これはゼウス(全能の神)が、自分に知識で対抗してきた生意気なプロメテウスを陥れる為に仕掛けた罠でした。それを弟のエピメテウスが、パンドラの美しさに魅了されて・・・という話し。
パンドラの壷から飛び散ったものは、病気、悪意、戦争、嫉妬、災害、暴力など、ありとあらゆる【悪】でした。
P148
壷の底に残っていたものがありました。
ただ1つ、かろうじて【希望】だけが残った
希望は、ずいぶんと嘘つきではあるけれど、とにかく私たちを楽しい小径をへて、人生の終わりまで連れていってくれる・・・と阿刀田さんは言います。
この部分が大好きです。
ページ数:241
読書時間 5時間
読了日 3/18
